昨年はお世話になりました。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。 m(_ _)m
やぁ、俺スバル。
唐突だが敵の部隊相手に今度は森の中で命がけの鬼ごっこ中でござる。
『いたぞ!』
『囲め!』
ヒィィィィ?!
『ええいちょこまかと!』
『観念しろ!』
ヤダァァァァァァ!
火薬式ライフルの残弾数はとっくの前にゼロ!
ついでに言うとレールガンに直接補給していた分エナジーが少なっている一方で俺の余裕もなくなっていっていて胃薬もゼロ!
ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ誰かお助けてああああああああああ!
『こいつ、森の中を逆走しながら────?!』
『────ケイオス爆雷が来るぞ! 散開────!』
『────うわ?! お、落とし穴がここにも?!』
ええええええええええ?!
そんな見え見えの誘導に引っかかるでござるか普通?!
どうでもいいが命び・ろ・い────
『────よくも仲間を!』
キャアアアアア?!
あ。
今のはなんかいいダジャレ
でも本名は確か『ジャンヌ』じゃなかったっけ────
『────覚悟しろ“
って、わぁぁぁぁぁぁ?!
そう思っているうちに、Fateジャンヌじゃなくてクロスアンジュならぬ
『スロニムでの借り、今ここで返すぞ!』
その借りはただいま受けとうないというか俺じゃないねん体が勝手に生理現象的に反応しちゃったから勘弁してくれぇぇぇぇぇ!
『こいつ、森の木を使って?! サルか────?!』
『────なら獣らしく撃て! 撃ち殺せ!』
ウキキキキキキキキキキキィィィィ!
今のオイラはモンキッキー!
そんな豆鉄砲、オイラにあt────オエ。
やべ、気持ち悪くなってきた。
死ね。
それにナンダカ視界があかく なって いく。
『なんだ?!』
『急に動きが止まったぞ?』
『まさか罠か?!』
『誰かファクトスフィアを展開してくれ!』
『総員、今のうちに取り囲め! 罠の類への警戒を怠るな!』
死ね。
なんか きもち わるい。
いぜん にも かんじた。
『臆するな!
コ ロ ス?
死ね
ダれヲ?
あ これ いぜんにも……
『今のうちに奴を撃て────!』
『────ジャン────』
おれ は。
『────ヒュウガ様?! その、先ほどの件は────?』
死ね
『────奴よりは“
『────わかり、ました……ヒュウガ様────』
『────早くいけジャン────』
『────承知……』
わた しは。
死ね
『皆の者、私に続け────』
ぼ く は。
────ブチ。
『な────?!』
『きえ────?』
『左だ────!』
あたまが ぼんやり しそうになる。
しゅう ちゅう だ。
たと えるなら まるで おれ じゃない おれが しんとう する ような。
『BRS改、発動します。』
そんな ひょうじ をみたような きがして くちが かってに ひらいて じょじょ に いしき がふじょう する。
『────フハハハハハ! そうだ! その動きだ! さぁ殺し合いを始めようではないか!』
…………………………………………………………………………………………………………お?
なんか聞こえるぞ?
なんか霧の中にいるっぽい感じだから中途半端だけど、成功した?
ブォォォォ!
おお、エナジー残量少ないのに噴射器を使って上昇とは……
ずいぶん思い切った行動だ。
センサーが敵の位置をキャッチし、それらの機体が画面に反映される。
『飛んだ?!』
『バカめ! 落下時点は割り出せる!』
『その予測地点を送る、総員はそこを狙って一斉射撃を開始しろ。』
前列を突撃させては後退、そして後列が突撃。
これを繰り返されると、相手はいつか隙を作らせられる。
まったく、着いたばかりだというのに、シンは状況の把握をしてからの即時判断と微調整が早い。
単純だが連携と練度があって初めて成立する『波状攻撃』とは、さすがシンと言ったところか。
俺を追いかけて焦らされた兵の指揮を執るにしても『無理やり命令する』のではなく、『感情の流れ』を操作してやがる。
陣地にこもった奴らや単騎で脅威の強者相手に特化した戦術だが────
ブゥン!
────俺なら、やっぱり『虚を突く』しかないな。
例えば、『落下直前にスラスターを横に噴射させながら距離を詰める』とか────
「────うるさい!」
………………………………え。
雪がとうとう本気で降り始める夜、ヴァイスボルフ城内にあるレイラの執務室内には以前と似た顔がそろっていた。
レイラ、クラウス、そして今度はスバルの代わりに(サンドイッチをもぐもぐと頬張る)アシュレイとついさっき帰還したアキトがいた。
最初は戻ってきたばかりのアキトにも“リョウたちのように休め”と言っていたが、頑なに『頼まれたから参加する*1』の一点張りで、説得される気ゼロの彼もその場にとどまった。
自分のこめかみに拳銃を構えたアキトは引き金を引くことに抵抗している間、突然“死ぬな!”と言われたような気がすると、撃ちだされた銃弾を直前にかわしていた。
「(それにあの時、自分を撃ちそうになった時に聞こえた声は────)」
「────先ほど、城外の森に設置してある探知機からの通信は途絶えました。」
そんな悶々と何時ものの様に一人で考えこみそうになるアキトの耳に、レイラの声が入ってくる。
「(いや、今は部隊の皆と現状のことだ。) つまり俺たちは“外の状況を肉眼で観測するしかなくなった”、ということか。」
「いやいやいや、あの若いのが高々度観測気球のコントロールをもとに戻したんでしょ? それを使えばいいんじゃね?」
「クラウス中佐の言うように、ユキヤが箱舟の残骸の推進機として使った高々度観測気球をもう一度出すことは可能ですが、今度こそ敵に落とされてしまう可能性があります。 箱舟の残骸とともに無事収納できたのは、単に敵の注意が逸れていたことと、できるだけ迂回するルートが測定できたからです。」
「あー……つまり下手したら、“気球が城内に落とされて逆にこっちがダメージを負うかも”ってわけか。」
「極端に言えば、そうなります。」
「ングングング……使えねぇな、おっさん。」
「グッ! だから! 俺はおっさんじゃ────!」
「────司令、話を続けるが────」
「────アキトからも認定されたな────」
「────いうなよテメェ────」
「────ユキヤとシュバールのおかげで、敵は半数以上の戦力を失っているのは本当か?」
「ええ。 そして最後の探知機が落とされる直前まで、シュバール機と思われる機がまだ敵と交戦していたことも確認できました……」
「「……………………」」
上記を口にしたレイラ本人だけでなく、クラウスもアキトも重々しい雰囲気になる。
「“シュバール機”ってぇと、もしかして『
だがアシュレイは気が付いていないのか、あるいは『知ったこっちゃねぇ』という風に三人に問いをかける。
「「「『
「おう、スロニムでシャイング卿に突っかかった奴が、あまりにも異常すぎてそう呼んでいる。」
クラウスはアキトを見て、アキトはレイラを見て、レイラは『え? 私ですか?』という顔をしてハテナマークを頭上に浮かべると、クラウスとアキトがウンウンと頭を縦に振って頷く。
「……あ、はい。 恐らくはその『
「へぇ~?」
アシュレイは笑みを浮かべ、サンドイッチを再び頬張り始めるとアキトが話題を戻す。
「だがそれが本当なら妙な話だ……通常時、部隊の3分の1がなくなれば『壊滅寸前』と判断して兵を引くのが普通だ……兄さんは、何をそんなに────?」
「────彼の狙いは、『アポロンの馬車』でブリタニアのニューロンドンかペンドラゴンの攻撃と、本人が言っていました。」
「?!」
「ブフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ?!」
レイラの言葉にアキトとアシュレイはギョッと目を見開き、騎士服をクリーニングに出してEUの軍服を着こんでいたアシュレイに至っては、食べかけのサンドイッチを吹きだしていた。
「どぅわ?!」
クラウスの方向を向きながら。
「きったねぇなオイ! 何しやがる小僧テメェェェ?!」
「ウォリック中佐のことは良いとして────」
「────よかねぇよアキトテメェ! ドライクリーニングは面倒くさいんだぞクッソ~────?!」
「────司令、我々と敵の戦力差はいまだに開きすぎています。 何か考えがあるのか?」
クラウスはハンカチを出そうとまごまごしているところを、レイラが自分のものを彼に貸しながらアキトに答える。
「ハメル少佐の警備隊たちは、先日からナイトメアの操縦訓練を自発的にしていましたので、アレクサンダに搭乗してもらいます。 アンナ達技術班によればドローンも数機ほどなら用意できるとのことです。 ですが、今回の私はドローンの操作だけでなく、全体の指揮を執るので
「ようするに、“サポート役”って奴ですかね────?」
「────やっとまともな意見を出したなおっさん────」
「────だから────」
「────なぁ? オレの乗る機体はねぇか?」
アシュレイがここで初めて食物から手を放し、手についたツナマヨなどを舌で舐めとりながら助っ人をレイラに申し出る。
「お前、それでいいのかよ?」
「オレが一緒に戦えば強いぜ。 少なくともそこのおっさんよりはな!」
「だから……はぁ~。」
ついにアシュレイの『おっさん』呼ばわりにツッコむ気が失せたのか、クラウスはため息を出す。
「その……相手は聖ミカエル騎士団、つまり貴方が元居た部隊ですよ?」
「シャイング卿はオレを殺そうとしたし、アキトには借りもある。 それに、あんた達にはおっかねぇ『
ヒョイ、パク。
「俺が取っておいた
「────うっめぇぇぇぇぇぇ! なんだこれ?! なんだよこれ?! 肉なのにバリバリしてて、甘酸っぱいソースが────」
「────あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「ミィ。」
「君は司令の猫のエリザ? ……おいで。」
「ニャーゴ♪」
骨を咥えた犬オオカミのようにキラキラと目を光らせるアシュレイに、頭を両手で抱えながら涙目になって心底悔しがるクラウスのやり取りと、エリザの鳴き声に注意先を映したアキトのドタバタ状態で、その場に漂っていた
………
……
…
聖ミカエル騎士団の本体でも感情にのまれなかった者たちや、三剣豪直属の部下たちはヴァイスボルフ城近くに仮の陣を張っていた。
「こいつの肘は駄目だ! 予備はあるか────?」
「────スクラップ機から取り出せ────!」
「────やっぱ補給がないのはきついな────」
「────しょうがねぇよ! 今やれることをやるしかないんだ、俺たちは!」
そこにはユキヤやスバルにやられた機体や怪我人を命がけで回収した場面が広がっており、ようやく森に張り巡らせられた悪質な(西暦をベースにした)罠の対応などに、ある程度慣れた者たちしか残っていなかった。
上記で整備に取り掛かる者たちが言いあうように、聖ミカエル騎士団は補給もないまま進軍を続けていたことで、
現代社会での戦争なら『普通』の行動なのだが、『騎士道』を重んじる者たちがそんな『追剥行為』のようなことをするのは、恐らく、ユーロ・ブリタニアでは初となるだろう。
誇れることではないが、そうするしかないのが現状である。
幸い
人間、意外とお腹一杯になれば、(一時的にだが)どんな状況下でも気分が向上する単純な生き物である。
シャアァァァァァ。
「(それでも、戦力低下と状況はかなり悪いことに変わりはない。)」
数日ぶりに熱いシャワーを浴びることが出来たジャンは、体だけでなく心も洗われるような気分の中でも副官として思考をやめなかった。
「(これはヒュウガ様もお気づきになられている筈。 それに────)」
“ペンドラゴンかニューロンドン、どちらを壊滅するかはまだ決めかねているので、その時になってからコインを投げる予定だ。”
ジャンの脳裏をよぎったのは、シンがレイラたちに答えた言葉だった。
「(────い、いや。 あれはきっと敵を動揺させるための話術のはずだ。)」
ジャンは『明らかにおかしい
カタン。
「(……ん?)」
ゴソゴソゴソゴソゴソ。
だからか、シャワー室のすぐ外で物音がしても即座に反応できず、耳をすませると今度は何かか物漁りをする音が聞こえたので、ジャンは近くの拳銃を手に取ってすぐに(全裸のまま)それを外の部屋で物音がする方向に構える。
「動くn────」
「────よぉジャン! 遅かったな、考え事か? ングングングング────」
「────んな?!」
ジャンが構えた銃のサイト先にいたのは、のんびり配給品の入った箱を漁って見つけた食物を口にしていたアシュレイだった。
「ングング……う~ん、シケた食べ物しか出てねぇなこっちは。」
しかもいまだにwZERO部隊の軍服のままで。
普通の乙女なら『きゃああ!』とか、あるいは『生きていたのか?!』とか、もしくは『外の警備の奴らはどうした?!』などの類を言うのだが、ジャンが口にしたのはそのどれでもなかった。
「何だ貴様その軍服は!? やはり裏切────!」
「────待った待った待った! ここに来たのはちょうどシャイング卿がいないのと、『同期』で『馴染み』のお前に言っておきたいことがあったからだ!」
ジャンはシャワーを出てふき取ることもしなかった水が濡れた髪を滴って、彼女はそれが目に入っても必死に瞬きをするのを我慢していた。
何せ飄々としているが、アシュレイは何度か生身の模擬戦で(しかも接近戦で)三剣豪に勝つほどの身体能力を持つ。
そんな彼が昼間にジャンが撃った銃弾をかわしたのも、それを表した一環でしかない。
つまり今ジャンがアシュレイに銃を構えて牽制していなければ、彼女が負ける可能性は高い。
『もしアシュレイの気が変わることがあれば』、との前提だが。
「話だと? …………せめてもの腐れ縁だ、聞いてやろう。」
よってジャンは『警備の者が気付くまでの時間稼ぎ』の選択をとった。
「ジャン。 俺より賢いお前のことだから、もう気付いているんじゃねぇか? “
言葉の代わりに、ジャンは拳銃を握る手をわずかに力ませる。
「どう言ったら良いのか分からねぇが、シャイング卿はまるで良くない
「────『アキト・ヒュウガ』とやらか。」
「おう、やっぱ知っていたかジャン。 いや……『ジャンヌ』だったっけ?」
ここでアシュレイはジャンを本名で呼びながら、パーカーを羽織ってからフードをかける。
「俺たちに手を貸したほうがいいぜ。 今のシャイング卿を助けられるとすれば、おそらく城の奴らだけだからな。」
「…………………………」
「俺やお前では無理だ。」
今までアシュレイが見せたことのない真摯かつ真剣な言葉に、ジャン────いや、ジャンヌは衝撃を受けて、部屋を出るアシュレイの後を追うことさえも忘れてしまう。
「(私は……私はどうすれば……)」
(´・ω・`; )