コードギアスで『新大陸』と呼ばれる大地は現在の『北アメリカ大陸』の事を指し、本来は『アメリカ独立戦争』が起きてアメリカ合衆国が出来ている。
筈だった。
コードギアスの世界ではブリタニアとの
13植民地政府を掌握しようとした革命派は後に処刑され、この世界での歴史書ではこの事件を『ワシントンの反乱』と記入されている。
今までの植民地の中でも地理、物資、気候、その他諸々の要素が豊かであるその新大陸をブリタニアはすぐに開拓していき、急激な近代化と今まで見たことのない程の移住をし始めた。
それから年月が経った今では大きく拡大化した帝国の『第二の本国』と呼ばれるほどで、実質上『帝国政府の中心地』となっていった。
グレートブリテン島のペンドラゴンが『歴史的な首都』と例えるのなら、新大陸のニューロンドン*1は『政治の首都』である。
そのおかげでニューロンドン付近の空域は厳しく管理されており、よほどのことが無い限り飛行の許可は出ない。
「ふむ……」
例外があるとすれば、“近くにあるノーフォーク軍基地に帝国のナンバーツーである宰相が新たな浮遊航空艦の試験飛行の要請をいれた”……とかになるだろうか?
帝国の腹黒ナンバーツーであるシュナイゼルはフクオカ基地の事変、そしてブラックリベリオン時でもアヴァロンの戦略的価値を感じて
「如何なされました、殿下?」
そんな
「ああ、なんでもないよ。 ところで、
「それが……内密に調査を進めておりますが、『
そう言いながら、カノンは薄いフォルダーをシュナイゼルに渡し、彼は少ない資料を漁る。
『ジュリアス・キングスレイ』。
シャルル皇帝陛下が直々に軍師としてユーロ・ブリタニアに派遣しラウンズであるスザクを護衛として付けた人物。
経歴等をパッと見れば非の打ち所がないありきたりな者だが、全体で見ると
そもそもその者が通った、あるいは住んでいた場所にそれとなく探りを入れればある者は『ボンヤリと知っている』と話し、ある者は『
だが極めつけは『シャルル皇帝直属の軍師』という肩書だった。
「(宰相である自分も耳にしたこともなく、帝国のデータベースでも見つからない、そして皇帝にしか知らない……これではコーネリアにマリアンヌ様の件に関して過去に調べて出てきた『プルートーン』とやらに似ている気配がする……) カノン、これ以上の調査は止めておこう。」
「よろしいのですか?」
「これ以上深入りするのは危険と判断したまでだよ。 あまりにもメリットがデメリットに見合わない可能性が出てきたからね。」
「畏まりました、中止を伝えておきます。 それと別の事ですが、マリーベル皇女殿下の騎士団とユーロ・ブリタニアの件で進展があったと聞いています。」
「分かった、あとで見ておこう。」
「……あの……」
ここで珍しくカノンが言い淀む。
「ん? 何かね?」
「本当に、マリーベル皇女殿下の『グリンダ
「ユーロ・ブリタニアはEUと小競り合いをし続けているからね、観艦式を終えたばかりの彼らにとってはまたとない
シュナイゼルは愛想笑いを浮かべるが、カノンは本能で悟っては唾をゴクリと飲み込む。
『
……
…
さて、少しだけ『双貌のオズ』で登場する主要組織の『グリンダ騎士団』に関して補足したいと思う。
『グリンダ騎士団』、それはコードギアスでは初となる『対テロリストKMF部隊』で皇位継承権第88位のマリーベル・メル・ブリタニアが創設者であり、現場の指揮官でもある。
これだけでも驚くべきことなのだが実はこのマリーベル、皇帝のシャルルに対して激昂から剣を抜いたことがあり、反逆罪とみなされて皇位継承権を剥奪されていた。
これは当時、彼女がまだ10歳の時にシャルル以外で唯一家族である母と妹をテロ事件により亡くし、その犯人を見つけるようにシャルルに悲願したが拒否されたからである。
それは少し(と言うかかなり)ルルーシュと似ているが彼と違い、皇位継承権の剥奪後にマリーベルは5年後に軍学校を卒業している。
そして彼女の才覚の一片を見たシュナイゼルの補助を受けて皇位継承権を返還されてその2年後にグリンダ騎士団を創設した。
同い年の17歳で似たような過去を経験しても、ルルーシュとマリーベルは異なる道を歩んだ。
ルルーシュはテロではなく、事件の扱い方で『父』を恨んだ。
マリーベルは父親の行動を恨むのではなく、『テロ』そのものを憎むようになった。
『グリンダ騎士団』に関してや詳細は今はここまでとするが、彼らや彼女たちの出番はもう少し先となる。
……
…
「(それにしても、『ハンニバルの亡霊』に『
シュナイゼルはユーロ・ブリタニアから取り寄せた資料を見ながらそう思い、とある文章が目を引いた。
「(“先回りされているような対応”、か。)」
それはシュナイゼルにとって、どこかユーフェミアの『行政特区』を思い出させていたが、そこで彼はチラッと別の資料に目を移す。
「それと、彼女はどうしている?」
「そうね……チーム内でもオドオドとした性格は変わらないらしいわ。 とても例の『アレ』の開発のきっかけになる子とは思えないほどに。」
「そうか。」
シュナイゼルの視線先には『チーム・インヴォーク』と書かれている書類。
そこには図面などが描かれた横には誰かの筆跡と思われる書類の写しと、ブラックリベリオン時にアッシュフォード学園から没収した一機のガニメデを映し出していた写真があった。
………………
……………
…………
………
……
…
EUでは、ユキヤは消されたレイラやスバルのIDデータを軍のサーバーにハッキングをして復活させて無事に戻れる目途がついていた。
「な?! 離せリョウ!」
そんな中、スバルは焦る声を出していた。
きっかけは『彼ら彼女らが無事に戻れる』と聞き、老婆たちが別れを嘆いた時にリョウが貰い泣きをして返した言動だった。
「なんだって!?」
「帰っちまうって言うのかい!?」
「皆、いなくなるのかい?!」
「「「うわぁ~ん!」」」
「グスッ……婆ちゃんたち、ボケて俺らのことを! グスッ……忘れんじゃねえぞぉぉぉ!」
老婆たちより豪快に泣いていたリョウがスバルを背後から羽交い締めにする。
「な、ちょ、おま────」
「────好きなだけ
「「「「「「グェヘヘヘヘヘヘヘヘ。」」」」」」
「待てリョウ冷静になれ今生の別かれでもないのだからこんなサービスはいらんというかお前ひとりだけでやれ────あ゛────」
そこから老婆たちが繰り出すジェットストリームアタック奇妙な笑いと手をワキワキさせる動作にスバルがキョドリながらも必死な(物理を含む)抗議から数時間後に、『別れる前の夜祭』が開かれることとなった。
ちなみにスバルがリョウによって動きを封じられている間の大婆は愉快そうに『ヒョッヒョッヒョ』と笑い、彼女の飼っていた白猫はいつになくスバルの足首に噛り付いていたそうな。
……
…
「いや、その……すまん。」
夜祭での老婆たちは様々な楽器を使い、殆どの者たちが老若男女に関わらず踊っている中でリョウは正座を強いられていた。
ゲッソリとしたスバルに。
「………………………………………………なら皆の相手を代わりにしろ。 俺は疲れた。」
ゲッソリしていても力強いスバルの言葉にリョウは青ざめてはコクコクと頷く。
「よ、よし来た! おう、婆ども! 俺と踊れ!」
スバルは焦りながらもホッとするリョウを見送り、近くの椅子に腰かけてため息を出しながら周りを見る。
「アンタもここを離れちまうのかい、オウル?」
すると丁度『
「ええ、急な出張が入って来てね。」
「そうかい……寂しくなるねぇ~。」
「(オルフェウスも多分、『オズ』の初めになるアルジェリア辺りにでも行くのかな?)」
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「(ん?)」
スバルは声をかけられ、見上げるとさっきまで老婆たちと一緒に踊っていたレイラを見てはキョトンとする。
「貴方が“疲れた”というのを始めて聞いたので。」
「まぁ……少し、な。 (あれ? もしかしてアキト、まだ離れていないのか?)」
「…………」
スバルがさっきアキトを探していたように、アヤノも彼を探していた。
理由はその日の朝、彼が言った言葉だった。
『
アヤノは最初、アキトがたまに口走る『
「ねぇユキヤ? アキトがどこに行ったのか知らない?」
「ん? ん~……なんかあったの?」
「ううん、何も。」
「……そっか。 あっちに行ったっぽいよ? 」
「サンキュ!」
そのままアヤノはユキヤの指さした方向へと駆け出し始める。
「(あれれれ~? アヤノがアキトの方向に?)」
それを聞いていたスバルがポーカーフェイスを維持しながら、内心でハテナマークを出す。
実はアキト、子供の頃に経験した集団自殺がトラウマでこのようなどんちゃん騒ぎや人との関わり合いを極端に避けていた。
集団自殺時も本来は年に一回の『一族全員が集まるパーティ』の日で、いつもはデザートに出される
これはアキトも例外ではなく、彼は母親に飲まされたが幸運にも当時のアキトは一番幼く、異物に敏感だった子供で昏睡状態のまま拒否反応が出てすぐに吐き出して難を逃れた。
次に彼の意識が戻り、周りを見るとさっきまで元気いっぱいだった彼の見知った親族や従妹たちに、母親の遺体だらけ。
生き残った彼はその後、兄であるシンに“なぜ生きている”という問いを掛けられてから『死ね』とギアスで命じられた。 幼過ぎて『死』の概念をよくわからなかった当時はどう思えばいいのか分からなかったのだが、アキトは成長するにつれて理解が深まると、楽しい事をアキトは心のどこかで集団自殺の夜を思い出してしまうようになった。
「(それを確かアキトはレイラにぶちまけて、そこからアキトの『あの時に死ねばよかった』に対してレイラが、『生きているから私たちは出会った』って返すんだよな確か。) レイラ中佐、アキトを知らないか?」
「日向中尉ですか? ……そう言えば見当たり────」
「────探してくれないか? 少し話たいことがある。」
「シュバールさんが?」
「込み入った話ではないから、忙しそうだったら別に良い。」
「……分かりました。」
「(ええ子やのぉ~。)」
「シュバールや、もっと触らせて────」
──── シュバッ!
「だが断る。」
スバルは頼まれたことを深く追求せずに離れるレイラを見送り、近づく老婆の魔の手を避ける。
……
…
レイラはどんちゃん騒ぎが聞こえないほどの森林を歩きながらキョロキョロと見る。
「(確か、こちらの方向に香坂准尉を見たような気が────)」
『────悪いことが起きるような気がするんだ。 あの時のように。』
そこに、微かにだがアキトの声をレイラが聞き取っては思わず耳を澄ませてしまう。
『“あの時”って……今日の朝に言っていた、子供の頃?』
「(この声は香坂准尉?)」
森の中心に近い場所ではアキトとアヤノが座り込んでいた。
「ああ……あの時も月の光が綺麗な夜で、父さんも母さんも従妹たちもおじさんやおばさんたちも……兄さん以外の皆が笑っていたんだ。」
「兄さんって……あの偉そうにしてた、陰険ポニテ野郎?」
普段のアキトならここで何かツッコミを入れているだろうが、今の彼はまるでアヤノの言葉の内容に耳を傾けることなくただただ言を並べていった。
「そして皆死んだ。 死んだんだ。 死んでいたんだ、俺も。
でも、俺だけどういうワケか生き返って……
それを見た兄さんは冷たい、怒ったような目で……
俺を……俺に……俺に“死ね”と言った。
そんな兄さんは見たくなかった。
知りたくなかった。
俺の中の兄さんは優しくて、天才で、面倒見が良くていつでも頼れる存在だったんだ。
だから俺は、死ぬべきだったんだ。」
「「………………………………………………」」
次第にどんどんと小さくなって消えていくようなアキトの苦しいような声に、アヤノも近くの木の陰で聞いていたレイラも黙りむ。
「…………………………………………せない。 許せなぁぁぁぁぁい!」
そんな重苦しい空気の中、アヤノのボソッとした声が出てと思えば彼女は勢いよく立ち上がりながら叫んでいた。
「え?」
「あの陰険野郎、今度会ったら鼻をへし折ってやる!」
今にでも『ガルルルル!』と、威嚇の唸り声を上げそうなアヤノは
「アキトとアイツは兄弟なんでしょ?! どんな理由があっても、喧嘩しても、兄が弟に“何で生きている?”なんて問い、どう考えてもおかしいでしょうがぁぁぁぁぁぁ?!」
「お、お、落ち着けアヤノ────」
「────だって……グスン……だってこの世の中で、血の繋がった家族でしょうが……ヒグッ────」
「────え? は? アヤノお前、なぜ泣いて────?」
「────そんなの悲しいよぉぉぉぉぉ~! うわぁぁぁ~~~~ん!」
とうとう泣き出してしまうアヤノを前に、アキトはオロオロとしていた。
「な、なぜお前が泣くんだ?」
彼の問いに(15歳の)アヤノは答えることなく、ただただピーピーと泣いてやっと落ち着いた頃の彼女は見事なまでに目と鼻を腫れ上がらせていた。
漫画風で言うと『目が3のマーク』である。
「………………」
そんなアヤノとアキトのやり取りを、レイラが隠れて聞いていたとは知らずに。
…………
………
……
…
ヒュゴォォォォ!!!
ユーロ・ブリタニア領のグリーンランドでは猛吹雪が絶えずにふぶいていた場所に、
白い毛皮に黒い目のそれは、どこからどう見てもホッキョクグマである。
「ブエックショイィィィィィ!」
そしてそのホッキョクグマ……の毛皮で身を包んだアシュレイは、盛大なくしゃみを出す。
「ううううううう! さみぃぃぃぃぃぃ!!!」
「そう思うのなら黙って歩け! でなければ、肺に氷が入るぞ!」
「このクソ寒いのはなぜだ?! 吹雪もだ! さっきまで太陽ピカピカだったじゃねぇか?!」
「お主が“ホッキョクグマを狩りたい”なんぞ言ったからじゃよ! その上“こいつの血肉を無駄にしたくない、毛皮を着たい”なんぞ言ったから出発するタイミングが予定よりずれただけじゃわい。」
この奇妙なコンビが歩き、やっとの思いでたどり着いたのはサクラダイト採掘基地跡の一角だった。
硬く、錆びついた扉に電源が入り重苦しい音と共にアシュレイが命令されて確保しに来た
「おいおいおいおい! こいつ、動くのかよ?!」
「喋っておらんで起動を手伝わんか、このワンパク小僧が!」
「うるせぇよこの爺が! 聖ミカエル騎士団の俺様にそんな口を────!」
「────そんな口を聞くんだったらワシは帰らせてもらおうかのぉ~?」
「ごめんなさい冗談ですマジ勘弁してください手伝わせてください。」
アシュレイはその昔、グリーンランドが日本に匹敵する量のサクラダイトの採掘ができていた時代の名残である、古ぼけたサクラダイト輸送用巨大飛行船から視線を外してコンソールに電源を入れる。
アイテテテテテテテ。
無茶な正座の仕方をされて足がびりびりしてやがる。
あの後、無事に輸送機が用意されてヴァイスボルフ城に戻ったらもこもこジャケットを着たアンナやソフィたちがいて俺を止めて無理やり正座の姿勢を取らせられた。
しかも滑走路の上で&明らかに正座の慣れていない人の姿勢に。
冬になり始めて雪が降ってもおかしくない季節に長時間の正座は堪えるよ、パトラッシュ……
あの老婆たちと別れる前の夜、狙い通りにレイラにアキトの後を追わせたら一緒に戻ってきたのは良いが、アヤノもいたのはちょっと意外だったな。
原作ではリョウやユキヤが察してアヤノを止めていたし……けどそれも結果オーライかな?
さて……俺は俺で、次の難関に向けて準備をするか。
滅茶苦茶忙しくなる。
何せ『亡国のアキト』クライマックスパートだからな、激戦になる。
アキト達ワイバーン隊も、ヴァイスボルフ城も。
だがこんなところで死者を出すわけにはいかないし、何よりここで死なせたらここに来た意味も無くなってしまう。
それに、『保険』も一応毒島に頼んでいるがアキトが死んだらそれも意味がない。
その為にも、
「あの、シュバールさん?」
────って、レイラが何故か申し訳なさそうにこっちを見て声をかけた……だと?
「アンナの事を、嫌いにならないでください。 普段は控えめな子なんですけれど、私のこととなると人が変わったようになるので────」
「────アンナを嫌いになる事はないな。」
『身体が意思とは関係なく勝手に動いた』と言っても誰も信じないだろうし、今回は俺が悪いんだし。
「そうですか、それは良かったです。」
うーん、この健気な笑みはいつ見てもい・や・さ・れ・る~♪
これで俺が覚えている限り、『亡国のアキト』の半分ぐらいは経過したか?
「あの、そこでシュバールさんに相談があります。」
『頼み』ではなく、『相談』?
なんだろう?
「先のスロニムでの出来事を考えていたのですが────」
スバルの胃痛が悪化するまでのカウントダウン、スタート。