小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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誤字報告、ありがとうございますはるるかさん! (シ_ _)シ

クロスアンジュ的要素と学園黙示録が少しだけ出てきます、ご了承くださいますようお願い申し上げます。 (汗

お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!


第10話 マッドなS

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 アンジュリーゼ 視点

 ___________

 

 アンジュリーゼは現実味のない、放心したような様子のまま夜の租界へと出ていた。

 

『租界』。 それは他国の占領後、ブリタニアの国民が住む区域を指す単語を意味する。

 

「綺麗だねぇ、ねえちゃん!」

「何も一晩中、付き合えって言ってるんじゃねぇよ!」

「そうそう。 三、四時間だけでいいんだよ! 金は払うからさぁ!」

 

 昼はともかく、夜が落ちた都会はどの時代でも変わらない。

 

 それに租界と言っても規模が小さいため、アッシュフォード学園からゲットーはそれほど離れてはいない。

 

 徒歩で30分ほどだ。

 

 そんな場所に紛れ込んだアンジュリーゼは運が悪く、夜の街を徘徊するような酔っ払いたちに絡まれていた。

 

 ほぼマフィアなどの裏組織が仕切る租界外縁部の近くで。

 

「クッ! いい加減に離れなさい!」

 

 そして未だに箱入り貴族の精神をしていた彼女はどう対処すれば()()なのか分からなかった。

 

 彼女からすれば、今の状況は判断に困るシチュエーションどころか、少し前の彼女であればこのような場所にこのような時間で外出するのは────

 

 ────ガシッ!

 

「へへ! 細い腕だねぇ────!」

 

 プッツン。

 

 「────離れなさいって言っているでしょうが?!」

 

 バキッ!

 

「グハァ?!」

 

 アンジュリーゼのキレがある拳が、腕を掴んだ男の顎にクリーンヒットする。

 

「こ、このアマ!」

 

 ボカッ!

 

 「近付くな!」

 

 この淑女からかけ離れた行動は一言で片付ければ『ストレス』から生じていた。

 

 実はスヴェンの接し方は正解の一種だったらしく、微弱にだが彼女の物理的なストレスを減少はさせていた。

 

 だが、精神的なストレスは溜まる一方だった。

 

 急に変化した身の周り、(貴族として育ったアンジュリーゼにとって)庶民の生活と言う名の不自由(屈辱)、気軽に心の中で思っていることを話す相手がいない等々で余裕がなくなった彼女のイラつきボルテージは限界突破していた。

 

 その上、もともと言動が男勝りの方が性に合う彼女。

 以前までは『貴族としての体面』を第一に気にかけ、今までは『淑女の鏡』の意地を張っていたのだが……

 

 結果は御覧の通りで、感情と共に彼女は暴発した。

 

 だが────

 

「は、離しなさい! このッ!」

 

「や、やっと捕まえたぜ!」

「ったく! 手間かけさせやがって!」

 

 ────所詮は16歳の少女、そして荒ぶっている精神。 

 酔っぱらっているとはいえ、大の男数人相手に生半可な護身術で敵う訳がなかった。

 

「離しなさい! 私を誰だと思っているの?! か弱い女に総掛かりで────!」

「────んなこと知るか! “金払う”って言ってんのにあれだけ追いかけっこされたんだ! 付き合ってもらわねぇと気が済まねぇ!」

 

「ッ?! 貴方たち、まさか何か勘違いをして────!」

 

 ガッ!

 ビリビリビリビリビリ!

 

 「────きゃあああああ?!」

 

 男は片方の手でアンジュリーゼは腕を頭の上で拘束されたまま、もう片方の手で男は彼女の制服を首からお腹辺りまで一気に力ずくで引き裂くと彼女の玉のような白い肌とへそが露出する。

 

「大声出すなよ! どうせそれ(制服)も客用なんだろうが?! ゲットー近くに、こんな時間に本物の学生が一人でのこのこと来るわけが────!」

 

 ────パサッ。

 

 その時、彼女の破られたコートから何かが地面に落ちて男たちはそれに気付く。

 

 それはアッシュフォード学園の紋章が入った生徒手帳だった。

 

「お、おいこの手帳……へ? まさか……本物?」

「……おいおいおいおい! やばいぞ?! という事は本当に貴族様かどこかのお嬢様という事じゃねぇか?!」

 

 急に上記の男たち二人の態度が変わったことに気付いたアンジュリーゼは睨みを利かした目つきを、自分の腕を拘束する男に向ける。

 

「そ、そうですわ! 私にこれ以上の狼藉を働けば────!」

 

 バチィン!

 

 「────うるせぇぇぇぇぇ!」

 

 男は平手で彼女の頬を叩き、アンジュリーゼの眼前に星が散っては今何が起きたのか理解がイマイチ追いついていない表情を浮かべた。

 

「んなもん、立場も仕事も何も無くなったオレには関係ねぇ! 大体よぉ?! お前たちのそれもこれも全部、貴族様の所為だろうが?! オレのように?!」

 

 それは酔いに任せた怒りだけを持ったものではなく、本音も混じっていた。

 

 この男たち三人、実はというと貴族の抗争に巻き込まれて職を失った下っ端たちなのだ。

 それから今のやりとりで察したかもしれないが彼らが仕えていた主は見事に敗北し、あまり能力の高くない彼らは路頭に迷っていた。

 

 そして酒などの娯楽に没頭するようになり、シンジュクゲットーに出ては人権のないイレヴン(日本人)を狩っていた。

 

 この世界での『ホームレス狩り』もどきの、理不尽な『非ブリタニア人(原住民)狩り』である。

 

「それは……」

「確かに……」

 

「ならよぉ?! 貴族様の所為でこんなことになったオレたちのケアも、貴族様の義務だろうが?!」

 

 さっきまでオドオドしていた男たちまでもが、明らかにアンジュリーゼに殴られて発狂寸前の押しに感化される様子を彼女は固まったまま、今目の前で起こっていることを第三者のようにただ見ていた。

 

 それはこのような出来事に陥っても未だに状況認識が出来ていないからか、あるいは頬を平手打ちされたショックからか、それとも────

 

「(────ああ。 私、今()()なんだ。)」

 

 アンジュリーゼはぼんやりとした様子で周りを見る。

 

 つい少し前までは望めば、なんだって手に入っていた。

 

 靴や服、軽食、夜食、風呂、着替えであろうと文字通り、()()()()至れり尽くせりだった。

 

 それが今はどうだ?

 単身で見知らない土地に送られ、余裕がなくなっては虚勢を張って、更にイライラした気持ちの発散をした挙句、人っ子一人徘徊していないようなゲットーに近い地区にズカズカと『火遊び』程度の覚悟で迷い込む。

 

 社会にあぶれた者たちが、どうして社会のルールを守る必要があるのかを議論するのをぼんやりと見ていた。

 

 そして今、彼女の脳裏に浮かぶことと言えば────

 

『────ちょっと、混ざりモノ?』

『はい、こちらに。』

『この後、馬に乗りたい気分だわ。 用意をしてきて頂戴。』

『はい、ではすぐに軽食と飲み物も準備してまいります。』

 

 または────

 

『────ちょっと、ここが分からないわ。 貴方がやりなさいな。』

『ミスルギ嬢、これは課題ですのでご本人が────』

『────“()()()やりなさい”と、私は言っているのよ。』

『……では簡単な解き方の形式などを別のページに記しますので、それをご参考にしていただければ────』

『────ハァ、使()()()()奴ね。』

『申し訳ございません、学生の身ですので。』

 

 等々を思いだしていくと、常にとある単語が度々浮かび上がる。

 

『使えない。』

 

 その単語を思い出したことで彼女が────アンジュリーゼが脳裏に次々と浮かび上がらせるのは自分が何度『使えない』と、なぜか自分の周りに付き纏った少年に言ったのかだった。

 

『使えない。』

『使えない』、『使えない』、『使えない』。

 

 それを彼女は、()()()()()()()()()()()に使っていたと気付く。

『かつての今まで通り』の気分に浸ったまま。

 

 その単語こそ、今の自分に当てはまることだと気づ────

 

 ────ギュウゥゥゥゥゥ!

 

「きゃ?! い、痛い!」 

 

 そこで急に胸を強引に掴まれたことでやっと『夢』から覚めた彼女は一気にパニックに陥り、内心で助けを呼ぶ。

 

「(だ、誰か────!)」

 

「────女子一人に、大人で数人がかりか? それでもお前たちはおのこ()か?」

 

「「「あ?」」」

 

「え?」

 

 男たちとアンジュリーゼの耳に届いたのは凛とした女性の声。

 

 そして声がした方向を彼らが見るとアッシュフォード学園の制服を着た黒髪のハイポニーテールの少女が自信満々気に視線を返していた。

 

 ()()()()のようなものを背負いながら。

 

「何だテメェは?!」

 

「私か? そこでお前たちが強姦しようとしている女に用がある者だ。 だから彼女を離してはくれまいか? ()()()()()()()()()()()()()からな。」

 

 突然出てきた少女の煽るような態度に一人の男がズカズカと近づいて拳を振るう。

 

 「あ゛?! テメェも一発────!」

 

 バキッ!

 

「────アグラァァァァ?!」

 

 その男の拳を容易に避けてから黒髪の少女は彼の顎にカウンター気味の掌打を当てると鋭い、何かが割れる音が聞こえて男は叫びながら後ろへとよろけて顎を覆う。

 

「今ので歯が何本かイッたのか? 全く……カルシウム不足だな。」

 

 少女の凛とした笑みが深くなっていき、背負っていたモノを手にする。

 

「さて。 これで“()()()()”が成り立ったわけだが……そこの女、巻き込まれたくなければジッとしていろ。

 

 そこからアンジュリーゼが見たのは男たちが瞬く間に制圧……

 

 否、一方的に()()()()()にされる男たちだった。

 

「ひ、ヒィィィ?!」

 

「も、もう勘弁し()らは(ださ)いぃぃぃぃ!」

 

 一人の男が明らかに折られた骨や打撲からくる激痛で気を失うと、ほかの二人が命乞いのようなセリフを吐きながら変な角度で曲がった足等で逃げようとする。

 

 だが────

 

フハハハハハ! なんだ貴様ら、その体たらくは?! たかが骨が数本やられただけだぞ? かかってこい。

 

「「ヒッ?!」」

 

 少女の冷たく、瀕死の獲物で遊ぶ猫に追い詰められていくような気がした男たちの足はすくみ、彼らは息を素早く飲み込むだけだった。

 

意地でも立て。 漢を見せろ! 夜はまだまだこれからだ! フハハハハハ────

 

 ────バシュ、バカン!

 

 何かが高速で空中を切る音とほぼ同時に、笑う少女の足元でアスファルトが抉れては跳ねる。

 

「……女相手に、銃を抜くか。」

 

 少女の目が険しいものになりながら首を少し回し、後ろで気を失っていた筈の男をにらむ。

 

 いや、正確には彼が持っていた拳銃を睨んでいた。

 

「ここで、お前のような奴にボコボコにされたまま寝ていられるか!」

 

「この阿呆が……別に撃ってもいいぞ。 ()()()()()()()。」

 

「この────!」

 

 ヒュンッ!

 ザクッ!

 

「────ぎゃあああああ?!」

 

 もう一度拳銃を撃とうとした男の手の甲をガラスの破片が突き刺さる。

 

「すまない、毒島。 迷惑だったか?」

 

「いや? だから私は“撃てるのならな”と言ったのだ。」

 

「ッぁ……」

 

『なんで?』、とアンジュリーゼは新たに横道から出た少年に対して声を出したかった。

 

 彼は唯一、自分が知っている『日常』の再現をしてくれていた人物だった。




やせいの 毒島冴子 が現れた!
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