今度はスバル以外がやらかしてしまいます。 ご了承くださいますようお願い申しあげます。 (:.;゚;Д;゚;.:)ゞ
帝都ペンドラゴンにある宮殿を朝日が照らす中で、シュナイゼルはカノンに渡された書類に目を通していた。
「(さて、そろそろか。)」
コン、コン。
『自分です。』
「入りたまえ。」
ガチャ。
「枢木スザク、参りました。」
部屋のドアがノックされて向こう側からの声にシュナイゼルが応えると、ジュリアスの護衛任務の責任を皇帝の勅命で問われなかったスザクが入室する。
すると、彼は部屋の端で立っていた少年二人にチラリと横眼を向けてから、シュナイゼルに視線を戻し、背筋を伸ばす。
「帰国早々呼びつけて悪いね、枢木卿。 楽にしてくれ……といっても、聞かないだろうね君は。」
「ええ、自分はこのままで充分です。」
「疲れているだろうに……例の、軍師殿のことは残念だったね?」
『皇帝直属の軍師』だっただけに、宰相のシュナイゼルでさえジュリアスの詳細を聞くことは、“皇帝の使い”と称する者に『追及するのは禁止』などを言い渡されていた。
「……少々、自分
シュナイゼルはスザクとのわずかなやり取りと、彼の反応の仕方や仕草で『ジュリアス』という人物のことを推類していた。
「(なるほど……ジュリアス殿とやらは『リスクと使う“モノ”は最小に抑えて最大の効果を発揮させる』。 そして『イレギュラーな事態に対して脆い部分があった』、か。 惜しいな、私の臣下にならなくとも良い
シュナイゼルが手でジェスチャーすると、先ほどの少年たち────一人はスザク以上の長身で、中性的な顔をして髪を伸ばした褐色のレド・オフェン。そしてもう一人はスザクと同じ身長で、金髪碧眼色白の『シュネー・ヘクセン』────が胸に手を置いて敬礼する。
「今まで引き延ばしていたが、貴族の議員たちがそろそろ痺れを切らすところだったので、彼らを君の直属の騎士として付けた。」
「……」
「二人とも若いが、実力も人柄も確かだ。 親衛隊としての素質は充分あると私が保証しよう。」
一見すると『スザクの為に』と言う体だが────
「(首に鈴……だろうね。)」
────スザクは内心、嬉しくはなかった。
何せいくら鈍感な彼でも、こう何度もシュナイゼルとやり取りを続けていれば、彼からは『嫌な予感』しか出てこないことに気付く。
そして、彼の『嫌な予感』は大抵の場合、当たってしまう。
皇帝のシャルルでさえ、スザクには『宰相、
「これで一応、君の────『ラウンズの親衛隊』という形が出来上がる。 名称は好きにつけるといい。」
「イエス、ユアハイネス。」
「さて、二つ目のことだが……現在のEUの国はともかく、軍部が内部分裂を起こすかもしれないという情報が入っている。 もしもの場合に備えて、君たち三人にはベラルーシに向かってほしい。」
「軍部が内部分裂────?」
「────枢木卿、EUのジィーン・スマイラス将軍に何かあったのですか?」
ハテナマークを頭上に出すシュネーの独り言に、隣のレドがスザクに問いかける。
「……ジィーン・スマイラス将軍が戦死した。」
「なるほど……ありがとうございます。」
「???」
更にハテナマークを出すシュネーの疑問を失くすためにか、シュナイゼルが口を開ける。
「要するに、『徹底抗戦すべき』と『和平交渉すべき』という勢力に、EU軍が分かれる確率が高いということだ。 そして前者を叩けば、EUへの交渉カードになるとともに力を削げる。 そしてベラルーシでは、スマイラス将軍に代わる強硬派の支柱になる人物が、残存軍の再編成を行っている。 今まで彼らとやりあったユーロ・ブリタニアの情報通りだと、守りに関しては一流だ。 勿論、ユーロ・ブリタニアに送った正規兵で足りればそれに越したことはない。 だが万が一のことを考え、ラウンズの投入も視野に入れている。 分かったかい?」
「「「イエス、ユアハイネス!」」」
「では下がっていいよ。 こちらからまた連絡する。」
スザクたちが退室し、彼ら三人のブーツが通路内に響く音だけが続く。
言葉はなく、ただ静かな時間が過ぎると、スザクは自分をチラチラと盗み見るシュネーのことに気付く。
「どうした、シュネー?」
「へぁ?! あ、いえ! その……」
戸惑うシュネーはまさか、初っ端から名前で呼ばれるとは思っていなかった。
実は、彼は新大陸の(地方ではあるが)アイダホ地区内のヘクセン領の、ヘクセン家次期当主であり貴族である。
しかも、相手はラウンズとはいえ
「シュネーは恐らく、闘技場での活躍を思い出しただけでしょう。 あの立ち回りは見事なモノでしたから。」
「ああ、あの就任式のイザコザ時に二人もいたのかい?」
「ええ、枢木卿。 一応、中央から離れた場所でしたが。」
「そうか……それと、君たちの歳は幾つだい?」
「私は今年で17です。」
「オレはあと数か月で18になります。」
「そうか……じゃあ、何か食べに行かないか?」
「「…………………………はい?」」
「実は朝ごはん、まだなんだ。」
さっきまできびきびとした空気はどこに行ったのか、スザクの緩くなった雰囲気と突拍子もない提案(?)にポカンとする。
「ああ、ごめん。 まさか『
「「────コノエナイツ????」」
頭をかしげたシュネーとレドに対し、スザクは子供っぽい照れ顔をして頬を指で掻く。
「君たち親衛隊の名称だよ。」
「「ハァ……」」
よく分からないまま、新しく上司となったスザクにシュネーとレドはそのまま付き添ったそうな。
そしてシュナイゼルの予想通りに、EUの強硬派が唱える『自治を守るための徹底抗戦』の大義名分のもとに、多くのEU軍が馳せ参じることとなったことをスザクたちが聞くのは次の日だった。
………
……
…
『ベラルーシ戦線』と呼ばれている戦場に、シュナイゼルやスザクを乗せたG1ベースがユーロ・ブリタニア軍と合流して、共に『氷雪の荒鷹』の二つ名を持つロメロ・バルクライ将軍率いるEU軍がいると思われる場所に進軍していた。
「なぁレド? 枢木卿のことをどう思う?」
ナイトメア内での待機命令を出されて、自分たちにチューンした機体に乗り込むシュネーに不安そうなレドに問う。
「“どう”って?」
「茶化すな。 “あんな奴の部下になって、私たちは大丈夫なのか?”と私は聞いているんだ。 あいつはイレヴンだぞ?」
「確かに、枢木卿はイレヴンだが実力は本物だ。 それはもう就任式の決闘で見ただろう? それに宰相閣下が期待しているほどの────って、誰かに何か言われたのか?」
「『誰か』なんてものじゃないよレド! お父様や母様に親戚たちが全員、口をそろえて“ナンバーズの部下になるなんて一族の恥だ!”みたいな言い草だ!」
「ハァ……そんなことを言えば、オレなんて平民だぞシュネー?」
自分の行ったことにシュネーはギョッとして慌てる。
「あ、いやでも……君は
「────そんなオレでも、周りからいつも噂されているんだ。 “どうやって騎士に出世した。平民のくせに”って。」
「………………いや、私は────」
「────陰口を言う奴らは、実力がない連中ばかりだ────」
「────私は違う! 私はこんな話を君としたいわけじゃ────!」
「────分かっているよ。」
レドがニヒルな笑みを浮かべ、シュネーはからかわれていたことに複雑な顔を上げる。
「だ、だから茶化すな────!」
「────ハイハイ。」
実はこの二人、騎士学校からの同期である。
シュネーは貴族では珍しく、良い意味でも悪い意味でも『裏表が持てない程に不器用ながら、貴族の対面を気にせず周りと接して友情を人として重んじる』タイプである。
ナンバーズへの偏見や『平民は貴族の為に存在する精神』も彼自身の考えではなく、両親やブリタニアの社会の教えから由来していて彼自身は実際どうでもいい(というか面倒くさい)。
レドはブリタニア人だが平民で、ある意味スザクのように
勿論、基本的に貴族のみが入学する騎士学校では白い目で見られたり、苛めも受けていたが、シュネーの『
シュネーは淡いグレーのサザーランドにモヤモヤしながら乗りこむ。
彼が騎乗したのは『サザーランド・スナイパー(先行型)』で、本体はサザーランドのままだが右腕にもつリニアライフルと連結する独自のファクトスフィアで、後方支援からの射撃精度を上げている。
レドも乗り込むのは深いグレーのサザーランドであり、こちらは検証実験中のブレイズルミナスのシールドを左腕に付け、武器はランスロット・クラブの開発過程で生まれた銃剣付きの可変アサルトライフルを装備している。
尚『なんで銃剣?』という問いに、ロイドは『僕だって頭の悪そうで非現実的かつ効果的な武器を作れることを証明するんだぁぁぁぁぁ!』と、意味不明なことを叫びながら泣いていたそうな。
ドドォン……ドォン……
G1ベースの装甲越しでも聞こえてくる爆音が艦隊特有の砲撃戦の始まりを示し、レドとシュネーは出撃命令を受けてG1ベースを出て、スザクのランスロット・エアキャヴァルリーを先頭に敵陣に向かう。
『先行して敵の攪乱をします。』
それだけを言い残し、ランスロットはフロートユニットを噴射させて森林地帯を一気に出ては、敵のパンツァー・フンメルが陣を張っている丘を、敵の砲撃を避けながら突貫する。
『(流石ランスロット、いやラウンズか?! あれだけの敵陣を突破する機動力と実力……なんと────)────ハ?! お、後れを取るな! 我々も続くぞ!』
一瞬スザクの単騎特攻に呆気に取られていたシュネーは、移動しながらライフルで敵の機体を撃破していき────
ガキィン!
『────油断するなよシュネー。』
レドの機体がブレイズルミナスを展開してシュネーへの砲撃を防いで、アサルトライフルで弾幕を張る。
『油断ではない! 余裕だ! お前がいるからn────』
『────盾が展開型なのは少し、冷や冷やするな────』
『────人が話しているのに無視するな!』
シュネーとレドの部隊内通信を聞いていたスザクは苦笑いを浮かべるが、先ほどから感じる『嫌な予感』に悩まされていた。
「(おかしい。 敵陣への侵入が簡単すぎる。 これじゃあ、まるで────)」
『────うわぁぁぁぁ?!』
考え中のスザクに、友軍の慌てる通信とマップ画面に後方から次々と敵影らしき識別信号が出てくる。
『どうした?!』
『じ、地面の中から────!』
『────伏兵だ! 反転────!』
『────食らえ、ブリタニアァァァ!!!』
地面から数々のパンツァー・フンメルが出ては、背後を見せていたブリタニア軍に発砲し始めると、今では数少ないEUのリヴァイアサン級陸上戦艦の砲撃が雨霰のように降り注ぐ。
無論このような強襲をかけた友軍が敵と近ければ艦砲射撃をしないのが道理だが、ロメロ・バルクライ将軍と彼の部下たちはそれを承知の上で死兵となり、『無敵とうたわれるラウンズを殺す』という所業を成すためだけに作戦を行っていた。
よってパンツァー・フンメルは例外なく機能停止するまで戦い、いざとなれば接近してきたブリタニア軍に接近戦が不利なことを逆手にとって特攻をかけ、ブリタニア軍を躊躇させた。
『これはヤバいなレド!』
『こいつら、初めから死ぬ気で戦っている!』
『大丈夫かシュネー、レド!』
ドォン!!!
『『枢木卿?!』』
シュネーやレドは『コノエナイツ』としての初陣だが持ちこたえ、さっきまで敵陣の中心にいたスザクは引き返して瞬く間に二人にしがみついていたパンツアー・フンメルを無力化したが、敵の砲撃が近くで着弾する。
『ラウンズだ!』
『殺せぇぇぇぇぇ!』
『撃って撃って撃ちまくれぇぇぇ!』
「くッ! (このままじゃ、俺だけじゃなく皆が死────)」
【────生きろ!】
周りのEU軍すべてがスザクのランスロットを目視すると、全員が彼だけに集中攻撃を浴びさせた瞬間、死を覚悟したスザクはどこか懐かしい声を聞いたと思った矢先に意識がブツリと切れる。
「俺は、生きる!」
この日、ロメロ・バルクライ将軍率いるEU軍の大隊はシュナイゼルの一個小隊に完全敗北することとなる。
確かにシュナイゼルはラウンズであるジノ・ヴァインベルグ、アーニャ・アールストレイム、そしてルキアーノ・ブラッドリーを連れていたので、戦力的にブリタニアは有利だった。
だが彼らラウンズが投入された時点では敵は大方討伐され、将軍もルキアーノがあと一歩といったところで横からランスロットが沈黙化させていた。
このことに関して、ルキアーノは激怒して思わずランスロットに決闘を申し込むが、ジノの話術で『スザクの手柄』から『ラウンズの勝利』という風になだめられ、事は収まった。
「(……フム。)」
その様子を、シュナイゼルは鑑賞していた。
「(やはり枢木卿は、島の一件以来から時たま目覚ましい活躍をするようになった。 もしこれがゲフィオンディスターバーの副産物なら、マリーベルの筆頭騎士にも変化が出ているかもしれない……前回の調査では『異常無し』と返ってきたが、もう一度検査してもらおう。)」
「(あら、閣下が珍しくワクワクしているわ。 スザク君が無事だったからホッとしているのかしら?)」
そう思うカノンに『そんなことはないのである』と、彼の考えを察したものならばそうツッコむだろう。
……
…
シュナイゼルが珍しくウキウキしているほぼ同時刻のヴァイスボルフ城では『ガリア・グランデ』の改装が終わり、城を出立する際のスバルの目からハイライトが消えていた
「私が来たからには大船に乗ったつもりでいなさい!」
彼の前には『フフン!』と高らかなアホ毛がアーチを作ってハートマークにどや顔をして、持ってきた物資などを地面に置いてから腕を組むアンジュがいた。
「(その船が泥船の予感しかないのだが。)」
「安心してください、私も今回はご一緒しますから。」
そこにマーヤがニッコリとするが────
「(不安しかねぇぇぇぇぇぇ!!!)」
────スバルはポーカーフェイスを維持しながら内心焦り、とあることに気が付く。
「ちょっと待てアンジュ。 『客人』はどうした?」
「んぇ? ああ、あの子ならもう大丈夫っしょ! 仮にも英才教育と私たちから『常識』を習っているし、桐原さんもいるし!!」
「・ ・ ・」
スバルは静かに手を痛み出す腹の上に添えた。
「あの……」
そこにEU語から
「
「────ブフ?! しゅ、『シュバール』って────」
「────これから帰還するのではないのですか?」
スバルのあだ名(というか間違った発音)を聞いたアンジュは、思わずくぐもった笑いを出しそうになる。
「……ああ、しない。 これからブリタニア本国に潜入する。」
「「「「「ファ?!」」」」」
スバルの言葉を聞いた者たち(主にwZERO部隊)が、素っ頓狂な声を出す。
「うわぁ……やっぱ彼、面白いね♪」
「流石兄貴だ────」
「────“兄貴”?」
「オレだ。」
「
「そうだぞアキト。」
「なるほど。」
ベシ!
アヤノはアキトの頭を叩き、包帯をしたシンの腕をギュッとアリス・シャイングは力を入れて掴む。
「ヒュウガ様が何かジョークを言ったような気がする。」
「あら、久しぶりね。 あの子、たまに老け────コホン。 見た目にそぐわないことを言いますからね。」
そして別の場所でほかの者たちと一緒にいたジャンがそういうと、マリア・シャイングが懐かしく一言を出す。
……
…
ドドン、ドドン、ドドン、ドドン、ドドン!
エリア11を脱出した黒の騎士団の主な幹部たちが隠れ蓑としている、中華連邦の辺境にある一部で、今日もリズミカルな『誰かがサンドバッグを殴る』という日課をこなしていた。
ひっそりとした場所で、よく支援部隊の隊長として活躍していた井上が救護班のように端でスタンバイしていた。
箒と塵取りを壁にかけたすぐ横で。
彼女が見ている先では、汗が頬や特徴的な赤い髪を伝わせながら、一定間の時間差でボロボロのサンドバッグを殴るカレンがいた。
「フッ! フッ! フッ! フッ!」
肩を綺麗に撃ち抜かれていたとはいえ重症だった彼女は、ようやく数か月間感じていたイラつきを、最近ではリハビリ(という名のストレス発散)でぶつけていた。
「しっかし彼女、かなりスタミナありますねぇ~。」
「下手したら年の近いお前よりもありそうだぞ、朝比奈。」
「それはそれでちょっと傷つくかなぁ~……んで? 卜部さんからどうなの?」
そんなカレンを四聖剣の朝比奈と仙波は壁に背を預けながら、目覚ましのコーヒーを持って近づいてくる卜部に問いかける。
原作とは違い、藤堂が自ら囮になったことでブラックリベリオン時に四聖剣の四人の内三人が無事に脱出できていた。
「彼女はすごい人材だ。」
「だな。 ナイトメアの操縦技術に対人訓練……斬新な武術を仕込まれている感じで、卜部が『本気を出しても勝てるかどうか』と言わせるぐらいだからな。」
「へぇ~、そりゃまた……彼女がもう少し早く生まれていて、日本帝国軍にいたらね……って卜部さん、何しているの?」
「ん? 俺好みに味の調整だが?」
朝比奈が見たのはコーヒーのコップを片手に砂糖ではなく、
「いやいやいやいや! それはないだろう卜部?! おわっとととと! ええい、これでは“らて”と呼ばれるものではないか! ……胃が荒れないだろうか。」
ギョッとした仙波は、ミルクを入れる途中でツッコミをして思わず想定していた量以上に入れてしまったことに苦い顔をする。
「そうそう! 仙波さんの言う通りですよ! コーヒーに味噌なんて、邪道ですよ!」
仙波がウンウンと頷くきながら、新しいコーヒーをポットから入れなおす。
「コーヒーには醤油が基本でしょう?!」
「それも違────どわっちちちちちちちちちちちちち?!」
マイ醤油入れを出す朝比奈に仙波ツッコミを入れると、今度はポットのコーヒーが自分の手にかかってしまい、慌てだす。
ドン! バチン!
今まで以上に重い音に続いて布が破裂する音がピリピリとした大気に響く。
朝比奈、仙波、卜部は思わず音がした方向を見ると、ギラギラと血走った眼をしてサンドバッグに片手を埋め込ませたカレンに睨まれていることに気付き、三人の血の気が引いていく。
「ごめん。 ちょっと気が散るから黙っていてください。」
「「「ア、ハイ。」」」
「井上さん、次のサンドバッグを用意してくる。」
サァァァァァァァァァァァァァァァァァ。
カレンはサンドバッグカバーを貫通した拳を引くと、中から砂が滝のように出て床に落ちていき、四聖剣の三人はそそくさとその場を去る。
「うん、やはり味噌はいいな。 どんな日本人でも安らぎを感じる味だ。」
「いやいや、醤油でしょう。」
「(うぇ。)」
卜部は味噌、そして朝比奈は醤油がたっぷり入ったコーヒーを飲み、それを見た仙波は何とも言えない表情を浮かべ、井上は塵取りで拾い上げた砂を捨てに外へと出ていく。
「(なんだろう……スッゴイモヤモヤする。 CCもアンジュさんもなんか居なくなっているし、EUとブリタニア本国ではテロが起きるし……昴は、大丈夫だよね? ケガ……はしているかもしれないけれど……)」
胸にちくりとする痛みを息が乱れた所為にしながら、カレンは次のサンドバッグを設置してから、またもジャブをリハビリを再開するところで横から声がかかる。
「あの、水分補給をしなくてもいいんですか?」
「んぁ?」
カレンが横を見ると、そこには見慣れないピンクの髪を団子に上げ、サングラスと帽子をした少女がタオルと水を持っている姿が────
「(────あれ? 私この子を見たことあるような……) ああ、ありがとう。 お水だけ頂くよ。」
カレンは水の入ったペットボトルを受け取り、ジッと『見たことがあるような少女』を見る。
「え、えっと……何か────?」
────コロコロコロコロコロコロコロ。
そこにピンク色をした球体の何かが地面を転がって二人に近づいては音声を出す。
「ハロー!」
「あらピンクちゃん、ここまで追ってきたの?」
「(“ピンクちゃん”って、よくわからないネーミングセンスね。)」 ←ラッコのぬいぐるみを『タバタッチ』と命名した人
帽子とサングラスをした少女が球体をすくいあげると、球体は耳のようなものをパタパタさせる。
「……! 貴方は島の?!」
「(“島”?)」
「髪型が違うので気が付きませんでした!」
「
「ブフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ?!」
カレンは盛大に口に含んでいた水をふき出し、見事な霧で小さな虹を発生させた。
……
…
別の場所では、ぎっくり腰になって身動きが取れなくなった桐原が見つかって、黒の騎士団員は慌てていたそうな。
「(あの娘……やりおる!)」
そう桐原は思っていたが、『ギックリ腰の理由は単純に歳である』とここに記入したい。
次話から本格的に『オズ編(?)』のスタートを予定しております。 (汗