もう12月とは………
今年も時間がたつのが早かったような気がするのは自分だけでしょうか………
『箱舟の船団』と名乗る合成された映像とキングスレイの策略で、EUの上層部が我先にと逃げ出したことで市民たちはパニックに陥り、それがさらに暴動へと波及していった。
逃げ出す前に上層部が出した『臨機応変に応じよ』は命令系統が無いに等しく、それぞれの連合軍の部隊は好き勝手に動き出した。
『テロ鎮圧』の名目で敵前逃亡の保身。
『防衛拠点の設立』という名目で街を独自の判断で占拠&略奪。
『前線維持』の命令を出して自分たちも逃亡を図る士官たち。
等々。
「どうだい、サラちゃんにオリビアちゃん?」
「どのチャンネルも塞がっています。」
「議会員たちのほうは、先ほどから応答なしか通信が落とされます。」
「でしょうねぇ~。 多分、トンズラこいてんじゃないのかねお偉いさんたちは?」
wZERO部隊の作戦室に至急召集されたサラとオリビアがクラウスに返事をし、彼は『やれやれ』といった態度のままレイラへと振り返る。
「ね、司令?」
「では、次は保安局部にかけて下さい。」
そんな混沌化したEUの中でも、ジュリアスの奇策が発動された直後のヴァイスボルフ城では、孤立
「で、傭兵さんの見立てではどうなんです? 司令の今やろうとしていることは?」
クラウスは副司令官のコンソールから、作戦室の端で静かに立っていたスバルへと近づいては飄々とした態度で問いを投げる。
「
最初こそ、wZERO部隊も犯行声明と思われしき映像と次から次へとSNSの書き込みに、今では放送中断となってから復旧しないメディアで流されていた暴動でテロ攻撃を真に受けそうになっていたが、とある男からの必至な説得でレイラは“すべてがブラフ”という確信を得た。
その男とは、レイラの許嫁であると同時に義兄のヨアンだった。
最初は彼も映像を信じていたが、実際に洋上発電所で働いていた知人が人づてに映像のことを聞き、大至急ヨアンに連絡を送ったことで、やっとヨアンもこれがユーロ・ブリタニアの策略と気付いた。
マルカル家は工場や銀行が暴徒に襲われていて自分たちの事でいっぱいだったのに、ヨアンは純粋な『家族としての心配』からレイラに連絡を取ったのが幸運だった。
余談だが、彼がレイラを『政略結婚で得た政治の道具』ではなく『家族』として見始めたきっかけは些細なモノだった。
三男のヨアンは優秀な結果を既に出している兄たち、ダニエルとステファンといつも比べられている所為で不貞腐れていたが、そんな彼をレイラは養女として引き取られて間もない時はヨアンにだけ懐いていた。
『懐いていた』、と言っても距離を取りながら彼の後を追う程度だが。
最初はそんなレイラを何とも思っていないどころか『ウザイ』とまで評価していたのだが、『
そこからのヨアンは、再びやる気を出しては任された会社や商談に力を入れたが次々と失敗していき、次第に成功ばかりして自分と比較されるレイラに拗らせた嫉妬を感じるようになってしまったが。
「(ま、いわゆる『歪んでしまった愛』って奴だな。 原作を見ている限りは。) おそらくだが、どこに伝えようともよくて“半信半疑”だろうな。」
「そんなおたくは司令を止めようとしなかったの?」
「……言って彼女が止まると思うか?」
「んー……それもそっか!」
「(う~、胃がもう痛みだす……)」
これからのことをスバルは思い浮かべ、キリキリとしながら荒れ始める胃に手を置く。
…………
………
……
…
「パリやEUの大都市で起きている大停電の原因は流された映像による、洋上発電所の爆破ではありません。 北海の発電所は今も無傷で存在します。」
場所は変わり、ワイバーン隊やwZERO部隊全員が作戦室に召集されていた。
「SNSや、掲示板に書き込みがあるのは?」
「デマなんじゃない? 人間って生き物は不幸な事に強い拒否反応をするから事実を確かめもせずに『自分だけが変じゃない』って理由だけで噂を広げて周りの反応を見たがるし。」
「それにネットやマスメディアなどの類は本来、大衆の情報統制やコントロールする為に作られている。」
「つまりは一種の『洗脳』ってことだよ、アヤノ……それに気付くなんて、やっぱアンタは面白いね♪」
「(う……腹がさらに……)」
アヤノの問いにユキヤが答え、更にスバルが言を付け足すとユキヤのニタニタした笑みが深まる。
「えっと? つまりあの流れた映像は────?」
「────巧妙に手が加えられた、偽の動画です。 これは恐らく、民衆の恐怖や不安を駆り立てて国を混乱に陥れる作戦と思われます。」
「じゃあ、あの『箱舟』も存在しないってことか?」
「いいえ。 『箱舟』は存在している筈です。」
結局殆んど通信が繋げられないまま、wZERO部隊は独自で敵が行うと思われる作戦の第二段階を阻止することを決めていた。
“箱舟は存在する”と言われたアヤノたちの『どゆこと?』視線にレイラが説明するのは、この状況の中で、もし未確認の飛行物体がEUの上空に現れれば一気に状況は悪化し、EU全土が取り返しのつかないほどの無法地帯へと化してしまうこと。
そして暴動を終結させるには『箱舟』の正体を明らかにさせ、『脅威は排除された』と示すことも。
もし空軍に連絡がつければ話は簡単なのだが、指揮系統は乱れたままで頼りに出来ない。
よって、『アポロンの馬車』を使ったワイバーン隊が降下し、敵の飛行船にとりつくこととなる。
「そして、このような作戦を考えるような敵は多分……私たちのような部隊を予測していない筈がありません。 それに海上を飛行中ですので、危険は────」
「────俺は当然いくぜ────」
「────俺が一人で行く。」
リョウが勢いよく志願すると、アキトが珍しく彼の言葉を遮った。
「あ?」
「聞こえなかったか? “俺が一人で行く”と言った。 お前たちじゃ、足手まt────」
────バキッ!
「格好つけていんじゃねぇよ、このキザ野郎! せめて本当の理由を言えよ!」
自分を殴ったリョウをアキトは見て口を開けそうになるが、アヤノの方を見る。
「……言ったらそれでも殴るのか────?」
「────当たり前だろうが?!」
すると案の定、彼女は目を泳がせてそっぽを向き、何かを悟ったかのようにため息を出す。
「ハァー……好きにしろ。」
「はなっからそのつもりだ!」
リョウの言葉にアキトは振り向かず、ただ退室する。
「(ん? なんか思っていたのと違う? ここで殴り合いにならないの?)」
「それで? シュバールも来るんでしょ?」
未だに他の者たちと違って、さん付けをしないユキヤの質問にスバルは頭を横に振る。
「いや、今回の俺は留守番だ。」
「「「え?!」」」
「あ?! どういうことだテメェ?!」
「どうもこうも……“別件で留守番をする”と言っているのだが?」
いや、なんで
元々俺はワイバーン隊じゃないのをすっかり忘れているな、これは。
「忘れたか? 俺は元々傭兵だ。 初期の依頼内容は『ワイバーン隊が自立行動できるまでのサポート』だぞ?」
原作と違って元祖ワイバーン隊の二人もいるし、原作通りで行くと相手は無人機型のサザーランドとアフラマズダとか言う機体の筈だ。
それにアフラマズダは確かユキヤが射撃で牽制して、アキトが機動戦で翻弄するだろう。
各専用機のアレクサンダもプチパワーアップさせたし、大丈夫なはずだ。
大丈夫じゃないのは、ヴァイスボルフ城の方だ。
ワイバーン隊が全員出払うと、実質上ここの守りがハメルの警備隊のみになる。
それに……いや、今は迂闊な言動は控えよう。
「「「「………………」」」」
いや、そんな『捨てられて雨に濡れる子犬のような顔』をされても困るがな。
「お前たちは十分『部隊』として機能出来ている、まだ気付いていないだけだ。」
それを最後に、俺は作戦室を後にする。
少しきつい言い方かもしれなかったが……実はこのwZERO部隊には『内通者』がいる。
そしてその内通者から得た情報をもとにヴァイスボルフ城が手薄になったところを、聖ミカエル騎士団を率いたシンが総攻撃をかけるのだ。
しかも悪いことに、この時に
今までwZERO部隊に死者を出さなかったんだ、ようやくここまで来て誰かに死なれては困る。
というわけで俺は今日も肥料、硫黄、四塩化炭素(プラスその他)を混ぜよう。
『なんで』かって? 無論、火薬製造のためにだ。
ヴァイスボルフ城に来てから『パイルバンカーのカートリッジ用』という建前で火薬を作ってもらって(くすねている)いるが、俺の考えている作戦内容ではいくらあっても足りない。
なので生産量を増加してから俺自身も作って、内通者に疑われない程度に前回使ったものとは違う抜け道で城外に出てから────
「────シュバール────」
────ドキーン!
ポツンとした通路の影の中からアキトがジャジャジャジャーン?!
ドロー! ポーカーフェイスカード、発動!
「なんだアキト?」
ドキドキドキドキドキドキ。
静まれい、マイハートォォォォォ!
「お前が同行しない
ドキッ。
流石『亡国のアキト』の主人公、聡いな。
けどアキトになら良いか。
「前回の作戦、妙と思ったことは何か無いか?」
「森に着地して間もなく敵に砲撃されたことか?」
その通りだけどちょっと怖い────って、アキトは天然で結構鋭かった設定だったなそういや。
(ほぼ)無口なだけで。
というかこいつ、CCに似て『大切なモノは遠ざける』タイプだった。
「ああ。 俺の勘だが……敵はワイバーン隊の移動手段を予測している可能性がある────」
「────なるほど、守りの為に残るのか。 もしかして契約の更新を司令としたのか?」
1を言って10の内8割をすぐに理解するアキトが怖いでござる。
「悪い予感がするからな。 杞憂に終わればいいが……もしそうでなかった場合、お前たちの帰る場所が危ない。 だからアキト────」
ポスン。
「────あいつらの事を頼む。」
俺は両手をアキトの肩に乗せながら、彼の目を真っ直ぐ見ながらそう頼むと一瞬だけ彼が迷うような素振りを見せる。
まぁ無理もないわな、『自分だけが生き残る』っていうサバイバーズギルトから今まで他人に頼ることも頼られることもアキトは極力避けてきたわけだし。
「俺は、そんな────」
「────お前……いや、お前たちならできる。」
ここは少し強引にでも背中を押すか。
「いいか?
「??? それは、いったい────?」
「────早く行って戻って来いよ、アキト。」
俺はさっきからドキドキとうるさい鼓動が震えとなって身体に出てくる前にその場を後にする。
正念場だ、やることは文字通りに山ほどある。
俺も。
アキト達も。
そしてプラン通りに動いてくれているのなら、毒島
『シュバールから預かった言葉がある。 “動きまわっていれば当たることは無い。” それと“当たってもすぐにやられることは無い”……だとさ。』
『ええと?』
『なんだそれ?』
『つまりはどういうことだ?』
『アポロンの馬車』に乗って待機しているワイバーン隊の隊内通信でアキトがそう告げると、リョウたちやイサムたちがハテナマークを浮かべるような声や返答(?)を出す。
『んー、僕の勘では機体の装甲に関係しているんじゃないかな? ほら、前に乗った時となんとな~く違うでしょ?』
『『『そうか?/かな?』』』
ユキヤの言う『違い』を殆どの者たちは見落としていた、あるいは気が付かなかったがその通りだった。
通常のナイトメアだと機動戦を前提にした
アフラマズダは以前に記入したように、『拠点防衛』の名目でユーロ・ブリタニアが秘密裏に開発していた機体で、両腕に連結している三連装大型ガトリングガンと、従来のナイトメアより優れた『シュロッター鋼』と呼ばれる装甲に、ガトリングガンの短所である弾切れを消すほど大型なバックパックに詰め込まれた予備の弾数。
スバルからすれば『どこのオペレーション・メテオ発動直前に本来のパイロットを殺害して名前を借りた少年兵の機動兵器だよ』と思わず口にしてツッコミたい衝動を押さえ、彼はwZERO部隊が保有している
最初は『チョバ〇アーマーでいけるかな?
その様子を見ていた技術部は、元々機体専門なので彼のやろうとしていたことを理解はできて手伝ったが、その発想に感心したそうな。
何せコードギアスでの陸戦主流兵器は現代とは違い、戦車から
技術部含めて、改良されたアレクサンダに乗っているアキト達もこのことを知る余地もないので、後にこの複合装甲がどれだけ革新的か肌で感じることになる。
「ハーックショイ!」
そんな彼は、肌寒くなる冬一歩手前の森の中で盛大にくしゃみをして、思わず手に持っていた筒のように加工したボール紙を落としそうになるが、やっとのところで持ち直してから曇り始める空に突っ込んでいく『
「(あー、これは雪が降るなやっぱり。 積もる前に仕掛けを終わらせないと……そしてちょうどスマイラスの野郎がわざとらしく連絡を入れてくるはずだ。)」
スバルの胃痛が増す要因がプラスされる一連、スタートである。
………………
……………
…………
………
……
…
ワイバーン隊が以前のスロニムより荒く、ほぼゴリ押しの最短かつ最速ルートで打ち上げられた『アポロンの馬車』から見る宇宙や世界を堪能する時間もなく『箱舟』の『ガリア・グランデ』に降下している間、その内部でアフラマズダに乗っていたアシュレイは待ちかねていた。
飛行船を阻止するために、来るはずの『ハンニバルの亡霊』たちを。
否、正確にはアシュレイが待っていたのはスロニㇺで彼を追い込んでいた『死神』だった。
原作と違い、部下であるヨハネは死ななかったのでアシュレイは復讐に走る筈はないと思うかもしれない。
だが、ヨハネは長い年月と苦労をしたことで、彼やこの世界の基準ではかなり名誉のある『騎士』にやっとの思いで就いていたが……
その職を、ヨハネが続けられるかどうか怪しい状態になったのはある意味、死ぬことよりも酷い結末だった。
そんな彼のアフラマズダのモニターに、『ガリア・グランデ』に取り付けられた外部カメラから降下してくるアレクサンダ達のイメージが入ってくる。
「やっとか。 待ってたぜ、死神どもが。」
『運こそ戦場で絶対』と思っているアシュレイでもそれなりに自分の腕や洞察力に自信は持っていたし、敵が来る前の
それなのに負けただけでなく、
アシュレイがモニター越しで見ていると、敵のアレクサンダ達は一気に『ガリア・グランデ』の内部に侵入して無人機となったサザーランドたちと戦闘を開始する。
この前のスロニㇺをEUから再奪還した際に確保して本国に送った数機以外の
スロニㇺの作戦でwZERO部隊の作戦の前に、AIの最適化されたのがここで今度はワイバーン隊を襲うが────
「────そうだよなぁ! テメェには通用しねぇよなぁ!」
アシュレイはゾクゾクしながら注目していた一機のアレクサンダは銃撃の中を、まるでものともしないまますべてを避けるのを見て、アフラマズダの武装を起動させてはガトリングガンを撃つ。
ガトリングガンの攻撃をアキトのアレクサンダはかわすが、射線上にいたサザーランドの回避は間に合わずダメージに耐えかねて爆発する。
アシュレイは元々、無人のサザーランドに期待していたのは
「吹き飛べぇぇぇ!」
アフラマズダは本来『集中砲火』を設定にデザインされていたが、アシュレイはジャンのグラックスに使われたアームギミックを取り入れて各ガトリングガンがAIを使用した独立で狙いを定められるようにマイナーチェンジを施していた。
これにより、二点しか狙えられない武装を見事に六点に増やされて張りぼてである『ガリア・グランデ』の内部を上手く利用していたアキトのアレクサンダに何発か当たってしまう。
「どうだ────ってほぼ無傷かよ?!」
だがアフラマズダの弾が当たった個所は壊れず、強いて言うのなら表面が焦げたような跡を残しただけにアシュレイは自分を襲う『焦り』を『期待』に変えていた。
「(なるほど。 ユキヤの言っていたように、機体の装甲にシュバールが何か手を加えたのか。)」
「ウロチョロしやがって! いい加減にくたばりやがれ!」
そんなアキトも内心感謝していると、アフラマズダは足場としている鉄骨などを崩落させて行動範囲の制限を試みる。
「(だが『完璧な装甲』などはない。 それに奴の照準が皆に移るとも限らない、早く終わらせないと……)」
対してアキトは無人機たちに応戦するリョウたちにアフラマズダの注意が変わらない間に短期決戦を狙うため、アフラマズダと並びながら走って激しい攻防を続けた。
時間が見つかったときに携帯で入れた文の投稿が続くかもしれません、申し訳ございません。 (汗