【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~   作:独身冒険者

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転生した男は人助けをする

 ダンジョンに足を踏み入れた俺は早速2階層にやってきた。

 

「ふっ!!」

 

『ゴベェ!?』

 

「しぃ!!」

 

『ゴッパッ!?』

 

「はぁ!!」

 

『コブリェッ!?』

 

 ゴブリンの群れを斬り倒し、突き倒し、蹴り倒す。

 

 首を刎ね、心臓を穿ち、顔を潰した。

 

 一撃も喰らうことなくゴブリン達はあっという間にその身を灰へと変え、地面に魔石を散らばせる。

 

 それを素早く回収して、俺はすぐに移動を再開する。

 

 それにしてもステイタスはやっぱりすごいな……。

 前回は結構一杯一杯だったのに、もう余裕で戦えるようになってる。

 

 確かにこれならステイタスに振り回される冒険者が出てもおかしくないな。

 技なんて力で捻じ伏せればいいと思ってしまうだろう。

 

 自分よりランクが上の冒険者を見れば、尚更それに拍車はかかる。

 

 でも、スセリ様と戦って何度も投げ飛ばされてる俺からすれば、ステイタスなんて微々たるものだ。

 もちろんLv.5,6になれば話は別だろうけど、技を極めれば圧倒的な力をいなすことは出来ると身体で知っている。

 

 更にそこに経験が加われば、まさしく英雄となれる。

 

 第一級冒険者達はそれを理解しているから名を馳せている。

 まぁ、ステイタスの値が伸びにくくなっているから、嫌でも技を鍛えるしかないってのもあるんだろうけどな。

 でも、それが更なる高みへと押し上げているのも事実だ。

 

「……ホント、第一級冒険者は化け物だな」

 

 今の俺の何十倍も強いであろう人達を思い浮かべて、そう呟く。

 

 その時、真上から気配を感じた。

 

「!!」

 

 俺は全力で後ろに跳ぶ。

 

 直後、俺がいた場所に鞭のような何かが叩きつけられた。

 

 上を見上げると、そこにいたのは茶色の皮膚を持つトカゲ。

 

「ダンジョン・リザード……!」

 

 モンスターの種類が少ない上層階に出現するメンドくさいモンスターの代表。

 天井や壁を這いずるため、近接武器を使う冒険者はダンジョン・リザードが下りてくるまで待たないといけない。

 

 しかし、俺は待つのもメンドくさい。

 

 背中の脇差を抜いて、地面に突き刺す。

 そして跳び上がって、突き刺した脇差を足場に再び勢いよくジャンプして、右手に持つもう一振りの脇差を振り被る。

 

『ゲギャ!?』

 

 一太刀で頭部を両断し、俺は血を被りながら地面へと下り立つ。

 ダンジョン・リザードは地面に落ちる途中で、身体を灰にして魔石だけが地面を転がった。

 

 俺は突き刺した脇差を抜いて背中の鞘に納め、魔石を回収する。

 

 その後もダンジョンを進み、現れるモンスターを全て倒していく。

 

「……2階層は問題なさそうだな」

 

 ということで、俺はさっさと3階層へと下りる。

 

 モンスターは変わらないけど、ステイタスが上がるらしい。

 なので、同じ相手だと油断するのは危険だ。

 

『ゴブブゥ!!』 

 

 すると、ゴブリンが現れた。

 

 数は1匹……いや、違う!

 

『『『ゴブゥ!!』』』

 

『『『グルルゥ!!』』』

 

 ゴブリンとコボルトの混成パーティー!?

 

『グルルルォ……!!』

 

「!!」

 

 群れの奥に1匹だけ別格の雰囲気を纏うコボルトがいた。

 

 鼻頭、右頬、左腕に一筋の傷があり、左耳が欠けている。そして、石斧の【天然武器】を携えていた。

 

 そして、背丈も他のコボルトより高い。

 

 合計8匹……8対1……!

 

「……強化種? 3階層で?」

 

 ――ありえない。

 

 が、そのありえないことが起こるのがダンジョンだ。

 アニメでもありえないことがたくさん起こっていた。

 

 このダンジョンは神が創ったものだが、それはもう千年も前の話。

 この世界とて神でも予想できないことが未だに起こり続けているのに、それがダンジョンでは起きないと思う方が間違っているんだ。

 

 ありえないことなんて、ありえない。

 

 別の漫画で見た言葉。

 

「……逃げるは愚策」

 

 数が多すぎる。

 何より、上に行かせるわけにはいかない。

 

 故に()()のが正解だ。

 

 数を減らしつつ、強者がいる可能性がある下の階へと向かう。

 

 それが最善。

 

 そして、誰かと会う前に倒せれば――最高だ。

 

 

「つぇあああああ!!」

 

  

 俺は背中の脇差も抜き、気合を叫んで駆け出す。

 

『グルオオオオオオオ!!!』

 

 強化種コボルトもそれに応えるように吠え、それにコボルトやゴブリン達も続いて俺に向かって攻めかかってくる。

 

 取り巻きは強化種じゃないはず! なら、まだ戦える!!

 

 囲まれるな! 動き回って撹乱しろ!!

 

 俺はジグザグに移動しながら、群れに迫る。

 

 そして、一番手前にいるゴブリンに向かって、左手の脇差を投擲した。

 

『ギャベっ!』

 

『ガウ!?』

 

 額に突き刺さって仰向けに倒れて行くゴブリン。

 それにすぐ傍にいたコボルトが驚いて、思わず足を止めてしまう。

 

 俺はその隙を逃さずに、一気にスピードを上げてコボルトに詰め寄る。

 そして、一太刀で首を斬りつけ、全力で後続に向かって蹴り飛ばす。

 

 首から血を噴き出したコボルトは後ろにいた群れに突っ込んで、身体を灰にする。

 

 俺はその隙に地面に落ちた脇差を回収して、一度距離を取る。

 

「すぅ、ふぅー……っ!!」

 

 一度深呼吸して、次の瞬間には全速力で駆け出す。

 2秒もかからずにゴブリンに詰め寄り、すれ違いざまに首を刎ねる。

 

 そして、そのまま強化種コボルトに攻めかかった。

 

「しぃ!!」

 

『グラァ!!』

 

 強化種コボルトは俺の斬撃を防いで、斬り払った。

 俺は無理に抵抗せずに後ろに下がり、その場で回転して後ろを振り返りながら脇差を振るう。

 

『ギャッ!?』

 

 背後から襲い掛かって来ていたコボルトの胸を横に引き裂いて、俺は再び駆け出して強化種コボルトの背後に回り込むように移動する。

 

 もちろん、強化種コボルトは俺の動きについてきていた。

 

『ガァ!!』

  

 強化種コボルトは石斧を振り被って、全力で振り下ろす。

 石斧は俺の背後に突き刺さって、地面を軽く砕く。

 

 速さはやや俺が上、力は向こうが上。

 

 やっぱり、ちょっと厳しいか……。

 

『ゴブッ!!』

 

「っ!?」

 

 すると通路の影からゴブリンが飛び出してきた。

 俺はギリギリでゴブリンの引っ掻きを躱すが、バランスを崩してしまう。

 

 くそっ……! 伏兵とかマジかよ……!?

 

『グルルラァ!!』

 

「!! しまっ!?」

 

 強化種コボルトが口を大きく開いて突撃してきた。

 

 俺は脇差を交えて噛みつきを防ぐも、強化種コボルトは石斧を振って俺の腹に叩き込んだ。

 

「ごっ!?」

 

 俺は横に吹き飛んで地面を転がる。

 

 転がる勢いを利用してなんとか立ち上がるも、たたらを踏んでしまう。

 

 そこにコボルトとゴブリンが飛び掛かってきた。

 

「っ! 舐めん、なっ!!」

 

 俺は右後ろ回し蹴りを繰り出して、コボルトの横っ面に踵を叩き込む。

 コボルトは歯を数本折りながらゴキリと首を鳴らして、白目を剥いた。

 

 更に回転した勢いで左手の脇差を振り抜いて、ゴブリンの顔を鼻辺りで上下に両断する。

 

 俺はそのまま駆け出して、群れに背を向ける。

 

『グロオオオ!!』

 

 強化種コボルトが逃がすなとばかりに吠えて、コボルトとゴブリン達が追いかけてくる。

 

 俺は頻回に背後を確認しながら付かず離れずの距離を保つ。

 

 そして、奴らがほぼ縦一列になったところで、全力でブレーキをかけて急反転する。

 

『ガル!?』

 

「はあああ!!」

 

 いきなり攻めかかってきた俺にコボルトが一瞬動きを止める。

 俺は右手の脇差を逆手に持ち、コボルトの右脇腹をすれ違いざまに深く斬りつける。

 

 そのまま次のゴブリンに迫り、左手に握る脇差を横薙ぎに振って胸を横一文字に斬り裂く。

 

 そして、右手の脇差を持ち直して、全力で目の前に突き出す。

 

『ゴボォ!?』

 

 飛び掛かって来ていたゴブリンの口に脇差は吸い込まれ、内部を突き裂く。

 俺は右腕を横に振って、ゴブリンを振り払う。

 

 

『グゥルルオオオオオオ!!!』

 

 

 強化種コボルトが石斧を振り上げて、目の前に迫っていた。

 

 もちろん、俺はそれに気付いていたので驚くことはなく、冷静に振り下ろされる石斧を見据えていた。

 

 そして目の前まで迫った石斧に、俺は二振りの脇差を素早く、だが優しく添えるように横から当てて、全力で左に押した。

 

 石斧は僅かに逸れて、地面に叩きつけられる。

 

 俺は受け流すと同時に半身になり、石斧が地面に叩きつけられたと同時に身体を反転させて両腕を振る。

 

 二振りの脇差も振り抜かれ、石斧を握る強化種コボルトの右腕を深く斬り裂いた。

 

『グギャアアアアアア!?』

 

 強化種コボルトは石斧から手を離し、悲鳴を上げて後退る。

 

 俺はその隙を逃さずに脇差を二振りとも地面に突き刺し、それを踏み台に逆立ちして体を捻りながら右脚を振り抜く。

 

 俺の右脚は強化種コボルトの顎を捉えて、強く蹴り抜く。

 

 強化種コボルトは顎が外れんばかりに首が横に振られ、バランスを崩す。

 

 

「っおおおおおおおおお!!!」

 

 

 俺は雄叫びを上げ、脇差を抜きながら着地し、連続で斬りかかる。

 

 そして、トドメとばかりに左の脇差を、強化種コボルトの胸に突き刺し、

 

 

「つあああああああ!! はあっ!!」

 

 

 脇差を握り締めた右拳を、柄に叩き込んだ。

 

『グゴアオ――!?』

 

 強化種コボルトは後ろに吹き飛んで仰向けに倒れ、直後弾けるように身体を灰に変えた。

 

 ゴトン、と拳大の魔石が地面に転がり、その傍に脇差が落ちる。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 俺は右腕を突き出した姿勢のまま、肩で息をする。

 

 ……か、勝てた……。

 

 一撃しか喰らわなかったとはいえ、流石にちょっときつかったな……。

 

 俺は倦怠感に苛まれながらも武器を収めて、魔石を回収する。

 ……流石にデカいな。もう袋に入りきらん。

 

 今日はもうここまでだな。体も重いし。

 

 道を引き返そうとした、その時。

 

 

「ぁ……ぅ……」

 

 

「? ……声?」

 

 空耳か? それともモンスターか?

 

 ……いや、今のは間違いなく人の声だ。

 それも、かなり弱っている。

 

 俺は聞こえてきたであろう方へと駆け足で向かう。

 

 薄暗い通路に広がっていたのは、血の海に沈んだ冒険者達と思われる人達だった。

 

「!!?」

 

 これは……まさかさっきの強化種か!?

 

 俺は声の主を急いで探す。

 

 そして壁際に、ボロボロではあるが五体満足で浅く呼吸をしてるエルフの少女が倒れていた。

 

 俺は駆け寄って、ポーション全てを彼女にかける。

 

 体から治癒の煙が上がるが、俺のは下級ポーションだ。ここまでの重傷となると全快は無理だろう。

 けど、もっと問題なのは、彼女をどうやって連れ帰るかってことだ。

 

 背負うことは可能だろう。

 だが、その場合モンスターが出たら戦えない。

 

 人を抱えて逃げられるかなんて自信がない。

 

 でも行くしかない。

 

 ここに放置していくなんて無理だ。

 

 俺は背中の脇差を右腰に差して、少女を背負う。

 

 流石にちょっと重いけど、走れないほどじゃない。

 

 目指すは正規ルート。

 他の冒険者に最も会える可能性がある道だ。

 

 そこまで行けば、誰かに手を借りることも可能だろう。

 

 ……死体は後でギルドに報告して、他の冒険者にでも回収してもらうしかない、か。

 

 俺は駆け足でダンジョン内を移動する。

 出来る限り背中に負担をかけないように注意しながら。

 

 運がいい事にモンスターと出会うことはなく、俺はダンジョンを出ることが出来た。

 

 少女はバベルにあるギルド直営の治療施設に預けた。

 ついでにそこにいた職員にダンジョン内に残してきた彼女の仲間達の事を伝える。

 

 残念ながら、彼らに関しては『他の冒険者が連れて帰ってくれることを期待するしかない』とのことだ。

 

 まぁ、ギルド職員はステイタスを持ってないし、いちいち冒険者に依頼していたら人手が足りないだろうからな。

 

 俺は報われない現実にやりきれない思いを抱えながらも、換金へと向かう。

 強化種の魔石がどれくらいになるかだけど……。

 

 所詮はコボルトだからなぁ。期待は出来ないか……。

 

 

 

 

「29000ヴァリスだな」

 

「!!!」

 

 前回の倍ですとーー!?

 強化種すげー!!

 

 けど、逆に言えば強化種を含めても倍程度ってことか。

 つまり、今後は今回以下の金額になると考えておくべきだな。

 

 う~ん……やっぱり1人じゃ稼ぐにも限界があるか。

 

 まぁ、こんなこと愚痴ったら、スセリ様に怒られそうだけど。

 そもそもダンジョンに挑戦して、まだ2回目だし。

 

 今はこの感じを継続するしかないか。

 焦ったところで俺が持ち運べる魔石の量は変わらないし。いくらでも入る魔法の鞄なんて物も存在しないんだ。

 

 サポーターを雇う余裕なんてないし、そもそも子供の俺に雇われる奴なんていないだろう。

 パーティーを募集しても同じだな。

 稼ぎをちょろまかされるか、モンスターの囮にされるだけだ。

 

 スセリ様も団員を増やす気はなさそうだしなぁ。

 まぁ、本拠が『あれ』だからしょうがないと言えば、しょうがないのかねぇ。俺もあそこにもう1人ってなるとちょっと抵抗がある。

 

 俺はそんな事を考えながら帰宅する。

 

「ただいま戻りました~」

 

「おお。おかえり、ヒロ。飯は出来ておるぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「飯を食べ終わったら、ステイタスを更新するぞ。その後、妾はまた仕事に行くでの」

 

「はい」

 

 用意して頂いた食事を食べながら、俺は今日あったことを報告する。

 

「……お前、中々に引き寄せるのぅ。まぁ、鼻が高いと言えば鼻が高いが」

 

「あははは……」

 

「アドバイザーに関しては、お前に任せるわい。正直、今の所は要らん気がするしの」

 

「はい」

 

 ということで、食事を終えた俺は皿洗いを手伝って、ステイタス更新となった。

 

 

 

フロル・ベルム

Lv.1

 

力 :H 152 → G 201

耐久:H 177 → G 208

器用:H 161 → H 199

敏捷:G 243 → G 295

魔力:I 0

 

《魔法》 

【】

【】

 

《スキル》

【輪廻巡礼】

・アビリティ上限を一段階上げる。

(・経験値高補正)

 

 

 

 ……ん?

 

「……スセリ様」

 

「うむ。成長期じゃのぅ」

 

「いやいやいやいや!?」

 

 上昇値トータル170!?

 一回潜っただけで? おかしいでしょう!?

 

「鍛錬した分が上乗せされたからじゃろうて。そもそも恩恵を与えて1年経っておるんじゃぞ? そこらへんの冒険者でも、とっくにその程度伸びとるわい。お前の場合は下地がある分、得られる経験値が多いのやもしれん」

 

「……そう、ですかねぇ?」

 

「まぁ、妾も少々無理があるとは思うが、上がる分には問題なかろうて」

 

「それは……そうですね」

 

「うむ。では、風呂に入ってくるといい。妾は仕事に行く」

 

「はい……」

 

 まぁ、強くなったことに文句を言うのは贅沢か。

 

 

 とりあえず、明日もダンジョンで頑張るとしよう。

 

 

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