小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お待たせしました、勢いで書いた次話です!

描写に少々の不安を感じていますが、楽しんで頂ければ幸いです!


第154話 我、敵部隊ト交戦ス

「んお? 選手交た────」

「────状況は?」

 

 頭痛を無理やり薬で抑えたシュバルツァー将軍が、早歩きでグランベリーのブリッジに到着して開口一番でソキアの言葉を遮る。

 

「先ほど、レーダーに反応がありました。」

「その反応はすぐ消えましたけど、艦長代理のシェルパ卿が戦闘配置の命を出しました。」

 

「ちょちょちょちょ~?!」

 

 エリス、そしてトトの無慈悲な事実の宣言にソキアは冷や汗を掻くが、シュバルツァー将軍はそれどころではなかった。

 

「……………… (『紅巾党狩り』とはいえ、中華連邦は我々を本気で宛てにはしておらんだろうし、何より我々が功績を上げたらブリタニアに更なる借りを作ることになる。 よって『紅巾党』とやらとは違う場所に送っている筈……こんな辺鄙な場所に反応があるという事は────)」

「────戦闘準備、撤回します────?」

「────いや、このまま続行だ。 シェルパ卿もサザーランド・アイに騎乗し、ウァテスシステムを作動しろ。」

 

「???? りょ、了解です?!」

 

 てっきり叱られると思っていたソキアはこの場から離れられることに安堵しながらマリーベルが出てきたエレベーターに駆け込み、格納庫のボタンを扉が閉まるまで連打する。

 

「……将軍────」

「────姫様、お休みのところ申し訳ございません。 ですが────」

「────『敵』、なのですね?」

 

 マリーベルはスクリーン内に広がる、その景色だけからはとても『敵』が居るとは思えない広大で、人の手が殆んど手が付けられていないような荒野の自然を見渡す。

 

「ハッ、その可能性が高いかと。」

 

「ソキアは────?」

「────既にサザーランド・アイに騎乗し、作動するように言い渡しております。 やはり姫様の思惑通り、シェルパ卿は人一倍敏感な感性をお持ちですな。」

 

「でしょう? そのおかげで、一時期は怯えていましたが……反応が出たのはどこです?」

 

「反応が最後に出た座標を、スクリーンに出します。」

 

 スクリーンに情報が重ねられると────

 

 「────()()()()()、だと?」

 

 シュバルツァー将軍がボソリと言ったように、ぼんやりとしたレーダーの反応は地面から離れていた。

 

 これを見たマリーベルは黙り込んだまま考えを巡らせる。

 

「(これで考えられる可能性は────)」

 

 ……

 …

 

 

「────総員、対ショック用意を。」

 

 リア・ファルの中にいたレイラが静かにそう告げながら席に座り込んでシートベルトを着用すると、ブリッジに残った者たちも近くの席に座って同じくシートベルトをする。

 

「敵は恐らく違和感(反応)のあった場所に偵察機、あるいは艦砲射撃を行うでしょう……ミルベル博士はどう思います?」

 

「……私も敵なら、そうするだろうな。」

 

 さっきまでダルクに正座を強いては『自分はダメな子です』と書かれたプラカードを無理やり手渡していたウィルバーは、レイラに話しを振られると真剣な表情になってレイラに同意する。

 

「何せこのような開けた場所だ。 皮肉な話だが、人的被害もほぼなく自分たちにリスクが少ないのなら躊躇なく撃てる。 最悪『何もない』か、『何か出る』かだからな。」

 

 原作で彼は『タレイランの翼』を結成するだけでなく、用意周到な『打倒シャルル計画』に殆どの者たちが気付かなかった戦略を練ったのは伊達ではなく、戦略家と指揮官としての能力もそこそこある。

 

「ラクシャータさん、リア・ファルの推進力はこれ以上出ませんか?」

 

「んー、出せないことは無いけれど、キャパオーバーになるからメイク(迷彩)を落とす必要があるわよ?」

 

露出狂(ラクシャータ)がスヴェン君の提出した『原子力』の開発を進めていれば────」

「────感動しつつも、想定された破壊力に気圧されて慎重になった中途半端野郎(現実主義ロマンチスト)に言われたかないわね。」

 

「「…………………………」」

 

「ではサラ、迷彩を維持しつつ高度を()()()ください」

 

 ピリピリとした空気がウィルバーとラクシャータの間から発せられてブリッジの者たちは冷や冷やするが、レイラは無視して次の指示を出してはユーフェミアがハテナマークを出す。

 

「高度を下げて潜むのではなく、上げるのですか?」

 

「ええ。 何故なら────」

 

 ……

 …

 

「────この荒野では身を潜めるところが他に無いからです。 ですので、私が敵であればグランベリーより高い場所に移動したいと思っているでしょうね。」

 

「ですが姫様(マリーベル)、敵が浮遊航空艦と決まった訳では……」

 

 グランベリーに乗っていたマリーベルの早まったような言葉に、シュバルツァー将軍が議論の言を並べる。

 

「それに他国が真似をするにもいささか早すぎる気がします────」

「────いいえ。 グリンダ騎士団より以前に、お兄様がエリア11でアヴァロンの脅威を『フクオカの乱』で大々的に披露しています。 それに、『可能性が低い』だけであり『不可能』ではないと想定して動くべきでしょう。 

 ですので、『見えない』のであらば『見える』ようにすればいいだけのこと。 グランベリーの単装砲とティンクのゼットランドで反応が出た場所を広範囲に、一斉砲火の準備が出来次第、至急撃ってください。」

 

 ……

 …

 

「ラクシャータさん、本艦のブレイズルミナスは迷彩を上げたままどの程度の攻撃が防げますか?」

 

「そうねぇ……アンタ(EU)のところで使っている、高射砲(対空砲火用パンツァー・フンメル)の直撃が数発あっても何ともないわね。 流石に受け続けるとヤバいけれどね。」

 

「敵艦より動きあり! 砲撃、7時の方向へ飛来! 来ます!」

 

「ッ。 総員、ショックに備えよ!」

 

 ドッ

 

 グランベリーとゼットランドの迎撃ミサイルの幅広い砲撃が着弾して、荒野の地面を深く抉っては爆風で土煙が巻き上がっては嵐のように荒れ、上昇中だったレイラたちの船内を震わせる。

 

「ひゃあ?!」

 

「資料よりかなり威力が増している、流石は皇女用の航空艦と言う訳か?!」

 

 ユーフェミアは思わず揺れるブリッジに声を上げては手放したピンクちゃんがコロコロと転がり、ウィルバーは妻のサリアの身体を支える。

 

「けど直撃は無いんだから、問題はないわ。」

 

 ラクシャータは平常運転気味の軽~い感じのまま、迷彩とブレイズルミナスの状態を表示するコンソールを涼しく見ていた。

 

「……ラクシャータさん、ブレイズルミナスへの出力を最大まで上げてください!」

 

 だが逆にレイラは何かに気付いたかのように、ハッとして血相を変えながら上記を叫ぶ。

 

 ……

 …

 

「砲撃完了しました。」

 

「カメラを拡大化しつつ、第二斉射の準備を。」

 

 グランベリーのブリッジに立っていたシュバルツァー将軍の報告にマリーベルは満足することなく、次の指示を出す。

 

「こ、これは?!」

「うおぉぉぉ。」

「なるほど、流石は殿下です。」

 

 シュバルツァー将軍だけでなく、エリシアやトトたちは感心するような声を出しながらスクリーンを見る。

 そこに映っていたのは先ほどの砲撃で巻き上がった土煙が『見えない何か』に防がれたのか、あるいは付着した『形をした何か』だった。

 

「グランベリーの砲とゼットランドの照準を敵に合わせ次第、砲撃開始。」

 

「敵に、所属の通信は────?」

「────私たちの攻撃から未だに身を潜めているからには、ブリタニアの船ではないことは明らか。 もしそうであったとしても、何か後ろめたい目的で動いている時点で敵です。 総員、戦闘準備を。」

 

 ……

 …

 

「敵の次弾、来ます! 今度は直撃コースです!」

「各機体の発艦準備はまだか?!」

「船の副砲で弾幕を上げ、通信をナイトメア部隊に繋げてください!」

 

 襲う砲撃の振動に耐えながらオリビアは報告を続け、ウィルバーはナイトメアの出撃具合を聞き、レイラは反撃の指示を出す。

 

「ちょっと~?! どうしてこっちの場所がわかるのよ?!」

 

 そして先の者たちと違い、ラクシャータは疑問を上げる。

 

「えっと、さっきの砲撃の所為ではないかしら?」

 

「あ? どう言う意味よ皇女殿下サマ(ユーフェミア)?」

 

「ラクシャータさん、確かに先の砲撃は『私たちをあぶりだす』ためです。 迷彩を無効化する為に。」

 

「直撃は無かったじゃないの────!」

「────恐らく、土やほこりなどの付着具合から、リア・ファルの形を予測して狙いを付けているのでしょう!」

 

「う~ん……そりゃマズイね。 この船、急造艦だから未完成なんだけれど────」

「────策はあります。」

 

「……アンタ、ゼロに似ているわね?」

 

「いいえ。 私はただ敵との接触後の想定は、要因が多すぎるので方針だけを絞り込み、やれることをしているにすぎません。」*1

 

 レイラはコンソールのボタン押し、ナイトメア部隊に繋げる。

 

「ダルクに、名誉挽回の機会を与えます────」

 

 ……

 …

 

「────おかしい……」

 

「姫様? どうしたのです?」

 

 グランベリーにいたマリーベルの独り言に、シュバルツァー将軍が彼女の方を見る。

 

「反撃に、違和感が────」

「────敵は恐らく、『フロートシステム』と『姿を隠す』技術に重点を置いて、武装はその次なのでしょう。 このまま敵を疲労させ、ナイトメア部隊に制圧し────」

 

 ────ドッ

 ビィィィィィィィィィィ

 

「ぬお────?!」

「きゃ────?!」

「なの────?!」

 

 重い音と共にグランベリーのブリッジが酷い揺れに襲われ、転びそうになるマリーベルをシュバルツァー将軍が手を取って支えて、被弾を知らせるアラーム音が響き渡る。

 

「(グッ、古傷()が!) 状況報告!」

 

「グランベリーの機関部に被弾、火災発生!」

 

「ミサイルか?! なぜ事前に感知出来なかった?!」

 

「……ミサイルではありません! 第一報告によると、敵はどうやら銛状の物体を()()した模様です!」

 

「「「「………………………………は?」」」」

 

 シュバルツァー将軍はエリス達オペレーターに怒鳴ると、グランベリー内に突き刺さったオブジェを目撃した乗組員からの通信を伝えるエリスの言葉に呆気に取られる。

 

 まさか敵が推進装置のついていない武装を使うなど思ってもいないので、無理はないだろう。

 

「ッ。 ブレイズルミナスを展開し、ブラッドフォードとグレイルを連結させたグレイル・エアキャヴァルリーで敵艦の背後へ回し、注意を逸らしてください!」

 

 ……

 …

 

「敵は恐らく、(ブレイズルミナス)を起動させながら、高速移動できるユニットでこちらの側面を襲って来ると思われます。」

 

「そうか、ならば恐らくブラッドフォードが出てくるだろう。 こちらも迎撃にナイトメアを出すと……いや、私自身も出よう。」

 

「ブラッドフォード……確かアンタがシュタイナー・コンツェルンで設計していたヤツだね?」

 

「え?! だ、大丈夫なのですか?」

 

 レイラとウィルバーが着々と反撃の戦略を語り合う横で、ラクシャータの言ったことにユーフェミアが反応する。

 

「心配ない。 いくら私が去った後に開発と調整を独自に続けようとも、基本はそう簡単に変えられない。」

 

「では、ミルベル博士に頼めますか?」

 

「ナイトメア部隊の指揮を一時預かる。 方針はやはり、()()で当たっているのだろうか?」

 

「ええ、こちらも博士の動きに合わせます。」

 

「ではサリア、行ってくる。」

 

「ダルク、そしてナイトメア部隊の皆さん……これからはミルベル博士の指示に従ってください。」

 

 ……

 …

 

 グランベリーから発艦したフォートレスモードのブラッドフォードに背後をドッキングさせたグレイル────『グレイル・エアキャヴァルリー』が、展開されたブレイズルミナスの死角から、ぼんやりと姿を現したリア・ファルへと向かう。

 

『大きい……』

『グランベリーとほぼ変わらない大きさの浮遊航空艦とは……どこの国が作ったのでしょう?』

『レオン、それよりも今はマリーたちに被害が及ばないように派手に行くわ!』

『了解です、オズ! ハドロンスピアーが使えなくとも、それだけがブラッドフォードではありません!』

『ッ……ファクトスフィアに反応、敵は……一機?!』

『こちらも捉え……早い?!』

 

 オルドリンとレオンハルトの画面に、リア・ファルがいると思われる空域からでてくる反応に目を見開く。

 

 グレイル・エアキャヴァルリーはその状態から高出力の音速機動戦を行えるのが特徴であるが、彼らが捉えた敵の反応もそれに負けないほどの速度で攻め寄っていた。

 

「やはり、ブラッドフォード! 最終調整を行えるとなると、相手はマリーカ君かレオンハルト君か……」

 

『貴方の元でテストパイロットをやっていた人? ……戦えるの?』

 

「心配ご無用だアリス君。 “殺せ”というのなら無理だろうが、“時間稼ぎ”ならばどうとでもなる。 私の『翼』を信じろ。」

 

『私が信じるのは、アンタを信じる彼よ。』

 

「ならその信頼に応えてみせよう、『イカロス』で!」

 

『イカロス』、それは原作の『オズ』でミルベル博士が掲げた『天空騎士団構想』を元に開発されたナイトギガフォートレスの名称である。

 

 正式な形式と名称はFFB-02『サザーランド・イカロス』と呼ばれ、単機でブリタニアのペンドラゴンに奇襲をかけても計画が成功させる自信をウィルバーに持たせるほどの、高機動と重火力を両立させた機体で()()()

 

 過去形である。

 

 今作では、ミルベル博士がタレイランの翼に関わっていないことと、アマルガムという組織と人材に巡り合ったことで、サザーランド・イカロスは別の形で姿を現し、『オズ』では死闘と奇襲の末に撃沈されたグレイル・エアキャヴァルリーと五分以上の激しいドッグファイトを繰り広げていた。

 

『レオン!』

 

 オルドリンは先ほどから激しく揺れながらエラー音を出す各アラームにハラハラドキドキしながら、今のグレイル・エアキャヴァルリーの命運を握っているレオンハルトの名を呼ぶ。

 

『────口を閉じてくださいオズ、舌を噛みますよ! (このスプリットSからのシャンデルターンは────!)』

『(────私のシャンデルターンに対して、スライスバックからローヨーヨーのマニューバ────!)』

『『────ウィルバー主任/レオンハルト君か!』』

 

 数度の攻防でレオンハルトとウィルバーは互いの正体に気付いてからも、血の流れが逆流する寸前ギリギリの空中戦闘機動を続けながら、()()()周波数に個人の直通回線に繋げていく。

 

『ウィルバー主任ですね!』

 

『やはりレオンハルト君か!』

 

『何故シュタイナー・コンツェルンを辞任された貴方が、ここにいるのです?!』

 

『今のブリタニア帝国は一部の者が支配して民衆に意思を押し付け、他者を平然と弾圧することで反感を買いすぎている! 君たちグリンダ騎士団は、そんな帝国の火種を消火しているだけだ! 私はそれとは違う道を歩もうとしているだけだ!』

 

『僕たちグリンダ騎士団はその反感の被害が、無関係な民衆に向けられた場合にのみ鎮圧をしています! だったら────!』

『────ならば過ちを犯す前に、その“力の行使後”を見極めてから振るいたまえ! 今の君たちは、“事後処理”を押し付けられているだけに過ぎない!』

 

『武装組織に鞍替えした主任のそれは詭弁だ! “テロだ”、“レジスタンスだ”と騒ぐ者たちと何ら変わりはない!』

 

『今の帝国が示す方針では、君たちグリンダ騎士団の行動で救った命よりいずれは殺す命の数が多くなり、いずれ限界が来る! そして帝国内は、敷かれたレールに乗ったままでは変えられないのだ!』

 

 レオンハルトとウィルバーの議論と攻防が続く中で、グレイルも決して『只のエナジー補給コンテナ化』はしていなかった。

 

『レオン、行きます!』

 

 グレイルは機を見てから連結を切り離しては()()()()になっていたサザーランド・イカロスの背中にとりついて、腕部に装備されたソードブレイザーを────

 

 ────ガイィィン

 

『させないわよ!』

『敵?!』

 

 グレイルのソードブレイザーを、サザーランド・イカロスの両舷に付いていたコンテナ内部からビックリ箱のように出てきたガニメデ・コンセプト(アリス機)バスター(マイクロ波誘導加熱システム)ソードが弾く。

 

 アリスのガニメデ・コンセプトとオルドリンのグレイルは荒ぶるイカロスの背中の上で、肉眼がギリギリ追える速度の白兵戦を行う。

 

「(この剣術、“流石はジヴォン家”と言ったところかしら!)」

「(このスピード、まるでエニアグラム卿を相手にしているようだわ!)」

 

 グレイルのシュロッター鋼製の剣とガニメデ・コンセプトのバスターソードにヒビが入ると、両者はそれを投げつけ、新たな得物を取り出す。

 

 ウィルバーの急激な機動戦でグレイルは振り落とされても自分を追うガニメデ・コンセプトを空中でいなし、お互いの機体はイカロスとブラッドフォードの背中に乗ってはまたも攻防を繰り返す。

 

 千日手の攻防が続き、これらをリア・ファルとグランベリーの中から見ていたオペレーターたちは、息をすることも忘れてしまうほどの空中戦に魅入られていた。

 

「……頃合いですわね。」

「そうですな。」

 

 そんなとき、マリーベルの残念そうな声と彼女に同意するシュバルツァー将軍の言葉に、グランベリーの者たちはハテナマークを頭上に浮かばせる。

 

「トト、レオンたちに帰還の命令を出してください。」

 

「え? あ、はい!」

 

「私としたことが……まさか大局を見失うとは、情けない……」

 

「いいえ。 私でさえ知らずの内に乗せられていましたので、今回ばかりは“敵が一枚上手だった”という事でしょう。」

 

 ……

 …

 

「敵は恐らく、ナイトメアを退かせるでしょう。」

 

 リア・ファルに居たレイラの言葉に、ユーフェミアが他の皆の疑問を代理するように思わず口を開ける。

 

「ど、どうしてそう言えるのです?」

 

「彼らは優秀です、とても。 ですが優秀故に、()()()()()()()()をここで自らに課せることなどしないでしょう。」

 

「“目的のない消耗戦”?」

 

「ええ。 彼らグリンダ騎士団がここにいるのは『紅巾党狩り』、及びブリタニアの軍事力の誇示とアピールの為です。」

 

「だったら尚更、私たちの様な所属不明艦を殲滅するんじゃないの?」

 

「それです、ラクシャータさん。 『紅巾党』の大部分は、不平不満を中華連邦に持った駐留軍。 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()のを前提に、彼らは中華連邦内の遠征を帝国宰相が認めています。」

 

「……あ?! じゃあ、さっきのダルクちゃんに一本だけ投げさせたのは────?!」

「────ええ。 ユーフェミアさんの思っているように“我々も貴方たちに打撃を与えられます”とアピールしつつ、我々が危険空域から離れられるまでミルベル博士たちに注意が行くように仕向けました。

 我々の勝利条件は『敵艦に勝つ』ことではなく『逃げる』ことです。 対して相手のグリンダ騎士団は『無事に紅巾党狩りを手助けした』事実です。

 こんなに早く、特に『正体不明の敵』相手に消耗しては、スポンサーである帝国宰相に対して格好がつかなくなります。 その為に機動力が一番高い、博士とアリスを迎撃に向かわせました。」

 

 レイラの説明にある者は感心の目を向け、ある者は納得し、またとあるモノは『ほへー』と呆けていた。

 

「(フゥー……やはり疲れますね。)」

 

 レイラ本人は、急遽自分の考えた戦略が上手く行ったことに安堵しながらも、ドッと出た疲れから椅子の背もたれに体を預け、ヴァイスボルフ城で頬張った茶菓子が無性に食べたくなっていた。

 

 ()が淹れた紅茶と共に。

 

「(……もしや、これもシュバールさんの思惑通りなのかしら?)」

 

 そんなことは全くないのである。

 そしてスバルからの連絡が届いたのは、無事に敵から離脱したイカロスとアリスのガニメデ・コンセプトが遠くへ逃げたリア・ファルと合流した後とも、ここで追記しておこう。

*1
103話より




余談ですが、『艦隊戦』と『進出ス!』+他を聞きながら書いたものでした。 (;´ω`)

後書きのプチメモ:

『サザーランド・イカロス』。 航空系軍事企業シュタイナーコンツェルンで開発された空戦用機で、サザーランドをコアユニットとして起動する準KGF。
あとにデザインはR2のサザーランド・ジークに応用された、とも。
原作の『オズ』では単独行動可能な爆撃機として出ているが、今作では大幅な魔改造が施されている。

ウィルバー:魔改造? 『改良』と呼びたまえ。
作者:『イカロスとブラッドーフォードが可変型高機動機体のようだ』? Ha,ha,ha、気のせいだよジョージィ。
スバル:ドーナツの可変型MSだよ♪

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