小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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久しぶりの連続投稿です!

昨日からの勢いのまま書いた次話でした。 (汗

誤字報告や感想、誠にありがとうございます! お手数をおかけしています!

最後にお読み頂きありがとうございます! 楽しんでいただければ幸いです!


第100話 日常に過ぎていく時間

 ブィィィィィィィ。

 

 ディーナ・シーの内部の一角で、掃除機特有の音が響く。

 

「♪~」

 

 そして意外にも、鼻歌交じりに手慣れた様子で掃除をしていたのはユーフェミアだった。

 その姿はいつもの豪華そうなドレスではなく実用重視の服装(割烹着)で、腰以上に伸ばしたピンクの髪は動きや掃除の邪魔にならないようシニヨンにしていた。

 

『普通』からはかけ離れているが、少し前の彼女と比べれば相当マシになった方である。

 

「(時間が過ぎるのは早いですねぇ~。)」

 

 しみじみとしながら彼女はほぼ居候の身である為『せめて自分の周りは』と思い、家事を(何とか)無事に(一人で)出来るようになった。

 

 皇族というステータスから『箱入り』でもこれ以上ないほどの上位に食い込む彼女(とアンジュ+ほかの者たち)は当初苦労した。

 

 スバルや毒島が目撃したように『不慣れ』というよりは『良かれ』と思ってしたことが逆効果だったことを、ユーフェミアは一つ一つ思い出す。

 

 洗濯の『無限の泡事件』は勿論のこと、他の家事も例外ではなかった。

 

 例えば掃除によく使う掃除機だが────

 

 ……

 …

 

『ユ、ユフィ? なにそれ? エプロン? ポニーテール?』

『何って、これから掃除するのですよねアンジュ?』

『なんで料理時に使うエプロンなの?』

『可愛いじゃないですか!』

『……ポニーテールは?』

『掃除の邪魔にならないようにです! 私でもこれぐらいは考えられますから!』

『……………………』

『なんですアンジュ、うずまくって?』

『いや、なんか……ちょっと前にあったことを思い出して……』

『???』

 

 ……

 …

 

 ────そして案の定、一般用の掃除機(の音)にビビったユーフェミアは掃除機を落としそうになり、エプロンごと(スカート)が吸い込まれそうになってはさらに『アワワ』と慌て、今度は髪の毛(ポニーテール)が吸い込まれてはバタバタと暴れた。

 

 何とか無事(?)に落ち着いた後に、今度はテーブルや棚を拭くときなどに彼女のポニーテールは床についてしまって汚れが引っ付いたりなど、慣れるまで時間はかかった。

 

 次の例えは料理────

 

 ……

 …

 

『ユフィ……』

『??? なんですアンジュ?』

『私、“お米を洗って”て頼んだわよね?』

『はい、洗いました!♪』

『なんで洗剤の匂いがするの?』

『え? だってただのお水を使うよりはいいと思って────』

『────ア、ウン。』

『あ、アンジュ? どうしたの? 頭、痛いの?』

 『ブツブツブツブツブツそういや私もそうだった忘れていたどれだけ箱入りだったの私ブツブツブツブツブツ。』

 

 ……

 …

 

 ────とまぁ……アンジュは数々の黒歴史()()()を頑張るユーフェミアによって掘り起こされ、フラッシュバックする記憶からくる頭痛に襲われていた。

 

 主に自分に教えていた者たちに対し、自分が取っていた態度に。

 

 ユーフェミアはのほほんと“ああ、アンジュにも思い当たる節があるのですねぇ~”と考えていたが、そこは根の違いからか口にも態度に出さず、懸命に家事を覚えようとして無事にそれらを会得した。

 

 チラッ。

 

 掃除機を止めたそんな彼女が見たのは壁に貼ってあるカレンダー。

 より詳しくは今日の日付、『10月11日』を見て去年のことを思い出していた。

 

 ……

 …

 

『ユフィの為に新しいラクロスラケットを特注品で頼んだぞ! しかし面白くないな、グレーゾーンではあるが“妨害”と称して相手プレイヤーを叩くスポーツなど……ユフィ、そんな奴が現れたら私に言えよ? 抹さts────()()するからな。』

 

 ……

 …

 

 「…………………………お姉さま。」

 

 自分の口から出た一言にユーフェミアははっとして、思わず目尻に溜まった涙を袖で拭う。

 

「(お姉さまならきっと大丈夫。 スヴェンさんたちによると、ダールトン将軍も一緒にいるみたいですし……きっとどこかで元気にしている筈。 私も切り替えて頑張らないと!)」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 「遅ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!」

 

 「ピャァァァァァァァァ?!」

 

 ユーフェミアは身支度を済ませて着替え終わると小腹が空いたのか、食堂に入るとアンジュの大声に思わず目を白黒させながら驚きの声を上げてしまう。

 

「いててて……耳鳴りが……」

「いや~、ようやく来たと思ったら、こいつ(アンジュ)が見た目以上の肺活量で叫ぶとは思わなかった。」

「叫ぶなよ! 姫ちゃん超ビビっているだろうが?!」

「「「「そうだそうだー!」」」」

 

「ングッ……わ、悪かったわよ。」

 

 近くにいた乗組員たちの正論(愚痴)などがアンジュの耳に入ると、彼女は気まずそうな顔をする。

 

 そんなアットホームな雰囲気に、いまだに心臓がバクバクと脈を打つユーフェミアは落ち着き始めると、食堂の変わり様にようやく気が付く。

 

 まず目に入るのはテーブルに置かれた西洋、和風、中華にインド系と思われる数々の料理。

 

 キッチンへと通じる棚にはキラキラした包装に包まれた箱たち。

 

 食堂の中にいたアンジュを含める者たちが頭にかぶっているカラフルなパーティハットで、余談だがアンジュのアホ毛はパーティハットを貫い(天元突破し)ていた。

 

 そして天井近くに吊るされた『Happy Birthday(お誕生日おめでとう) Euphemia(ユーフェミア)!』と書かれたメッセージボード。

 

「……」

 

「ほらほら、座って座って!」

 

 見ている景色を理解できていないのか、アンジュは固まったままのユーフェミアの手を引き、椅子に座らせている間に周りから乗組員たちがバースデーソングを歌いだす。

 

「……」

 

「え、ええっと……ほら! ここにいないスヴェンからも贈り物があるよ!」

 

 体のように思考も固まったのかユーフェミアはただポケーっとしていて、そんな彼女を見たアンジュはなぜか焦ってスヴェンがEUへ旅立つ前に置いて行った、小さな箱を渡す。

 

「……」

 

「……ピンクのボール?」

 

 手渡された箱をユーフェミアが開けると、中に入っていたのはアンジュの言ったような球体だった。

 

 その『ボール』に顔らしいモノがあると彼女たちが気付いたのは、目らしきモノがチカチカと点滅し始めた頃────

 

ハロー、ユーフェミア!

 

 ────そして耳(?)のようなカバーがパタパタと動き出し、機械的な音声が出た頃である。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 さっきまでバースデーソングを歌っていた者たちも、ガヤガヤとしていた音も静かになったと思った瞬間────

 

 「「「「「喋ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」」」」」

 

 ────ユーフェミア以外の誰もが驚愕の声を上げた。

 

 なんてことはない、上記の球体はコードギアスとは違うメディアに出たマスコットを基にスバルが作ったもので、『マオ検索用』に組み上げた顔認証プログラムに簡易的な人工知能+音声を組み込んだだけの()()である。

 

「………………………………」

 

「あ。」

「アンジュが泣かした。」

「「「「あーあ。 泣―かした泣かした~。」」」」

 

「えええええ?! わ、私は何もしていないわよ?!」

 

 アンジュのアホ毛がギザギザとなっては抗議をして、周りを逆切れ気味ににらみつけてからポロポロと涙を流すユーフェミアへと振り返る。

 

「ご、ごめんねユフィ?! ややややややややっぱりサプライズはダメだった?! プレゼントとかもし過ぎだった?! (だぁぁぁぁぁぁぁぁ?! やっぱりスヴェンじゃなきゃ駄目だぁぁぁぁぁぁ!)」

 

 アホ毛が“どないしよどないしよ”と言いたいかのように暴れまわり、アンジュは焦りながらアタフタしながらテンパっていた。

 

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「うーん、軍隊って思っていたより大変だよねヒルダ軍曹?」

「“公務員だから人生楽勝”かと思ったんだけどねぇ、クロエ軍曹?」

「でもボスって一旦張り切り始めると、納得するまで全力出しちゃうからねぇ~。」

「ねぇ~? 特にあの傭兵さんの小型無人機がツボに入っちゃったし~。」

 

 「ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ。」

 

 クロエとヒルダは自分たちの会話をまったく気にしなかった様子のまま、ブツブツと独り言を続けながら、試作型アレクサンダのバーチャルシミュレーションを出していたコンソールの前にいるアンナ(ボス)を見ていた。

 

 ヴァイスボルフ城を拠点にしているwZERO部隊が保有するアレクサンダはEUが開発したナイトメアではなく、ここに滞在している技術部がアンナ・クレマンという『天才』の下で独自に作った機体である。

 

 実はアンナ・クレマン、レイラと年が近い上に同じく『勉学に励む仲間』として昔からの付き合いである。

 だがそれだけで『天才』と呼ぶには少々足りないし、本職は『ナイトメアの技術者』ではなく『昆虫学者』である。

 

 ではなぜ『天才』と呼ばれ、ナイトメアの開発に携わっているかというと、彼女は『クレマン・インダストリー』とEUではそれなりの規模の令嬢であり、わずか12歳でグラスゴーを自分で解体して使われた技術を解析し、そのデータが現在EUで使われているパンツァー・フンメルに応用されたからである。

 

 これにてクレマン・インダストリーはさらに繁栄し、そんなアンナは技術士官となり、現在親友であるレイラが発案した部隊に身を置いている。

 

 バーチャルシミュレーションと連動していたアレクサンダが四足歩行から二足歩行に変形し、背中の小型無人機が部屋の中で展開する。

 

「やった! クロエ、ヒルダ! 今のタイムは?!」

 

「えっと……7秒です!」

 

「記録更新しました、ボス!」

 

「「「やったー!」」」

 

 アンナ、クロエ、ヒルダの三人が近づいてハイタッチを交わしながらキャピキャピとし始める。

 

 その姿は年相応の少女たちであった。

 

「確かに凄いが、タスクプロセスを平行にすればもっと早くなるのではないか?」

 

 「「「きゃああああああああああああああ?!」」」

 

 そんなアンナたち技術部以外、あまり人が来ないヴァイスボルフ城の地下研究所に全く予想していなかったスバルの平然とした声が割り込み、三人は互いを抱きしめながらまるで幽霊を見たかのように叫ぶ。

 

「どうした? なぜ怖がる?」

 

「あ────」

「いや、だって────」

「その────」

「────(スバル)の機体をバラ(解体)した代わりに、『ここ(研究所)へのアクセスと代わりの機体を開発し、提供する』も更新した契約書の一部だったと思うが?」

 

「「「う……」」」

 

 アンナたち(スバルの機体を解体した)三人は気まずくなり、目をそらす姿をスバルは内心複雑な気分になる。

 

「(う~ん、“興味を引く”まではよかったが……まさか個別のパーツにまで分解されるとは予想外だった。 しかもそのパーツにまで一気に解体したおかげで元通りにするのが難しくなったのは……まぁ、仕方ないとして、この三人は三人で頑張っているし。)」

 

 いまだ静かにするアンナたちを前に、スバルは咳をして口を開ける。

 

「言っておくが責めているわけでもないし、お前たちのやったことが悪いとは思っていない。 だからこうして俺も来ている。」

 

「「「……はい。」」」

 

「(何この絵図? まるで俺が悪者じゃん。)」

 

 スバルに対するアンナたちの反応は無理もなかった。

 何せヴァイスボルフ城に戻り、やっと設備の整った場所にいることで、ワイバーン隊は基本的な体力作りから本格的な訓練へとさらにハードルは上がった。

 

 警備隊で訓練に興味を持った者たちも加わったことがあるが、数日以内でギブアップをする者たちが出るほどで、ぶっちゃけると『傭兵のスバル』=『鬼教官』という認識があった。

 

「(……よし。 久しぶりに『アレ』をやるか。) 少し休憩しないか、お前たち? それと甘いものは大丈夫か?」

 

「「「……へ?」」」

 

 スバルの言葉に、アンナたちのポカンとした様子に彼がハテナマークを出す。

 

「どうした?」

 

「「あー、いや~────」」

 「────まさかスバルさんから“休憩”なんて言葉が出るなんて────」

 「「────ボスゥゥゥ?!」」

 

「え?! な、なに?! もしかして私、口にしていた?!」

 

 「「思いっきりしていたぁぁぁぁ!」」

 

 アンナのポロっと零した言葉に、ヒルダとクロエは汗をかく。

 

「……なるほど。」

 

「「ヒィィ?!」」

 

 そしてスバルの仏頂面と言葉に、二人+アンナの三人の顔から血の気が引いていく。

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 パリでの一件から時は過ぎ、wZERO部隊の新たな司令官となったレイラは、両親を亡くした幼いころから続けている日記に書き込んでいた。

 

「ミィ?」

 

 猫の鳴き声が机の下からするとレイラは鳴き声の主────エリザベスを抱きかかえては、カチコチと音を出す時計が示す時間を見ては席を立つ。

 

「少し歩かない、エリザ?」

 

「ミィ♪」

 

 ご機嫌なエリザベスとともにレイラは静寂な城の中を歩いて食堂を目指すと、近づくにつれて次第に甘い匂いが鼻をくすぐり始める。

 

「(これは────?)」

 「「「「「────美味しい~♡」」」」」

 

 通路から食堂へと通じるところにレイラが着くと、丁度技術部の三人に加えて科学部のジョウやオリビアが、メレンゲクッキーにチョコブラウニーやマフィン等をお皿に取ってから口にし、和んでいる場面に出会う。

 

「「「「「うめぇ~。」」」」」

 

 その隣のテーブルでは、同じように菓子を食べては和んでいたワイバーン隊の少年たちの輪に、リョウも混ざっていた。

 

「それで日本人って全員、刃物や料理の達人なんですか?!」

 

「違う。 お前たちと何ら変わり……ああ、“家庭科”ならあったか。」

 

「「「「家庭科?」」」」

 

「料理に使う調理具などの使い方や、簡単なレシピを学校で習う。」

 

「あ~、料理教室みたいな?」

 

「そんな専門的なモノではなく、一般の義務教育だ。」

 

「「「「一般の学校で習うの?!」」」」

 

「ああ。」

 

 そしてソフィ、ケイト、フェリッリなどを始めとする『日本マニア』が、様々なお菓子を乗せたトレイから減っていく品を補充するエプロン姿のスバルに話しかけていた。

 

「……」

 

「どうしたんです、マルカル司令?」

 

「…………………………えっと……これはどういうことかしら?」

 

「見てわからない? EU風に言う、“お茶会”って奴らしいよ?」

 

 近くでひっそりと静かにエンジョイしていたアキトがレイラに気付き、彼女の質問にユキヤが答える。

 

「ちなみに前もって言っておきますが、今食べているのはスバルの手作りらしいですよ司令。」

 

「……………………………………手作り……………………ですって?」

 

 呆けたレイラからエリザベスは、するりと抜け出してはスバルの近くまでトテトテと歩く。

 

「ミィ。」

 

「ん? ああ、猫か────」

 ────ガブッ!

 

 そして近づいた瞬間、エリザベスはスバルに戸惑う事なく噛み付く。

 

「うわ! ボス(アンナ)以外で問答無用にエリザが誰かに噛み付くの、初めて見た!」

 

 「ううぅぅ……気にしているのに……」

 

「ど、ドンマイよボス……」

 

 ガジガジガジガジガジガジ。

 

「ちょちょちょちょっと大丈夫スバルさん?! 更にエリザベス噛み付いていない?!」

「トレイを落とさないでぇぇぇ!」

「エリザベス、ストップ! ストップー!」

 

 周りの者たちが慌てる中、スバルは平然としたまま口を開けては、以下の短い言葉を口にする。

 

「………………泣けてきた。」

 

 「「「「「「「「いやいやいや泣いてないじゃん。」」」」」」」」

 

 そして食堂にいた殆どの者たちが未だに表情を変えないスバルにツッコミを入れた。

 

「…………フフ。」

 

「??? 何かあったか、マルカル司令?」

 

「ああ、いえ。 貴方に意外な面があった、と思っただけです。 それも、『傭兵業の一環』でしょうか?」

 

「基本的に自給自足が基本だからな。 菓子も料理も自分で作れば材料費だけで安くつく。」

 

 ガジガジガジガジガジガジ。

 

「それと司令……そろそろ猫を止めてくれないか? このままだと動けず、オーブンやトースターに入れた次の菓子が焦げてしまう────」

「────うわぁぁぁぁ! ぼぼぼぼ僕ちょっと見てきまーす!」

 

 「甘味の為ならどれだけ俊敏になるのよ、ジョウ……」

 

 超甘党のジョウが、慌てて立ち上がった勢いでバランスを崩しそうになるのを、無理やり踏ん張るどころかそれを利用してキッチンの方へと走り、上司のソフィがため息交じりに上記の言葉を漏らして、周りの者たちがそれに対して苦笑いを浮かべる。

 

 その場には、つい最近までギクシャク空気は嘘みたいに消えていた。

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ご子息のご栄達、おめでとうございます。 シャイング家もこれで安泰ですな。」

「ありがとうございます、オルレアン伯爵。 全ては亡きマンフレディ卿のおかげです────」

 

 明らかにヴァイスボルフ城とは違う城の様な屋敷ではパーティーが開かれ、ミケーレ・マンフレディの妻────マリア・シャイングが数々のユーロ・ブリタニアの貴族たちに対応していた。

 

 その夜間パーティーは、新しく聖ミカエル騎士団の総帥となったシン・ヒュウガ・シャイングを祝福するものだった。

 

「して、パーティーの主役の彼は何処へ?」

 

「あら、先ほどから見当たりませんねぇ……」

 

 マリアたちが居るホールから、屋外の噴水のある場所に景色が移ると、そこにはつまらなそうに噴水の淵に腰を掛けて足をプラプラ冴える金髪の少女────アリス・シャイングがいた。

 

 「ハァ……」

 

 彼女はこのような宴会モノはあまり好きではなく、どちらかというと顔見知りが集まるようなものが好ましかった。

 

 何せ『貴族の宴会』は暴力こそないものの、『政治』や『値踏み』に『体面』などを賭けた戦場となる。

 

「……ハァ……」

 

『言葉や仕草に動作一つ一つに意味がある』、あるいは『意味があると思われる』など、子供のアリス・シャイングからすればこの上なく窮屈な環境でしかなく、彼女がため息を出すのは無理もなかった。

 

 足をブラブラさせるのにも飽きたのか、噴水の淵から降りようとしたところでバランスを崩して後ろへと落ちていく。

 

「あ────?!」

 

 ポスッ。

 

「────っと。 大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 噴水に身体が落ちる寸前に、プラチナブロンドの女性がアリス・シャイングを引き留める。

 

「え、えっと……ご、ご迷惑をおかけしました……ええと?」

 

 アリス・シャイングは自分を助けた女性を見て困惑する。

 

 彼女はこういった貴族の夜会が嫌いだが、貴族のたしなみとして少なくとも顔と名前は覚えようとしている。

 

 だが目の前の女性はどれだけ記憶を掘り起こしても()()()()()()

 

「ん? ああ、私の事は気にするな。 訳あってお忍びで来ているのでな? 取り敢えずは────」

「────どうしたんだい、アリス?」

 

「あ、義兄様! えっと……あ、あれ?」

 

 そこにシンが現れ、アリスは満面の笑みになるが自分の髪が濡れていることを隠そうとするとさっきまで近くにいた女性の姿はなかった。

 

「ん? 髪が濡れているねアリス?」

 

「こ、これは……その……落ちそうになって……さっきの人が助けてくれたの!」

 

「さっきの人……ああ、あの女性か。」

 

「義兄様、あの人は誰だかご存じですか?」

 

「……いや。 見慣れない方だったけれど、マリアなら知っているんじゃないかな?」

 

「そうね! 招待状を送ったお母さまなら誰だか知っているはずね!」

 

 シンはアリスの頭をなでながら、プラチナブロンドの女性が消えていった方向を見る。

 

「(私の事に気付いた時の歩き方と対応……何らかの武術を嗜んでいるな。 EUの諜報員……はないな。 ならばブリタニアか? それとも……)」




展開を早めようと頑張りますので、次話が遅くなるかも知れません。 m( _ _;)m

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