小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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『キリがいいところまで』と思いながら書き出してみると、予想より長めの次話となりました。 ( ;・・)

楽しんで頂ければ幸いです。 <(_ _)>


第134話 魔女とオズと陰謀と目の保養

 少しだけ時間はさかのぼり、スヴェンがヴァイスボルフ城を旅立つ当日へと戻る。

 

 その時のオルフェウスは先日、()()()男女と出会って最初こそ一触即発の雰囲気だったが、片割れの男性とズィーのおかげで交戦に至らず、言葉を交わすとお互いの目的が一致していることを知った。

 

 そんなオルフェウスは()()()事を聞き、使い捨て用に改造した携帯でとある番号にかけていた。

 

 ピリリ、ピリリ、ピリリ!

 

『もしもし、オズか?』

 

 コール音が数回続いてから相手が電話に出て、背景音がガヤガヤしていたが辛うじてガレス(スヴェン)*1の声は拾えた。

 

「ああ。 忙しそうだな、今話して大丈夫か?」

 

『少し待て、場所を変える…………どうした? プルートーンが動いたのか?』

 

()()()()()()の事もあったが、“お前と話したい”という奴が居る。」

 

 そう言いながらオルフェウスは電話をスピーカーにして、先日出会った女性に電話を渡す。

 

 先ほど『プルートーン』と聞いて拳に力を入れた『長髪を隠す為に帽子とサングラス』という下手簡素な変装をした、()()()()()()()()()に。

 

『俺と話したい────?』

「────お前が『ガレス』とやらか?」

 

『…………………………………………その、声は────』

「────よぉ、()()! 久しぶりだな!」

 

 男女の片割れである額に大きな傷が特徴的な男が、会話に元気よくかつニコニコしながら相手に対して親しく割り込んでくる。

 

「(“少年”? ……まさか────?)」

『────その声はダールトン将軍────?』

「────今は“アンドリュー”と名乗っている!」

 

 『…………()()かよ。』

 

 『ガレス』が小声で言った言葉に、オルフェウスの眉毛がピクリと反応する。

 

 今オルフェウスたちがいるのはユーロ・ブリタニアでも、砂漠の近く位置している場所だったからだ。

 

「ほぉ! 良く知っていたな、流石は少年────!」

「────“アンドリュー”は少し黙っていてくれ────」

「────あ────」

「────私は『ネリス』と称している者だ。」

 

『ネリス』と名乗ったコーネリアは会話の主導権をダールトンからもぎ取り、ダールトンは少しショボンとしながらズィーの居る場所へと歩く。

 

()()()()()()()()()()()()()()とオルf────『オズ』から聞いているが?」

 

『………………………………』

 

 実はコーネリア、スヴェンの思っていた通りに『オズO2』の原作で登場してユーフェミアの死因である『ギアス』を一人で追い求めている内に、ギアス饗団を探すオルフェウスと出会って共闘している。

 

 だが幸か不幸か、今作ではスヴェンが『行政特区日本』でやらかしたことで流れは大きく変わってしまっていた。

 

『コードギアス本編』ではルルーシュに操られて死亡するはずだったダールトンは生き残り、コーネリアも(通信越しで)ユーフェミアが生きていたことを知ったことで、復讐に狂う事がなかった。

 この二人が一緒に放浪したことで行動も範囲も原作より広まり、交渉とコミュ力が高いダールトンのおかげで二人は自然と都会の民衆に溶け込み、コーネリアの武人としての腕っぷしで裏社会の情報収集は捗り、いち早く『ギアス』へとたどり着いた。

 

 その結果、コーネリアとダールトンはオルフェウスとズィーたちに『オズ』の一期中に出会った。

 

 そしてその二人が次の隠れ家を探している内に偶然にも入り込んだ薄暗い建物の中で、オルフェウスの機体である白炎を紅蓮と間違えて身構えてしまい、今にも互いを攻撃しそうになっていたじゃじゃ馬のオルフェウスとコーネリアをズィーとダールトンがなだめた。

 

 そこからお互い話して見ると、双方が追い求めているものが最終的にギアス饗団であると分かったことで協力関係を結んだ。

 

 その会話で『ガレス(スヴェン)』のような人物がコーネリア側からも出たことで、『もしかして』と思ってオルフェウスは電話をかけ、コーネリアに話をさせていた。

 

 なお余談だがスヴェンの内心は完全『宇宙猫』と『どないしよ』がコンクリートミキサーにぶちまけられた様子だった。

 

『……ああ。』

 

「(やはりそうか。)」

 

「どこまで知っている?  それに先ほど口にした『プルートーン』……どのような関係だ? もしや貴様、その一員ではあるまいな────?」

 『────断じて違う。』

 

「そうやすやすと信じられるか────!」

『────“ユフィ”に誓って、違う。』

 

 スヴェンの言葉を聞いた瞬間、ミシミシと嫌な音がコーネリアの持っていた携帯から発せられる。

 

 「貴様……その名を軽々しく出すな────!」

『────後宮に迷い込んだネコではしゃぐユーフェミアを見てから、有り合わせの物で猫耳を────』

 「────ウッ?!」

 

 コーネリアは固まり、顔を真っ赤にさせる。

 

 「貴様どこで……いや何故それを────?!」

「────()()()から聞いた……と言えばわかるか?」

 

 ここでコーネリアの中でスヴェンが言った『当事者』、先ほどダールトンが『少年』と相手を呼んだことと、ユーフェミアが通信越しに言った『知り合い』*2といった、バラバラだった点が全てコーネリアの中で繋がり始める。

 

「まさか……お前が────?」

『────ああ。 それと、“彼女は元気にしている”と仲間から聞いている。』

 

「……そう、か……」

 

 コーネリアは胸が締め付けられるような感覚と安堵から思わず涙腺が緩みそうになるが、彼女はそれ等を気力で無理やり押し戻す。

 

「礼を、言おう。 だが……さっきの質問に答えてもらおうか?」

 

『“どこまで知っている”となれば、“超人的な現象を起こすギアスと呼ばれる能力を備え付ける人体実験が、帝国の一部で黙認されているだけでなく、金や物資に人員も横流しされて行われていること”と、“それを行っている組織の傘下にプルートーンという実行部隊がいること”だな。 “関係”なら、間違いなく“敵対関係”だ。 ()()()()()()()からな────』

「────探してどうする?」

 

『無論、人体実験の被害者を救出し組織を壊滅させる。』

 

「その組織とやらの拠点は、どこにあるか分かるか?」

 

『……………………ただの憶測だが、ブリタニア本国は、余計なリスクや発覚する恐れがあるとふんでいる。 新大陸は広大な土地で可能性はあるが、まだまだ開拓される余地はあるので、隠すとすれば都市の中に組み込まれるだろうが……“人体実験”だけにこちらも可能性は低い。 あとはEUとユーロ・ブリタニアだが、こちらで探ったそれらしい場所は、既にもぬけの殻だった。』

 

「(なるほど、(オルフェウス)と同じか。)」

 

 ここでオルフェウスが思い浮かべたのは彼自身がEUに来た理由である、過去にとある噂されていた一族が住んでいた屋敷だった。

 

 その噂とは『悪魔と契約して超人的な力を得た』ものと、『行けば帰らぬ人となる』閉鎖的なモノの二つで、『それ等がもしギアス饗団の事なら』と思ったオルフェウスは屋敷を訪れたが、()()()()火が放たれたような跡地となっていて、殆んど何も残っていなかった。

 

「そうなると……中華連邦が匂おうな。」

 

『……そうだな。 中華連邦ならば、大宦官や自治を許されている軍人に賄賂を渡すだけで事が済む。 だが新大陸以上に広大で、まだまだ未開拓地特有の危険がある────』

 

「────お前は何故、ギアスを追う? 動機はなんだ?」

 

『何人かの被害者と遭遇し、理不尽な悲劇を知った。 それだけだ。』

 

「(何だと?)」

 

 オルフェウスは一瞬、自分の耳を疑った。

 何せ彼が今まで見てきた人間は、表面上でニコニコして隣人同士に親切ながらも、魔がさせば平気で売り渡すような生き物だ。

 

 現にギアス饗団の『調整』が完成する前にオルフェウスは恋人と脱走し、ひっそりとハンガリーにある小さな村で暮らしていたところを、隣人のおばあさんが二人を追っていたプルートーンに金貨を交換条件に売り飛ばしていた。

 

 結局その村は丸ごとプルートーンに焼かれて元居た住民全員は殺されたが、その所為でオルフェウスは『最愛の人』と『第二の故郷』を同時に()くした。

 

「(それだけの為に……他人の為に、こいつは────)」

『────すまない、時間だ。』

 

 これを聞いたオルフェウスは思わず口を開ける。

 

「お前は、()()味方か? 敵か? それとも────?」

『────()()、だな。』

 

 それを最後に、スヴェン側から連絡が切れる。

 

「「……………………」」

 

「おーい! 移動するぞー!」

 

 オルフェウスとコーネリアはそれぞれ複雑な心境のまま携帯を見ていると、ズィーの声がかかって二人は心を入れ替える。

 

「……どうやらギアス饗団の拠点が中華連邦にいる線が強まったな。」

 

「ああ。 広いが、さほど問題ではない。」

 

「当てがあるのか、ネリス?」

 

「単純な話だ。 お前から聞いたギアス饗団はそれなりのサイズの組織。 強大であると同時に、規模が大きくなればなるほどならば自ずと痕跡は必ず残してしまうモノだ。 物資の流通に、電力の供給、通信記録などの流れをパターン化させれば、索敵範囲はかなり絞り込められるだろう。」

 

「流石は『魔女』と呼ばれるだけあるな。」

 

 コーネリアはオルフェウスが自分の事を魔女と呼んだことに一瞬ギョッとするが、それも数秒間の間だけで納得したような顔になる。

 

「なるほど、聡いな。 流石ブリタニア帝国に喧嘩を売るだけはある。」

 

「お前とお前の部隊の所為で、何度も死にかけたがな。」

 

「それはお互い様だ。 お前たちピースマークの所為で、各エリアを平定するのにどれだけ苦労したか。」

 

 不思議な因果の引き合いで、原作より早く『ブリタニアの魔女』は『幻術使いのオズ』と出会い、行動を共にすることとなる。

 

「今日も平和だねぇ~。」

「お前も苦労しているな、『アンダーグラウンドの虎』。」

「随分前に引退したはずなんだがねぇ……久しぶりにその名を聞いたよ?」

「オレも一時期は『アンダーグラウンドファイター』だったからな。」

「へぇー? おたくの顔の傷はそれの名残かい?」

「ああ。」

 

 そしてここに会う事もなく、本来はあり得ることの無い二人(の苦労人)が意気投合し、『オズ』だけに四人は中華連邦方面へと旅立つ。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ただいま、ニーナ。」

 

「久しぶりだね。」

 

 場所は帝都ペンドラゴン……ではなく、『チーム・インヴォーク』が拠点にしている新大陸のダラス研究所に、カノンとシュナイゼルは訪れていた。

 

「カ、カノンさんにシュナイゼル殿下?!」

 

 そして声をかけられて事前の連絡もなかった、白衣を着て“作業の邪魔になるから”と前髪をヘアバンドで上げたニーナが慌てる。

 

「ニーナ、何そのそれ?」

 

「あ、えっとこれはその────!」

「────禿げちゃうわよ?」

 

「ひぅ?!」

 

「それよりも、例の……『アトミックパワー(原子力発電)』と呼んでいるモノだけれど、進歩はどうだい?」

 

「最初の試作段階の小さなものから、スケールを大きくすればするほどに難航していましたが、最近は安定した電力を供給できるような段階になりつつあります。 まだ小規模な町ほどだけですが……」

 

「なるほど、それは凄いね。 今の太陽光発電システムも、そろそろ『時代遅れ』になるのかもしれないね。 ところでニーナ君、やはりこれをナイトメアに搭載────」

「────ごめんなさい……」

 

 先ほどまでウキウキしていたニーナの表情が曇り、彼女は申し訳なさそうに目を逸らす。

 

「手を差し伸べてくれて評価してくださるシュナイゼル殿下に恩はありますが……『ウランの兵器化』だけはダメです。」

 

「そうか、それは残念だ。これが兵器として運用化されれば世界は確実に変わる……ッ。」

 

 ここで珍しく、ニーナは意志の強い視線をシュナイゼルに向ける。

 

「そうなれば、私は辞任します。 私が『アトミックパワー(原子力発電)』を開発しているのは、誰も傷つけず、かつ法的にも道を踏み外さずに仕返しが出来るからです。 いくらシュナイゼル殿下でも、このスタンスは譲れません。」

 

 ……

 …

 

「フゥー……」

 

 シュナイゼルは窓の外の景色を見てため息を出す。

 

「意外ね、殿下でも気圧される時もあるのね。 てっきり何時もの笑みを浮かべてやり過ごすのかと思ったわ。」

 

「私も最初はそうするつもりだったのだがね……彼女の精神的な成長にビックリしただけだよ。」

 

「そうね……彼女、強くなったわね……」

 

 シュナイゼルは報告書や、以前のニーナを知っている者たちの証言を思い出す。

 

『人見知り』、『男性恐怖症』、『引っ込み思案』、などなど。

 

「(それが今ではどうだ? 『アトミックパワー(原子力発電)』の兵器化に関してだけだが、ブリタニア宰相の私や、他の研究者に正面切って意見を言えるようになっている……『何』が彼女をそこまで変えた? そして、私も『それ』と相対すれば果たして…………………………)」

 

「それにしても、殿下も人が悪いわね。 あの子があれだけ嫌がっているのに、あの……『ガニメデ』? についていたものを別チームで開発を進ませているんだもの────」

「────心外だね。 私は『可能性のあるモノ』をこの目で見て、無視できるほど慢心してはいないよ? それが例え人であろうと、技術であろうとね。 理論上だけれど、『アレ』の開発が終われば()()()()()()だろうさ。」

 

 ……

 …

 

「スゲェ……」

「いつもはオドオド感があるのに……」

「流石主任(チーフ)……」

 

『チーム・インヴォーク』のメンバーたちはひそひそと、先ほどのニーナのことを話す。

 

 シュナイゼルたちに対して強気になっていたのも『ウランの兵器化』が絡んでいただけで、本来の彼女は『何時ものニーナ』に近かった。

 

 ただ、原子力発電の実用化が近づくにつれて『自信』を持ち合わせ始めたのは確かである。

 

「フゥ~……私は少し、仮眠を取ってきます。」

 

 そう言ってニーナはフラフラ~と退室し、広大な研究所内を走るリニアカーに乗って自分用の住区へと着くと、そのまま自室へ上がり、白衣と上着を脱ぎ捨ててベッドの中へ滑るように潜り込む。

 

「…………………………」

 

 彼女はベッドに寝転がって、窓から入ってくる日光を遮るために手を顔の前にかざすと、腕が震えていることにここで初めて気が付く。

 

「(……やっぱり、まだ怖い……でも……頑張る。)」

 

 彼女はそう自分に言い聞かせながら、アッシュフォード学園を────否。 ()()()()()()思い浮かべる。

 

「…………………………………………………………………………………………ん♡

 

 ニーナは目をつむり毛布の中でもぞもぞしながらくぐもった声を出すと、頬が次第にと紅潮していく。

 

 

 


 

 

 ブリタニア帝国が世界に誇れるほどの大規模な闘技場セントラル・ハレー・スタジアムでは、かつてのローマ帝国で流行った『戦車競走』ならぬ、ナイトメアを使った『ジョスト&フォーメーション』の練習などが本イベント前に行われていた。

 

 ドガッ! バキ! ガシャァァァァン

 

「「「きゃあああ?!」」」

「「「おおおおお!!!」」」

「「「やっぱりクラッシュ(大破)は最高だぜ!」」」

 

 対峙するチームの競技用ナイトメアの『プライウェン』が激しくお互いを攻撃した末に、一機が大破して盛大な音を立てながら倒れてしまうと、観客がそれぞれの反応を示す。

 

 ある者は中のパイロットの安否を心配し、ある者は興奮し、ある者は行われる破壊行動に感心を示す。

 

「そこだぁぁぁぁぁ! 行けぇぇぇ! ぶっ殺せぇぇぇぇぇ!」

 

 そして(スバル)の隣では、完全に場の雰囲気の所為でネコかぶりをやめて素が出ているアンジュがいる。

 

 いやもう……気持ちは分からなくもないが、偵察作戦だと忘れていないかこいつ?

 

 RPI-13/G『プライウェン』、払い下げのグラスゴーを競技用に改修した機体で、出力は本来の4割程度。

 とはいえ、完全に民間の運搬用に改造された『MR-1』と違って元軍用の名残は残してある。

 マグネットハーケンに電磁ブレード、電磁ナックルガードや競技用の武器類など。

 

 だが競技KMFリーグで俺自身が一番見たいのは────お、噂をすれば大破したプライウェンから女性パイロットが出てきて、無事だということを証明するために手を大きく振る。

 

 ……………………フム。

 

 今回のチームユニフォームは、サイハイブーツにマイクロビキニタイプか。

 

 ムヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!

 ええのぉぉぉぉぉ~~~♡

 

 スタイル抜群の双山が、彼女の手を振る動作につられて左右にユッサユッサユッサ~♪

 

 ちなみに『偵察』と俺は言ったが、胸の中は久しぶりの癒しとミルベル博士を引き抜いたことで、かなり穏やかな気持ちで堪能している。

 

 まぁコーネリアのこととかは、モラトリアムだが考えないようにしよう。

 

 ウン、ソウシヨウ。

 

 ん? 『なんでここでミルベル博士が出てくる?』かだって?

 

 ブリタニアに幻滅したミルベルはテロと起こすと前に言ったが、『オズ』の一部をぶっちゃけると、ブリタニアの現政府などに不満を持った軍人や、元からいた反ブリタニアのテログループをまとめた()()()()()()テログループは反旗を翻す。

 

 これにグリンダ騎士団は武力的鎮圧を命じられて、ミルベルたちと対峙した際に、前線に出ていたミルベルは『皇帝シャルルは世界への関心が皆無』と訴える。

 

 コードギアスの世界である意味『かなり最後まで秘匿された真実』を、ミルベルは皇帝との謁見で直感的に感じ取れたが、訴えた相手はマリーベルの『テロは断固として粛清対象』の元に設立されたグリンダ騎士団。

 

 聞く耳を持たない彼らによって、ミルベル博士の訴えはむなしく、他の誰にも聞かれないまま消えた。

 

 と思いきや、ミルベル博士の志を引き継いだテログループの残党はこの『グリンダ騎士団デモンストレーションイベント』を利用して、グリンダ騎士団に一矢報いようとする。

 

 だがさっきも言ったようにミルベル博士がテロリストになる前に俺が手を打った。

 テロ組織はいずれ結成されるかもしれないが、『ウィルバー・ミルベル』という指揮官としても組織のまとめ役としても技術者としても有能なオールラウンダーのトップがいないから、タイミングはズレる筈だろう。

 

 という訳で、イベント会場のスタジアムはテロ攻撃があっても無くとも構造は変わらないから偵察は超有能なマーヤに任して、現在の俺は癒しを求めて目の保養成分を充・電・中♡

 

 アンジュもカモフラージュとして連れてきたが、意外とのめり────ムォホホホホホホホホホホホ♡

 

 控えめなボディにローファーとニーソにVワイヤー・バンドゥタイプとは……やりおりますなぁ~♡

 

 

 


 

 

「……………………」

 

「団長、確認が取れました。 やはり三名だけ当日に来ます。」

 

「三名、か。 宰相閣下は?」

 

「“当日は外せない別件にとりかかっている”とのことです。」

 

 セントラル・ハレー・スタジアムで行われる、グリンダ騎士団をメインとしたスペシャルイベントには、エリア11以来皇族が公式に集まることとなっている。

 

 一人はグリンダ騎士団の発案者であるマリーベル。

 二人目は『シュナイゼルの代行』としてオデュッセウス。

 そして三人目はホンコン租界を統括している一方で、セントラル・ハレー・スタジアムなどのペンドラゴンでの娯楽施設の運営も任されている、第5皇女であるカリーヌ・ネ・ブリタニア。

 

「そうか、報告ご苦労。 (シュナイゼル、最後の最後で予定変更とは……)」

 

 帝都ペンドラゴンの要人警備騎士団団長であるアレクセイ・アーザル・アルハヌスは、アンニュイな心境でスタジアム内の様子を警護室から見ていた。

 

「(もしや、勘付かれたか? だとしても、決行することに変わりはない。 幸い、『帝都防衛強化』の為に、バミューダ軍事要塞島から正式な手続きで同志たちを呼び寄せることが出来た。 それにシュタイナー・コンツェルンにいた仲間たちによって航空戦力も確保できた。 やるなら今しか────)」

 

 ────コン、コン。

 

「ん────?」

「────失礼します団長。」

「当日搬入されるランスロットタイプの許可署名、お願いしまーす!」

 

 アルハヌスは横からの団員とスタジアムのスタッフらしき声に、ため息を出しそうになる。

 

「(全く……のほほんとオデュッセウス様のような御仁も面倒だが、カリーヌ様のような人使いの荒い────────ん? 見ない顔だな?)」

 

 アルハヌスが声の方を見ると、騎士団員の左右に見慣れない少女たちが二人いたことに戸惑う。

 

「『アレクセイ・アーザル・アルハヌス────』」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「………………………………」

 

『金色の光に照らされた空間』と呼ぶしかない、階段や祭壇のような場所が浮遊する場所に皇帝シャルルは静かに立っていた。

 

「ふんふふふ~ん♪ やぁシャルル、不機嫌そうだね♪」

 

 いかついシャルルの背後からVVが親しく話しかけると、シャルルはのっそりとした動作で振り返る。

 

「兄上……“ユーロ・ブリタニアに使者を送った”という話は真ですかな?」

 

「うん? そりゃあね。 『ルルーシュというCCを釣る最大の餌が手元にある』と思ったら、いつの間にかユーロ・ブリタニアに送られているんだもの。 シャルルこそルルーシュをユーロ・ブリタニアに送るなんて、意地悪だな。」

 

「私のギアスの『どこまでの改竄が限界か』の試行錯誤です。」

 

「あれだけエリア11の子たちにバンバン使ったのに?」

 

「単純な使用だけで、立場上私が自身のギアスを理解できずに使いすぎるのも厄介でしょう。 そこに丁度『ルルーシュ』が転がりこんで来ただけのことです。 結果はもうすでに知っているかと思いますが。」

 

「ふぅ~ん? ……それなら良いけど。 じゃあ結果を知っているわけだし、僕の方でルルーシュを預かって餌にして良いかな?」

 

「元より、私より兄さんの方がこういう事柄について詳しいので、聞く必要はないでしょうに……さっきの仕返しですかな?」

 

「そうだよ。 だって僕たち約束したじゃない、『嘘をつかない』って。 なら前もって確認を取らなきゃね。」

 

「そうですな。」

 

「ああ、それとシャルル?」

 

「なんでしょう、兄さん?」

 

「シャルルだから言うけれど、()()()()()ね? ()()()()()()。」

 

「分かりました。 兄さんの忠告、肝に銘じておきましょう。」

 

 シャルルはVVを見送り、彼の姿と気配が消えたことを確認してから再び正面を向く。

 

「(やはり『暗躍』に関して上手か……大丈夫だ。 これも許容範囲ではあるが、やはり国政には関心を示さない態度は痛かったな……困ったものだ。 なぁ? 

 

 

 

 

 

 

 

 ()よ?)」

*1
ユーロ・ブリタニアでオルフェウスと会った時にスヴェンが使った偽名

*2
77話より




○○ニーナ、降臨。 (;- -)

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