小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お待たせしました、表現に不安アリアリの次話です! (;´ω`)ゞ

お読みいただきありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです!


第145話 嵐の前の静けさを。スバル無しで

『マリーベル皇女誘拐未遂事件』が発覚したトウキョウ租界の政庁でニュースを聞き、血の気が引いて身体が冷えていくのを感じながら意識を失いそうになっていたカラレスに、更なる悪いニュースが届く。

 

「将軍……第一皇女殿下が、お呼びです……」

 

「……分かった。」

 

 そんなカラレスはギロチン台に自ら進んでいくような重い足取りで連絡室へと向かい、部屋に入ると既に通信が開かれていたことで跪く。

 

『……不始末ですね、カラレス将軍。』

 

 カラレスを目で見下ろし、たわわで零れそうな胸にバラの入れ墨をした女性が冷たい言葉を彼にかける。

 

「……」

 

 この女性こそ滅多なこと以外では政に関わらないものの、帝国宰相のシュナイゼルに次ぐ権力者である第一皇女の『ギネヴィア・ド・ブリタニア』である。

 

『ブリタニアの宝であり、我が妹マリーベルが無事だったのは幸運によらしむところが大きい。』

 

「返す言葉も、ありません。」

 

『卿が以前からの政策を(おもんぱか)り、強攻策を控える姿勢は見事ですが……時に、将軍はこの愚行を行ったイレヴンの事をどう思いに?』

 

「そ、それは……無論、協力者共には帝国の恩寵を差し伸べて────」

『────相手は自らの死をも厭わぬイレヴン、好戦的で危険な人種……いえ。 帝国の寵愛を未だに拒み、あまつさえ“ゼロ”という詐欺師に踊らされることを良しとしながら自決や退化の道を自ら選ぶ()()()()()です────』

 「────は、はぁ────」

『────イレヴンとの交渉など、成立するとは思わないことです。 現に、愚行を犯した者たちは誘拐したのがあの“英雄皇女”だと知らないと耳にしています。』

 

「……イエス、ユアハイネス。」

 

『暴虐の罪を着せられ、左遷されかけた将軍を“エリアの総督”に据えた含意……推して知り計らいなさい。』

 

「……イエス、ユアハイネス────」

 

 ────プシュ。

 

『マリー……』

 

「ギネヴィアお姉様、お久しぶりです。」

 

『ええ、本当に……』

 

「「(え? 誰?)」」

 

 空気が重くなり、肩身が狭くなっていくカラレスのいる通信室にアッシュフォード学園の制服を着たマリーベルが入ってくると、ギネヴィアの表情が柔らかくなったことにマリーベルの後から入ってきたオルドリンとレオンハルトがギョッとする。

 

『大事なくて、安心しましたよマリー。』

 

 原作コードギアスでの描写は少なく、『かなりキツい性格』と『金使いが荒い』という噂を持つギネヴィアだが、実はこれには理由がある。

 

 コードギアスでは『開発途上国支配』の時代が現代にまで続いている世界、つまりは15、6世紀辺りの社会構造のままであり、『男女平等』など無い。

 

 女性は貴族であればあるほどに才が無ければ『政治抗争の道具』、有っても『才能ある道具』という認識が強くなり、それは皇族でも変わらないので周りから与えられるストレスは半端が無く、人格がこじれないのは余程の強靭な精神を持った者か、あるいはそれに気付かない鈍感夢見がちな者である。

 

 しかもギネヴィアは第一皇女の上に経済面での才能があった為、『シュナイゼル』と言った強敵(天才)とよく比較対照にされることもしばしばあり、カリーヌのように公の場で()()きつい性格になるのは幾分仕方がない事。

 その上『金使いが荒い』のもブリタニア帝国の金ができるだけ流れるように、帝国中の夫人たちが模範とするようギネヴィアがわざとそう行動しているに過ぎなかった。

 

『マリー、貴方は昔から────』

「────ギネヴィアお姉様、今回は私の不手際で将軍に非は全くございません。」

 

 カラレスの胸にマリーベルの言葉が沁み、彼の涙腺は思わず緩んでしまう。

 

「ですが、私は身をもって知りました。 やはりブリタニア人とイレヴンは差別……いいえ、()()は区別すべきだと。」

 

「「ぇ?」」

 

「(区別をしなければ、誰が帝国市民に……いえ、保護対象に誰が相応しいかどうか分からなくなる。)」

 

 マリーベルの内心を知らずに、オルドリンとカラレス将軍が彼女の言葉に目を見開く。

 

『よく言いましたマリー。 聞きましたか将軍? 今の彼女の言葉は貴方に言っているモノですよ?』

 

「い、イエスユアハイネス!」

 

『肝に銘じておくように……それはそうとマリー、貴方に学生服はとても似合っていますね。』

 

「ありがとうございます、ギネヴィアお姉様。」

 

『事情があったとはいえ、皇女が軍学校など……軍服もあれはあれで似合っているのですがやはり本来はこうあるべきなのです────』

 

 ギネヴィアの注意がマリーベルへと完全に移って饒舌になったことに、マリーベルたちは非常に嫌な予感がした。

 

「────あの、お姉様? 学園への手配ありがとうございますがそろそろ私たちはお暇────」

『────アッシュフォード家には貸しがありましたからお気にせず。 それにマリーは昔からコーネリアのようにもっと皇女としての自覚をもって気高く────』

「「「(────うわぁ、始まったよ。)」」」

 

 マリーベル、オルドリン、そしてレオンハルトはネチネチクドクドと喋り出すギネヴィアを前に、気が重くなって数時間は潰される覚悟をした。

 

 余談であるが、昔から期待を寄せられて人一倍頑張った末に『大人』となったギネヴィアからすれば、実の母親たちより会う時間も回数も多い皇族の兄妹の面倒を見ようとした。

 

 その時からギネヴィアに付いたあだ名は『説教のギネヴィア』であり、第一皇子のオデュッセウスが『ブリタニア皇族の器ではない』と言われるのは面白くないので、彼に対して特に強く当たってはいた。

 

 更に余談であるが、この所為でよく『もっと長男としての自覚を~』と説教をされてきたオデュッセウスはギネヴィアが大の苦手であり、よく彼女のいる本国に居たがらないのも理由の一つだった。

 

 なお本日のオデュッセウスは新大陸にサプライズとして、大規模なトウモロコシ狩りに農民姿(麦わら帽子にTシャツとオーバーオール)で参加していることを朝一で知ったギネヴィアは、『何やっとんじゃい』と思ってイライラしたままマリーベルの事を聞いては、イラつきをそのままにカラレス将軍に連絡を取ったのが冒頭のやり取りである。

 

「(私の膝が……)」

 

 堅い床に跪いたままのカラレスは、今度ばかりは完全にとばっちりなので(内心)泣いていい。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「………………………………」

 

 カレンはボーっと、夢を見ているような気持ちのまま数か月ぶりの()()で目を覚ましては天井を見上げていた。

 

 実は彼女、昨日の内に租界のシュタットフェルト家の近くに忍び込んで様子を見ようとしたところを、()()()ニコニコしながら待機していた母親の留美に見つかり、そのまま屋敷の裏口へとドナドナされて、以前からシュタットフェルト夫人と彼女に雇用された使用人たちがいないことと、まるで何もなかったように家の者たちはカレンを迎えたことに戸惑うまま一夜を過ごした。

 

「ほうほう、それで君は────」

「────とはいえ、私もまだまだなモノでして────」

「────モグモグモグモグ────」

「────そうはいっても、スヴェンたちとも歳はそう離れていないだろう────?」

「────同い年です────」

「────ああ、これは失礼を────」

 

 カレンは歯ブラシや着替え等の支度を終えてからそのまま食堂に入ると、そこにはシュタットフェルト家現当主のジョナサンと一緒に平然と朝食を食べる毒島の姿を前に、ただボーっとしたままトーストをかじり────

 

 「────ってちょっと待って。」

 

「「ん?」」

 

 「何これ?」

 

「「……………………朝食────?」」

 「────そういうのは良いから。」

 

「「??????」」

 

 カレンの言葉にジョナサンと毒島はハテナマークを頭上に浮かばせた表情のまま彼女を見ると、立ち上がったカレンは頭を抱えて座り直す。

 

「“アットホーム”な空気に当てられて、流されるままここまで来ちゃったというか、使用人がガラリと変わっているわ、屋敷も大きくなっているわ、平然と数か月間姿を見せなかった私を迎えるわ、指名手配されている人の孫の毒島を客人扱いするわ、いつも家を開けがちの人もいるわでもうなんなのナニコレ? 誰か説明プリーズ。

 

「……フ~ム……」

 

 ジョナサンは顎に手を添えて考えるようなそぶりを見せ、毒島とカレンは彼へ視線を移す。

 

 「素のカレンも可愛い────」

 ≪────もうそんなんええから。≫

 

 カレンは思わず気の動転からか日本語でツッコミを入れると、ジョナサンは毒島……ではなく、部屋の隅でニコニコしていた留美をキラキラした目で見る。

 

「今のが『つっこぉーみ』、いや『マンザイ』とやらか?!」

 

「(ニコニコニコニコ。)」

 

「そろそろk────カレンにも説明して良いか?」

 

「いやここは私がやろう。 ろくに面倒も何もしてやれなかったが、せめてそれはやらせてくれ────」

「────あら。 流石にそれは悲観的過ぎかと旦那様。 スバル君や私の為に出来るだけ配慮していたじゃない?」

 

「……()()()()、昔みたいに『ジョン』と────」

「────公私混同になりますのでご容赦を。」

 

「……pぉきじゅhygtfrですぁq~。」

 

 見事に銀河を目撃する猫のように固まったカレンの口からは、言語化不可能な声(?)が出る。

 

「(う~む、紅月くんは実に根が素直で表情豊かだな。)」

 

 ………

 ……

 …

 

 そこからジョナサンはシュタットフェルト家の話と、カレンが分からなさそうな部分を毒島が付け足すと以下の通りである:

 

 1、 ブラックリベリオン前の『行政特区日本の宣言当日』まで、シュタットフェルト家は私兵や警備用のナイトメアをジョナサンの名で総動員し、親族と共に邸の敷地内にて待機。

 2、 本人も一早くシュタットフェルト家に戻った直後に『フジサン事変(虐殺)』の噂がエリア中をアングラニュースやSNSで駆け巡り、租界に戒厳令が敷かれ、使用人の半数ほどがシュタットフェルト夫人と共にエリア外に脱出を目論んで租界を出ようとする

 3、 ゲットーからの暴徒化した原住民(旧日本人)や名誉ブリタニア人から逃げる一般人や、政府に軽視されて逃げ遅れた下流階級貴族たちをシュタットフェルト家の敷地内で保護

 4、 ブラックリベリオン時、あくまで防衛と避難所としての機能に徹した籠城戦を行った功績と手腕を買われ、更にエリア11の人材が少なくなったことでシュタットフェルト家が重宝されるようになった

 5、 シュタットフェルト夫人の不倫がようやく発覚し、証拠を提出し()()

 a. 尚、『非は完全に元シュタットフェルト夫人のアレクサンドラにあり』というお墨付きであり、正式な離婚ではなく『シュタットフェルト家とは何の関係もない』と言う認識の『暗黙の了解』

 6、 少なくなった人員補充の為、()()()使()()()が事前に調べていた、確かな者たちの面接と採用を行う

 a. 追記で()()()などを持っている家族や、『ブリタニア貴族として異端(良識)過ぎる』と認定されて政治抗争により『社交界の弾き者』がほとんどであり、働くのであれば働きに見合った給金と敷地内へ家族ごと住み込みオーケー

 7、 女主人が居なくなったことと同時に、他の家などでは聞かない『使用人の区分撤廃』にてメイドや厨房に庭師の中で『階級』が無くなる代わりに、元からいた者たちは新人たちの教育係となり給金が上がった

 a. 6aと繋がって技能を身に付けて独立や他家に移る際、シュタットフェルト家の推薦書やサポートもやぶさかではないとのこと────

 

 

「────と、かなり簡単な説明だが……大丈夫か?」

 

「……ちょっと過剰情報、整理中……です……ハイ……」

 

 ジョナサンはカレンに心配するような声をかけ、素と演技が混じったカレンはただテーブルに肘をつかせながら頭を抱えて俯いていた。

 

 漫画や他メディアだと、『頭と耳から煙がプスプス出ている』状態だった。

 

「……やはり、後日に話しを続けるか────?」

「────シュタットフェルト卿、すまないがそれは出来ない。」

 

 ジョナサンの申し出を、すっぱりと毒島は断わりを入れる。

 

「本当ならば、顔を出すだけの予定だった。 それに、今も尚カレンやスバル君たちの居場所の偽装をしている上、ここで我々も匿うのは極力控えた方が良いのでは?」

 

「……え?」

 

 毒島の言ったことに、カレンはポカンとしながら渋い顔をするジョナサンを見上げる。

 

「これはこれは……流石に鋭いですな────」

「────なんの。 ()に比べれば────」

「────ああ。 なるほど……彼は()()()聡く、大人びていたからね。」

「ええ、()()()。」

「……ハハハハハ。」

「フフフ♪」

 

 毒島の言葉で誰の事か察したジョナサンは納得した顔のまま頷く。

 

「して……」

 

 さっきまで和やかな雰囲気が一転し、大気がピリピリしていく中でジョナサンは留美に人払いをさせ、人気が居なくなってから毒島は再度口を開く。

 

「シュタットフェルト卿も、()()()()とこれから考えてよろしいですかな?」

 

「(あ、もしかして……()()()()意味?)」

 

 今までの話をようやく理解したのか、カレンはおずおずと真剣かつ疲れたような表情をするジョナサンに視線を移す。

 

「……私は中立を望んでいるが、それが叶わぬ時は()()()()()()()()()()()()()だろうな。 だが、貴族としての筋を考えるのであれば正直難しい。」

 

「(……これだからブリタニアは……)」

 

 ジョナサンの渋い顔と言葉を聞いたカレンは一気に不機嫌になり、内心で今や口癖となりかけているセリフを吐く。

 

「確かに、たった200年でここまで強固な国家を築いた帝国は大したものだ。 だが、最近の帝国は()()()()()()()()とも言いかえられる。」

 

「……ほう? 外交官であった私にそう言うとは、何か根拠があるのかね?」

 

「仮想敵国だったEUは、クーデターによって今や内部分裂。 政治の腐敗が既に世間に知れ渡り始めているほど、中華連邦は現時点の政府を丸ごと入れ替えなければ死を待つ身となっている。 これによって、ブリタニアに『当面の敵国はいない』という認識があるが……シャルル皇帝が皇位に就いてから急激に拡大化した。 それも、帝国財政の許容できる範囲を優に超えて。」

 

「……」

 

 ジョナサンはただ静かに、紅茶の入ったコップに手を伸ばしては取っ手を指でなぞる。

 

「占領下に置いたエリアが平定さえすれば良いが、戦火がこうも拡大すれば国家財政とそれを支える経済に負担が掛かり、『優秀な人材が軍事方面に偏り過ぎている』という問題も抱えている。 このままでは数年後には社会構造にガタつきが生じて帝国の分裂……あるいは何らかの形で内紛が起きるのも、想像できてしまう。 違うでしょうか、シュタットフェルト卿?」

 

 ジョナサンはコップの取っ手を指でなぞるのを止め、紅茶を飲む。

 

「……見事な見解だな、一人の学生とは思えないほどに……“流石は桐原泰三の孫”、と称賛するべきなのだろうか?」

 

「いいえ、これは彼の補佐をするには“当然の見識”かと。 (それに半分ほどは彼の言動から察したことだ。)」

 

「……うーむ……」

 

 ピリピリとした空気が消え、ジョナサンは腕を組んで悩むような声を出す。

 

 そしてカレンと言えば────

 

 「(なんだかよく知らないけれど凄い話をしているのは分かる。)」

 

 ────無理に全て理解しようとする努力をやめて、出された茶菓子を口にして場をやり過ごそうとしていた。

 

 「それに比べると……」

 

 ジョナサンの視線先が一瞬だけカレンに向けられ、上記の言葉が彼の口から出るとカレンはムッとする。

 

 ピキッ。

 

 「それ、どう言う意味かしら。」

 

『ようやくカレンが口を開いた』と思った矢先に強気な素の彼女が出てきたことに、留美は目を見開く。

 

「ああ、いや────」

「────何よ? 今さら父親も何もないでしょ? お母さんがあれだけ苦しんでいたのに、結局は仕事に没頭して、みて見ぬふりを────」

 「────カレン?」

 

 今まさに十年間ほど貯めていた文句をカレンが話し出そうとしたその時、室内の温度が一気に下がったような錯覚がカレンたちを襲う。

 

 原因はさっきまでニコニコしていた留美から今まで感じたことの無い────否。

 

 実はカレン、一度だけ体験したことがある。

 

 それは────

 

「(────ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイこれ絶対『山に行ってくるって言って森の中を遭難して(スバル)と何とか二日間やり過ごして救助の人たちに見つかった後』の時と同じ、激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態のお母さんだ!)」

 

 ちなみに状態の命名者はスバルである。

 

 カレンは嫌な汗をダラダラと流し、ただ静かな圧力(プレッシャー)を放つ留美の前で畏まる。

 

「(まるで威嚇される子猫だな。) カレン、そろそろ行くか────?」

「────あ、ああ。 引き留めてすまない、最後に一つだけいいか?」

 

 この様子を見た毒島は助け船を出しながら席を立つと、ジョナサンがカレンを見ながら口を開ける。

 

「……なに?」

 

 先ほど『病弱令嬢』の演技もなにもない姿を見せたことで、カレンは少々投げやりになっていた。

 

「さっきも言いかけたように、私は何もしてやれなかった。 『他家の目』や『世間体』に『貴族社会』など言っても結局は言い訳にしか聞こえないだろうが……私が愛しているのは今も昔も()()()()一人だ。 ああ、ちなみに『ルーミー』とは留学中に大学で────」

「────いや、そういうのは良いから何? 正体を隠してくれているのはありがたいけれど、指名手配されている桐原さんの孫と一緒なのだけれど?」

 

「ああ、うん。 家の事やルーミーの心配はしなくてもいい。 アレクサンドラのクソばb────コホン。 アレクサンドラが居なくなった今、私が全身全霊で守って見せる。

 だからそういう心配をせずに、お前は思うようにやりなさい。

 どんな結果になろうとも、世界が敵になろうとも、何があっても私たちは味方だよ。 困ったときや疲れたときは私とルーミーにいつでも頼りに来なさい。」

 

「……………………………………」

 

 カレンは今度こそジョナサンの言ったことを理解し、言葉を失くす。

 

「…………………………………………………………うん。」

 

 やっと沈黙を破ったカレンからはただ上記の一言が漏れ、彼女は毒島の後を追って退室する直前に振り返る。

 

「じゃあその……………………行ってくるね。」

 

「うむ。 行ってらっしゃい。」

 

「カレン────」

「────お母さん?」

 

 留美はツカツカとカレンの側に来ては、彼女の手を取って耳打ちをする。

 

 「あの毒島って子、かなりの強敵だから頑張りなさいよ、カレン!」

 

 「いや、まぁ……頑張っているけど白兵戦は難しい感じかな────?」

「────もう! そう言う意味じゃないわよ────!」

『────カレン、まだか────?』

「────あ。 じゃあ行ってきます、お母さん────」

「────ちょっとカレン! ……もう!」

 

 留美はそそくさとその場を後にするカレンに呆れと同時に誇らしい気持ちのまま、彼女を見送った。

 

「今まですまんな、ルーミー。」

 

「……ううん。 ()()()が不器用なのは、あの子(カレン)を見ていれば分かるから。」

 

「ハハハハハ、本当にね……それと公私混同はしないんじゃなかったのか?」

 

「良いじゃない。 今は二人きりだから♡」

 

 尚ここで追記するが、ジョナサンの説明は大雑把で簡単なモノであり、彼がカレンに説明したようなトントン拍子に物事が全て上手く進んだわけでは決してない。

 

 問題は未だに山積みだが、単にジョナサンが改革と留美とカレンへの申し訳なさから来る覚悟と粉骨砕身の努力、そして事前に改革の基盤が準備されていたことが大きい。

 

「ねぇ、ジョン?」

 

「なんだいルーミー?」

 

「愛しているわ♡」

 

「……私もだよ♡。 本当に……『彼が居なかったら』と思うと、ゾッとするよ。」

 

「ええ、本当に……」

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