小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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次話です、お読みいただきありがとうございます! 楽しんでいただければ幸いです! m(_ _)m


第108話 ジプシーライフ(仮)

 スバルたちは川が流れる近くの森へと、老婆達が生活している大型の馬車を停めているところまで連れられてきた。

 

「ちょっと待て婆! 俺たちは一人で着替えられる────!」

「────そんなに照れると余計に気まずいよ、リョウ────」

「────ユキヤはなぜ平然としていられる?」

 

「え?」

 

「「「“え”、じゃねぇよ。」」」

 

「「ええのぉ~♡」」

 

 キョトンとするユキヤにリョウ、タカシ、イサムのツッコミがハモり、このやり取りを見ていた老婆たちがほっこりしながら素直な感想を口から出す。

 

「外に出て行ってもらえるか?」

 

 そんな老婆たちに、スバルの言葉によって彼女たちの態度は急変する。

 

「なんじゃいおぬしら?! 減るもんじゃあるまいし、とっとと着替えな! 日が暮れちまうよ?!」

 

「「「ええ~~~~~。」」」

 

 老婆二人が激しい抗議(?)をしたことでリョウ、タカシ、イサムへと注目が行っている内に、ユキヤとアキトは素早く着替えていった。

 

 そして────

 

 

『や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 ────隣の馬車から、アヤノの(珍しく乙女な)叫び声に男性陣が全員ピタリと動きを止めては耳を澄ませる。

 

『いいじゃないか! そぉ~れい!』

 

 

『やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!』

 

 男性陣はさらに聴覚を研ぎ澄ませるため瞼を閉じる。

 

『ほれ! 下()脱ぐんだ、よっと!』

 

 

『キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ?!』

 

「「「「「…………………………………………」」」」」

 

『おおお! こりゃ流石に普通サイズだったら窮屈そうだね!』

『私の踊り子時代の服なら何とか合うと思うかね?』

『ギリギリなんじゃね? ほれ! その立派なモノを腕で隠すな────!』

 

『────ひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん?!』

 

「「「「「…………………………………………」」」」」

 

『こりゃあ驚いた……入るかな?』

『布を巻けば何とかいけるんじゃな~い?』

 

 

『ヤダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 

「「「「「…………………………………………」」」」」

 

 リョウたちは『聞かなかったことにしよう』とアイコンタクトをお互いに送っては全員が頷く。

 

 一人の()()()()()()着替え終えた例外を除いて。

 

「(なんというウス=異本風の叫び……ムォホホホホホホホホホホホホ♡ ええもん聞いたのぉ~♡)」

 

 

 

 ワイバーン隊はあからさまに元気100%になっている老婆達の様子から、さすがのレイラも気付いたが、『働けば衣食住は確保できる』という事で取り敢えず世話になることに異存はなかった。

 

 ワイバーン隊の皆は肌にピチピチしたパイロットスーツから、民族衣装のような服に着替えさせられていた。

 アキトやイサムにタカシはボタンを外したままにした、深緑のシャツに灰色のズボンということでまだマシなほうだった。

 

「お前、やっぱり腹筋が割れているんだな?」

 

「……ああ。」

 

「どうやったらそうなるんだ?」

 

必死(生き残る為)の筋トレ。」

 

「「(“必死の筋トレ”でそうなる、普通?)」」

 

 リョウ、スバル、タカシ、イサムの四人は、ゆったりとしたぶかぶかの半ズボンに上は袖なしのベストで、前を止めるものがないのでほとんど裸同然の状態だったので、余っていたベルトやヒモで無理やり前を閉めていた。

 

「ふぅ~ん? スースーするけれど、これはこれでスッキリするね♪」

 

 ユキヤは袖なしボレロチョリにスカートと、明らかに女性が着るものだったが意外と気にしている様子はなかった。

 

「……なんか露出度が一番高いような気がする。」

 

 アヤノはユキヤと似たボレロチョリ(半袖タイプ)に二重スカート……といえばそれまでなのだが、どういうわけか彼女のボレロチョリは腰やへそに胸元が出ていた。

 

『踊り子の服』らしいので、当然と言えば当然なのだが。

 

「えっと……これで合っているのでしょうか?」

 

 そしてレイラはチューブトップにボディス、踝近くまで伸びているスカートをはいていた。

 

 アヤノほどではないが肩や鎖骨を露出させたそのコーデが、彼女の長い金髪とボディラインを強調させていたのは“見事”としか言いようが無かった。

 

「さぁて! アンタたちには()()やってもらうよ!」

 

「「「「「「グフフフフフフフフフフ……」」」」」」

 

 余談であるが、その言葉を聞いたスバルは『身のキケーン?! 身のキケーン?! 身のキケーン?!』とどこぞの大男のような言葉を思い浮かべたそうな。

 

 

 

 


 

 

 

 いや~、数年前からほぼ自給自足をしていたリョウたちにアキトたちが、様々な家事を手分けして行うのは予想内だな。

 

「おや? アンタ、えらく手馴れているじゃないか。」

 

「ええ、まぁ……」

 

 従者見習い設定がここでも活かせれるとは、自分でもちょっとびっくりだよ。

 あとセクハラを避けるのは戦闘するよりマジ疲れる。

 

「……………………」

 

 (スバル)と老婆がチラッと見たのは、今にでもキノコが生えそうなほど座り込んで落ち込むレイラだった。

 

 それは無理もないだろうさ。

 レイラにとって体験したことはおろか、過程を想像でさえもしたことがないものばかリで明らかに不慣れな様子だった。

 

『ニンジンを皮ごと&サイズがバラバラのまま切る。』

『お皿をいっぺんに持ち運ぼうとしては落ちそうになったお皿をキャッチし、他をすべて落としてしまう。』

『ワインの入っている箱を勢い良く持ち上げ、重さにびっくりして思わず箱ごと転倒してしまう。』

『薪割りをしようと斧をへっぴり腰のまま振るうと、斧の重さに後ろへと倒れる。』

 

 などなどと、他の者たちはギョッとしていたが、素直なアヤノは『うぇ?!』と意味不明な言語を出しながらドン引きしていた。

 

 そうして周りからは『何かほかに出来る事を探してくれ』と、遠慮がち(遠回り)に言われていた彼女だが……

 

 う~む、アンジュやユーフェミアレベルだな。

 

 「根はいい子なんだろうけれどねぇ。」

 

 「それは俺も同感だ……」

 

 シュバ!

 

 老婆の忍び寄る魔の手を躱す。

 

「チッ!」

 

 フハハハハハ! 当たらんよ、この婆!

 

 俺はセクハラを避けてから憂鬱になっていたレイラに近づく。

 が、彼女は一向に見上げる様子はなかった。

 

「レイラ中佐、イスや食器の設置を手伝ってくれないか?」

 

「ぇ……あ……はい。」

 

 名前を呼ばれて頼みごとをされてから、ようやく彼女が近づいた俺を見る。

 うーむ、これはかなり堪えているな?

 

 ここの老婆たちは(セクハラ以外)、根は悪くない人たちだけどさ?

 

 “ぶつかってきた慰謝料として働いてもらうよ! その代わり寝るところと食べもの(とセクハラからの癒し)ぐらいは手伝ってもらうよ!”なんて要するに、“困っているアンタたちに衣食住(とセクハラ)を提供する代わりに働いてもらうよ”という意味だし。

 

 あと(セクハラ以外)、俺たちを孫や姪などと接するような感じだし。

 

(セクハラ以外は)留美さん(カレンママ)と似たような温かさを感じられると言っても過言ではない。

 

 セクハラ以外。

 

「ナイフやフォークを並べてくれ。 ペアずつでいい、一度にすべて持ってこようとするな。」

 

『シュバール~、シチューはどれぐらいまで煮込む~?』

 

 他の奴らと違っていまだにさん付けしないのな、ユキヤ。

 今更どうでもいいが。

 

「ニンジンが柔らかくなるまででいい。」

 

『はいよー。』

 

『シュバールさーん、ムニエルはー?』

 

 今度はアヤノか。

 

「こんがりと出来たらそっと裏返せ、跳ねる油に注意しろよ?」

 

『へいへーい。』

 

「……傭兵の割に、なんだか人を使うのに慣れている様子ですね?」

 

「ん? ああ、()()()従者見習いをしていたからな。」

 

「え?」

 

 嘘じゃないぞ?

『従者見習い』は休業中なだけだ。

 

 うーん……『留美さんやジョナサン様はどうしているのだろう?』と思って、ワルシャワで足止めされているときにサラッと使用人用の裏サイトをチェックしたが、(EUに流れる噂伝手だが)無事な様子でホッとした。

 

 ブラックリベリオン時に、留美さんが前もって渡した手紙通りに行動してくれたおかげ……と思いたい。

 

 「従者……見習い?」

 

 ん?

 レイラが何か言ったような気がする。

 

 

 

 


 

 なおスバルは知る余地も知らないが、原作でのシュタットフェルト家の使用人たちの大半は夫人が雇った者たちで、ブラックリベリオンでは屋敷を燃やされ、カレンが黒の騎士団の一員と発覚して以降は、彼女の実父はライバルにその地位をはく奪されて、あらぬ疑い&容疑で投獄された。

 

 だが留美の『リフレイン依存フラグ』をできる限り折るために、夫人の牽制や彼女の使用人たちの排除等を行ったことで、今作でのシュタットフェルト家は原作とはかなり違う立ち回りをしていた。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 ワルシャワ市に夜が来ると、老婆たちは夜を飲み明かすことなく、そのまま就寝の時間になる。

 

 口では『歳をとると冷え性が~』などと言っているが、実際は慣れないことに疲れた様子のワイバーン隊を気遣っての事だった。

 

「……?」

 

 ワルシャワから来る人工の光も徐々に少なくなった頃に、レイラは急に自分を抱きしめるアヤノの行動に思わず目が覚めてしまう。

 

 「お姉……ちゃん……」

 

「……」

 

 wZERO部隊に志願する時や自分の事を話す時にぼかしているが、アヤノには『ビーショップ(蜂屋)ロングレイ(長光)』や日本を彼女に話した祖父以外に、二つ上の姉が()()

 

 過去形であるから察せる様に、姉は既に故人。

 

 そして彼女が何故、着替えさせられる時に着ていた服装を無理やり剥ぎ取られることに、過激なまでのリアクションを取ったかにも関係している。

 

 アヤノの姉は彼女と違い、家事全般がダメであった上にアヤノより小柄な体格の持ち主だった。

 故に二人はよく『家事が上手い(アヤノ)とどんくさい()』と間違われていた。

 

 だが、それでも姉は強制収容所でも何とか幼いアヤノを養うために、()()()稼業に手を出した。

 

 その稼業とは『娼婦』。

 

 そして流石アヤノと姉妹とのことで、()()()系の趣味を持つ者たちに受けが良く、かなり稼いでいた。

 だがそのことから、他の日系人たちには妬みや嫉みを買い『裏切り者』と陰口をたたかれ、ついには()()()使()()()()()()()と思わせる為に()()()()()な嬲り殺し方をされる。アヤノはこの犯行をEUの者の所為と未だに思っていた。

 

 このことはレイラは勿論のことだが、出会う前の一連の出来事なので、長く一緒にいるリョウやユキヤでさえも知らない。

 

 そして人に甘えるのをやめたアヤノは恐らく、不器用なレイラの様子に自分の姉を重ねたのだろう。

 

 立派に見えても15歳な彼女(アヤノ)、時々人肌が恋しくなってもおかしくはない。

 

 「んふぅ……」

 

 現にレイラがアヤノの頭をなでると、彼女は満足そうな息を出しては安心したかのように寝息を出し続けた。

 

 

 目が覚めてしまったレイラは、ブランケットをアヤノにかけ直してからショール(肩掛け)を借りて寝床にしている馬車の外へと出る。

 

「「眠れないのか/ませんか?」」

 

「あら……」

 

 寝静まった夜に、意外な二人が目を覚ましていたことにレイラはびっくりした。

 

「そういう貴方たちこそ。」

 

 レイラがそう言いながら足を運ばせたのは、近くの川でナイトフィッシングをしていたスバルとアキトだった。

 

「……? シュバールさん、何だか元気ない様子ですが?」

 

「老婆の者たちが添い寝しようとしたので逃げていました。」

 

 尚スバルに逃げられたせいで、添い寝の標的は原作通りに(寝ながら訳が分からないまま苦しむ)リョウとなってしまっていた。

 

「中尉は?」

 

「俺は……目が覚めてしまった。」

 

 そういうアキトは殆んど毎晩、自分の兄の事を夢に見ていた。

 

 一族の集団自殺を生き残った自分に、『死ね』と宣言される夢を。

 

「座っていいですか?」

 

「「どうぞ/好きにしろ。」」

 

 スバルとアキトがいる川沿いの近くに、レイラがちょこんと座る。

 

「……私、こんなにも『何もできない』なんて知らなかった。」

 

「……………………」

 

あいつら(リョウたち)俺たち(ワイバーン隊)は育ちが悪いから、身に付けるしかなかっただけです。」

 

「それって……もしかして『慰め』のつもりですか?」

 

「いいえ、俺は中佐に事実を言っただけです。」

 

 アキトの、なんの捻りもない+ドライな返しにレイラは更にショボーンとする。

 

「……アキト、言葉が足りなすぎるぞ。」

 

「え?」

 

 そこに、まるでアキトの弁解をするかのようにスバルが口を開けた。

 

「そうか?」

 

「ああ。 せめて“今まで必要が無かったからしょうがない”、と言え。」

 

「少し考えれば、誰でもそれぐらい分かるだろう?」

 

「分からない奴もいるかも知れない。 だが分かっていたら、レイラ中佐は落ち込むことなどしない。」

 

「……それでも、やらなくて良いのならそれに越したことは無い。」

 

「(う~む、さすが『KYアキト』。 いや、『不器用でKYなアキト』か。)」

 

「司令、竿を持ってくれませんか? 俺は少し席を外します。」

 

中尉(アキト)は、どこに?」

 

「少々、ウォータークローゼット(WC)へ。」

 

「へ? あ。」

 

 レイラはアキトの言い回しの意味を知って赤くなり、手渡された竿に集中する。

 

「「………………………………………………」」

 

 川が流れる音以外、特に何もない静かな時間が流れる。

 

「……なにも釣れませんね。」

 

「もとより“釣れればラッキー”程度に始めたからな。 (本命はセクハラから逃げる為だが。)」

 

「………………………………………………」

 

「さっきの話だが……“何も出来ない”と言っていたが、それに気付いた時点で既に上出来だ。」

 

「?」

 

「人は、『自分が不足していること』を認めたがらない生き物だ。 ならば、あとは向上心のみだ。」

 

「それは誰からの言葉ですか?」

 

「俺だ。」

 

「……立派なんですね。 私たちとあまり変わらないのに、いろいろできて────」

「────()()()()()、そうするしかなかったからな。」

 

「え?」

 

「(そういや話していなかったっけ、日本でのプチサバイバル経験。) あの後は治安も悪く、インフラも何も────」

「────シュバールさんは、生まれが日本なのですか?」

 

「(そこからか。) いや、生まれは別だが育ったのは日本だ。」

 

 「道理で────」

 

 バシャバシャバシャ!

 

「────うわ?!」

 

 川からバシャバシャと水が跳ねる音がして、レイラの竿がグンと引かれて彼女は反射的に竿を上げようとする。

 

「ッ! そのままを維持しろ!」

 

「は、はい!」

 

「魚が疲れ始めたところで一気に引きあげる! …………今だ!」

 

 スバルの掛け声にレイラが竿を上げると予想通りに魚が釣り上げられては川岸でビチビチと跳ねる。

 

「……釣れました。」

 

「俺とは大違いだ。」

 

 スバルが見るのはウンともスンとも反応のない竿だった。

 

「レイラ中佐に出来て、俺に出来ないことがあったな? (『釣り』じゃなければ魚を獲れるが、さすがに今川に入るのはいやだ。)」

 

「……それでも、私は一人で生きていく力が欲しいです。」

 

「ならば今の状況はうってつけだったという事か。」

 

「そう、なりますか?」

 

「ここの人たちに頼めばいい、“自分も何かしたい” と。 口は荒いが、良い人たちだからな。 セクハラ以外。

 

「え、最後は何て言いましたか? 上手く聞きとれ────」

「────こっちの話だ。 魚は俺がさばいておくから、レイラ中佐は明日に備えてくれ。」

 

「あの!」

 

「ん?」

 

「えっと……おやすみなさい、シュバールさん。」

 

「レイラ中佐もな。」

 

 レイラがその場を去るとスバルは魚を────

 

「────何でここにお前がいる?」

 

「(エ。)」

 

 ここで聞くはずのない声に、スバルが振り返るとオルフェウスがいた。

 

≪何でここにオマンおるねん?≫

 

「何を言っているんだお前は?」

 

 日本語で話しかけたスバルに、オルフェウスは困惑するような表情をした。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 夜が訪れたユーロ・ブリタニア領内にあるシャイング家の屋敷では、シンは昼から着たままの純白スーツのままでワイングラスを持ち、バルコニーで静寂な夜空を見上げながら、その昼を思い出していた。

 

『この生地、ステキ~!♪ お義兄様はどちらがいい?』

 

 シンといずれ結婚するときの為に仕立屋を呼んで、ドレスの生地に悩みながらも幸せに満ちた笑顔でキラキラした義妹のアリス・シャイングと、彼女とシンのやり取りを温かく見守る義母のマリア・シャイングを。

 

「ッ。」

 

 彼が思い出しながら暖かいものを胸に感じて微笑むと同時に、頭痛が走ったかのように眉間にシワを寄せて、昔の事がフラッシュバックする。

 

 シンは確かにアキトの兄である。

 

 ()()()

 

 実はアキトの父親はシンとは違う父親であり、それを知った父は一族の当主である特権で、『粛清』を名目に母の前で浮気相手を処刑すると彼女に宣言した。

 

 するとどうだろう? アキトとシンの母親は『自分は騙された』と簡単に浮気相手を売り出し、浮気相手は『弱いところを見せられて誘惑された』と互いに擦り付けあいを始めた。

 

 浮気相手が処刑されてから、母親は何もなかったかのように振る舞った。

 

 ()()()()

 

 そこからシンは、両親が互いを苦しめ合う行為や様子を幾度となく見せられていくうちに、その時に感じた絶望を世界の所為と考えるようになった。

 

『このような歪な世界は苦しみしかない』、と。

 

 彼はある日、自分の父親に問いをした。

 

『愛している者を、何故ああも苦しめることが出来るのか』、と。

 

 すると父親は豹変したかのように、シンに襲い掛かり、シンは逆に彼を斬首した。

 その時どこからともなく()()()()()()()がささやいた。

 

『この世界は歪で不完全で、生きている者たちに苦しみしか与えない。 ならば、どうするべきか自ずと分かるだろう?』

 

 シンはその時から『愛している者たちを救う』という行為を行動に移した。

 

「(そうだ。 その為にも『馬車』は必要だ。)」

 

 コン、コン。

 

「入れ。」

 

「失礼します、ヒュウガ様。」

 

 部屋のドアをノックしてから入ってきたのは、ジャンだった。

 

「キングスレイ卿から、“アシュレイ・アシュラを貸してほしい”という要請が────」

「────“貸してほしい”と来たか。 私を試しているのかな?」

 

「如何なさいますか?」

 

「“承諾した”と返事を返せ。 それと、“『アフラマズダ』も貸す”と。」

 

「ヒュウガ様、あれは────」

「────恐らく、キングスレイ卿は()()()()にアシュレイを使う筈だ。 そしてそれに対応できるのは『ハンニバルの亡霊』どもしかいない。 『アフラマズダ』ならいい程度に時間稼ぎができるだろう。」

 

「……」

 

「どうした、ジャン?」

 

「いえ。 それとは別に、この屋敷を嗅ぎまわるネズミの件ですが────」

「────放っておけ。 そちらは()()()()()()。」

 

「では、失礼します。」

 

 ジャンが退室するとシンはワインを飲み干し、別室で眠っている家族同然の二人を思う。

 

「(そうだ、この気持ちなど一時だけの気休めだ。 だが救済すれば永遠のモノとなる。 ネズミの狙いは義妹(アリス)義母(マリア)だろうが、何を企んでいようが関係ない。) フ、フフ……フフフ……」




勢いのまま次話を書いてきます!

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