小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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今回はほぼユーロ・ブリタニアと少々のEUサイドです。 (汗


第112話 『大人』たちの思惑によるカオス

 小国規模になったユーロ・ブリタニアの首都とも呼べる、ペテルブルグの一地区に立つカエサル大宮殿の作戦指令室にユーロ・ブリタニア上層部の大部分を担う重鎮が召集されていた。

 

 聖ミカエル騎士団のシン・ヒュウガ・シャイング。

 マンフレディ卿の親友であり、壊滅寸前だったものの回復の目途が立った聖ラファエル騎士団のアンドレア・ファルネーゼ。

 毛深いもみ上げや眉毛が独特の印象を与える聖ガブリエル騎士団のゴドフロア・ド・ヴィヨン。

 ユーロ・ブリタニアの四大騎士団総帥の中でも明らかに高齢でありながら現役の聖ウリエル騎士団のレーモンド・ド・サン・ジル。

 

 四大騎士団総帥の他に、その大きなオペラ座のような作りをした部屋に軍の士官たちに内府の文官などの姿もあった。

 

 最前線の席に待ちかねているのか、ふんぞり返ったジュリアスに近くで立っている護衛のスザクを誰もが注目していた。

 

「皇帝の飼い犬風情が……」

「いくら皇帝陛下の信頼を得ているとしても、日も経っていない内に大公閣下を呼びつけるとは……」

「やはり若くて政には疎いのか?」

「すぐにボロが出るさ。」

 

 悪い意味で。

 

 カァン、カァン!

 

「ヴェランス大公閣下、ご着座!」

 

 木づちの音と共に警備兵がユーロ・ブリタニアの宗主であるヴェランス大公(オーガスタ)の入室を宣言すると、ジュリアス以外の全員が席から立ち上がって敬礼を向けて敬意を表する。

 

 その反面、ジュリアスは面白いもの(道化)を見るかのような目線で座ったままヴェランス大公が座るまで見続ける。

 

「キングスレイ卿、始めてもらおうか?」

 

 ブリタニアから送られ一度も挨拶に来なかったジュリアスをヴェランス大公は威圧を上乗せしながら上記を言い放つ。

 

「そう焦らずとも良いでしょう? 貴方方とは違い、結果はすぐに出せますよ?」

 

 が、ジュリアスは余裕満々ながらいつもの視線を返し嫌味たっぷりに答える。

 

 ユーロ・ブリタニアの士官、文官、貴族に関係なく誰もがジュリアスの言葉に表情を険しくさせる。

 

 シン一人だけは内心、ほくそえんでいたが。

 

「これより惰弱ゆえに衝突を避けて引きこもるだけの脳しかないEUを、『戦場』という『処刑場』へ引き出してご覧に入れよう!」

 

 何せシンはジュリアスがこれから行う作戦の内容をおおよそ予想し、事前に自らの()()()()()()()に組み込んでいたからだ。

 

「さあ、舞台の開演だ! 諸君、楽しんでいただこう!」

 

 “自身に失敗はあり得ない”とでもいうような態度のまま、ジュリアスは高らかにそう宣言する。

 

 一番の協力者であるシンに利用されていると知らずに。

 

 ジュリアスの宣言に、巨大スクリーンにはいまだに猛吹雪に襲われる場所────グリーンランドにあるサクラダイト採掘基地跡が映し出された。

 

 かつて日本と並ぶほどのサクラダイトが採掘されていたここは、場所が場所だけにほぼ破棄同然となった巨大輸送船に急ピッチでフロートシステムをジュリアスは取り付けるように命令した。

 

 サイズだけで言えばシュナイゼルが現在試験飛行中のログレス級より大きい超大型飛行船────『ガリア・グランデ』は外部に設置された砲台や対空機銃こそアヴァロンより重装備に見えるが……そのすべてが張りぼてか破棄された武装である。

 

 しかも内部はほとんどスカスカで、防衛には無人機化させたサザーランドが大半である。

『戦力』としては期待できないが、EUに飛行能力を持ったナイトメアはない。

 

 よって、EUの()()()()()()()()()()()()

 

 そしてその『限られた対処』を迎え撃つのが無人機化されたサザーランドだけでは少し心許ないのでジュリアスはシンを試すと同時にアシュレイを()()()

 

 シンは渋るどころか、アシュレイとともに『拠点防衛用』の建前でユーロ・ブリタニアが()()()に開発していたアフラマズダを貸し与えた。

 

 このやり取りでジュリアスとシン双方は相手の真意をある程度『理解』した上で、『互いを利用しあう関係』となっていた。

 

 少なくとも、ジュリアスにとっては。

 

「キングスレイ卿、説明を。」

 

 ここでようやくヴェランス大公が愉快そうに劇を見ているかのようなジュリアスに問いかけた。

 本来なら大公である彼に事前の説明がされているのが道理だが、今作戦はすべてジュリアスが秘密裏に進めたためにヴェランス大公を含むほとんどの者はこれから何が起きるのかわからなかった。

 

「画面に映し出されているのは巨大浮遊船の『ガリア・グランデ』。 これから行う作戦の要であり象徴……今舞台の『主役』、と言ったところでしょうか?」

 

「まさか、あれでEUに爆撃を行うのではあるまいな?」

 

「ほぉ……さすがはヴェランス大公────」

「────キングスレイ卿!」

 

 ヴェランス大公は思わず席を立ちそうになるが、ジュリアスの近くにいたスザクがわずかに身構えるのを見てからやっとの思いで踏みとどまる。

 

「ハハハハ! ヴェランス大公、あなたが危惧していることを私の作戦と比べないでくれたまえ。 第一段階では、EUに潜入させた破壊工作員が大都市を停電に陥れる────」

「────EU軍の施設ではなく、都市だと?」

 

「町を停電させるだけであれば造作もない。 さて────」

 

 ジュリアスがまるでタイミングを見計らったかのように振り返ると、巨大スクリーンに映し出されていたガリア・グランデから、ライトと見たこともない旗をバックにしてぼんやりとした人影へと変わる。

 

『EUの全市民に告げる。 我らは()()()()()()……“箱舟の船団”だ。 我々はつい先ほど北海の洋上発電所を爆破した────』

 

 その人影と声はジュリアスの者であり、画面に映っていた彼の言動はまさに()()()()()()()()()()で、次の映像ではガリア・グランデから一つの爆弾が海上に建てられた洋上発電所を爆撃した。

 

「うろたえるな、ただの合成映像だ。」

 

 これを見て作戦指令室はざわめき始めると上記の言葉でジュリアスが見下すような補足をする。

 

 『────もうすぐこの“滅びの星”がパリを襲うだろう! 悔い改めよ! それが生き延びるための、ただ一つの手段だ!』

 

 それを最後に、ジュリアスの映像は切れると同時に席に座っていたジュリアスが立ち上がってヴェランス大公を見る。

 

「さて、今頃EUは混乱の真っ只中だろう。 そして愚鈍なEUでは対処できず、権力者や有力者は国外への脱出を準備し、これを見た市民は抱えていた恐怖を怒りへと転換させ暴動を起こす。 さらにこの暴動をテロの犯行と思った市民はパニックを起こし、この不安と恐怖と怒りの暴動は瞬く間にEU全土に広がるでしょう。」

 

 “ククク”と笑いそうになりジュリアスの姿は、どこぞのドラマなどで登場する『悪役』そのものだった。

 

「果たして、そう上手く事が運ぶだろうか?」

 

 パチン。

 

 ジュリアスが指を鳴らすと、巨大スクリーンには複数のSNSやニュースサイトに無数の書き込みが次々と最新され、そのどれもがジュリアスの先ほど言ったことを裏付けていた。

 

「人を支配するには『恐怖』だ。 それも正体や実体が見えないものほど、人を圧するものはない。」

 

 すべてはジュリアスが巧みに現状のEUの統治を逆手に取った心理作戦だった。

 実際、彼がやったことと言えば合成映像で存在しないテロ組織を名乗って『洋上発電所を破壊した』というデマを流し、パリを含む大きな都市を停電に陥れただけ。

 

 あとはEUの者たちが勝手に騒いだり、国外脱出を目論んだりして、勝手に自爆しているだけだった。

 

「私はEUという巨大な爆弾に点火しただだけ。 さぁヴェランス大公()()、全軍に進軍命令を────」

「────今攻め込めば、大勢の無辜の民が戦に巻き込まれてしまうではないか?!」

 

「ほぉ? この状況でも『市民の犠牲』を気にするのですか? フン、そんなものを気にしているから貴方たちのもとに私が送られたのだよ! それにお忘れでしょうか? 私は皇帝陛下より、ユーロ・ブリタニアの全権を委任されている。 二度目は言いませんよ? 命令を出せ、ヴェランス大公()()。」

 

「ぐ……ぬぅぅぅ……」

 

 そこに一人の通信兵がスザクに近寄り、資料らしきものを渡すとスザクはそれを流し見てからジュリアスに渡す。

 

「その命令は……聞けぬ。」

 

「ほほぉ? ヴェランス大公閣下、今なんと?」

 

「その命令は聞けぬと言ったのだ! このような非道な……まるでコソ泥のような────!」

「────よくぞ言った、ヴェランス大公閣下!」

 

 ここでジュリアスは心の底から嬉しそうな声でヴェランス大公を褒める。

 

「さすがは閣下! 自らコソコソとしていらっしゃるだけにコソ泥の気持ちを理解しておられる! 今しがた私が受け取った資料でEUの40人委員会に、EU軍の上層部から()()()の通信を傍受したとの報告が入った! どうやら、“頃合いを見てEUと手を組む計画を今すぐ行ってほしい”とは……」

 

 ジュリアスの言葉に、その部屋にいたユーロ・ブリタニアの者たちが目を見開いて驚愕する。

 

「な────?」

 

 驚愕する者たちの中には、ヴェランス大公も入っていた。

 

 「────ヴェランス大公閣下! 敵と通じていた貴公を、皇帝反逆罪で幽閉する!」

 

「(ルルーシュ、君はやはり────)」

 

 ────ガタッ!

 

 ジュリアスを複雑な気持ちで見ていたスザクは席を立ちこめかみに血管を浮き出させていたゴドフロアを見て即座に行動に移った。

 

「貴様ぁぁぁ! 我が大公閣下に向かって無礼な────!」

 

 ゴキッ!

 

 「────ぐあああ?!」

 

 今にもジュリアスに殴ろうとしていたゴドフロアの顔面に、超人的なスピードと脚力で急接近したスザクの回し蹴りがめり込んで鼻の骨が折れたような音がする。

 

「……キングスレイ卿に歯向かうは、皇帝陛下への反逆と同等であると忘れるな。」

 

 スザクの見せた業と落ち着きにどよめきが走る中、シンは感心するような気持ちを持ちながら席をたち、ヴェランス大公を見る。

 

「(さて、頃合いか。) この場は、キングスレイ卿の命令に従うが大公閣下の為と思われます。」

 

「……グ……」

 

 ヴェランス大公は渋るような声を出し、退出していった。

 

「全軍に通達! 『進軍せよ』と!」

 

 四大騎士団の聖ミカエル騎士団総帥シンの言葉に命令が下されていく。

 彼とジュリアスが繋がっているとは知らずに。

 

 ただ一人、アンドレア・ファルネーゼを除いて。

 

「(『ハンニバルの亡霊』、ミケーレの急死、シンの昇進、そしてキングスレイ卿……あまりにも出来すぎている。 まさかとは思うが……)」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ユーロ・ブリタニアと対峙している東部方面軍の前線部隊が撤退しているとの報告が上がっております!」

「テロを言い訳に、戦線を離脱するとは!」

「やはり彼らは烏合の衆!」

 

 EUのパリにある、スマイラス将軍の執務室では若手の士官三人がそれぞれ入ってくる報告や情報に関して表情を険しくさせていた。

 

「さらに40人委員会には臨時閣議の指示が出ていますが、議員たち数十人ほどすでにパリから

 逃げ出したとの情報が……唾棄(だき)すべき奴らです!」

 

 そんな中、スマイラスは憂いているような顔をして三人の言うことを耳にしていた。

 

「この騒乱は我らにとって、好機ではありませんか将軍?!」

「民衆は政府の惰弱を今度こそはハッキリと認識したはずです!」

「今こそ将軍の理想を、現実とする時です! 強欲な資本家が新たな貴族となり、民衆を搾取するこのEUの矛盾を改めるために我らが立つ時が来たのです、将軍!」

 

「ご決断を! スマイラス将軍!」

「「スマイラス将軍!」」

 

「……………………」

 

 士官の三人は思想に走る、熱い眼差しを憂いているスマイラスに向ける。

 

「(まったく、これだから若者たちは……)」

 

 スマイラスは憂いている()()をしながらそう思い、思わずにやけそうになる顔を引き締めた。

 

 さて、以前にレイラの父親をスマイラスがテロに見せかけて葬ったことを覚えているだろうか?

 

 スマイラスは静かで冷徹な野心家である。

 何せ、彼は自分で『親友』と宣言していたブラドー(レイラパパ)をライバル出現の疑惑と嫉妬から殺害し、周りの者たちを良いように利用できるよう物事を進めてきた。

 

 時には友軍に間違った情報を与えたり、時にはユーロ・ブリタニアに情報を売ったりなど、自分のためならば何でもするのはスマイラスにとって日常茶飯事である。

 

 例えば、“皆にとって『子供』と『大人』の区別は?”という問いをしたとしよう。

 どのような答えが返ってくるだろうか?

 

『国に決められた成人年齢』。

『飲酒、タバコ、保護者がいなくても自分で判断できる歳。』

『社会に、貢献出来ているかどうか。』

 

 そのような考え方を、スマイラスはしていない。

 

 彼にとって区別の仕方は『認識』である。

 スマイラスの返答はこうなるだろう。

 

『若者は純粋な正義感に燃えたり、世論を理解せずに分不相応な未来を思い浮かべたり、論理も理屈も関係なく矛盾だらけの理想を抱いた者達のこと。

 大人とは世間や環境と自身の限界をありのままで受け入れ、現実に対応する者たちで若者たちの能力を最大限に活かす立場にある』、と。

 

「(現実を理解していないからこそ、利用しやすい。 そしてそのことに気付けば今度は次の世代をその者たちが利用する。)」

 

 現在のスマイラスは何度も夢に描いたシナリオが来たことに、愉悦を感じていた。

 EU連合軍の大半は無能さを晒し、政府の上層部は保身からすぐさま市民を見捨て、民衆は怯えと混乱から目を背けるために暴走している。

 

 状況はまるで、フランス革命の再来である。

 

 確実に違うことは、EUが弱ったこの機会に便乗してユーロ・ブリタニアが攻め込むことだろう。

 

「(ならばをそれを利用するまでだ。 信用を失った者たちを押しのけても反論はでてくるまい。 不安がる市民を強い確固たる理念の下で一致団結させ、強大な敵に一致団結して果敢に挑めばいい。 かつての『ジャンヌ・ダルク』のように。)」

 

 スマイラスは緩まる表情筋に力を入れ、覚悟を決めたような眼差しを部屋にいる士官たちに向ける。

 

「諸君らがEUの未来を案じ、憂い想う気持ちしかと心得た。」

 

「「「おおおお!」」」

 

 スマイラスは立ち上がり、机の上に置いてある英雄譚の本からはみ出したブライスガウの家族写真を見る。

 

「(レイラ、私が今まで面倒を見てやった借りをここで返してもらうぞ。)」

 

 スマイラスは自身を、かのナポレオンになった気持ちで素早く行動に出た。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ヴェランス大公が幽閉され、ユーロ・ブリタニアの議会は皇帝から全権を委任されたジュリアス・キングスレイに全権を正式に委ねるしかなかった。

 

 でなければ、今度こそブリタニアはユーロ・ブリタニアに『反乱の気配あり』と断定してしまうだろう。

 

「(この男……)」

 

 そんなジュリアスは、シンとチェスを興じながらシンの分析をしていた。

 

「(この男は強い、認めよう。 だが自身のクイーンを守るために勝機を見過ごすとは甘い。 甘いな────)」

「────それでヴェランス大公閣下はどうなされるのですか、キングスレイ卿?」

 

「知れたこと。 いずれは皇帝陛下の御前で首を刎ねるだけの男だ。」

 

「よろしいので? ほかの四大騎士団や大貴族が────」

「────奴らに本国と戦う気概がある筈がない。 ユーロ・ブリタニアはこれから私が導いていく。 これまでのように、これからも卿にはそれを手伝ってもらうぞ?」

 

 カン!

 

 ジュリアスが力強く、まるでとどめを刺すかのように駒を置く。

 

「チェックメイトだ。」

 

「……お見事です。」

 

 少しの間だけ悩む仕草をシンはしたが、どこからどう見ても完全な負けなのは明らかだった。

 

「今の間、君は一瞬このゲームを現実に重ね合わせたのではないかね?」

 

「……」

 

 シンの表情は変わらなかったが、一瞬だけ彼の纏った空気がゆがんだことでジュリアスは笑みを深めた。

 

「君はクイーンを見捨てられず、私に敗北した。 『君には見捨てられない者がいる』、違うか?」

 

「…………」

 

「人には、誰しもその類の弱みはある。 親、兄弟、友人、恋人……だが私は違う。 私が守るべき────」

 

 ズキッ。

 

「────我が命を賭けて守るべきは────」

 

 ズキッ。

 

「────皇帝陛下、ただ、一人────ウッ?!」

 

 先ほどから自分を襲う頭痛のようなものをジュリアスは無視していたが、とうとうこらえきれなくなって顔をしかめると自分ではない自分の声が脳に叩きつけられる。

 

 『“皇帝陛下”?! “守るべき存在”?! 奴に忠義など感じる必要などない!』

 

「がっ────」

 

 ────ガラガラガラガラ!

 

 ジュリアスは一向に強くなっていく頭痛を物理的に抑え込むように頭を両手で抱え、頭痛薬を飲もうとして勢いよく立ち上がった拍子にチェス盤の乗ったテーブルに足をぶつける。

 

「私は────()は?!」

 

「r────キングスレイ卿! シャイング卿、彼は気分が────」

 

 明らかに動きがギクシャクとなっていくジュリアスにスザクが友へと駆け寄ってシンに退室するように言いかける。

 

「────クルルギ卿。 私は『箱舟の船団作戦』を聞いたときに使われる組織、『世界解放戦線』でとある組織を連想した。 エリア11にも、似たような名前の組織がありましたね?」

 

 シンは席から立ち上がり、敵意がないかを示すように両手を挙げながらジリジリとスザクたちから距離をとっていく。

 

「そして確か、エリア11には『黒の騎士団』と……『ゼロ』と名乗るものがいましたね────?」

「────グっ?! ゼ、ゼロ────」

「────シャイング卿────!」

「────そういえばクルルギ卿がラウンズに任命されたのも、その『ゼロ』を捕縛したからですよね? “処刑された”、と聞いていますが────」

 「────グゥオアァァァァァァぁ?!」

 

 明らかにシンの言葉に苦しむジュリアスを見て、スザクは拳銃を抜いて躊躇無くシンへと構えて引き金を引く。

 

 だがこのようなことを予想してジュリアスたちが『箱舟の船団作戦』を進めている間に建物の壁を偽装させて待機していた聖ミカエル騎士団所属のサザーランドと、ジャンのグラックスが出てきてシンをスザクの撃った弾丸から守る。

 

 サザーランドたちはスザクを殺しにかかるが、彼は超人的な身体能力で攻撃をかわしながらランスロットの作動キーのスイッチを押す。

 

 すると待機させていたランスロットが簡易自動操縦モードへと移行し、室内へと壁を突き破って入ってくる。

 

 そしてスザクに近寄ると、ランスロットのコックピットブロックが開いてスザクは周りが驚いている間に素早く乗り込む。

 

「(まさか、ロイドさんが僕の悪ふざけを真に受けていたのがいい方向に転じるとは……)」

 

 実はランスロットの『簡易自動操縦モード』、以前から頭の悪そうな武器や発想(パイルバンカーや火薬式ライフルや立体機動)に対抗心を燃やし、ブラックリベリオンからずっと悶々と部屋に籠っていたロイドがスザクに『どんなにばかげたアイデアでもいいからスザクは何か思いつかないかい?!』と血走った目で迫ったのがきっかけだった。

 

 ロイドの問いに、スザクが焦りながら思わず口にしたのは『スイッチを押したらどこからともなくナイトメアが駆け付けるとか?』であった。

 

 そのアイデアはスザクが子供のころに見た『戦隊ヒーローモノから来ている』とは、ロイドはおそらく想像すらできないだろうが。

 

「相手はナイトオブラウンズだが恐れることはない! ランスロットを討ち取り、家名を上げよ!」

 

 グラックスのジャンは驚きからくる硬直をねじ伏せるように上記の通信を出す。

 

「(ロイドさん、僕のアイデアを採用してくれてありがとう!)」

 

 そして無茶苦茶なアイデアを真に受けて(ある程度)実現化させたロイドに内心感謝をスザクはする。六対一でしかも室内であることを忘れさせるほどの機動戦をランスロットで繰り広げさせる。

 

「キングスレイ卿を狙え!」

 

 そんな部屋に歩兵部隊が入ってきてはシンの指示に従って痛みに悶えるジュリアスを狙って撃つが、ランスロットはいち早く壁となってブレイズルミナスでジュリアスを守る。

 

「(ルルーシュ! 君は! 君だけは絶対に守ってみせる、今度こそ────!)」

「────誰だお前は……俺は……これは……子供のころのスザク────?」

「(────これが、本国のラウンズ!) 敵はたった一機だ────なに?!」

 

 MVSの基本装備だけですでに三機ほどのサザーランドを斬ったランスロットを前に、たじたじになるサザーランドたちをジャンは奮闘させるような通信を出そうとして、ランスロットはスラッシュハーケンを使った立体機動で素早く襲い掛かる。

 

「(あの時の指揮官機のように戦えば!*1────)」

「(────くそ、この動き! ……まさか、こいつが『幽鬼(レヴナント)』か?!)」

 

 戦闘音を聞いたのか、さらに聖ミカエル騎士団のサザーランドが来てはランスロットが応戦する。

 

 そんな激戦の中、ジュリアスには覚えのない懐かしい記憶が走馬灯のように再生する。

 

 広い寝床でばたばたとはしゃぐ〇〇〇〇と困りながら楽しい笑いを出す□□□□□□。

 暑い夏の中、向日葵畑を幼い自分とスザクがともに走る。

 〇〇〇〇が無理やり連れていかれそうになり、止めようと気を失う。

 森が。

 町が。

 人が焼けている。

 

 母が殺され、自分たちは捨てられ、やっとなじんできた平穏な日々をまたも■■■■に奪われ────

「(────誰だ、こいつは────うぅぅ?!)」

 ジュリアスは黒塗りされたような■■■■を思い浮かべようとしてさらなる頭痛に襲われ────

 ────“主義者か?”と問われ────

「(────これは、私じゃない────そう俺だ────誰だ、私は────俺、は────!)」

 ────ブ■タニ■を壊すと誓っても、どこか一歩踏み出させずにいたせいで誰かのシナリオに────

 ────困ったように友人の■■■■がはにかみながら“ここにいる皆がその時でも笑顔でいられますように”と────

 ────そして忠誠を誓った皇帝陛下の“貴様に新たな記憶を授けよう。 これから貴様は────”

 

 ────バチン!

 

 「俺は……俺は……ここは……ど、どこに……どこにいるんだ……ナナリー……みん、な……

 

 固いスイッチが無理やり切り替えられるような音で『ジュリアス』という殻から、生まれたてのヒナのように弱弱しいルルーシュは助けを求めるような声を出す。

 

 

 そんなルルーシュの近くにいたシンは亡くなった歩兵から通信機をとりそのまま耳にかけ、いまだに腕の伸びるギミックなどを搭載したグラックスを駆使するジャンに対してまるで物理法則を無視したような戦闘を繰り広げるランスロットに、プライベート通信を繋げる。

 

「クルルギ。 ジュリアスを────いや、『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』を殺されたくなければ投降しろ。」

*1
20話のスバルより

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