ここからはスヴェン視点に戻ります。
お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!
誤字報告、誠にありがとうございます船の名前さん!
うおおおおおおおおおおお!
ちゃんとガラスが当たって良かったぁぁぁぁぁぁ!
セェェェェェェフゥゥゥ!!
「すまない、毒島。 迷惑だったか?」
「いや? だから私は“撃てるのならな”とそこの馬鹿に言ったのだ。」
俺は
何せ俺はバイクの運転に集中するために耳と気配察知能力が抜群の毒島を乗せてかっ飛ばしたと思ったら『いたぞ』の一言だけ言って急にバイクから飛び降りるわ、流石にそのまま他人のバイクをほっぽり出すわけにもいかないわ、ちゃんと機能するバイク駐車場に止めて全力疾走するわ、やっと追いついたと思ったら毒島が銃を持った半殺しの奴に撃たれそうになっているわで地面に落ちていたガラスの破片を思わず手に取って投げたら奇跡的に当たったわ……
わははのわは~。
おおおっと、他人の前だ。
『人当たりのいい優男』の仮面を着用だ
「そこのお三方? レディ相手に銃を抜いたとなると、かなり酔いが回っているみたいですね? それも脅しではなく、発砲までして。 しかもそこの女性の服が破れていることを見ると状況は一目瞭然。 どうでしょうか? 双方、ここで見聞きしたことすべてを
「あ?!」
「ふざけるなよ! こっちはそこのイレヴンに半殺しにされたんだ!」
「訴えてやる!」
うん、俺もお前たちが怒ってもいいと思う。
多分、毒島が
俺もお前たちだったら訴えているが、そういうワケにも行かないんだよなぁ~。
ウ~~~~~!ウ~~~~~!
「「んな?!」」
「け、警察だと?!」
男三人は見るからに、音量が増していくサイレンに青ざめる。
「おそらくは発砲音を誰かに通報されたのでしょう。 銃さえ置いていけば、警察には貴方たちとは別方向を示しておきます。 “顔も暗くて見えなかった”、ということも────」
ガシャ!
「────逃げるぞお前ら!」
男たちは体の傷が嘘かのように、その場からたちまち逃げていく。
ああああ、良かったぁぁぁぁ。
ブン!
「ぁ」
っておいぃぃぃぃぃ?!
最後の野郎、逃げ去り間際に石をアンジュ目掛けてブン投げやがったぞ?!
アンジュは一瞬恐れたような顔をして、ソレがカノジョとはチガウダレかとカブル。
『自分を“日本人”だと言い切りやがって! 日本なんて国はもう無いんだよ!』
『同じ道を通っているってだけで生意気なんだよ、このイレヴンが!』
『そうだオレ、その昔に石を投げて怪我させるバツがあったと聞いたぜ! こいつの赤い髪の毛、良い的になりそうだよな────?!』
「(────おおおおおおおおおおお!!!)」
俺は考えるより先に走っていた。
とりあえず
毒島もまさか相手が負け惜しみに石をアンジュリーゼに投げるとは思わなかったのか、俺のいる方向へ振り向いていた為に投げられた石が自分の横を素通りするまで気が付かなった。
もう
石はそのまま綺麗にしかめながら目をつぶるアンジュの顔へとまっすぐ飛ぶ。
バキッ!
石がアンジュリーゼに当たる直前、俺はバイクの手袋をしたままの拳で横へと
その反動で、俺の身体が背後にいるアンジュのほうへと後ずさり、
…………………………思わず身体が動いちまったよ。
「失礼しました
そして俺はこの『パーフェクト従者見習い』の口と顔が憎いでござる。
取り敢えず
「……………………あ、はい。」
「ブフッ! も、もう駄目だ。 ブァハハハハ!」
呆けていてポーっとしていたアンジュリーゼがやっと反応し、毒島がケタケタと笑い始め、俺は仮面を再度外してから彼女を全力のジト目で見る。
「おい、笑うことはないだろ毒島?」
「スヴェンのその、振る舞いがっ! フハハハハハ! お前の
「この
「しかも一人称が変わるその徹底さもだ! フフフ……そうだな、世間でいう“ぎゃっぷかん”という奴だ。」
「そういう毒島もな。」
何せオフでは『凛とした貴族お嬢様』を気取っているのに、いざ夜になると『自ら不法行為を行っている者たちと荒事になるよう誘導させてから相手をなぶるドS』に豹変するからな。
完全に性転換した(&性格が変わる)コウモリマンだ。
おかげで俺のもう一つ作っていた『裏の顔』の
「それとさっきのサイレンはなんだ? 本物とは少し違ったが────?」
「────時間差でセットした携帯を、反響の良い横道に設置しただけだ。」
警察とかのサイレンって、人間の耳がとらえやすい波長になっているからな。
携帯のスピーカーの音量を
いや、聞こえてしまう。
早い話が『早とちり』と『精神の乱れ』を利用した
「……な、んで。」
「「ん?」」
さっきまで顔を俯いていたアンジュリーゼから声が出る。
「なんで、私を助けた……のですか?」
アンジュリーゼが口を開けたと思ったら、そんな問いが来た。
いや、『なんで』って言われても……
『後味が悪い』?
『責任感』?
そのどれとも微妙に違うな。
「…………やせ我慢なら、よせ。」
「え?」
「度が過ぎるのは、見ているだけで辛い。」
本当のところ、多少とはいえ縁を繋いだ奴が近くで自傷行為に走るのが嫌だった。
原作でのカレンがなぜあれほどブリタニアを憎むのかも、『虐め』と言う言葉が生温いほどの仕打ちを彼女は経験しそうになっていた。
俺とナオトさんが割り込んだから良いものの、日本侵略後にずっとアッシュフォード学園に通うまで
それ以前に原作開始で
降伏したのは割と早かったけど戦後の日本、治安機関が武装解除されてブリタニアが本格的に基盤を固めるまでアニメとかじゃ絶対に描写できないような、一時期的に全土が無法地帯だったからな。
それほど、シュタットフェルト家に引き取られるまで過酷な生活を強いられていた。
……取り敢えず、
そんなことを黙って考えていると、毒島がどういう訳か笑みを浮かべて口を開けた。
「今ので分かったかもしれないが、彼は見た目と口調に反して
いや、なに急に仕切っているんスか毒島さん?
そもそも俺は『優しすぎる』とかじゃなくて、『生き残るため』の布石を打っているだけだからな?
恩を売ればそれがいつ、どこで役立つのか分からないし、原作メンバーと関わりを持ってしまったのならいっそのこと行動の調整もある程度出来るようにしておける。
……天邪鬼であるミレイ以外は自信を持って言える。
言いたい。
頼むから言わせてくれ。
打算ありまくりだかんね?
アリアリだよ?
アリアリアリアリアリーヴェデルチ~。
全ては俺が生き残るためだ。
「そうだろう、昴? ああ、表の世界では“スヴェン”と名乗っているのだったな?」
おいいいいいいいいい?!
毒島の奴、
「……表の、世界?」
「そうだ。 アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ、確かお前の身体
「ッ!」
アンジュリーゼが毒島の声に身構え、上着をギュッと掴む。
無理もないが。
でも毒島はこの会話をどこへと向かわせている?
「そして学園での君の行いはかなり酷いらしいな? 心のゆとりがないからか? それともかつて友や学友、自分を中心に回っていた社会にまで見限られて血迷っていたか? それらすべては君が、『血が混ざっている』だというだけで手のひら返しの結果だ。 そんな
「ッ」
アンジュリーゼがヒュッと息を吸い込む。
………………いや、マジで彼女はこの会話でどこに行こうとしているの?
「別に何を言ってもいいぞ? ここには私たちしかいない。 “反逆罪だ”とか、“不敬だ”とかで、お前を告発や批判する者はいない。」
あ。 もしかして毒島の奴────?!
「────ああ、ちなみに昴は『裏の世界』、つまりは陽の当たらない世界で『情報屋』として活動している。
お得意先にはブリタニア人は勿論の事、私のように
つまりはだ、彼は殆どの相手に
さて、これを知った君はどうしたい?」
……………………………………どうしてこうなったし。
危うし俺の胃、誰か助けて。
ただいま土壇場のストレス留まりでゲロ吐きそう。