小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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11/21/2022 00:15
大気圏突入時の事象を修正いたしました! <(_"_)>


第104話 逆たまやでおいでませ、スロニムへ♪2

『アポロンの馬車』が慣性飛行に移行して数時間ほどが経ち、ようやくあと少しで作戦エリアに到着するまでとなるまでスバルは衛星軌道上から地球を見下ろしていた。

 

「(うーん……画像越しとはいえ、地球を見下ろすのは変な気分だ。)」

 

 「分離まで、あと少し……」

 

どうしてみんなひどいことするの?!

だいじょうぶ……だいじょうぶだから。

 

 緊張のせいかレイラの消え入りそうな声がスバルの耳に届くと、彼は幼少期の出来事を思い出しては無性に慰める衝動に駆られ、そのまま口を開ける。

 

「司令。」

 

「な、なんですか?!」

 

意見具申(いけんぐしん)。」

 

「ッ。 ゆ、許します。」

 

 スバルから意外な、そして『傭兵』からかけ離れた言葉遣いにレイラは一瞬目を点にさせるが仮にもご令嬢として育てられた彼女はすぐに答える。

 

「緊張して身構えるのはいいが、仮にも現場での指揮官となるお前がガチガチでは指揮に支障が出る。 “リラックスしろ”とは言わん。 だが────」

 

 スバルはアレクサンダに乗って以来、初めてレイラへと後ろに振り返えてから言葉を続ける。

 

「────先ほど言った宣言の対象に、君も入っている。」

 

「(“先ほどの宣言”……)」

 

 レイラはキョトンとして思い返すと────

 

(スバル)は誰も死なせるつもりはない。』

 

 ────とユキヤに対していうスバルの声が脳裏に浮かぶ。

 

「……ありがとうございます、シュバールさん。」

 

「そういう契約だからな。」

 

 「……よかったね、アンナ。」

 

「どういう意味だ?」

 

 いつもの平然(冷静)としたスバルに戻ったことで、レイラがこぼした上記の言葉もスバルに届いてしまい、彼女はバツが悪そうな顔を浮かべる。

 

「……その……シュバールさんは()()()()()()()()()()()仲がいいみたいですから。」

 

「(ああ、なるほど。)」

 

 スバルはレイラの言い方で大体のことを察した。

『亡国のアキト』でもレイラは当初、昔からの知り合いであるアンナ以外からは『マルカル司令』と呼ばれながら一線を引かれ、常時『蚊帳の外扱い』をされていると感じて『自分は無力』ということから自ら出撃している。

 

 そしてレイラの言った“名前で呼び合う”とはおそらく、新参者であるスバルがアンナを“アンナ”と、そしてレイラを“マルカル司令”と呼んだ先日の会話のことだろうとスバルは当たりを付けた。*1

 

「(う~ん、確かに他人行儀だったが……レイラはア()ウの野郎から引き継ぎもない状態からのスタートだったからフリーの時間なんて最近までなかったし、あとはハメルの野郎が目を光らせて近づけられなかったし、他のやつらと違って接点(会う口実)がなかったからなぁ~。 ここは黙っていても彼女の真面目な性格とハプニングを考えると多分、原作通りか近いような信頼関係をほかの皆と築けると思うが────)────なら、隊とは別の契約をするか、()()()中佐?」

 

「え?」

 

「口頭での契約になるが、筆が使えるときにでもなれば正式に書き写してもいい。 (レイラのことだから、無理難題的な内容にはならんだろう。)」

 

「……………………なら────」

 

 ────ガコン。

 

 周りの物質を伝って、鈍い金属音とともにコックピットが震えると、モニターの画像が強制的に一時カットされて、分離したロケットのパーツが宇宙へと広がる光景が広がる。

 

「続きは、作戦後になりそうだな。」

 

「……ええ。 総員、大気圏突入に備えるように通信を出すわ。 その間の確認をお願いできるかしら?」

 

「無論だ……カプセル分離とともに、全機のシステム起動を確認。 現状、異常なしだ。」

 

 スバルの言葉から数秒後、推進力を失ったカプセルたちは外付けされたスラスターノズルで突入角度と位置の最終調整に入りながら、地球へと吸い寄せられる。

 

 「(“魂を重力に引かれる”、とはこういうことか!)」

 

 ハラハラドキドキしながらも、スバルはワクワクしながら内心で『とあるサングラスにタンクトップ軍服男』風なセリフを思い浮かべた。

 

 ジェットコースター(絶叫マシーン)以上の浮遊感で、胃潰瘍のような吐き気や胸やけを無視するために。

 

 カプセルは大気圏に突入する速度で空間の断熱圧縮からくる急激な高温上昇で真っ赤になり、アレクサンダのモニターたちはノイズへと変わり、コックピットはガタガタと音を鳴らして震える。

 

「ウィングの展開まで20秒!」

 

 300キロメートルからのフリーフォールといえども重力の加速で瞬く間にカプセルたちは指定された高度でさらに分解してアレクサンダ達は折りたたまれた翼を展開しては滑空をし始める。

 

「ほかの皆は?!」

 

 レイラは気体のプラズマ化におけるノイズが徐々に消えてクリアになっていくモニターを切り替え、ほかのアレクサンダたちの様子を目視しながら通信を送る。

 

『こちら藤原(イサム)准尉、異常なしです!』

竹林(タカシ)准尉、イサムと同じく!』

『こちら日向中尉、問題ない。』

 

 大気圏突入が初めてではないワイバーン隊たちがレイラに返答を送り返す。

 

『このぐらい! ワケねぇよ!』

『い、一瞬だけ翼が開かなかったから叫びそうだったよ……』

『大丈夫だよアヤノ。 この高度から落ちたら多分、痛みも感じないくらいの速度でミンチに変わるよ♪』

 

 新人たちであるリョウたちも無事だったことに、レイラは明らかに『フゥ~』と息を吐きだしながらドローンたちの制御に取り掛かる。

 

「(吐息がぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」

 

 そんな中、スバルはポーカーフェイスを維持しながら気を紛らわすため人生初の滑空飛行に専念し、森の開けた場所を着地点として狙うが、急なサーマル(上昇気流)の変化で生じる変動に流されることを察した。

 

「司令、口を閉じていてくれ! ウィングをマニュアル(手動)で切り離す!」

 

『亡国のアキト』で、レイラは部隊の把握にドローンと自分の機体制御とかなり一人でいろいろとやりこなそうとしていた。

 これは別に自信の表れなどではなく、単純に人手不足と上記のそれらを任せられる人員がいなかった為であり、ほぼ不時着気味に降り立っていたが……

 

 ガガガガガガ!

 

 スバルたちの乗っているアレクサンダ・スカイアイはウィングを切り離してインセクトモード(四足歩行)で森の木々を無理やり伝って何とか地面へと荒い着地で降り立つ。

 

 ドォン

 

「(グッ……綺麗なランディングじゃなかったが、無事にできた。) 司令、舌を噛んでいないか?」

 

「私は大丈夫です。」

 

「では指示を頼む。」

 

「このまま森の中を抜けながら、敵地にできるだけ近づいて襲撃します。」

 

 そんなレイラたちの機体を、ユキヤ機はスナイパーライフルのスコープ越しに狙っていた。

 

『ねぇリョウ~? どうする? ここでもう()っちゃう~?』

 

『今やるなら、私の周りにいる三人(アキトたち)を足止めできるわよ?』

 

『………………』

 

 ユキヤによって繋げられた直通(プライベート)通信に、リョウは黙り込みながら前を歩くレイラ機を見る。

 

『もしもユキヤの狙撃が上手くいかなくとも、リョウの機体にはアサルトライフルにミサイルポッド、そして近距離用の斧でさらなる追撃を行う』という手もあるのだが……

 

 実はリョウたちも、『鬼教官』と化したスバルの拷問訓練をほかのwZERO部隊の皆と受けていた。

 

 というか賭けに負けて受けさせられていた。

 

 最初、リョウたちは『軍のパターン化訓練』をバカにして断っていた。

 なにせ彼らは数年間、自力でアンダーグラウンドと生半可な戦場より過酷な環境を生き残ったのだ、今更『訓練を受けろ』と言われて『ハイそうですか』と素直に受けるタイプではないのだが、リョウの『そいつらが俺とサシで勝負して勝ったらいいぜ』の一言で事は起きた。

 

 スマイラス襲撃時のアヤノの話と毒島にスバルのことを事前に聞いたことから、アキトとスバルを相手にするには分が悪いと思ってリョウが指定したのはワイバーン隊の生き残りで、リョウは汚い手を使う気満々だった。

 

 いかに軍の訓練が実戦で役に立たないことを証明するために。

 

 そして、そのリョウはよりにもよって自分が考えていた『勝てばいいんだよ!』精神で、生き残りに負かされた。

 

 リョウの『て、テメェら! 砂や石を使うなんて汚ねェぞ!』負け惜しみに対し、ワイバーン隊の中でも一番ヒョロヒョロしていそうなタカシは『方法など別に決めつけられていないかったじゃん』と言われ、『グゥ』の声も出せなかった。

 

 実際に出た声は『ングゥ』である。

 

『『リョウ?』』

 

 ユキヤとアヤノの声でリョウはハッとして、頭をガシガシとする。

 

『いや……不意打ちなんて男らしくねぇよ。 するなら正々堂々で、鼻っ柱をぶっ壊してぇ。』

 

『あ、そ。 リョウがそう言うなら、またの機会にするよ♪』

 

「……了解。」

 

 アヤノはどうでもよさそうなユキヤの返事に、不満そうな答えを送ってから自分も移動をし始める。

 

 ピピィー♪

 

 そんなアヤノの機体に、ユキヤとは違う相手から通信が入ってくる。

 

「(また直通通信? ……今度の相手は、アイツ(アキト)?)」

 

 アヤノは予期していなかった通信とその相手に困惑しながらも、通信を受ける。

 

「なによ? これから移動するところだったんだけど────?」

『────香坂准尉、単刀直入に聞こう。 先日スマイラス将軍を襲ったのは君たちか?』

 

「ッ。」

 

 アキトの確信めいた言葉に、アヤノは眼を見開いて言葉をなくす。

 

 忘れがちだが15歳のアヤノはその年からか感情的になりやすく、すぐ顔に出てしまう性格をしていた。

 

 そして彼女の訓練相手をレイラがする予定だったのだが、上記でも記入したように彼女にはとてもそのような時間はなく、代わりにアキトが自分から立候補した。

 

 一戦交えた後に、全く容赦のないアキトに腕と腰を痛めたアヤノの相手は、元々軍人であるサラやオリビアが交代制でするようになったが。

 

 余談だがそんなアキトに『なんで加減しなかった?』という問いに、彼は『戦場で男女とかは関係ないから』と当然のように答えていた。

 

 正論ではあるのだが、あまりにも彼の事実を淡々と述べる態度に、ケガ人であるアヤノはその日からさらに突っかかったとか。

 

『その反応を見ると、図星のようだな。』

 

「だ……だったら何よ?! 私たちを脅して、自分が助かるための捨て駒にでもするつもり?!」

 

『いや? 死ぬまでEUの軍に追われるようなことをした理由を知りたかっただけだ。 喋りたくなければ別に構わないし、これからの活動に支障がでなければ追及するつもりもない。』

 

「……いつ、気付いたの?」

 

『君との模擬戦の時から違和感はあった。 襲撃した奴と同じ動きをしたから、()()()()()()()だけだ。』*2

 

「な?! だ、騙したわね?!」

 

『人聞きが悪いな。 カマをかけただけだ。』

 

「同じじゃん?!」

 

『そうキリキリするな。 カマキリだけに。』

 

 「意味が分からないよ?!」

 

『知らないのか? カマキリの前足はカマのような形をしている。 それと勘違いしやすいがカマキリは鳴き声が────』

 「────そうじゃない!」

 

『そうカッカしていると疲れるぞ────?』

「────だ・れ・の・せ・い、と思っているのよ? ああ、もうー!」

 

 それを最後にアヤノは通信を切ってプリプリしながら森の中を移動していくと────

 

 ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルヒュル~。

 

 ────笛のような音が頭上からしてきたことに、リョウたちやレイラはハテナマークを浮かべる。

 

「司令、シートハーネスを付けなおしてくれ────」

「────シュバールさん────?」

「────砲撃が来る。」

 

 ドォドォドォドォドォドォドォドォドォォォォォン

 

 数々の爆発が周りで起き始め、森は地震が起きているかのような振動と共に木々がさく裂していく。

 

 

 ……

 …

 

「え? え? え?」

 

 ヴァイスボルフ城の作戦室に映し出されているモニターに赤い色が点滅し始め、クラウスは訳の分からない表情を浮かべる。

 

「ワイバーン隊の近くに熱源多数!」

 

「ちょちょちょちょっとサラちゃ~ん? 何が起こっているの~?」

 

「恐らく、敵の砲撃です!」

 

「うぇ?! ……マジで?」

 

「マジです!」

 

「どこから撃って来ているの? 逆算できない? というか、早すぎるじゃん。」

 

「高々度観測気球が雲に入りましたが、リアルタイムデータ消失前の情報を使います! 場所は……東北東500キロ?!」

 

「「「ハァァァァ?!」」」

 

 オリビアの驚く声にクラウスたちが呆気に取られる声を同時に出してしまう。

 

「オ、オ、オリビアちゃ~ん? さすがに計算間違いじゃないの~?」

 

「い、いいえ! 爆発の規模などから推測するに、敵は超長距離砲を使っていると思われます!」

 

「……敵さんは、本気を出したっていう訳ね……(なんでよりにもよって姫さん(レイラ)が出るときなんだよ。)」

 

 クラウスはキリキリと痛み出した胃を鎮めるために、今度はハチミツジンジャーティーで胃に流し込む。

 

 「あ、うめぇ。」

 

 

 ……

 …

 

 

 スバルたちは砲撃の着弾範囲から逃れる為、北西にあるユーロ・ブリタニア勢力圏内にあるスロニムへと向かっていた。

 

 ワイバーン隊は移動中、待ち伏せていたかのようなユーロ・ブリタニアのナイトメア部隊に襲撃される中でアキトはそう思いながら、アレクサンダタイプ01()で敵の二足歩行戦車のリバプールを次々とリニアアサルトライフルで撃っていきながら単身で前進していく。

 

「(この機体、やはり制御が難しいな。)」

 

『亡国のアキト』で、アキトは改良型があるにもかかわらず初期型のアレクサンダを使っていたが、上記でも触れているように彼の機体は()()手を加えられていた。

 

 アンナたち技術部はナルヴァ作戦で彼の実戦データを解析した結果、アキトが()()()()()()という趣向に合わせて、直前までスバルが余っていたアレクサンダのパーツを使って開発していた機体をアキト用に調整したのがアレクサンダタイプ01改であった。

 

 その結果、『昆虫』をコンセプトにアンナのおかげで元々高い出力毎重量を持っていたアレクサンダは、更に高い追随性を発揮できるように関節部の強化や駆動部に細工をして、運動性を向上させられていた。

 

 常人からすれば『ピーキー』どころか『敏感過ぎる』レベルまで達しており、御し難いモノと変わっていた。

 

 パイロットとしてそれに乗ったアキトでさえも、最初は制御に苦労していた。

 

「(これをスバルは操縦するつもりだったのか。 兵士としてだけでなく、パイロットとしての腕もかなりいい……となると、元は軍属だったのか? だが司令(レイラ)によると奴の歳は俺たちと変わらなかった筈だ……)」

 

 アキトは考えながら人型とインセクトモードを器用に切り替えながら敵のリバプールを撃墜していくと、今度はサザーランドが出てくる。

 

 が、前回のナルヴァ作戦でいとも容易くサザーランドを翻弄していたアキトに、今は強化&チューンされたアレクサンダタイプ01改の前では足止めにならなかった。

 

 一機のサザーランドをライフルで足のランドスピナーを撃ち抜きながらアキトは対KMFトンファを左手で装備し、左腕に近接用ブレード「ウルナエッジ」の代わりに装着された兵装で膝を着いたサザーランドのコックピットに()()を当てて()()抜く。

 

 ドォン!

 

 その隙を狙ってか二機目のサザーランドがアキトの背後に森の中から飛び出るが、アキト機は振り向きざには持っていたトンファを投げる。

 トンファの尖った部分がサザーランドの軽金装甲を貫き、そのままコックピットへと到達する。

 

 アキト機が最初のサザーランドを打ち抜いたソレ(装備)が敵機から抜かれると、巨大な薬莢が腕から射出される。

 

「(この『パイルバンカー』という兵装も扱いにくいが……気に入った。) フ、フフ……フフフフフフフ。」

 

 アキトの口からは、普段の彼とは程遠い不気味な笑いが出る。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ワイバーン隊たちは遠距離からの砲撃から逃れるために近くのユーロ・ブリタニア領、スロニムへと()()()()()入っていく。

 

 一昔前のデザインで見栄えの良い西洋建築に、急遽増える移住者に対応するための集合住宅団地と、所々が現代化のおかげでちぐはぐだったそこは不気味だった。

 

「(おかしい……これだけの規模ならば、避難を開戦初期から始めてもまだ住人や敵がいてもおかしくない筈。)」

 

 その不気味な印象を与える原因とは、人影が一つもなかったこと。

 

 ブリタニアのバックアップがあるからか、有能な者たちが指揮を執っているからか、ユーロ・ブリタニアの戦線は強固で、wZERO部隊が発案されるまではジリジリと日々進軍しては領地を拡大化していき、それによりスロニムは最前線から離れている。

 

 ユーロ・ブリタニアの勢力圏内で、例えwZERO部隊が来たとしても単純に外の森や草原で立ち向かえばいいだけで、一般人を都市から完全に退去させるほどではない。

 

「……小型無人機を出します。」

 

 レイラ機のバックパックから、スバルの機体から拝借無断で借りた小型無人機たちが『ブゥーン』とかすかな音を出しながら上空へと飛び立っていく。

 

 先ほどの砲撃と襲撃時より高まる緊張感の中、スバルは汗をかき始める。

 

「(さて、と。 ここまでは大体『原作(亡国のアキト)』通りだが……いつアシュラ隊の襲撃は始まる?)」

 

 スバルがここで思い浮かべるのはユーロ・ブリタニアの聖騎士団と引けを取らない、一騎当千の精鋭部隊の『アシュラ隊』。

 

 部隊長(と呼ぶよりは切り込み特攻隊長)のアシュレイ・アシュラは接近戦を好み、それを反映してか部隊の全員がグロースターの二刀流カスタム機────『グロースター・ソードマン』を乗り回している。

 

 基本的に、この時期のコードギアスで一般的に流通しているナイトメアは射撃戦などを想定されて設計されている。

 たとえカスタム機といえども、軽金装甲が少しだけ厚くなった気休め程度というのに接近戦を行うのは、命知らずか相当腕や技量に自信のある者たちだけである。

 

 つまり、レイラ機やユキヤ機のように遠隔からの操作や攻撃手段を持つ機体たちとは、遮蔽物も多く近距離や中距離戦になりやすい市街戦も踏まえると、武装的に相性が悪い。

 

 それに、実はというとwZERO部隊の作戦は()()()によってユーロ・ブリタニアのシンにバレている。

 

「(先日ヴァイスボルフ城に着いてから色々と回っている時に見て見ぬふりをして念のために傍受装置の設置をしたが、やはり原作通りだったことで安心した────)」

 

 ────バババババ!

 ボォン!

 

 遠くから建物などに反響した銃声と爆発でスバルたちは身構える。

 

「ドローンがやられた! まさか、待ち伏せ?!」

 

「(始まったか!)」

 

 スロニム各地でアシュラ隊のグロースター・ソードマンが先ほどの音を開戦の合図と取り、一気に先行していたドローンたちを強襲する。

 

 無論、ドローンたちは近づかせないために銃を撃つが、アシュラ隊は怯むどころかさらに加速し、剣で次々と撃破していく。

 

 最初は20機以上いたワイバーン隊も先の砲撃でドローンを何機か消失しているが、アシュラ隊の8機に対して交戦開始から数分足らずで9機にまで減らされた。

 

「ドローンは、あと数機だけ?!」

 

「……」

 

 スバルの耳にレイラの声はすでに雑音化しており、全身全霊で自分を襲うアシュラ隊員からできるだけ中距離戦の維持の為、『交戦』より『回避』に専念していた。

 

 ここでアレクサンダに付け足したい情報が一つだけある。

 

 それは────

 

 

 


 

 

 ────毒島並の腕前をした相手に立体機動に使えるスラッシュハーケンがないなんて、どれだけテンパっていたんだ過去の俺ぇぇぇぇ?!

 

 相手のグロースター・ソードマン(もう長いからこれからはソードマンに略)ってばマジ気迫が怖いし半端ないし、まるで猛獣を相手にしている気分でもうヤダ吐きそう

 

『シュバールさん?!』

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 何イサムたちのところに逃げているんだ俺のバカァァァァァァ?!

 もっと敵がいるんやんけぇぇぇぇ?!

 

『スゲェ!』

『狭い横道を使っている?!』

 

 緒方氏声風にマイハートは“破滅じゃぁぁ”叫びがぁぁぁぁぁぁ!

 ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!

 

『時間に意味はない』を使えだと?

 ごもっともな指摘をありがとうyo!

 

 もしこれが俺だけならバレない程度に使っているだってばヨヨヨ~!

 

「赤いナイトメア?! それに、あれは日向中尉?!」

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!?!?!

 

 今度はアキトVSアシュレイの激しい攻防の現場ばばババばば?!

 誰かタシケテぇぇぇぇぇぇl!

 

『フフ、フフフフフフ────!』

「────これは、日向中尉からの通信────?」

 

 死ね

 

 ────な、なんだ今のは?

 まるで、頭に声が直接────

 

『────さぁ、殺せ! 殺せよ! さもなくば────!』

 

 ────死ね

 

 う?!

 

 “────目の前には地面に横たわる、無数の亡骸────”

 

 ナンダ、今ノハ?

 

 “────わが子を抱いてせめて見ないようにと、全身丸焦げになった母が丸焦げの子供の目を覆う────”

 

 ナンダ?

 ダレダ?

 

 “────両手を大きく広げてただただ笑い(叫び)ながら飛び降りる────”

 

 ダレナンダ、コレは?

 

 死、死、死、死、死、死、

 

 コレはオレジャナイ────

 

 ────死ね。

 

 俺は────

 

 

 オレは────

 

 

 ────プッツン。

 

 「オレは! 死ぬわけにはいかないんだ!」

 

 そうじゅうかんを にぎるてに ちからを いれた。

*1
101話より

*2
98話より


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