小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お読みいただきありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!

スバルがやらかしてしまいます。 ご了承くださいますようお願い申しあげます。 (;´д`)ゞ


第131話 『言い方』、重要。 ついでに『見方』も。

「フゥ~。」

 

 俺はヴァイスボルフ城のほぼ無事だった居住区の二階から、窓の向こう側に広がる夜空を見上げながらため息を出す。

 

 ちょっと俺疲れちゃったよ、パトラッシュ。

 いや、原作風にすると確か“俺、疲れたよ。 なんだかとても眠いんだ” 、だっけ?

 

 眠気がないから使えないけど取り敢えず、いったん考えを整理しようか。

 

 ミルベル博士たちはブリタニア帝国に愛想を尽かして隠居生活するところを、マーヤたちが上手くスカウトできたのは僥倖だ。

 

 そのままだとテロリストになる線が強いからな、特にミルベル博士の場合。

 彼の憎悪に満ちた顔と、“ブリタニアは喉元に刃を立てられなければ身の危険が理解できない!”は印象的だったから、そこはよく覚えている。

 

 それもそうだろうな。

 ブリタニアは『貴族社会』と『実力主義』という、普段は反発しあう思想を上手く混入させているが、やはり帝国を実際に動かしている上級貴族たちは、戦など報告や数字でしか知らない。

 

 その上、帝国のトップである皇帝シャルルは政治に無関心。

 シュナイゼルやコーネリアは異例だ。

 

 というか今更感マシマシなのだが、どうやってマーヤは彼らを説得したの?

 聞きたいけれどあの『絶対何か裏があるニコニコ顔』はマジ怖い。

 

 今度マオ(女)辺りに聞くか────っと、脱線しかけた。

 

 何を考えていたんだっけ……

 

 ああ、ミルベルたちの引き抜き云々だった。

 思っていた以上にイレギュラーズも奮闘してくれたのは嬉しいが……

 未だに表舞台に出たがらないのはやはりずっと裏部隊として活動していたからか、必要以上に人の目を気にする。

 

 歳を考えれば、無理もないけどな。

 これが俺の知っている日本なら、一番年上のサンチアでさえ高一でほかは中学生だ。

 その所為でマーヤは彼女たちの面倒を見たがっている感じけどな。

 

 それとヴァイスボルフ城にある機体だが、ハメルたちとリョウたちのアレクサンダ達に損傷はあるが、動けるから日系人たちの避難の『護衛』として使うだろう。

 

 アシュレイはいつの間にか“ウチの奴ら呼んでくる!”って置き手紙をしていつの間にか姿を消していて、彼のレッドオーガは使える状態じゃない。

 

 俺の『試作型蒼天型・村正一式、武蔵タイプ(仮)』?

 

 …………………………………………フ。

 マイサンはこれ以上ないほど見事な戦死を遂げたよ。

 

 技術者たち全員が“修理するよりバラ(溶か)して一から仕上げ(リサイクルす)る方が早い”と言う意見が一致したので(ウキウキしたミルベル夫婦を先頭に)解体中でゴザル。

 

 えっと……

 あとは毒島か?

 

 彼女は避難させた日系人たちとリョウたちの引率をして、そんな彼らの為に『ガリア・グランデ』の改良と解析もミルベルたちがやってくれている。

 

 軍事施設はレイラが自爆させたから少し作業は遅れているが。

 

 あと、ユーロ・ブリタニアもブリタニア帝国もEUも、最近の事でまだ存在自体が秘匿されていたヴァイスボルフ城にまだ注目を向けていないが、ミカエル騎士団の生き残りを帰した以上は長くここに居座ることはできない。

 

 それとシンだが何故か盲目になっていた。

 どうやら自分の目を抉り出したらしいが、普通に怖いよ?!

『柱の〇』じゃないんだからさ?

 

『自分の目ブスリ』はかなり度胸がいるが、そのおかげか『自害せよギアス』も『皆死ねばいいんじゃい!』の精神も無くなって、比較的に穏やかな青年になって今は協力的だ。

 

 多分、義妹のアリスや義母のマリアが生きていたことも大きいだろうな。

『亡国のアキト』の描写だと、シンは彼女たちのことを本当に愛していたっぽいし。

 

 ちなみに一か八かだったが、アリスとマリアの二人にかけられたギアスは、どうやら『お互いに生きている姿を見る』事が『互いを殺せ』のトリガーだったらしい。

 

 正直、自信はなかったが原作『亡国のアキト』でもアリスとマリア・シャイングがマンフレディのような『自害』じゃなくて、『互いを殺し合う』という描写だったから『ワンチャン行けるか?』と思ったが……

 

 まぁ、結果的にオーライだったから良しとしよう。

 

 それと流石にダメージが大きかったからシンとはアキトと一緒に少ししか話せてないが、一瞬『誰やねんワレ?!』と叫びそうだった。

 

 『亡国のアキト時のシン』と、『現在のシン』が余りにもギャップあり過ぎ。

 

 何? 何なのあれ?

 詐欺?

 命名するのなら、『人格詐欺』という奴か?

 

 アキトは(静かに)泣いて懐かしがっていたが……

 余りにも『まとも』過ぎて、俺はドン引きしたよ。

 

 それと、俺がふと思っていた『シンはどこからギアスを手に入れた?』という疑問についてだが、思っていた以上に情報は得られなかった。

 

 そもそも本人(シン)曰く、“自分だけが聞こえる声が起きている間も眠っている間もずっと語りかけていた”、“気付いたら『自分の愛する者たちに自害の命令ができる』という不思議な納得感があった”……らしい。

 

 無理して識別するなら、『怨念系の呪いギアス』になるのか?

『亡国のアキト』の作中でも、シンのギアス会得は稀なケースみたいだったし。

 

 まぁ、今いくら考えても答えが出るわけがないから『保留』だ。

 

 あとラビエ親子博士たちが持ってきた試作段階のスーツ1つを、ソフィたち脳科学部とBRSを応用させて着用してみたが……

 

 完全にパワードスーツっぽい仕上げになったからかなり興奮した。

 

 ダルクの『ザ・パワー』には敵わないが、成人した大人ぐらいは動き回れるから現在筋肉&関節痛に苛まれる俺にとってはまたとない装備だ。

 

 ああ、そういやもう一件あったな。

 

『箱舟作戦』が行われたことで、ユーロ・ブリタニアに派遣されたと思われるスザクと洗脳されたルルーシュのことだが……俺は関わろうとしていない。

 

 原作通りだと、コードギアスの作品内でもかなり厄介かつ(状況にもよるが)俺の特典とも相性が悪いギアス能力者が二人を迎えに来ている筈だからな。

 

 そして俺以外の者を送っても、現時点でそいつは『任務に忠実なキリングマシーン』だから、侵入者や不審者が見つかり次第『即刻排除(死刑)』は間違いない。

 

 残念だが、初めから『原作の流れならばルルーシュの救出はR2時』と決めて────

 

 ────コン、コン。

 

 ん? ドアにノック?

 この時間に誰だろう?

 

『あの、夜遅くに申し訳ありません。 私です。 レイラです。』

 

 レイラ?

 なんだろう?

 

「ああ、鍵は開いているから入ってもいい。」

 

『では。』

 

 ドアを開かれると案の定、レイラがどこか複雑な顔をしながら入ってくる。

 

 ちなみにドアに鍵をかけていないのは、これから食堂に行って大人数分の炊き出しの下準備をする予定だったからだ。

 

 流石に日系人たちを桐原のじいさんに押し付けるとしても、今はここにいる。

 なら、俺に出来ることといえば彼らの腹を満たすことだ。

 人間である限り腹は減るし、その分だけ気も滅入る。

 

『不満を抑えるには腹と精神を満たせ』byナポレオンだっけ?

 

「変わった寝間着ですね?」

 

 俺のツナギを見たレイラの開口一番がそれかよ。

 って、奇麗好きなEUでは技術部でもツナギを使っていなかったな。

 エレメントプリンターとかで部品や備品をそのまま作らせて、機械が組みたてていたし。

 

「これは作業服だ。 旧日本人たちに非常食などを分配しているが、それでも腹を空かせている筈だからな。 これから食堂に行って、少ない食材で大勢を満足させるモノの準備をするところだった。」

 

「……どういうものを考えているか、聞いても?」

 

「作るとすれば、鍋だな。 寒い季節にはうってつけだ。」

 

 前に森の散歩(暗躍)がてらに釣りをした時に作った出汁を、こんな風に使うとは想像もしていなかったが。

 

「……流石に(現在)その先(未来)への計画を、常に()()()立てているだけ慣れていますね。」

 

「“昔から”?」

 

「ええ。 少し失礼だったかもしれませんが、貴方が今まで成した実績をサエコ(冴子)たちから聞きました。」

 

 毒島、俺の個人情報をむやみやたらと話すのはやめてくれないかな?

 

 それに実際の俺は結構、『方針だけは決めてほぼ行き当たりばったり』だと思うのだが……

 

 どちらにしても、やることは一つ。

 

 秘儀、『それっぽいことを言って凌ぐ』!

 

「……結果的にそうなっただけだ。」

 

「やはりそうですか……」

 

 そこでシュンとするレイラはツインテールのこともあって、なんだか叱られたネコみたいだな。

 もしくは『ショボーンネコ』。

 

「その様子ですと、果たして私が必要になるのか……」

 

 ……………………………………あー、うん。

 なるほど。

 ようやくレイラが何でここに来たのか、分かったような気がする。

 

 EUからwZERO部隊は『存在しない部隊』として扱われていて、原作通りならEUの政権を握ったスマイラスは謎の死を既に遂げている筈。

 

 だからwZERO部隊の皆に、俺は『近いうちにヴァイスボルフ城を出て組織に戻るが、行き先が無いのなら旧日本人たちと一緒に来るか?』という提案をしている。

 

 一応俺もEUに潜入した際に独自に調べたが、ヴァイスボルフ城に配置された人員のプロフィールなどは、見事にEUのデータベースから抹消されていた。

 

 例外は脳科学部だが、それも表向きは『EUの機密事項に携わっている』という理由で閲覧が実質不可能となっていた。

 

 実質上、ヴァイスボルフ城の皆はEU(の軍部)にとっては『存在しない者たち』。

 

 だからEUに戻ったとしても、軍属の者たちは後ろ盾も職も失くなっていて、完全に『ただの民間人』として扱われるだろう。

 

 なので家族持ちのクラウスや、クレメン・インダストリーの御令嬢であるアンナや、レイラに雇われただけの脳科学部のソフィたちはEUに残ると思っていたのだが……

 

 何故かwZERO部隊がそのまんま『アマルガム』への合流することに。

 

 予想以上の反応だったから嬉しいことなのだが、俺は毒島やマーヤが何を言って彼ら彼女らを説得させたのかがちょっと怖い。

 

 クラウスなんて最初は猛反対していたが、毒島と話した後にギャン泣きしながら握手をしてへこへこと頭を下げていたし。

 

 ここで追加するが、嬉しいと思う同じぐらいの気持ちで『なんでじゃい?!』とツッコミを入れたかった。

 

 何せ今のアマルガムに必要な人員が勢ぞろいいるからな、wZERO部隊には。

 俺がEUに来たのも『オルフェウスと接点を持つ次いでに何人か調略出来ないカナ~』という考えからだったし。

 

 でもその『EUに来た理由の一つ』の中核であるレイラが、『自分が果たして必要なのか?』と言ってくるのはかなり心外だ。

 

「何故、そう思う?」

 

 そう俺が問うと、レイラは目を逸らして自分の腕をギュッと掴む。

 

「私は、wZERO部隊の発案者ですが……あまりにも実力が無さ過ぎると、何度も痛感されました。」

 

 ……うん?

 

「私はナルヴァ作戦で前司令(アノウ)の暴走を止めることは愚か、多くの犠牲が出てやっと司令になれました。」

 

 いや、それはレイラが気にするものじゃない。

 EUが全面的に悪い。

 

「スロニムでは“出撃して現場の指揮を執る”と言いながら、大した戦果も命令も出せませんでした。」

 

 あれは内通者に作戦が筒抜けだったから、相手が精鋭部隊と戦場を事前に準備させたからであって初の出撃にしては上々だったぞ?

 

「ユーロ・ブリタニアの『箱舟の船団』も、真の目的を見破りましたがユキヤの機転が無ければワイバーン隊は全滅していてもおかしくはなく、ヴァイスボルフ城の防衛も貴方の活躍によるものでした。」

 

 ……………………………………あー。

 そのままだと被害がでかくなる可能性を潰していただけだが、確かにそう考えるとやり過ぎたかもしれない。

 

「私は飛び級で大学を出てから間もないまま『EUの歴史で最年少の中佐』とチヤホヤされ、『wZERO部隊の発案』で良い気になっていたただの世間知らずです。 私では……ほかの皆さんの足手まといになるだけかと……ですから……」

 

 Oh……

 自分の腕をギュッと掴んで悔しそうな弱気マックスの、見たことの無い儚げなレイラがおる。

 

「ですから……私が貴方たちと一緒に居る資格など────」

 

 アカン。

 

「────少し、良いか?」

 

 アカンヤツの流れだコレ。

 このままだと『さよならバイバイビー』される気がする!

 

「……」

 

 返事もしないぐらい、気がダウンしとる?!

 何か……何か言わないと!

 

 俺の『戦力を充実化させて端役に戻ってゆっくり出来るライフ』が遠ざかってしまう!

 

 うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 脳を! フル、回・転!

 考えるな、感じるんだ!

 

「“マルカル司令が足手まとい”かどうかを決めるのは、司令自身ではない。」

 

「え────?」

「────それを判断するのは、周りの者たちだ。 価値や資格を、勝手に自分で決めつけるな。」

 

 何せ、俺は知っているからな。

 

 原作でも今もレイラは実戦経験が浅いが、その割に軍事力などでは圧倒的すぎる敵や、実戦経験豊かなシンやジュリアス(ルルーシュ)などという『強者』から警戒されるほどの能力を持っているのを。

 

 だから化ける可能性と素質は、充分あるのだ。

 

「で、でも────」

「────司令には、司令しかできないことがある。」

 

 まとめるとレイラはカリスマ性と求心力、優れた戦術眼を生かした戦術指揮能力を持っているし、真面目過ぎるがちゃんとした文官としての才もある。

 

 全部まとめて、今のアマルガムに超が付くほど必要な人材だ。

 

 だから────

 

「────()()()、(アマルガムには)()()()。」

 

 「……へ。」

 

 レイラがポカンとする。

 

 もしかして聞こえなかったか?

 

 ()()()、(アマルガムには)()()()。」

 

 俺の安寧────ゲフンゲフン、()()()()()()()に!

 

「ッ……」

 

 アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ?!

 なんでそこでポロポロと静かに泣きだす↑のぉひょほぉぉぉぉぉぉ?!

 ナンデ?!

 

 やっぱり俺って『説得』とか、『励まし』とか下手くそすぎるのか?!

 口下手か俺は?!

 口下手でしたちくせう!

 

 もうどうしたら……

 ええいままよ、食らえ!

 イケメンにだけ許された秘儀、『頭をさりげなくかつ優しくポンポンナデナデ』!

 前回*1は物騒なアリス相手だっただけれど、レイラなら効果は────!

 

 ────ポン。

 ナデナデナデナデナデナデ。

 

「ッ……ッッ……ッ……」

 

 口を両手で覆って肩を震わせて更に事態が悪化。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 「お、お見苦しいところを見せました……」

 

「落ち着いたか?」

 

 「は、はい……」

 

 あれからどのぐらいの時間が経ったかわからないが、たぶん数分程度だろう。

 

 その間にレイラはただただ子供のようにしゃくりあげ、先ほどやっと恥ずかしい醜態を晒したことに気付いたのか、さっきからそっぽを向いて顔を上げていない。

 

 まぁ……無理もないわな。

 何時もの落ち着いた言動から想像しにくいが、現代だと高二でまだまだ17歳なのによくやっている。

 ただ環境から『大人として考えて振る舞え』と強いられているだけで、『子供』の枠にまだ充分入る。

 

 てか目が漫画などでよく見る『3』になるような腫れ具合か心配だな。

 

 涙の跡が残ったまま俺の部屋から出るレイラを見たら、最悪の場合勘違いされかねない。

 

「目────」

 「────しししし失礼しまっしゅ!」

 

 ドタドタドタドタドタ!

 ガチャ、バタン!

 

 俺が声をかけながら手を出すと、レイラはそっぽを向いたまま逃げるかのように立ち上がって、目にも止まらない速度で退室する。

 

 今は『Bダッシュ』どころか、『パタパ〇の羽根』を使った並みのスタートダッシュ必要無しの速さだったぞオイ。

 

 と言うか今のレイラ、何気に噛んだよね最後の方?

 

 ………………………………まぁ、なんか元気になったぽいから良いか!

 

 炊き出しの準備をして、帝都関連のメッセージが来るまでゆっくりしよう。

 

 時空的に、今から『R2』の間に描写されている作品と言えば『双貌のオズ』の競技KMFリーグイベントの筈だ。

 

 そこで、出来ればグリンダ騎士団の団員と接点を作りたい。

 

 このままだとグリンダ騎士団は、『ギアス嚮団の手先』というか『ブイブイ(VV)の私兵』に成り下がってしまう。

 

 しかもグリンダ騎士団は当初は『対テロ騎士団』だったのが、ブイブイ(VV)の口車にマリーベルが乗ってしまっては、『原作ブラックリベリオン時のスザク』みたいな『テロリストになるかもしれない危険分子は全て老若男女の例外なく全員排除』の凶行に出てしまう。

 

 しかもマリーベルはルルーシュ並みの頭脳の持ち主で、彼女自身も操縦技術はいい方だ。

 

 黒の騎士団が『正義の味方』で『民衆の希望』ならば、後のグリンダ騎士団は『反ブリタニア分子は魅奈檎露死(みなごろし)』を成して『恐怖政治』を強いることとなる。

 

 っと、胃がキリキリしだす前に胃薬服用だ。

 それにそこまでの未来を考えても仕方がない。

 何せ、色々と変わっているかもしれないからな。

 

 

 

 


 

 

 

 

 パタパタパタパタパタパタパタ。

 

 レイラは夜のヴァイスボルフ城の居住区内を息の続く限り走って、ようやく息切れを起こす寸前で立ち止まってから、息を整えて走る以前から力強く脈を打つ心臓を鎮めようと試みる。

 

「スゥ……ハァァァァ……」

 

『レイラ、必要だ。』

 

 カァァァァァ。

 

「~~~~~~。」

 

 レイラの脳裏に、先程スバルの言葉が蘇っては赤くなった頬を両手で覆いながら歩く。

 

「(あの言葉は……『wZERO部隊のレイラ』や『EUのレイラ中佐』、『貴族のレイラ・フォン・ブライスガウ』に向けられたものではなく……明確に、私……『個人のレイラ』のことを指したn────)」

 

 ────ゴッ!

 

 レイラは思わず曲がり角の壁に衝突すると視界中を星が散っていき、考え事は無理やり中断されて頬に置いていた手をヒリヒリと痛む額に当てる。

 

「……………………」

 

「よかったな────」

「────ひゃ?!」

 

 毒島の声が曲がり角の向こう側から来ると、レイラは猫背になりながらその場でジャンプをして体の向きを変える。

 

「(驚かされるネコそのものだな。)」

 

「さ、さ、さ、サエコさん?!」

 

「すまない、驚かすつもりはなかったのだ。 それに同い歳だからそう畏まることはない。」

 

「え?! 言動からてっきり年上かと……

 

 グサッ!

 

 レイラの小声に『年上』と書かれたメタな矢が毒島の胸を射抜き、彼女の笑みが引きつってしまう。

 

「んぐ……こ、今度のは天然からの発言か────」

「────え? なんです────?」

「────ま、まぁ良いではないか。 それにしても、初めてだぞ?」

 

「え? あ、えと? 何が“初めて”なんですか?」

 

「スバルは確かに才能がある。他の誰にも無いものがな。 そんな彼はとてつもない夢が……目標がある。」

 

 毒島はそう口にしながら、通路の窓に手を置いて外の景色を見る。

 

「だが、彼の瞳はたまに遥か遠くにある彼方を目指すあまり、自分の足元が見えていない時がある。 だから私やマーヤたちは、彼の意を出来るだけ読み取り、彼の手助けになれるよう行動している。」

 

 毒島は窓の外からレイラへと視線を移す。

 

「その過程の中で私たちは『感謝』や『評価』に『頼り』にされど……一度も“必要だ”と口にしたことは、私の知る限り今まで無かった。 そんな彼に、君はそこまで言わせたのだ。 その意味を、君は理解できるだろう?」

 

「……意味────?」

「────先ほど言ったようにスバルには才能がある。 その一つに、人を見る目に関してはあのおじい様(桐原)が舌を巻くほどなモノだ。 それに今だから言うが、私に“リョウたちを説得してくれ”と頼んだのも彼だ。」

 

「……え?」

 

 レイラは目を見開いてはパチクリとする。

 

「彼らはもともとスマイラス将軍を誘拐し、あわよくば『国外への脱出』。 または『EU軍に射殺される』覚悟で行動に出ようとしていた。 要するに自殺願望者だったのだよ、彼らは。 (まぁ、恐らくは『蜂屋長光』を所有するアヤノ君が目的だったと思うが。)」

 

「そんな……ことが────」

「────そこで不安がっている君に、彼が“必要だ”と言ったのならば、余程のことだと思う。 だから、君は自分をもっと評価すべきだ。」

 

「……それ、は……」

 

「スバルの歩もうとしている道は、異常なほどの困難に満ちている。 『茨の道』、と呼べばいいのか分からない程にな。」

 

「…………」

 

「それに、彼の目標は君の夢にも繋がっているのではないか?」

 

「え?! な、なぜそれを────?!」

「────単純なことだ。 私たちがスバルの意を読み取るように、彼という男は私たちの目標……『夢』を読み取っては叶えようとする節がある。 なら君にも、『その類の夢があっても不思議ではない』という考えだけさ。」

 

「「……………………………………」」

 

 夜の中で二人の間に静寂な時間だけが過ぎる。

 

「……そういえば、流暢なEU(フランス)語を喋るのですね?」

 

「うん? ああ、()()()()()()()()()()からな。 ()()()()()()()。」

 

「…………フフ。 ()()()()()()?」

 

「ああ。 ()()()()()()()()()()ぞ?」

 

 レイラと毒島は久しぶりに、笑顔(上部の笑み)を互いに浮かべていた。

 

 「ちょっとなにあれ怖い。」

 「絶対零度。 アブソリュートゼロ……楽器のリュート────ぐぇ。」

 「ちょっと黙ろうか、アキト?」

 

 曲がり角のさらに死角になる部分で、毒島とレイラに鉢合わせになりそうになってとっさに寄り掛かった壁が偶然にもへこんで、『亡国のアキト』の原作でリョウたちが徴兵されてヴァイスボルフ城から脱走するために使った隠し通路の入り口で、レイラたちのやり取りをアヤノとアキトがビビッて出るタイミングを完全に見失って見守っていた。

 

 余談ではあるが、『なんちゃって水炊き』に、日系人たちだけでなく城にいた皆が感心したそうな。

 

「……………………………………豆腐とマ〇ニーがない。」

 

「(だから俺はネコ型ロボットじゃない。)」

*1
47話より




( ゚д゚ ) (二回目
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