「なんですって?!」
ブリッジでレイラが素っ頓狂な声を出したことで、物理的に凍っていたリア・ファルの復旧作業に励んでいた者たちはピタリと動きを止めて何事かと彼女の方を見る。
なお半分ほどは先ほどブリッジに入ってきたユーフェミアのフレンチクルーラー風のヘアスタイルを見て、思わず出来立てほやほやのドーナツが食べたくなったのは余談である。
「ッ。 コホン。 すみません、
自分に注目が集中していくことにレイラは咳払いをしてから心を落ち着かせ、平常心を装いながらも先日出来上がった『リア・ファル』の初出航をする際の『誰が艦長を務めるのか』での短い
………
……
…
当時、アマルガムが桐原泰三のおかげで人工島を中華連邦から借り受けては中華連邦の目を盗みながら開拓に民間施設、及び軍用設備を水面下で充実させていったが流石に限度があった。
何せ『借り受けた』と言っても島は元々『潮力発電用の人工物』として築き上げられたので人が住めるような設計では無い。
よって『島』というよりは、更に一段階前の『大地の基盤』からのスタートで『土』や『開拓道具』なども輸入するしかなかった。
その『道具』にナイトメアや民間から軍用に転換できるもの等が混じっていても少々の賄賂さえ渡せば問題はないが、流石に正規のモノには劣る。
そんなところに、まるでそれを予期していたかのように元ガリア・グランデと言う『巨大フロートシステム』と『EU軍の高々度観測気球』、『wZERO部隊のアレクサンダ』に『ユーロ・ブリタニアのグロースター・ソードマン』等々の軍用物資が届けられただけでなく、人材も一気に充実した。
正に『渡りに船(物理)』である。
そこで元からラクシャータとウィルバー・ミルビル博士は因縁があるのか『いがみ合い』兼『嫌味』兼『子供のマウントの取り合い』などの
潜水艦が『ディーナ・シー』という事から、神話繋がりで『リア・ファル』と名付けられた浮遊航空艦の試運転に、スバルの『ギアス嚮団の拠点探し』に使用することで問題が発生した。
それは別に未だに抱えている技術や代用品を使った不具合でもなく、単純に『誰が艦長を務めるのか』。
つまり
今までは皆が平等の立場になるような役割分担でアマルガムは動いていた。
少数人の組織や集団ならば『方針』と目的さえ決め、『そこ』へと至るために各々が行動しても大きな問題は無いのだがある程度の規模を超えると(特に人員の中に癖が強い者がいるほどに)そうもいかなくなってしまうのが道理────
「そこは経験が浅いとはいえ、集団行動の司令を行ったこともあるこのレイラが艦長で良いのでは?」
────
やっとご対面しなければいけなくなった、『指揮系統』に直面し高まる緊張感の中で毒島が言った言葉で呆気なく物事は進んでいった。
「フム……“経験が浅い”のなら、私は補佐に回ろうか?」
「あら、意外ねウィルバー? 私はてっきり年長者であるアンタが威張り出ると思ったわ。」
*略*マウント取らなくて良いのかよ年寄り?
「年長者だからこそ、導くべきだと思っただけだよ?」
*略*子供の世話を見るのは大人の責任だけれど?
バチバチバチバチバチ!
「あ゛?」
「お゛?」
そんな喧嘩腰になった何時ものウィルバーとゲストのラクシャータの横では、皆は『またか』と思いながらもレイラと毒島に注目を向ける。
「あの、よろしいですかサエコさん? 貴方の方が、ここに居て長いのでは?」
「ん? ああ、私は駄目だな。 確かにある程度をこなせる自信はあるが、どちらかというと『裏方』より『現場』の方が向いている。」
「……ですが、私以外にも────」
「────それに“私自身が君の実力を見たい”というのもある。」
『何せ彼に“必要だ”と言わせるほどだからな』、との続きをレイラは聞いたような気がするままリア・ファルの艦長をすることとなった。
尚余談だが、この後にフロートシステムやユニットを搭載した機体などの適性テストで毒島は気分が悪くなりテストを途中で断念したとかは関係ない……かも知れない。
………
……
…
レイラは深呼吸を静かに行って、ユーフェミアが伝えたマオ(女)の言葉について考えを走らせる。
「(“意図的に残された手がかりの可能性が出ている”、と……つまり我々が取っている行動自体が想定されている範囲内かも知れないという事かしら? 『何故』に対して考えられることは『私たちの実力を試す』、『逃げる為の時間稼ぎ』、あるいは────)」
「────司令、10時の方向に反応です────!」
「(────やはり来ましたか────!)────ラクシャータさん、艦の移動は可能ですか?」
「ん? 可能かどうかで言うのなら『可能』よ? さっきの意味不明な氷で出力のこともあるから、迷彩をしたまま移動するのはお勧めしないわね。」
「なら迷彩分のエナジーを主砲に回してください。 さっきの反応は恐らく、『グリンダ騎士団』のモノでしょう。 ナイトメア部隊の作業はどうなっています?」
「え、あ……負傷した者たちは無事に艦に戻っています。 敵ナイトメアはアキト達が現在交戦中で、動けない機体たちはドローンのアレクサンダが回収を行っています。」
復旧作業中にレーダーで周りを監視していたオリビアの声にどよめきが走り始めるが、レイラが平然としたままテキパキと事を進めたことで動揺は流されていき、普段通りの空気に戻っていく。
「主砲で撃ち落とすのかい?」
「いいえ、主砲には別の役割をさせます。 ユキヤに連絡を取ってください、彼に頼みたいことがあります。」
……
…
グリンダ騎士団のグランベリー内は地形の異変を追い、
ティンクはモグモグと携帯食を頬張りながら静かに待ち、ソキアは艦長代理の罰功績でずっと張り続けていた緊張によって疲れを感じながらもソワソワしていた。
レオンハルトといえば────
『そう言えばレオン?』
『なんです、オズ?』
『聞いたわよ~? マリーカと良い感じになってきたんですって?』
『ふぁ?!』
────格納庫内でのハプニングの噂を聞いたオルドリンに弄られていた。
『え?! ちょっとどういう事にゃ?!』
『ああ、何やらレオンとソレイシィ卿が抱きあったとか?』
『誤解を生むような言葉は止めてください! ブラッドフォードから落ちてきた彼女を受け止めただけです!』
『それにしては“マリーカ”と呼ぶのは良い進展だと思うよ?』
『何で知っているんですかティンク?!』
『はっはっは。』
オルドリンとティンクの言い出したことでその場にいた者たちはほっこりしながらも、チクチクと彼を経由して聞いたウィルバーの言葉は彼ら彼女らの脳裏から離れなかったが、『艦内待機からいざ出撃とくればそのような考えをする暇もないだろう』と思っていたので、四人ともそれなりに出撃を待ちわびていた。
だが命じられてから数分後、スクリーンに表示される『待機』が『出撃』に変わることは無かった。
「「「「(…………出撃命令が全然でない?)」」」」
コンコン!
「んにゃ? 将軍?!」
『コックピットを開けろ、シェルパ卿。』
サザーランド・アイの外から機体をノックするような音にソキアはシュバルツァー将軍がいたことにビックリしながらも、言われた通りにハッチを開けるとシュバルツァー将軍は乗り込む勢いでクシャクシャの紙を手渡す。
「え? (『大至急サザーランド・アイをグランベリーのメインフレームに接続して侵入者に対応しろ』?)」
……
…
「ん?」
少しだけ時間を巻き戻すと、グランベリーのブリッジにいたオペレーターのエリスが何かに違和感を覚えたのか眉毛をハの字にさせ、隣のエリシアが彼女の珍しい仕草に気付いて声をかける。
「どうしたの、エリス────?」
「────少し黙ってエリシア。
エリスの指は熟練のピアニストのように、座っていたコンソールのキーボードを正確かつ早急に入力を叩いていく。
彼女は『攻撃』と言ったが、それは物理的なモノではない。
「将軍、皇女殿下。 何者かがグランベリーに電子妨害を図ろうとしている動きがあります。」
「遠隔で電子妨害────?」
「────恐らく前回遭遇した際に我々が探している間に、敵も準備をしていたのでしょう。 エリス、頼んでいた電子対抗手段で事足りますか?」
「相手もかなりのやり手で変則的に手段やアルゴリズムを変えて、こちらも即時対応を強いられています。 既に皇女殿下に頼まれて作ったモノは破られました。」
「ではエリスはそちらに専念してください。 我々で物理的に攻めれば────」
────ザ、ザザ。 ザー、プッ。
カタカタとエリスがキーボード入力をする音とは別に、ブリッジ内のスピーカーから何か接続されるノイズが走ってはマリーベルとシュバルツァー将軍の近くにあるモニターが黒くなり、白い文字がスラスラと浮かび上がる。
≪ω・`)ノ ヤァ≫
「これは────」
「────エリス、エリシア。 通信を切れ────!」
「────ダメなの~! グランベリーの重要機関への攻撃を防ぐのでエリスは手一杯みたいなの────!」
「────エリシア、手伝って! 相手はスパコン並みの処理スピード────!」
「────ひぇぇぇぇぇぇなの~!」
≪マリーベル皇女殿下、ゲームをしようよ。 ( ^∇^) ≫
「……ゲーム? ふざけていますわね────?」
≪────ふざけてなんかいないさ。 そっちのハッカーもかなりやるけれど、操作方法が型通り過ぎだからチャンスをあげたいんだ♪ ( ゚∀゚)≫
「(こちらの音声に反応するという事は、少なくともエリスが対応できるより早く電子攻撃が仕掛けられるほどの腕……ならば艦内の監視カメラにもアクセスされてもおかしくはない。)」
マリーベルはそう思いながら、いつも持ち歩いている手帳を出しては何かを書き込んでからページを静かに切り取ってそれをシュバルツァー将軍に手渡す。
将軍は手渡された紙を受け取りながらそれを読むと頷いてからブリッジから早歩きで出る。
「(まさか急造艦だったおかげでブリッジに監視カメラが設置されていないことに感謝する日が来るなんて……皮肉ね。) それで、ゲームとは?」
≪簡単だよ。 『だるまさんが転んだ』だよ! ("⌒∇⌒") ≫
「……『だるまさんが転んだ』? 」
≪あ、ブリタニア風に言うと『おばあさんの足取り』だっけ?≫
「(“ブリタニア風”……敵はやはりブリタニア人ではない────)」
≪────勿論、こっちが鬼で君たちが参加者。 合図は────≫
ビィィィィィィィ!
レーダーに急上昇するエナジー反応を知らせるアラーム音がグランベリーのブリッジに鳴る。
≪────僕たちが君たちに向けている
「高エナジー反応! これは……ランスロット・グレイル・チャリオットと似ています!」
エリスの補佐に入ったエリシアの代わりにトトが焦るような声を出すと、冷や汗がマリーベルの頬を静かに伝う。
「(まさか、こうも簡単に主導権を取られるとは! 先手を取った筈が、後手に?!)」
……
…
「フィ~……」
リア・ファルの中に避難したユキヤは、ため息を出しながらゆるキャラマスコットの形をしたAIがスクリーンを慌ただしくあたふたするのを眺める。
「(まさかシュバールさんの頼みで作っておいたプログラムがここでも役立つとは……いや、即座にこんなことを考え上げたレイラがそれだけ有能という事なんだろうね。)」
近づいてくるグランベリーに対してリア・ファルに避難したユキヤに『電子妨害』をレイラは頼んだ。
実は以前の遭遇時に、特にやることも無かったユキヤはマリーベルの考えたように次の為に情報収集を行って、以前スバルに頼まれた『対機密情報局用』のプログラムを応用した『対グランベリー用プログラム』を作った。
こんなことをしても対象の環境などがガラリと変わっているので本来は役に立たないのだが、幸運にもブリタニアの基礎OSはソフトウェアのメンテやデバッグのやりやすさの為に統一化されていたことが裏目に出たのだった。
「(まぁ、『侵入して堕とせ』じゃないから『妨害』に全力を入れられるんだけれどね。) それでも、どこまでこの状態が維持できるかな?♪」
「ユキヤ君、楽しそうだね?」
ユキヤの何気なくウキウキした口調の独り言に、彼の補佐に入ったクロエが話しかける。
「ん? そりゃそうでしょ? だってレイラは
「そりゃ仕方ないわよ。 だってシミュレーション上だけのデータでも、
「うん……迂闊には撃てない────」
「──── “迂闊には撃てない”? だって相手は空にいるんだよ?」
「レイラの事だから、墜落時も考えているのよきっと。」
「ふぅ~ん……そんなこと一々考えていたら戦いなんてできないじゃん────あ。」
アンナの言葉に、ユキヤは面白くなさそうな返事を出してはハッとする。
「あー、なるほど~……だからシュバールさんは……」
「???」
「へぇ~、最初は『頭おかしいじゃね?』と思っていたけれどそういう事か~。」
「どういうこと?」
「ん? んー……主砲の引き金さ────♪」
ぴぃぃ~。
そんなユキヤを遮るかのように、スクリーンのゆるキャラたちは涙目になりながら更に慌てるような音を出す。
「────おおっと! 相手も本腰を入れてきたってレイラに伝えといて!」
……
…
「……ふぅー。」
レイラはリア・ファルのブリッジ内から、スクリーンの映像を拡大化して動きを止めたことを確認できたグランベリーを見て止めていた息を吐き出してもドキドキし続ける胸を落ち着かせようとし、思わず泳いでいた目が主砲の引き金を見ては止まる。
「(最初は何故主砲の発射スイッチが拳銃の形をしているのか謎でしたが、こういう意味もあったのですね。)」
「敵艦、未だに動く気配はありません。」
「エナジー反応も安定しています。」
「ラクシャータさん、主砲の維持はどの程度続けられますか?」
「う~ん……実際にこういう風に動かす前提をしていないし、エナジー源も従来のものだからね~……ま、そこは中途半端野郎とサリアたちに相談して頑張ってみさせるわ……で、発射しないの?」
「撃たずに済めば、それに越したことは無いです。」
「あ、そ────」
「────新たなエナジー反応、出ました!」
ラクシャータのキラキラし出した目はレイラの答えによってスンと落ち着き、いつものダラケぶりなモノに戻ろうとした時にサラの声でその場に緊張感が走る。
「方角は?!」
「方角は……え────?!」
「────サラ、これって────」
「────ほ、方角は
ボォン!
サラの言った言葉を脳が理解する前に、外部から地面を無理やり突き抜けるような爆音が響いたことでリア・ファルの乗組員たちがそちらを見ると、青白くて巨大な腕の様なものが試作型蒼天に掌底打ちを打ち出していた。
「「「「なにあれ。」」」」
ご尤もである。
…………
………
……
…
とある少女は夢を見ていた。
否、
少女は文字通り何百年も生きたことで、それ等を『現実』と捉えてしまえば頭がどうにかなりそうで、少女は『夢』と考えることで正気を保った。
既に正気ではないかもしれないが、彼女はとりあえず『自信はまだ正気』と悲観しながらも捉えられるので幾分かは正気なのだろう。
そんな長い歴史で彼女は様々な人物と会っては別れを告げ、また新しい者たちに会った。
その中でも同じコード保持者……になれなかった中途半端の者は本来とは少し違う形の
とある男はあらゆる水分を操作。
とある者は大気の操作。
とある者は他人との視覚の共有。
とある者は理性と知性の代わりに際限なく再生する強靭な肉体と巨体。
とある少年はエネルギーの補給は義手を経由し他者から奪い取ることでしか生き永えられない『人外』へ。
その反面、少女は────
「────C.C.! ピザ持ってきたよ!」
「……………………………………(なんだ、夢か。)」
自分を呼ぶ声に瞼を開けたC.C.は久しぶりに見る、走馬灯のような夢から目覚めては黒の騎士団のアジト(仮)内の個室から出てウキウキとするマ
「よくやったな、マオ。」
「────。」
自分の言葉に嬉しそうに悶えるマ
「(しかし、何故今になって『蓮夜』たちの夢を見る? ルルーシュに似ている……ああ、いや逆か。 『ダッシュ』に似ているルルーシュと考えてももっと前に見てもおかしくはない筈……)」
スラスラと簡単に書かれた報告書にはルルーシュがゼロだった頃よりはるかに作業速度が劣るとはいえ、黒の騎士団が着々と力を取り戻しているようなものが書かれていた。
「(まぁ、日向ぼっこしながらまた寝るか。)」
エリア11のC.C.は、今日も
簡単なまとめを次話に組み込むか、R2直前のおさらいみたいなものにするか決めかねています。
現在は後者を考えていますが、それだと今の展開後になる予想です。 m(;_ _ )m
余談で後書きEXTRAです、
『蓮夜』:
皇暦1800半ばを舞台にする『漆黒の連夜』の主人公。 『頴明の里』と呼ばれ、滅んだ国や家の者たちの留置場兼隠れ里で暮らしていたスザク似の少年。 術や学問は苦手というか破滅的だが実戦で本領を発揮するタイプ。 ギアスの契約に失敗し左腕の義手は『生命力を吸い取る』という異形のモノに変わった。
『ダッシュ』:
上記と同じく『漆黒の連夜』の黒幕っぽい人物……というか髪を伸ばしたルルーシュの姿でコード保持者になり切れなかった少年。 『契約』はCCのように執行できるが彼女の『ギアス』とは違う形の、『異形の力』(または『妖術』)として表現する。