小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第142話 怪我と痛みの先に

 セントラル・ハレー・スタジアムとその周辺、そして大西洋からペンドラゴンを襲おうとしていたクーデター派(タレイランの翼)の闘争心はアルハヌスの自決のニュースが広がるにつれて失われ、徐々に組織は空中分解していった。

 

『最後まで抵抗すべし』と考えた者たちの犯行に彼らは文字通り死兵となり、ブリタニアの駐留軍と海軍の戦力は組織の長い歴史内でも大きな損害を出してしまった。

 

 それは悲しくも、アルハヌスやタレイランの翼が求めていた結果とは裏腹にペンドラゴンの市民は肌で危機を感じてしまい、身の安全という名目で後日提案された更なる軍の拡大化と強化を支持した。

 

「(“すべてはお兄様(シュナイゼル)の掌の上”……か。)」

 

 先のスタジアム騒動でプライウェン騎乗時に負った怪我の所為でマリーベルはこの様子を報告書や新聞にメディア報道などを通して得た情報の元に黒幕をピンポイントで言い当てていた。

 

「(所詮、私も『駒』の一つだものね。)」

 

 だがマリーベルは『テロリズムを駆逐できるのならば』と己の中で納得し、それでもいいと考えていた。

 

「(それより気掛かりなのは、ヴィンセントのパイロットね。)」

 

 彼女は窓の外で行われていると思われる復旧工事の音を背景音に、競技場での出来事を思い出す。

 それは母と妹を亡くし、彼女たちを軽視したシャルルに斬りかかろうとして一度皇位継承権をはく奪された後、幼馴染で親友であるオルドリンのジヴォン家の世話になって『一般人』どころか『皇帝暗殺未遂』の汚名を負ったまま軍学校が全てだったマリーベルにとっては『社交界のダンス』と似た出来事だった。

 

「(それにライラの言い分ですと、“次の戦場に備えて帰還する”と言い残したものの移動したのはグランベリーではなく、市内の方向。 だとすると、続くテロの鎮圧に向かったと見ていいでしょう。 そして未だに“帰還した”と言う報告を聞いていないとすると、恐らくはお兄様(シュナイゼル)が何か────)」

「────マリー?」

 

 ビョンビョンビョンビョンビョン。

 

 さっきから目を閉じて難しい考えに浸っていたマリーベルの要請で、未だに運動棒をビョンビョンさせて同じ病室にいたオルドリンが声をかける。

 

「あら、ごめんなさいオズ。 何かしら?」

 

「何考えていたの? もしかして例のヴィンセント?」

 

「ええ。 新しく配属されたヴィンセントをああも使いこなすのは正規の訓練を受けていたとしても至難の業。 グリンダ騎士団にとって、大きな戦力となりますわ。」

 

「将軍や当時グランベリーの発進に備えて準備をしていた者たちから誰が騎乗していたのか分からないのもあるけれど……そうね。」

 

 ビョンビョンビョンビョンビョン。

 

「え?」

 

「あれ? マリー聞いていない? あのヴィンセント、整備は終わっていたけれど()調()()で、いつの間にか発艦していたらしいよ?」

 

 ビョンビョンビョンビョンビョン。

 

「最初は『慣らし』と思っていたみたいだけれど、そのままスタジアムに向かったからてっきりマリーが事前に……って、その顔は違うみたいね。」

 

「「………………………………………………」」

 

 固まったマリーベルを見て、オルドリンも気まずくなり静かな時間が過ぎていく。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

『────このように、ブラックリベリオンを契機とするテロの活性化を絶つべく神聖ブリタニア帝国の正義をグリンダ騎士団が証明したことで帝国市民の支持率は────』

 

 ピッ。

 

『裏町』とは呼べないながらもどこか人気を寄せ付けない雰囲気を纏った場所にある『隠れ家』ならぬ『隠れ倉庫』のようなところでマーヤはテレビの電源を落とす。

 

「ハァ~……」

 

「長いため息だな、嬢ちゃん。」

 

 そこに倉庫の中でトレーラーの上に乗せていたヴィンセントの装甲を外して整備をしていた、身体中に古傷が目立つ褐色の男────ガナバティがレンチを持ったまま声をかける。

 

 実はスバルが吐血した後にマーヤがヴィンセントの操縦を代わっていた間、アンジュが連絡を取ったのはピースマークだった。

 

 一つは、『ブリタニアの新型の密輸と整備』の依頼。

 

「ガナバティさん……やっぱり『女の子が裁縫できない』って、おかしいですか?」

 

「あん? なに言ってやがる、嬢ちゃんの整備の腕と機械知識は俺からすりゃ、大したもんだ。 そこに女とか男とかは関係ねぇな。」

 

 苗字不明(というか本人は名乗りたがらない)『ガナバティ』は中華連邦のインド軍区出身の技術屋兼商人。 本人はピースマークに所属していないにも関わらずかなり近い距離の関係を保ち、金額や見返りがあればいかなる場所や状況下でも武装やナイトメアの調達に整備を受け持つ凄腕の人物である。

 

「(そう神様(スバル)が仰っていたけれど、彼と比べたら私なんてまだまだアマチュアね。 初めて見るこの機体の構造に電気系統や配線を理解して直しながら調整していくんだもの。)」

 

 ガチャ。

 

「フゥ~、終わったわよ~。」

 

 マーヤとガナバティのいる倉庫部分に繋がるドアが開かれ、中から羽織っている白衣とは似つかわしくないバラの柄が入ったストッキングにヒール、スーツの上着の下には丈の短いボタンラインリブワンピースという大人っぽい服装にウェーブのかかった濃い銀色で長髪の美女が出てくる。

 

「アンジュもお疲れ♪」

 

 そんな美女(身長的に少女?)の後から来たアンジュは少しゲッソリしていた。

 

「まさか刺繍の裁縫技術を、手術に使うとは思わなかったわ。」

 

「でも応用は出来たでしょ────?」

「────あの、ミス・エックス? 彼の容態は?」

 

 白衣を羽織った美女(少女?)────『ミス・エックス』にマーヤが話しかける。

 

『ミス・エックス』。 ピースマーク本体に依頼された仕事を各地に散らばったエージェントたちに伝える仲介人的な役割────いわゆる『ケースオフィサー』の一人。

 だが異例的に国籍、本名、年齢、あらゆる素性や情報がピースマーク内でも一切不明の人物で本来ならば警戒されるのだが、彼女の持つあらゆる工作に変装技術や医師としての資格も買われてか、深く詮索する者はいない。

 

 ピースマークへ連絡した際に二つ目に依頼したのは、『重症人の検査』。

 

 まさか正規の病院にスバルを連れて駆け込むワケにもいかず、ピースマークに二つの依頼をダメ元でしてみれば『どちらも受け持つ』という意外な返事が来たことでガナバティとミス・エックスが居る場所にアンジュたちは案内されていた。

 

 ちなみにミス・エックスが軽くスバルの検査をしたが、顔色を変えながら『手術の必要がある』と言い、マーヤとアンジュに医術の心得があるか聞き、この時にマーヤは『裁縫が出来ない』、『メカ関連以外では手先が破滅的に不器用』、『煮沸消毒の為にお湯を沸かすと何故か水に異変』などの現象が起きたことで、彼女はガナバティと共にヴィンセントの整備にかかっていた。

 

「彼の容態は────」

「────ジー。」

 

「えっと、何かしらアンジュ?」

 

「ねぇ、どこかで私たち会ったことないかしら?」

 

「うふふふ。」

 

 アンジュはというと、初めて見る筈のミス・エックスを『どこかで見た』と言った漠然とした違和感からミス・エックスに問わずにいられなかったが、ただ妖艶な笑いが返ってくる。

 

「話を戻すと、彼の容態はとりあえず安定化させたわ。 吐血の理由は胃潰瘍……と思っていたのだけれど、()()()()()()()()()()彼の身体はかなり弱っていたみたいね。」

 

「「え?」」

 

『スバルが手術を受けていた』というニュースは、スバル自身も知らなかったのでアンジュたちに取って完全に“寝耳に水”だった。

 

 実は彼がヴァイスボルフ城の防衛時に活躍し、終結直前にヴァイスボルフ城の軍事施設の自爆時*1に受けた傷は決して浅くはなく、重症の状態で発見された彼は直ぐにソフィが知り合いの外科医に連絡を取ってリモート手術を受けた。

 

 原作『亡国のアキト』で、ユキヤはガリア・グランデからの爆撃を行った直後にユーロ・ブリタニアのカンタベリーの対空砲火によって生死を彷徨わせるほどの重傷を受けた際に受けたリモート手術が、今作ではスバルに適用されていた。

 

 本来ならこのことをスバルに伝える筈が、毒島の登場や日系人の往来などの騒動で()()()()忘れられていた。

 

「最近の手術に身体を酷使した痕跡、それに疲労と過労。 古典的だけれど、絶対に安静にするべきね。 でないと彼、このままだと確実に壊れるわよ?」

 

 

 


 

 

 「知らない天井だ。」

 

 はいそこ、久しぶりに本当に知らない天井だ案件だから『またか』とか言わない。

 

 だって目を覚ましたら、オフィスビルとかの部屋を急遽手術室に変えた野戦病院並みの景色が目に入ったんだもん。

 

 それに起きたばかりだと言うのに、まだめっさ眠いし身体は怠いから鼻にツンとくる薬品の匂いがする中でも瞼をこのまま閉めたい。

 

 ガチャ。

 

「あら、もう起きたの?」

 

 俺が微睡みの中でボーっとしていると、部屋のドアが開かれて妖艶少女(白衣付き)が入室して珍しそうに起きている俺を見る。

 

 フーム。

 

 この見た目は十中八九、『双貌のオズ』のミス・エックスだろう。

 と言っても、初対面な訳だしここはそういう風に対応しよう。

 

「君は?」

 

「ピースマークの仲介人、『ミス・エックス』よ。 今回は医師としてきているけれどね。」

 

「医師?」

 

「貴方の心配をした彼女たちの依頼よ。 身体が予想以上にボロボロだったからビックリしたわ。 ちなみに、身体がだるく感じるのは手術した時に使った麻酔よ。」

 

 …………………………なんですと?

 手術?

 え?

 

「手術?」

 

「そ、手術。 あ、それと傷口が綺麗に縫われているのは金髪赤目の子のおかげだから────」

 

 ミス・エックスが何か言っているが、俺の脳内は『シュジュツナンデ?』で埋め尽くされていた。

 

 いや、冷静に考えると俺が最後に覚えているのは『口内に鉄の味』だ。

 多分、ゲロったか吐血したことを仮定すると……ブリタニア本国内でアンジュたちは闇医者を知らないだろうからピースマークに依頼をマーヤかアンジュがして、外科医資格を持っているミス・エックスが呼ばれて来たんだろう。

 

 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン♪

 

「ミス・エックス、世話をかけた。」

 

「仕事ですから。」

 

 

 しかし以前のように体があまり動かないのは問題だな、タイミング的に。

 どうする?

 アンジュかマーヤに────

 

「────あ、神様────!」

 

 お、噂をすればなんとやら。

 

 「────“神様”って────」

 「────愛称の類よ────」

「────え。」

 

 ああ、うん。

 知っている人でもそうなるよね。

 大丈夫、ミス・エックスが変じゃないから。

 何故か納得させようとするアンジュが変だから。

 

「ああ、マーヤにアンジュすまないな。 それとここはどこだ? ブリタニア本国か?」

 

「本国内にある、貴重なピースマークの隠れ家の一つよ。」

 

「通信機器はあるか?」

 

 そう俺が口にした瞬間、マーヤとアンジュは互いを見る。

 

 なんか嫌な予感。

 

「それを聞いてどうするのです?」

「スヴェンは休んだら?」

 

「いや、ここから中華連邦────」

 

「────手術後ですしゆっくりすればいいじゃないですか。」

「そうそ、マーヤの言う通りよ。」

 

 何このタッグチームっぽいやり取り?

 いや、でも……タイミング的に今すぐにでも連絡をしないといけない。

 

「すまん、二人の言いたいことは分からんでもないがこの連絡だけはさせてくれ。 ()()()()()危険が迫っているかもしれない。」

 

「「え?」」

 

 なんかミス・エックスの目が細くなったような気がするが、今は無視だ。

 

 「ほう、これがブリタニアの新型か。」

 

 彼女たちが入ってきたドアの後ろでなんかマントと仮面を付けた『タキシー○仮面』ならぬ『自称魔法使い(ウィザード)』がガナバティと話している今は無視!

 

 というか何でここにいるの、ピースマークの『ウィザード』?

 いや、割とマジでなに平然といるの?

 アンタの出番、まだまだ先の筈でしょうが?

 

 「『ヴィンセント』、という機体らしいぜ旦那。」

 「ほう……このデザイン、ランスロットと似ている。」

 

 って、『ヴィンセント』が目当てかい。

 

 胃が痛く……なっていないが多分感じられないだけだろう。

 

 

 


 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~……」

 

 中華連邦にいたカレンは盛大で長いため息を吐き出していた。

 

 それは先日、カレンが『お飾り姫』と神根島で呼んだユーフェミア本人が実は生きていてアマルガムに保護されたことを後から追いついた桐原泰三に聞かされて“誰にも言うではないぞ?!”と脅迫されたことは関係ない…………と言えばウソになる。

 

 では、その後に桐原と神楽耶が中華連邦と交渉して()()()()()()()()()()()事だろうか?

 

 それもそれでかなりのイベントだが、もっと重大なハプニングの所為である。

 

「リョウ~、こっちの畑もお願い~。」

「自分でやれユキヤ!」

「え~? やだよ、僕はスプリンクラーとか、電力の管制システムとか任されているから~。」

「あれ? ユキヤって確か昨日、全部終わらせていなかったっけ?」

「アヤノ、それは言っちゃいけない約束。」

「ユキヤのサボりがアヤノにサボタージュされた……サボサボ。」

 

 カレンが見ていたのは畑を耕し、種をまくリョウたちだった。

 

「(()()()()()()()()()()()()()()()()、見たことも無いナイトメアに黒の騎士団総員が迎撃態勢を取って桐原さんが“ああ、実はワシたちの知り合い~”なんて言うから出迎えたら毒島と一緒にEUから逃げてきた旧日本人とか軍人とか出てきて黒の騎士団の皆は唖然とするしこの人工島に人が住めるように開拓にほぼ毎日このやり取り。 特にあの『アキト』って子のギャグは寒いしもうナニコレ?)」

 

 カレンはあまりの情報に脳がオーバーフローを起こしそうになり、一瞬クラリとする。

 

「あら、上手いですねレイラさん。」

 

「あ、その、はい……頑張りました。」

 

 カレンのクラリとして振り返った先には変装(笑)をしたユーフェミアがレイラと一緒に大量の食物の準備をする景色と、その二人をピンク色の『ピンクちゃん(ユーフェミア命名)』がコロコロと回っていた。

 

「皇女殿下が……」

「不敬罪になってもいい。」

「うん、エプロン姿似合う。」

「ほら、気を取り直してください隊長────」

「────なんで俺が皮むきなんかしなくちゃいけないんだ?!」

「だって……全部皇女殿下にやらせるつもりですか?」

 

 なお余談だがアシュラ隊も『ガリア・グランデ』に合流し、この人工島に来ていた。

 そしてどういう訳かアシュレイはユーフェミアとばったり会ってしまい、『なんだこのぽわぽわした女は? 本当にシュバール(スバル)の野郎の仲間か?』と言ってしまった。

 

 後ろにいたアシュラ隊の皆はほぼすぐにユーフェミアに気付いて思わず跪き、アシュレイの態度に顔を真っ青にしたが。

 

「(こっちはこっちで騒がしいのか賑やかなのかもう本当になんなのこれ?) ハァァァァァ……」

 

 カレンは頭を抱え、ため息を出しながらまたも意識が遠くなりそうになる。

 

「長い溜息だな、紅月。」

 

「あ、毒島さん────」

「────同い年なんだ、『さん付け』はいらんだろう?」

 

「あ、うんごめん。 なんだか毒島が()()に思えて。」

 

「ング……君もか。

 

「え?」

 

「ま、まぁいい。 君と私に、スバルから連絡が来ている。」

 

 「スバルから?!」

 

「ふぉ?!」

 

 明らかにさっきまでどんよりとした空気が浄化されていき、顔が明るくなるカレンを前に毒島の髪の毛は身体につられて思わず跳ねてしまう。

 

「え? なに?」

 

「い、いや。 なんでもないぞ? (何時もの彼女に戻った……)」

 

 

 


 

 

「久しぶりだな、カr────」

 『────その前に言う事があるんじゃないかな?』

 

 スクリーン越しでもカレンの圧力が凄いのだが?

 それに“いうこと”って?

 

「??? ああ、少し無理をしてな────」

 『────その前だよ。 “お飾り姫”の事よ。』

 

 お飾りh────あ゛

 

 俺がアンジュの方を見ると案の定、彼女も察したのか汗をダラダラと流していた。

 いやちょっと待て、どうしたらどうなった?

 何故カレンと────

 

『────それとEUの人たちのお客さんがいーっぱい来てね? 凄く大変だったよ? 特に桐原さんたちが。』

 

 あ、良かった。 レイラたち、ちゃんと着いたんだ。

 じゃなくて。

 

「その……彼女(ユーフェミア)の事は────」

『────理由があったんでしょ? だからいいよ。 でも……言って欲しかったかも……

 

「すまん、今なんて?」

 

『なんにもない。』

 

「そうか?」

 

 カレン、そのぷっくり饅頭顔しながら言っても説得力ないぞ?

 だがそれよりも頼みごとの方だ。

 

「そこに毒島もいるか?」

 

『ああ、いるぞ? 今度はなんだ? ああ、それと()()()()()()()調()()()()()()()。』

 

 よっしゃ! 桐原のじいさんに難民たちを押し付けられた!

 

「そうか、()()()。」

 

 毒島のニッコリとした笑顔に俺は内心、ホクホクした気持ちになる。

 

 っと、その前に要件を手っ取り早く伝えよう。

 下手したらアッシュフォード学園に居るミレイとかが危険に晒されてしまうかもしれない。

 

 

 


 

 

「エリア11……」

 

「ああ、ブラックリベリオンで現地のブリタニアが受けた被害は甚大だ。 物理的にも、心理的にも。」

 

 マリーベルは呼ばれ、テーブルを挟んでシュナイゼルと相対していた。

 

「黒の騎士団の活動はほぼ停止したし、幹部の半数は逮捕されたが未だにその爪痕が残って矯正教育エリアに格下げせざるを得なかった。 それにクロヴィスに不幸が訪れ、ユーフェミアは命を失くし、コーネリアと彼女の側近のダールトン将軍も行方不明。 これ以上皇族を総督に任命するのは問題と貴族たちに騒がれて、エリア総督に非皇族の者を任命するのは異例中の異例だ。」

 

「例の、カラレス将軍ですね? それとお兄様? ナナリーとルルーシュを忘れてますわよ?」

 

「ああ……そうだったね。」

 

「それでも、テロの巣窟をグリンダ騎士団が素通りするわけにはいきません。」

 

「……なら、中華連邦で会おうマリー。 『視察』と言っても、()()()()()()()()()。」

 

「ええ。 お兄様も(はかりごと)()()()()()♪」

 

 急に温度が低下したことに周りのSPやカノンは身体が震えそうになる。

 

 マリーベルがカノンと共に退室し、彼女はカノンの何か言いたそうな顔を見る。

 

「……何?」

 

「皇女殿下。 恐れ多くも、先のスタジアムの件は後の災いを絶たんが為の選択。 どうか、シュナイゼル殿下をお恨みになり────」

「────大丈夫よ、私もお兄様からすれば駒でしかないもの────」

「────それと皇女殿下、御髪がかなり傷んでいます。」

 

 カノンの言葉にマリーベルは彫像のように固まる、油が差されていないブリキのようにマリーベルは『ギギギ』と首を回す。

 

「……………………………………………………………………………………………………だだだだだだだって砂漠にいったりしてその後も大忙しでずっと連戦して手入れする時間なんてなかったの────!」

「────皇女殿下、ストレスや食生活に寝不足も原因かもしれませんよ────?」

「────やっぱりコイルガンのパルスもやっぱり考えものよねぇぇぇ────?!」

「────お化粧品を紹介するから泣かないで皇女殿下!」

 

 カノンと涙目になりながら気弱になりながら『アワワ』と慌てるマリーベルのこのやり取りに、憲兵たちは全員同じことを思ったそうな。

 

 ただ『忘れよう』、と。

*1
127話より




展開を加速させていますです、ハイ…… (;´д`)ゞ

あとスバルは未だに痛覚麻痺の薬の影響下にございます。 (;´ω`)

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