楽しんで頂ければ幸いです!
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場所は港市である威海衛から中華連邦の西に広がる森や川や湖などの周辺の町がある場所よりさらに西にある広大な大地へと場は移る。
ここまで来ると地形は平坦なモノから多くの山に砂漠などが混じり、元々治安が行き届いていない上に山賊やならず者などが多数はびこり、軍人たちはそんな彼らを討伐するどころか『使い捨ての不正規兵』として雇い、彼らは住む土地を小さな領地のように扱っては我が物顔で好き放題していた。
ドッ!
「グホォア?!」
「んー、まだ話す気にならない?」
そんな大きく、元々大宦官から見放され気味である土地の中で捕獲した盗賊のボスを、ピースマークのズィーが尋問していた。
ドッ!
「ゴェ?!」
縛られた盗賊をズィーが殴り、彼の顔に痛みが走る。
「いててて……」
「おー。 今のは痛そうだな……変わるか?」
「ああ、ちょいと腹に何か詰め込んでくる。」
盗賊の顔を変な角度で殴り、痛めた手をズィーが振るいながら部屋を出る。
するとダールトンは部屋の端に立てかけられていた椅子とジェリカンを持ってきて震える息をする盗賊の前に座る。
「で? 売った奴らをどこに輸送した?」
「しらな……相手が勝手に……金だけ受け────」
「────おいおい、別に“知らない”ってことは無いだろう? アンタの部下たち────ああ。
「し、知らない! 途中で品を降ろせと────!」
「────ならその『途中』がどこか思い出すんだな────」
「────ヒッ?! も、もうやm────!」
────ドッ! ドスン! ベシャ!
「よっと。」
ダールトンは盗賊を縛られた椅子ごと後ろへと倒すと盗賊の顔を濡れたタオルで覆うと、平然と近くにあるジェリカンを手に取って水を暴れようとする盗賊の頭上で注ぐ。
ジャボボボボボボボボボボボ~。
体勢の関係で水はタオルに沁み込んでは盗賊の顔を覆うタオルが水浸しになり、咽頭反射で肺から空気が放出されて代わりに水が入ってくる。
「グムオエ゛エ゛エ゛え゛エ゛エ゛ホ、ゴボ、ゴボァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
タオルの下から溺水状態の盗賊がくぐもった悲鳴を上げる。
現在で言うところの、『水責め尋問』をダールトンは彼に行っていた。
本来、ブリタニア人とは思えないほど良識な彼がこのようなことをするのは余程の事が無い限りなのだが────
「
────ダールトンにとっては『余程の事』に、彼らは『ギアス』を追っている間に遭遇していた。
『ちょっとオズ?! “依頼却下”ってどう言う意味よ?!』
ダールトンに水攻めされている盗賊やズィーたちのいる建物の外で、オルフェウスが手に持っていた無線機のような物からミス・エックスの声が辺りに響く。
「言葉通りの意味だ、今の俺は
『あのね!
「確かに、シュナイゼルがブリタニアの勢力圏の外で公務を行うのは稀だ。 ブリタニアの力を削ぐのにも、異存はない────」
『────だったら────!』
「────だが
ピッ。
「フゥー……」
オルフェウスは無線機の電源を切ってから使い捨ての暗号キーを機械から取り出して潰すと、周りの廃墟寸前の街を見渡すと魔法瓶とコップが視界に入る。
オルフェウスはそれ等を持ってきた人物を見上げると、ほぼすっぴん状態のコーネリアが立っていた。
「
「ああ。 と言っても、これも連中が扱っていた密輸品だがな。」
「そうか。」
オルフェウスは魔法瓶から紅茶を自分のコップに注ぎ、一般人とは違う動作で紅茶の匂いを味わってから音もなく口にする。
「……ユーロのブレンドか、珍しいな。」
「紅茶の知識もあるのか。 オズは博識だな。」
「
「君から伺った話と……以前に『
「未成年の子供は洗脳しやすく、自我がまだ弱いからな。」
「なるほど……無知な子供を、『優秀で超人的な力を持つ幼い精神の言いなり』に仕立て上げるのか……通りで
「(それだけではないが……今、脳手術などのことを付け足せばネリスも
オルフェウスはそう言いながら空を見上げる。
「(プルートーンもまだ片付けていないが、ギアス嚮団と彼らは繋がっている。 それはハンガリーとEUで経験済みだ。 なら、直接嚮団の後をたどれば自ずとプルートーンとぶつかる……エウリア、もう少しだ。 もう少し待っていてくれ。)」
「(あまり自分のことを話したがらないし、お互い詮索もしていないがオズが先ほど見せた仕草、言葉遣いや身だしなみもどこか貴族を思わせる。 どこかの下級貴族の出か? それに時折見せる戦い方は暗殺術……となると、『元ギアスの者』で目的は復讐……と言ったところ。 別に問題はないな。)」
オルフェウスは普段から身に着けている髪紐を無意識に手で触りながら明らかにソワソワする彼の素性を、コーネリアは推測しては結果的に利害が一致していることに納得し、空を見上げる。
「(ユフィ……元気でいるだろうか?)」
…………
………
……
…
「あああああああ、もうううううう!」
場所は欧州……の北にあるバレンツ海を移動する船の上で、通信を相手側から切られた無線機を力強く握りしめながらイライラするミス・エックスへと変わる。
「なんなのよ?! 私に対するオズの態度、あまりにも冷たすぎるわよ!」
「(……その気持ち、少し分からないでもないけど……寒くないのかしら?)」
同じ船の上には丈の長いもこもこジャケットにもこもこ帽子で冷たい風から身体を守っていたアンジュがいつものビジネスタイツスカートスーツのミス・エックスを不思議そうに見ては寒くないのかと思っていたそうな。
「ウィザードもいつの間にか居なくなるし、ガナバティも
もうすでに察しているかもしれないが、アンジュたちはブリタニア島を脱出する手段を
アンジュとマーヤは知らないが、スバルが潜入時に準備していた脱出手段は
その『船』がブリタニア
尚ここでミス・エックスが『臭い』と称したのはタンカーのことだけでなく、アンジュたちがハレースタジアムで散々使った火薬などをスバルがマーヤ(そして興味を盛大に引かれたガナバティ)と共にせっせと整備や生産するための物資の匂いが元からあった船の汚臭に混ざり、とうとう耐えられずにアンジュとミス・エックスは船の中から出て、ピースマークから受けた依頼をミス・エックスがオルフェウスに伝える冒頭へと繋がる。
「あー……話ぐらいなら聞くわよ────?」
「────じゃあ聞いてよ────!」
「(────あ。 なんかやばい予感。)」
さっきからどこかむしゃくしゃするミス・エックスの姿が他人事とは思えないアンジュの声に、ギラギラしたミス・エックスの様子にアンジュは不安を感じながら彼女の愚痴に付き合った。
「しかし“火薬”なんて古いモノを良く知っているな?」
アンジュたちが甲板で(一方的な)ガールズトークをしている間、船内ではスバルたちの作業を手伝っていたガナバティが珍しく関心の入った声で話しかける。
「まぁな……」
「彼ですから♪」
「そう言うモノかね?」
「そういうモノです、ガナバティさん。」
「……………………………………(『どうやったらカレン達原作組の生存とついでにナオトグループの被害を小さく出来るかな?』という考えから始まったとは言えねぇ……)」
スバルはそう思いながら黙々と作業を続け、ポーカーフェイスを維持しながら考えを移す。
「(さて……オズO2でオルフェウスと合流するはずのコーネリアがいたのはマジビビって色々と変わってはいるが、大まかには『オズ編』とみて良い……筈。 となると、今グリンダ騎士団は中華連邦にいるシュナイゼルに呼ばれ────)」
────バタン!
スバルの考えを遮るように外から船内に続く扉が開かれては、ミス・エックスとアンジュがそそくさと室内暖房の隣へと移動して表情がふにゃりと崩れる。
「「暖か~い。」」
「もう匂いは良いのか?」
「それどころじゃないわよガナバティ!」
「そうよ! 外がどのぐらい寒いか知っている?!」
「ミス・エックスは仕方ないとして、そんな分厚い上着を着ている
「(せや、聞いてみよう────)────ミス・エックス、グリンダ騎士団の動きは把握しているか?」
「え? ええ、彼らの
「行先は、中華連邦方面か?」
「……ええ、そうよ。」
「そうか。 (よっしゃ! だとすると、
「(ドンピシャで当たらせるなんて、やはりね。 ヴィンセントの強奪も考えると、ただの黒の騎士団ではないわね……噂の『零番隊』かしら?)」
「(こうもあっさりとしている上にミス・エックスのように情報通、そして工作に向いた知識……どこかの国の、元エージェントか何かか? 金さえあれば、何でもいいと思っていたがこいつは少し面白いな。)」
そうのほほんと考えるスバルの横で、ピースマークのミス・エックスとガナバティがそれぞれどこか『普通』とは思えない言動に考えを走らせていた。
その普通も、『コードギアスの住人にとっては』の基準だが。
「(やはり行先はエリア11ではなく、中華連邦。 だとすると、『何かある』と考えていいわね。
マーヤがそう考えながら視線をアンジュに移す。
「のぇぇぇぇ~、あったけぇ……紅茶飲みてぇ~。」
「(……私が頑張らないと!)」
フニャフニャな表情のまま、室内暖房で暖まるアンジュを見てマーヤは決心を改めたそうな。
ブルッ!
「(なんだか寒気が……さっきアンジュたちがドアを開けたからか?)」
「あ。 それとエリア11から貴方宛てに通信が来ているわよ? 暗号化はそのままでいいのね?」
「ああ、すまん。」
スバルは思わず身震いをし、ミス・エックスが手渡してきたプリントに目を通す。
「(……よぉしよしよし♪ 毒島たちに頼んでおいて良かったな。 『もしかすると』と思って
…………
………
……
…
「じゃ~ね~おねえちゃんたち~! ごちそうしてくれてありがとう~!」
中華連邦の威海衛では、現地ガイドが自分の両親が経営しているレストランから手を振り、マリーベルたちを見送る。
「ううぅぅぅ……太ももが~。」
「しゃっきりしなさいソキア! マリーもいるのよ!」
「あ、そうだった。」
「貴方ねぇ……」
「あら? 私は気にしていないわよ、オズ?」
「「え?」」
残念がりながらしょんぼりとするソキアをオルドリンが叱り、マリーベルが意外なことを口にする。
「だって今の私は『グリンダ騎士団長のマリーベル』ではなく、『友人たちと一緒に観光するマリー』ですもの♪」
「……オズ、何かあったにゃ?」
「さ、さぁ? アツアツの本番小籠包を食べて舌がヒリヒリしすぎて脳への副作用があったとか?」
「要するに、何か悪いものを食ったというヤツ? だとしても、マリーベル様がすっっっっっごく晴れ晴れしくウキウキしていることに説明がつかないにゃ────」
「────二人とも、さっきからずっと聞こえていましてよ?」
「「う。」」
先ほどまで表情と同じくウキウキしていたマリーベルの笑顔が冷たいものに変わり、オルドリンとソキアは嫌な汗を掻く。
キュイィィィィィィィィィィィ。
「「「???」」」
マリーベルたち三人の耳に、耳鳴りに似た音が届くと彼女たちは周りを見渡す。
「なんの音かしら?」
「む~、なんか嫌な音にゃ~。」
「これは────?」
────ゴゥ!
マリーベルたちの視界が真っ白になり、鼓膜が破れそうになるほどの轟音が同時に響き渡っては威海衛にいる中華連邦人がブリタニア人たちと同様に悲鳴を上げるが、更に襲ってくる超長距離砲からの砲撃によってそれらはかき消される。
ダメージと爆風に建物や建造物が揺れては崩れていき、逃げ惑う人は吹き飛ばされる。
「……………………う。」
「ま、マリー……」
そんな中で気を失っていたマリーベルが瞼を開けると、心配そうなオルドリンが同じように目を開けているのを見る。
「いちちちち……」
「「ソキア?!」」
オルドリンとマリーベルが見上げると、二人をできるだけ覆うかのような体勢をしていたソキアがいた。
砲撃の着弾と爆発の寸前にある僅かな刹那に、ソキアはKMFリーグで鍛えられた本能と身体能力でマリーベルとオルドリンを近くの爆風から庇っていたからか彼女の上半身を覆っていた団服とサイドテールに結んでいたヘアゴムは吹き飛ばされていた。
「これはさすがに……マルディーニ社のファンデーションを箱買いしなきゃね────」
「────下手に動かないで! 火傷が────!」
────キュイィィィィィィィィィィィ。
「二人とも、次の砲撃が来るわ!」
またも先ほどの耳鳴りに似た音にマリーベルが叫ぶと、彼女の太刀の頭上で独特な赤色をしたビームのようなものが落ちてくる砲弾を払い落とすかのように動き、彼女たちの頭上を大型戦闘機のようなモノが飛ぶ。
「あれは────」
「────飛行形態のブラッドフォート! シュタイナー卿ですね!」
ナイト・オブ・スリーの専用機となるトリスタンの試作品であるブラッドフォートの武装に、トリスタンと同様の『ハドロンスピアー』というモノがある。
これは『メギドハーケン』という、通常のスラッシュハーケンを巨大にすると同時に連結させてハドロン砲の発射ユニットの役割を担わせた武装の一つである。
『ブラッドフォードの様子はどうですか、レオン!』
『問題ない! マリーカさんの調整で、ハドロンスピアーを
本来のハドロンスピアーはハドロン砲のように真っ直ぐ飛ぶモノなのだが、レオンハルトはメギドハーケンの特徴を使ってビームを曲げていた。
それはどこぞの『巨大なビーム砲と思ったら実は巨大なビームサーベルだった』、あるいは『メ〇粒子砲』を思わせる攻撃方法である。
『いえ……そもそも“メギドハーケンを射出させながらハドロンスピアーを撃とう”と思うのは、恐らくレオンだけです……』
ブラッドフォードの調整をまるで我が子のように面倒を見ていたマリーカからすれば、レオンハルトの扱い方は本来の使用方法からかけ離れていることに複雑な気持ちを隠しきれなかったが。
ブラッドフォードはそのまま威海衛に攻め込む
『うーん、さすがはレオンだね。 器用に敵の特徴を逆手に取っている。 (自分も行きたいけれど、機体の兵装は一点より面への攻撃に特化しているからなぁ。)』
アヴァロンと共に軍港から発進したグランベリーの甲板の上に載っていたゼットランドから状況を見たティンクは感心していた。
『こちらブラッドフォード! 皇女殿下たちを発見、グランベリーに連れていきます! シェルパ卿がケガをしているので医療班を用意してください!』
『こちらマリーベルです。 中華連邦政府はなんと仰っているのです?』
『かなり混乱しているようで、声が高くてキモくて真っ白な顔の人たちがペコペコ平謝りしていて正直気持ちが悪いエリシアちゃんなの~!』
オペレーターのエリシアが開かれた通信のモニターを見てはドン引きする横では、黒髪ぱっつんストレートヘアーのエリス・クシェシスカヤがジト目で見ながらも中華連邦のデータベースのハッキングを行っていた。
『はい、データーバンクへの侵入が完了しました。
『シュナイゼルお兄様は?』
『シュナイゼルなら、マルディーニ卿と共に秘密会談場所だよ。』
『『『『『『………………………………え?』』』』』』
アヴァロンからの通信に、意外な人物の声が出てグリンダ騎士団は呆けてしまう。
『オデュッセウスお兄様?! なななななななんでアヴァロンに────?!』
『────ああ、その……シュナイゼルに付いて来て、シュナイゼルもマルディーニ卿もいないから今はアヴァロンの艦長代理をやっている。』
ブラッドフォードのおかげでグランベリーに戻ったマリーベルはこれらの情報を聞き、瞼を閉じて思考を素早く張り巡らせる。
「(このタイミングでの暴走……いえ、『攻撃』と解釈すれば敵の狙いは恐らく秘密会談の阻止。 そして次にシュナイゼルお兄様の身柄確保、あるいは殺害となるでしょう。 優先順位としては、グリンダ騎士団でシュナイゼルお兄様の守りで鎮圧させるのは中華連邦軍に任せるのが無難────!)」
「────マリー! 人民の救出の命令を出して!」
横にいたオルドリンの声にマリーベルはハッとして、悔しそうな彼女の顔を見る。
「オズ────?」
「────私たちを案内してくれたあの子の家が燃えていたの! ううん、彼女だけじゃない! このままだと無関係の人が巻き込まれて二次被害で亡くなってしまう!」
マリーベルは脳裏に浮かぶ、ついさっきまで元気よく手を振っていた少女とその両親の姿を振り払うように頭を横にふるう。
「……………………その気持ちはわかるわオズ、でもここは中華連邦。 私たちが迂闊に行動を起こせば内府干渉、『国際問題』として見られかねない────」
「────な、何を言っているのマリー?! 確かに中華連邦だけれど、同じ人間でしょ?! そんな民衆を守るための貴族であり騎士でしょ?! ま、まさかマリー……」
オルドリンがここで何かに気付いたような顔をして、信じられないような目でマリーベルを見る。
「オズ────?」
「────エリア11で言っていた『区別』って……『
「────オズ、今はそれどころでは────」
「────“それどころ”?! 今もこうしている間に、一方的に罪のない人たちが苦しみながら死んでいっているのよ?! それらを止めるためのグリンダ騎士団じゃないの?!」
「……
「────もういい────!」
「────オルドリン・ジヴォン!」
悲しい顔のまま走り去るオルドリンに、マリーベルは声をかけるがオルドリンは一向に止まる様子はなかった。
「(オズ────)」
“────一方的に罪のない人たちが苦しみながら死んでいっているのよ?! それらを止めるためのグリンダ騎士団じゃないの?!”
「(私は……私は……)」
つい先ほどオルドリンが口にした、真摯な思いと表情に言葉がマリーベルの脳内で鉛のように重くのしかかり、マリーベルは久しぶりの『迷い』が思考を覆い尽くし、どんどんとループしていった。
後書きEXTRA:
マオ(女):よーそーろー! 船の調子は?
ダルク:うーん、オーケーみたい!
ルクレティア:いい風ですわね♪
サンチア:(潮風で髪が……)
毒島:♪~。
アリス:聞いたことのない鼻歌ね?
毒島:ん? ああ、これはマーヤの作成した軍歌だ。
アリス:…………………………え?
赤髪の密航者:(軍歌??????)
サンチア:(……害意はないな、放置でいいか。)
木村さん…… ( ;_;)