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クラブハウスの周りとアッシュフォード学園にいた、『黒の騎士団と名乗る賊(スバル命名)』は大混乱に陥った。
『容易く占拠を出来た』と安心しきった彼らは
『て、敵襲だぁぁぁぁ!』
『無頼を何機か相手に乗っ取られている!』
『ブリタニアか?!』
『宣言も何も無かったぞチクショウ!』
『話が違う!』
『まさか、俺たちを一網打尽にする罠だったのか?!』
『お前たちなぁ……ふざけてんのか?』
敵はブリタニア軍どころか、ブリタニアの特殊部隊でも何でもないのを彼らは聞き慣れない、批判する声を通信越しに聞いてすぐ知ることとなるが。
無頼の一つに乗っていたリョウはこめかみに青筋を浮かべながら言葉を続ける。
『“自分は不幸だ”、“抑圧されている”っていうけどよぉ……テメェらは一度でも、 “寝たら目を覚まさないかもしれない”と感じながら空腹と脱力感に負けて瞼を閉じたことはあるのか?
“目を覚ましたら同居人に臓器を抜き取られているかもしれない”と思いながらボロボロの廃ビルで寂しく震えながら身一つで過ごしたことは────?』
リョウの無頼に取り付けられた対人機銃と、装備されたアサルトライフルが狼狽えるテロリストたちに向けられる。
『────強姦されて願ってもない妊娠をしちまった友人に、“殺してくれ”と言われたことはぁぁぁぁぁぁぁぁ?! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!』
ドドドドドドドドド!!!
『一昨日きやがれこのクソ野郎どもがぁぁぁぁ!』
『うん、同感だねリョウ。 あ、右の角から無頼が二機来るよ。』
作戦室のような場所にいたユキヤはいつもの平然とした態度を表面上だけでも装いながら、敵の位置などを知らせる。
『例の、クラブハウスってところはどうだユキヤ?!』
『あー、
『アヤノは?』
『アヤノはアキトと一緒に、生身のままKMFとかを相手にしている。』
『……マジか。』
『
ユキヤの言葉にリョウが思い浮かべるのは、かつて自分がグラスゴーでスマイラス将軍たちを橋の上で襲った自分相手に、パルクールに似た動作をするスバルの光景だった。
『(いや、アヤノもアヤノだが……アキトまでかよ。) ん? ユキヤお前、今“アキトは”って言わなかったか?』
『まぁね。 アヤノなら主に銃とか刀を持った相手に切り込み隊長やっているよ?』
『……………………』
『サエコのように化け物だね♪』
『お前……本人にそれ、絶対に言うなよ?』
『大丈夫だって! カレンさんより恐ろしい訳がないからさ!』
『(……毒島の姉御にあれだけ“絶対に怒らせるな”と言われたのに……ユキヤは勇者だな。)』
ユキヤはただ“アヤノのように弄りがいあるかな?”と当時は軽~く思っていただけ、とここで追記したい。
……
…
「ひ、人質を取れ!」
リョウたちが外で暴れている間、クラブハウスに毒島や突入してきたグラスゴーとは反対側にいた生徒たちの背後のテロリストたちは保身に走り、手を近くの生徒たちへと伸ばす。
ガシッ! ドッ!
「ゴェ?!」
男子生徒────レオンハルトは自分へと自ら近づいた者の銃身を引き寄せて喉笛を殴っては、テロリストのアサルトライフルと腰のベルトに挟んでいた拳銃を手に取って参戦する。
「お嬢様!」
トトは近くの本棚の影に立て掛けられていたモップをオルドリンに投げ渡し、オルドリンは流れるような棒術で気を取られていたテロリストたちの意識を刈っていく。
「皆さん、こちらへ!」
「あれ?! クララは?!」
「さっきまで居たのに……」
「(ああ、あの可愛いピンクロングの子か。)」
殿を務めているレオンハルトは背後から聞こえるミレイたちの言葉が耳に届くと、そう思ったそうな。
「(なるほど、仮にも騎士団長。 余り実戦経験はないにしても、『冷静に大局を見る』という点では師匠やゼロと似ている……それに────)」
その間にトトとマリーベルはアッシュフォードの学生たちを隣の部屋へと誘導していると毒島は横目で彼女たちの活躍を見て感心する。
『────冴子さん、ここは私に任せて
その毒島に、無頼を使って暴れているカレンの言葉がインカムから入ってくる。
『ん? 良いのか?』
『ここに会長たちがいなくなった時点で
『(これで彼女は“暴れていない”とでもいうのか?)』
毒島が視線を送る先では、カレンが乗っていると思われる無頼が両手のアサルトライフル、二つのスラッシュハーケン、そして対人機銃を全て使って黒の騎士団(仮)の無頼や統一性が皆無になったテロリストたちを撃退していく姿があった。
『……分かった、君も無理をせずに。』
『分かっている。』
カレンは無頼のスクリーン越しに、毒島が避難するマリーベルたちとは違う方向へ駆け出すのを見てから操縦桿を握る手に、さらに力を入れる。
「分かっているよ……分かっているけど、
カレンの顔を俯かせ、操縦桿がミシミシと嫌な音を出すと彼女の身体がワナワナと震えだし、彼女が見上げると表情は怒りに満ちていた。
「『
…………
………
……
…
「ハァァァァァァ……」
クララは本校舎から少し離れた、現在の地球と比べれば割と小さめの礼拝堂のような建物の中で長い溜息を出していた。
コードギアスの世界は化学(特に電気中心)の文明が発達した為、オカルトや『宗教』は未だに存在するが『不可思議な力』などに関する考えなどはかなり衰退していて逆に『精神的な支え』と『同じ考えを持つ他人との連帯感』を増幅させるためだけに存在している。
それでも地域によって崇拝などはかなり度合いと格差が違うだけでなくなったわけではなく、そんな生徒や教員などの為に
利用者はやはり少ないが。
そんなスペースに、今まで見たことの無いほどの
「ハァァァァァァ……(黒の騎士団って本当にウザイなぁ、偽物は特に。 こ~んな
クララは祭壇の前に座りながら、先ほど礼拝堂に逃げ込んで彼女を人質にしようとした黒の騎士団(仮)たちの亡骸をボーっと見る。
「オルフェウスお兄ちゃんにはずっと会えていないし、トトに指折られるし、オルフェウスお兄ちゃんには会えないし、エリア11の視察を丸投げされるしでクララは働き損だよ~……(ミレイ・アッシュフォードたちとの時間も面倒くさいし
────バン!
礼拝堂への扉が開かれ、考えに耽っていたクララは身体をビクリとさせながら身構える。
「ん、君は……クララだな?」
「(あ、な~んだ……そうだ!)」
クララは相手が毒島と知り、内心ほくそ笑みながら立ち上がってはスキップする。
「(パパの観察対象どころか、『手を出しちゃいけない人リスト』に載っていないし、黒の騎士団スポンサーの孫で
「────ん────?」
「【────自害せよ。】」
クララの右目が赤く光り、毒島は歩みを止め────
ドッ!
────ることなく、そのまま駆け出してクララのお腹に峰打ちを食らわせて彼女は目を白黒させる。
「グェ────?!」
「────すまんが、それを聞くことはできんな。 (なるほど、
毒島がここで『保険』と呼ぶものはかつて、スバルが『虐殺皇女』を阻止するために本来はコードギアスR2に開発される筈の特殊コンタクトレンズだった。
ブラックリベリオン時にナナリーの確保を頼まれてクララと相対し、瀕死の身となったマオ(女)のおかげで『クララやマオ(女)のようなギアスにも対応可能』と知られてからアマルガムではコンタクトレンズを常時携帯するようになっていた。
「ッ。」
ガキン!
毒島は一瞬、『何か動いた』と思ったその時には体がすでにクララのナイフを防いでいた。
「急に殴るなんて乱暴な先輩!」
「(さっきので気を失わない?! ならば!)」
ドド!
「グボェ?! ガハ?!」
ヒュン!
毒島は今度、お腹だけでなく首にも衝撃を与えるがクララはお構いなしに反撃を続ける。
「(うーむ、彼が私に頼んだことである程度の予測はしていたが……果たしてどうするべきか。)」
毒島はクララのナイフを受け流したり、拳銃の攻撃を躱したりしながら考えを続ける。
「(その上、“
ド、ド、ド!
「グ?! ゴエ?! ギ?!」
毒島はすんなりと自分が納得する(深)読みをしたことでクララへの非致命的反撃は過激さを増す。
「(私も『試されている』という線もあり得るか。)」
ガクッ。
「あ?」
クララは自分の足から力が抜けていくことに困惑するような声を出しては、次第に視界がグラつく。
「な、んで────?」
「────君は打たれ強いが、人体の構造が人間であり急所へのダメージを短時間で蓄積すれば精神がまだまだでも体の方はガタが来るさ。」
毒島は手に持っていた刀を再度振るう。
………
……
…
『皆~、軍がとうとう動き出したよ~。』
『そうか。 ならば予定通りに動き、例の場所で落ち合おう。』
『それで、毒島の方は?』
『例の場所に火をつけた。』
ユキヤの通信に毒島が答え、カレンの質問にあたかも当然のように答える。
『そっか……』
『一応内部だけが燃えるようにしたが……火をつけるのだから────』
『────ううん。 彼に頼まれたことならいいよ、何か考えがあるだろうから。』
『(そう言い切れる紅月も大した信頼……いや、自信か。) では皆、再会するまでな。』
アッシュフォード学園を制圧した黒の騎士団(仮)の
幸いにも生徒に死者は出なかったものの、
表向きには。
ブリタニアの機密情報局はすでに火を放たれた礼拝堂内で、数ある焼死体の中からルルーシュの妹役をするはずの『クララ・ランペルージ』が発見されていたので、『ルルーシュの
「(焼死体……か。)」
この報告書を褐色銀髪の美女────ヴィレッタ・ヌゥは飛行機内で読みながら席についていたテレビのスクリーンに目を移す。
『諸君! 我々の行動はブリタニアの人民全ての安寧の為にある! よって、これは正義である!』
スクリーンに映っていたのはどこか以前とは違う空気をまといながら、『黒の騎士団残党容疑』で処刑された者たちの亡骸の前で、演説を行うカラレス将軍の姿だった。
絞首刑にさらされた者たちの頭は黒の騎士団のシンボルが描かれた袋が覆い、纏っていた衣類には『
演説を行っていたカラレスの顔色はすこぶるよく、晴れ晴れしく輝いていた。
というのも、今までの(ブリタニアの世間からすれば)回りくどい政策を諦めたことでエリア11の平定は急激に加速しただけでなく、ブリタニアの企業などが戻ってきたのだ。
この事件をきっかけに、『黒の騎士団残党狩り』の名目でエリア11中の政策は苛烈さを増しながらも生産力は上昇し、輸出も治安も黒字を保ったことでカラレス将軍の総督としての権力基盤は急速に盤石化していくこととなる。
その栄光が無数の『
「(だがこれでは、余りにも無差別すぎる……)」
ヴィレッタは報告書を読み終えて目頭を押さえる。
彼女は『ゼロ捕縛』の功績を認められ、念願の『ブリタニア貴族』の仲間入りをしただけでなく謎が多くも名誉のある『機密情報局』の一員として昇格していた。
その嬉しさに彼女は久しぶりに本国で養っている5人の弟や妹たちがいる実家に戻って緩やかな時間を過ごし、機密情報局の一員として呼ばれて現在は移動しながら現地の書類を読んでいた。
男爵位は貴族社会でも末端に当たるのだが、少なくとも以前の
「(────これから私は何もできずに大勢のイレヴンが無実の罪を着せられて殺されるのを黙って見ているしかない。 あまり力もなく、後ろ盾もない男爵なので何かをできるわけでもないので仕方がない……仕方がないことだが……)」
ヴィレッタは憂鬱な気分のまま、飛行機の窓の外に広がる景色を見渡す。
「(どうか……どうかその中に、スバルさんがいないように……どうか……)」
彼女は大勢の者のように宗教には疎かったがその時だけは手を握り合いながら、いるかどうかもわからない神に静かな祈りを捧げていた。
…………
………
……
…
「もう行っちゃうです~?!」
トウキョウ租界にある政庁の軍港には、
「ええ、何時までもグランベリーをエリア11に停泊させるわけにはいきませんから。」
「ヤ! です!」
「そう落ち込むなってライラ皇女殿下! 次は『ダイフクビュッフェ』を制覇しに行こうにゃ~!」
「ソキア……さすがに太りますよ?」
「まぁまぁ、レオンもそう目くじらを立てない。 次回はマリーカさんと一緒に出掛ければいいじゃないか。」
「(レオンと一緒だったレオンと一緒だったレオンと一緒だったレオンと一緒だったレオンと一緒だった♡)」
尚みっちりとシュバルツァー将軍の元でマリーカと共にブラッドフォードの調整を連日行っていたレオンハルトをなだめるティンクの横でマリーカは(シュバルツァー将軍の訓練で)マンツーマンでいられたことに赤面していたと追記しよう。
「ではカラレス将軍、エリア11をお願いします。」
「イエス、ユアハイネス! イレヴンどもは、私にお任せください! (私の目を覚ましてくれた御恩も、必ずや平定したその時に!)」
「クロヴィス兄様もお元気で。」
「マリーに言われるまでもない。 まぁ、私は私なりに頑張るさ。」
「それとライラ、クララさんが見つかると良いわね。 仲が良かったのでしょう?」
「………………あ、はいです。」
マリーベルたちがグランベリーに乗り込み、エリア11を出立するのをカラレスたちは見送ってからクロヴィスはライラに話しかける。
「残念だね、ライラ。」
「??? 何がです?」
「ようやく足が治ったクラスメイトのことだよ。 別に私は興味もないが、彼女の治療は私に適応できないかどうか見たかったのだがね……」
カラレスとクロヴィスが政庁へと歩きだし、ライラも後を追いながら移動するグランベリーへと視線を送る。
「(…………………………皆、何かおかしいです。
遮蔽物のない軍港を透き通るように吹く風が、ハテナマークを浮かべる彼女の髪と服を揺れさせる。
「(珍しく
喉に魚の小骨が刺さったような違和感を持ったまま、ライラは政庁へと戻っていく。
…………
………
……
…
サングラスに茶髪のウィッグと化粧をした、まさに『どこにでもいる成人女性』と見える様な変装をした毒島は大きなスーツケースをゴロゴロと引きずりながら、彼女は一つのアパート内へと入ってはとある部屋の前に立ち尽くす。
ガチャ。
毒島が何らかのアクションをせずとも、彼女が立っていたドアは開かれる。
「入れ、周りに感知できる人はいない。」
「こちらにも、異常な反応はないわ。」
ドアの向こう側にいたのは私服姿に拳銃を手に持ったサンチアとルクレティアだった。
「ああ。 アジトの確保、ご苦労だったな。」
「やはり四聖剣などの、黒の騎士団の幹部たちを連れてきたのが大きかった。」
「そうか────ッ……………………ナンダコレ。」
毒島は短くそう返し、部屋の中に入って角を曲がると動きを止めて固まる。
「あー……その……」
「自由人……と言う他には……」
ドアを閉めて鍵をかけたサンチアが気まずくなり、ルクレティアは苦笑いで誤魔化そうとする。
毒島が見たのは床の上に脱ぎ捨てられた数々の上着やインナーに下着などの衣類。
ダース単位で無造作に置かれた宅配ピザの空箱。
部屋の隅にはダンベルやバーベル、サンドバッグなどの筋トレグッズと空の2リットルボトルがまたもダース単位。
一言で敢えて示すと『汚部屋』がしっくり来てしまう、『阿鼻叫喚状態』に散らかされた部屋だった。
「おい、呆れられているぞ────」
「────アンタにでしょうが、ゴミくらい出しなさいよ────」
「────こいつ、CCに向かって────!」
「────あー、マオ。 片づけてくれないか────?」
「────わかったよ! 燃やせばいいんだね────?!」
「────近所迷惑になるでしょうが────?!」
「────そういうお前も燃やそうか?!」
不毛な言い合いをするカレン、マ
「片付けろ。」
「「あ、ハイ。」」
「ああ、だからマオに────」
「「────どっち────?」」
「────両方────」
「────お前もだ。 “宅配禁止”にするぞ?」
「わかったよ。 わかったからそうカリカリしていると余計に老けるぞ?」
ガタガタガタガタ!
CCの声に反応してかあるいは彼女と毒島が放つピリピリとした緊張感か、横にあったスーツケースがガタガタと震える。
「ん? ……あー、だから兄さんは僕もここに来させたのか。」
マ
「というワケですばしっこい君に片付け任せるね────?」
「────
仕方なくカレンの片づけを手伝っていたアリスは自分のピザの箱を持たせようとするマ
「え~? 良いのかな~? 僕にそんなこと言っちゃって~? 兄さんの頼んでいた情報、さっきので分かったんだけどねぇ~?」
「「「「「仕事するのが早い?!」」」」」
「……君たちがどう僕のことを思っているのか今のでよ~く分かったけれど、敢えて言うよ? 兄さんの頼みで僕は見えないところで動いていたからね? 何も毎日、『食っちゃ寝グウタラ』していないからね?」
「う。」
マオは後の言葉を言いながらカレンを見る。
「それでそいつ、どうするのぶっちゃん?
「いや。 彼は“生け捕りにしろ”と言ったからには、『更に何かある』と考えたほうが妥当だろう。」
「ええええええええええええええええええ? 絶対に面倒くさいよ~?」
「こ奴を知っている君にそこまで言わせるとはね、マオ……」
「いやだって……殺されかけたし?」
「彼も動いている頃だ……今はどこで何をしているのやら……」
毒島の言葉を聞いたカレンの目は点になる。
「(あれ? じゃああいつ、私にだけ伝えているってこと?)」
カレンが思い浮かべるのは『毒ガス強奪事件』時に渡されてからずっと持ち歩いている、一昔前の携帯電話で、思わずフワフワした感じの気持ちがそのまま表情として浮き出そうになる。
追伸EXTRA:
カレン:ムェヒヒヒ……
アリス:怪しい……
ダルク:CCが~? いつものことじゃん。
サンチア:ギアスがなくともすぐ分かるのに……
ルクレティア:ダルクちゃんですから♪
毒島:(まるで姉妹だな……だとすると、私は“お姉ちゃん♡”と呼ばれたいな。)