誤字報告、誠にありがとうございます。
お手数をおかけしております。 m(_ _)m
急展開ですが、楽しんでいただければ幸いです。
実は先ほどの爆発は、レイラが出した『城の放棄命令』と関係していた。
ほんの少しだけ時間を戻すと『このままでは泥沼化してしまう』と悟った彼女は城の放棄を決断し、ほかの者たちを避難させてクラウスとともに自爆コードを入力していた。
最終チェックと自爆スイッチの確認をしたレイラが外に出ると、気まずそうに髪を掻き毟りながらwZERO部隊をまとめていたクラウスを見る。
「どうしたのですか、ウォリック中佐?」
「あー、すぐ外にブリタニアの兵士たちがいてね? オレたち出るに出れないんすよ。 そんなブリタニアも、塔の壁の向こう側で繰り広げられているナイトメア戦で足止めされててね? 結局誰も無事に出られる感じじゃないんすよ。 どうしたものかねぇ~……」
クラウスは笑いを浮かべるが、事態は深刻だった。
何せこのままだと、自爆して半壊した塔は自分たちやブリタニアの兵士たちも巻き添えにしてしまうかもしれない。
「……『アポロンの馬車』────」
「────は時間がないっすから無理ですよ────」
「────いいえ。 城の地下中を張り巡らせている輸送システムを使い、『箱舟』と気球を使えば
「あー、そういえば────って“双方全員”?」
「ブリタニアの者たちにも、声を掛けます。」
「え。 司令、マジですか?」
「
クラウスは真剣な表情をするレイラを見てはポケットを漁り、白いハンカチを見つけて取り出す。
「んじゃま……ちょっくら行ってくるわ────」
「────ウォリック中佐、下手したら撃たれますよ?」
「う~ん……」
クラウスは周りを見る。
ここにいる男性陣は彼とジョウだけで、残りは全員女性(しかもほとんどが十代後半や二十代前半)。
防弾ベストや拳銃で武装はしているものの、ちゃんとした訓練を受けたのは実戦経験がないサラとオリビアのみで、元はと言えば“クラウスが情報を流したから今の状況がある”と言っても過言ではないことを、クラウスは思い浮かべていた。
「ま、たまにはオレにカッコぐらいつけさせてくださいよ。」
ヒラヒラとハンカチを先に出し、ブリタニアの注意を引いてからクラウスがそろりそろりと入り口の陰から出てくる。
「敵?!」
「一人か!」
「待て!」
どよめきの走る歩兵たちに、ブロンデッロが静止の声を出す。
「私は聖ミカエル騎士団、赤の団の隊長のフロンデッロである。 貴官はEUの者か?」
「ま、見ての通りEUの連合特殊部隊の副司令官。 名と階級はクラウス・ウォリック、中佐。 ウチの姫さんはやたらと人を死なせるのが嫌なんでね、アンタらにも生き残って欲しいそうで提案があるんだが……乗るかい?」
「提案だと? 先に使者たちを撃ったお前たちが、何を────」
「────オレの別名は『シュバルツバルトのモグラ』って言って、今までブリタニアに情報を売っていた身で仲裁のために出たんだが────」
「────なに────?」
「────あの場で、使者たちを撃ったのはシャイング卿だ。 EU製の銃を使ってな。」
「何────?!」
明らかに動揺をするブロンデッロ達に、手ごたえを見たクラウスは少しだけ安心しそうになるが、いかに今の自分が綱渡り状態かを再確認して気を引き締めた。
「────この城にある設備を使ってシャイング卿はこの世界を壊したいんだとさ、“だから停戦などあり得ない”とさ。 あの場にいた……えっと、『ジャン』つったっけ? そいつもスゴク動揺していた。
ま……オレが真実を言ったところで、それを信じる信じないはあんた達の問題だが、このままだとあんた達もオレたちもヤバいってだけ言いたい。」
「……これ以上、部下を死なせたくはない。 詳しい話を聞こう。」
「(ホッ。)」
ユーロ・ブリタニア、wZERO部隊双方が心身共に疲労していることもあった上に、最初からシンが総帥になったことを良く思っていなかった三剣豪とその部下たちだったから良かったものの、もしここにまだ
まさに幸運が重なった結果だった。
………
……
…
ギィン! ギギィン!
ヴァイスボルフ城の広い墓地に、耳に来る金属音が鳴り響く。
「兄さん、もうやめよう!」
金属音の元である一人は、小太刀を手に持ったアキト。
「まだだ! 私は、まだ────!」
もう一人はサーベルの柄に刀身が日本刀になっていた奇妙な剣を使い、負傷して瞼が開けられなくなった左目を無視するシンだった。
「────もう終わっているんだ、兄さん!」
原作でのアキトは自分に斬りかかってくるシンの猛攻を受けるので精一杯だったが、今作では様々な要因が違ったことでほぼ同等の攻防を繰り広げていた。
シンの視覚や距離感がダウンしたこともあるが、アヤノが(短い間ながらも)誰かから小太刀を用いた本格的な格闘戦を学び、よくアヤノの模擬戦相手になったアキトにもその技術は少なからず伝わっていた。
「『兄より優秀な弟』とまるで言いたいかのようだな────!」
「────俺は一度も兄さんよりも優秀なんて思ったことはない!」
小太刀を武器ではなく『体の一部』として使うアキトがほぼゼロ距離での体術をメインとした戦い方なのに対し、『西洋のサーベルの柄に和風の刀身』を手にしていたシンは、近距離で刀身のほとんどが使えない状態で、アキトの小太刀を金属部分である鍔や金属の頭などを器用に使って弾いていた。
これだけ見れば、シンが押されていると思えるがアキトは善戦していなかった。
元からの体格や膂力の違い、加えてアキトには『ヴェルキンゲトリクスに纏わりついていた何か』が今度はシンの体に纏わりついてその体を無理やり動かしているように見えており、致命的な攻撃を行うのを避けた結果、至る所に切り傷などを作っていた。
「昔に戻って! 思い出して! 兄さんは昔、母さんたちのために泣いていたじゃないか!」
「ッ。」
アキトが叫んだのは、一族全員に『自害せよ』と命令した後に気を失い、次に起きた時にはシンが親族の遺体だらけの部屋を見て、笑いながら涙を流した光景だった。
「(そうだ、オレはあの時……確かに泣いた。 だがあれは愛している者たちを救ったと悲しんで────“
そこでシンは感じた違和感に動きを止める。
「(待て、ならば何故、私はあの時に起き上がったアキトを見て、安堵しながらも“死ね”と命じた? なぜ、オレはアリスやマリアたちを悲しく思いながら愛しく────)────ウッ?!」
シンは自分の動機と心境の食い違いを今更ながら思い出して戸惑っていると、無事だった右目から激痛が生じて声を出してしまう。
「(いや違う、私は殺さねばならんのだ。 『この残酷な世界を生きることは苦痛でしかない』、それは悲しいことだ。 ならば……ならば……ならば私は皆を殺して神の国に送り……何故、オレは母さんたちの死を悲しんだ?)」
シンは思わず立ち眩みしそうなまま後ろへとよろけ出すが、先日のことが脳裏をよぎって彼は笑い出す。
「フ、フフフフフフ……もう、遅いんだよアキト。」
「兄さん────?」
「────さっきの爆発で
シンは自分の中で曇り始めていた決意を再確認するかのように叫ぶ。
「そうだ! アキト、お前で
「兄さん────?」
「────だから、私のために死ね────!」
『────お義兄様!』
両手を広げて今にも
「…………………………………………………………………………………………は?」
ヴァイスボルフ城の敷地にある森から、まるでパンケーキ状のレーダードームを頭部の代わりに取り付けた『アレクサンダ・スカイアイ』ならぬ『サザーランド・スカイアイ』が、手には白い旗を握りながら、MPA砲やミカエル騎士団の特攻などで穴の開いた防御壁の一部から内部へとランドスピナーを走らせていた。
『お義兄様!』
そんなサザーランド・スカイアイは傷だらけになりながらも対峙するアキトとシンを見かけると、搭乗者の一人が思わず外部スピーカーをオンにし、
すると案の定、シンの動きが止まって、少女は安堵しながら震える息を吐きだす。
「怖くはないか?」
震える少女に別の落ち着いた女性の声が呼びかけると、少女はキリッとした表情に変わりながら、両手を胸の前で重ね合わせて震えを止める。
「いいえ、これでも由緒正しきシャイング家の長女ですから! それにお義兄さまが私のことを案じて自棄になっているのなら、それを止める義務があります!」
「そうか。 なら私は頼まれた通り、シャイング家の君を守る『見届け人』となろう。」
「では、ハッチを開いてください。」
少女────アリスは開かれたサザーランド・スカイアイの非常用キュポラから身を乗り出して、シンと思われる人物に手を振る。
「お義兄様ぁぁぁ~!」
「う……ぁ……」
シンは遠くから聞こえるアリスの声に、安堵するどころか
【愛する者を殺せ。】
その一言が、シンの脳をハンマーのように叩く。
【取りこぼしがある。 殺せ。】
次第に声とともにシンの周りにある地面から、黒い影のような這い上がってズルズルと生きるコールタールのように彼の足元へ集まってくる。
【自分たちが死んでいるのに。】
【あそこに生き残りがある。】
【お前の確認不足だ。】
「や、やめろ……消えろこの亡者どもが!」
シンはすでに、アキトや近づいてくるナイトメアから自分の周りに群がってくる影を、持っていた剣で切りつける。
「クソ! クソ!」
シンはただただ剣を振るうが、いつもとは違って影は消えていくどころか量が増していく。
【契約違反。】
【契約違反。】
【契約違反。】
「来るなぁぁぁぁぁ!」
「兄さん────ウ゛ッ?!!」
シンはただただ自分に纏わりつき始める恐怖に足をもたつかせ、様子がおかしくなったシンに駆け寄って支えると、毎晩自分が見る悪夢を見────否。
朝昼晩と時間を問わずに
アキトは幼少にかけられたギアスで悪夢を見ていた。
だがもしそれが彼だけでなく、しかも度合いがさらに悪化していたら?
「(これが、兄さんに憑りついていたモノか────)────グワァァァァァ?!」
シンの体を支えていたアキトの体に、まるで新しい獲物を感知したアメーバのように『コールタールの影』が乗り移っていくと、アキトの脳を数百人以上と思われる『阿鼻叫喚の声』が襲う。
「兄さぁぁぁぁぁぁん!!!」
そんな痛みを含めたアキトの叫びに、シンはかつての灰色になりかけていた記憶が蘇る。
それは、かつてアキトという『新たに幼く扱いやすそうな次期当主候補』が生まれてから、『誰を次の日向家の当主にするのか』といううずめく陰謀でギスギスし始めた日向家をよく留守にしがちだったシンを、(子供の体力任せに)やっと探し出せたアキト。
『おにいちゃん────』
『────来るな!』
それまでどうしたら良いのか分からないシンは“泣く姿を見せたくない”という子供っぽい意地からアキトから距離を取ろうとするも、アキトはやっと見つけた兄をトテトテとした足取りで追う。
『おにいちゃん、もうかえろう?』
どれだけ聡くて、その所為で周りの者たちから大人のように扱われても、当時のシンはぎりぎり十代。
その時のアキトよりは賢くとも、まだまだ子供である。
『うるさい!』
そんなシンは自分の足にしがみつくアキトを無視して歩き出すと、足幅も体格も違う幼いアキトは倒れて顔を地面に打ってしまう。
『………………………………ふぇ。 ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!』
理不尽な(というか理解できない)痛みにアキトはすぐに泣きだしてしまい、シンは自分が八つ当たりをしたことにハッとする。
『な、泣くなよ────』
『────わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!』
『────泣くな! ……ほら、乗れ。』
シンの命令にも聞こえる声にアキトはピタリと泣くのをやめたことに、シンは戸惑いながら顔だけでなく足にも擦り傷があるアキトをおんぶする。
するとアキトは泣き止んだだけでなく、嬉しそうにシンの背中に額をぐりぐりと擦り付ける。
『えへへへへ~。 おにいちゃん、だいすき。』
そんな一途に自分を慕うアキトを『憎みの対象』から『守る対象』と認識して、その時まで気を張り詰めていたシンは久しぶりに安らぎを感じたそうな。
その少し後に『兄』として、当時の当主である父に『愛していると口にしているのになぜわざと苦しめ合うの?』という問いをかけることとなる。
『自分とアキトが向き合えるのなら、なぜもっと賢いはずの大人は出来ないのだろう』という考えから。
そして全てが狂いだした瞬間でもある。
【殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。】
「ッ……」
自分に命令するような声によって現在へと引き戻されたシンは息を吐きだして、目の前で苦しむアキトを見ては
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!!」
「────兄さん?!」
シンはこともあろうか、自分の痛む
【ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ】
「黙れぇぇぇぇぇ!!!」
【殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ────】
「────い、やだぁぁぁぁぁぁ!!!」
シンは拒否の言葉を叫びながら自らの目を抉り出すと、視界を失うと同時にさっきまで聞こえていた声も、自分の体を蝕むような重圧も感じなくなる。
「………………………………は、ははは。」
キィィィィン!
『お兄様!』
ザッザッザッザッザッザッザ!
「ヒュウガ様!」
シンは久しぶりの静寂さに痛みも忘れて無邪気な笑いを出していると、近づくナイトメアのランドスピナー音に自分を呼ぶアリス、そして降り積もる雪の上を走るジャンの声を
『痛い。』
気が付いた
まるでただそれだけが体と周りの大気を構成しているかのように錯覚させてしまうほどに、鈍痛が脳を支配する。
何せこうやって思考が動かせることと痛みを感じられることから、『生きている』ということは考えられるがクソ痛い。
もう目をつむったまま、意識を手放したいが……どうも体が温かい。
流血しているのなら、外はもう雪が降るぐらいの季節だから冷たい筈だ。
「ッ。」
目を開けようとしてようやく、瞼越しでも眩しい光に思わず腕を上げて腕で遮る。
「起きたか。」
そこに横から女性の声が────毒島の声がして脳を回転させる。
「毒島か。 間に合ったか?」
「その“間に合った”は何に対してだ?」
「全部だ。」
「私の考えの基準でいいのか?」
「ああ。」
というか結構しんどいからどうでもいい。
「『間に合った』と私が思えることは、主に三つだな。 『旧日本人の避難』、『だぶるぜろ部隊』とやらの安全確保、そして『シン・日向・シャイングの捕縛』だ。」
「誰も死んでいないか?」
「重傷者はいるが、死人が出たのは主にユーロ・ブリタニア側だけだと聞いている。」
「そうか。」
あああああ、良かったぁぁぁぁぁぁぁ!
一言だけを口にする裏で、俺は内心でかつてないほど安堵した。
今まではルルーシュとかバケモノ級の奴らが味方サイドにいたからある程度の補正はあったけれど、今回は基本的に俺がメインで動き回ったからな。
ブラックリベリオン時の
あれ?
そういえば────
「────ここは、どこだ?」
「城の、無事だった居住区だ。 幸い電力も医療機器もあるからな、“出発する前に皆で休もう”という意見でまだここに居座っている。」
……“出発する前?”
ああ、避難させた日本人たちの警護に戻る前の話か。
それにしてもクソ眠い。
「助かった。」
「これぐらい、君のやってきた事に比べれば何でもないさ。」
「少し寝る。」
「ああ、ゆっくりと休んでくれたまえ。」
毒島が出した了解の声をタイミングに、俺は『寝ろ』と自分に訴えてくる欲求のまま意識を手放した。
「ああ、ゆっくりと休んでくれたまえ。」
そう毒島が口にした直後、スバルの強張っていた体がリラックスしていくと同時に、筋肉で引き締めていた傷口からの流血で包帯などがジワリと赤くなる。
幸い、スバルが挙げた腕は鎮痛剤やビタミンを含めていた点滴が撃たれた方とは違う腕だったが、急に動いたことに毒島は肝を冷やした。
スバルの活躍などをリョウたちから聞いて、すでに冷えていたが。
「では、彼を頼む。」
そんな毒島はナース服に着替えていたケイトと交代してから病室を出て、通路の中を歩いてから会議室のような部屋の中に入ると、レイラたちがそこにいた。
スバルが気を失っている間、明らかに場慣れをした言動で彼女はその場を収めて、円滑に物事を進めるための手配などをした。
「それで、貴方がシュバールさんの知人とリョウたちの知り合いなのは理解しましたが……えっと────」
「────『毒島』でも『冴子』でもいい。 私はどちらでも構わないし、私に聞きたいのはそんなことではないだろう?」
毒島が横目で見るのは、明らかに『心ここにあらず』のようなものたち数人。
「聞きたいのは、彼の────スバルの目標だろ?」
それは無理もないだろう。
何せ一通りスバルの活躍などを聞けば、『一介の傭兵』の枠を優に超えてしまって『奇怪』のレベルにまで達していて、『納得』は出来てしまうが『信じられる』ようなものではない。
「まぁ……私やおじい様の憶測も入っているので、果たしてどこまで彼の真意を捉えているかも怪しいがな。」
「おじい様?」
「ああ、そういえば言っていなかったな。 『桐原泰三』だ。」
「「「ふぁ?!」」」
『元』が付くとはいえ、ここでエリア11が『日本』だったころからの重鎮の名が出て、wZERO部隊の何人かは奇妙な声を出してしまう。
「そこは別に大したことではないから話を進めるが────」
「「「「(────“そこは大したことない”って、どれだけ────?)」」」」
「────恐らくだが、スバルの最終的な目標は────」
言わずとも毒島の推測を聞いた者たちは唖然とし、各々がそれぞれの反応を示す様子に毒島はウキウキとした。
スバルが彼女の言ったことを聞いていれば、『なんでじゃい?!』と素っ頓狂な声を出して全否定をしていたかもしれないが、当の本人はスヤスヤと久方ぶりに熟睡していただけである。
…………
………
……
…
別の廃墟と化してから長らく人が出入りしていないような場所で、一人の青年らしき者が『とあるドクロ』を手にしながら芝居がかった声を出す。
「“生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ”、か。 ん? ああ、お帰り。」
青年が床から出てズルズルと這い上がる『影』にまるで古い友にかけるような声をかけると、『影』はスゥっと消えていく。
「さて、あの男にも声をかけるか。」
次の瞬間、ドクロは『ガタン!』と音を出しながら廃墟の地面に落ちては転がる。
…………
………
……
…
「トーチカよりナイトメア隊が出撃!」
電撃作戦でユーロ・ブリタニアの奥地へと侵入したスマイラスの軍は、頑なに話を聞かない頑固な部隊に足止めされていた。
「降伏より死を選んだようです。」
先頭を走っていたスマイラス個人の巨大陸上戦艦の中で部下の報告を傍らに、スマイラスはカメラの拡大を最大にして、トーチカの上で風に揺れる、ボロボロになっていたユーロ・ブリタニアの旗を見る。
「そのようだな。 全軍に強行────ん?!」
余裕満々だったスマイラスが急に血相を変えながら驚きの声を出したのは、周りの風景や人が急に止まったからである。
それはまるで時間が止まったかのような景色で、スマイラスは過去に一度だけこれを体験したことがあった。
「やぁ、ジーン・スマイラス。」
スマイラスが記憶をたどっていると、過去に聞いた声に内心冷や冷やしながらスマイラスは声がした方向を見る。
「君か……」
そこに立っていたのは長い金髪のまごうことなき美青年なのだが、スマイラスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「うたかたの夢はどうだったかな────?」
「────ま、待て!
美青年の言葉に、スマイラスは顔を青ざめながら席から立ち上がって抗議する。
「そうだね、
「……………………………………………………は?」
「敵の砲撃が向かっています!」
スマイラスは呆気に取られていると次の瞬間、部下の青年将校の焦る声に気が付く。
「どこからだ────?!」
「────ブリタニアの超長距離砲だ────!」
「────まさかそのために我々を奥地にまで誘っていた────?!」
「────回避を────!」
「────もう間に合いません────!」
「────砲撃、きます────!」
「────総員、衝撃に備えろ!」
巨大陸戦艦のブリッジにいたスマイラスは次々と自分の軍を襲う爆音と直撃を最後に、体が爆散する感覚とともに意識が拡散する。
『目は魂の窓である。』
ーレオナルド・ダ・ヴィンチ