お読み頂きありがとうございます!
楽しんで頂ければ幸いです! (;・ω・)
ランスロット・トライアルで見た生体反応のあった場所に近づくにつれ、マリーベルの心拍数は上がっていった。
原因は分からなくとも『
ズキ、ズキ、ズキ。
ようやくマリーベルは『このような光景を見たことがある』という結論に至ると彼女の頭痛は再び鋭さを増していき、思わず頭を抱えそうになる。
「皇女殿k────」
────ヒュ!
ガキィン!
背後から男性の声がすると、マリーベルは考えるよりも先に腰の剣を抜くと同時に振りかえりながら後ろにいた者を
「え?! (私、何故────いえそれよりも金属音とは?)」
「なるほど、これが
困惑しながらもマリーベルが見たのは切り付けられたことより彼女の取った行動に対して興味深いような感想を漏らしていたマッドと、切られた皮膚下から露出する血肉ではない鉄製の身体だった。
「あ、貴方は────」
「────マッド・カニングハム。 学会では元教授で、今はここの責任者です皇女殿下。 ああ、傷の事なら大丈夫です。 私の身体は御覧の通り
「なんの、ことでしょうか?」
マリーベルは平然を装いながらも目の前にいるマッドを『もう一度斬らなければ』という衝動に駆られ、手に持っていた剣は僅かに震えていた。
「いえ、先ほどの剣さばきと今の様子だとどうも『マッドを斬らなければいけないと思っているのでは?』と……【コード、MMB────】」
────ザクッ!
マッドの言葉を遮るかの様にマリーベルの身体は動き、気が付いた頃にはマッドの開けた口から喉奥を剣で突き、切っ先はマッドの頭部と胴体の間にある脳幹を貫いていた。
「あああ?! (ま、また────?!)」
『────気に病むことは無い、皇女殿下。』
手術室内に設置されているスピーカーから、マッドの声が出てきてマリーベルは周りを見渡す。
『“人間の脳は動物と比べて発達している”。 これは事実ではあるがその発達した部分を管理しつつ対応の“プログラム”を備えつけるのは原始的な動物と大差なく、時には“衝動”として現れる。 それを他の誰かが利用して君に植え付けただけに過ぎない、
「マッド・カニングハム────」
『────例えばだが、
ドッ!
マッドの問いに、マリーベルは自分の心臓が胸から今すぐにでも飛び出そうなほど強く脈を打つのを感じると同時に、とある感情が氷のように彼女の身体を急激に冷やしていくと脚から力が抜けそうになる。
『恐怖』。
ただ『
『本当にオルドリン・ジヴォンの所為なのか?』
この問いは過去の事件、それも皇族の者や貴族でも階級の高い家でなければ知れない事柄であり、今尚10年経っても筆記はおろか口にするだけでも罪になるような事件────それは『過去にオルドリン・ジヴォンが、“
「あ、あれはオルドリンが────」
『────そうかね? “
「それは、あの時の少年が名乗った────え?」
マリーベルは自分の口から出た言葉にビックリし、口を覆うがその代わりに幼い頃の記憶と感情が断片的に蘇る。
かつて皇族としての住まいにしていた後宮。
母のフローラは長女である自分ではなく、妹のユーリアに構いがちになったフラストレーション。
親友のオルドリンに愚痴を聞いてもらうために呼んで後宮の正門前で────
ザザ!
────かのじょと────が遅く来た────
ザザザザザザ!
────いっしょに────オルドリンより先に────
ザザザザザザザザザザザザ!
────きたしょうねんが────テロリスト。
「あ……あああ……」
マリーベルは頭を抱え、膝が地面に付くと幼い自分の声が脳裏によみがえった。
『さいきんおかあさまはいもうとばかり。』
「ち、違う。」
『どうやってこまらせようかしら。 あらおかあさまにとどけもの?』
「これは、オズが……」
『とくべつに と お し て あげる! あっちのつうようぐちなら へいがいない わ。
寂しくなんてないわ、
だって
『マリーはどうして皇族に戻りたいの?』
『全ての人々を暴力の象徴であるテロから守り、平和に生きられる世界の為です。』
幼い自分の声の後に、自分がオルドリンに伝えたグリンダ騎士団設立の理由が直接脳に衝撃を与えたようなショックに放心したマリーベルはヨロヨロと立ち、過剰なストレスからか出る鼻血を気にすることなくぐちゃぐちゃな思考でもその場からがむしゃらに逃げ出したい気持ちに従って、走りながら涙を流す。
「オズ……オズ! たすけて! 私! わたしは!」
……
…
「……チッ。」
その様子を建物内部に設置された監視カメラの映していたデータを、別の部屋で見ていたマッドは舌打ちをする。
「(やはり『プログラミング』だけでなく、『依存症』などを色々と弄っていたかV.V.……だがこれでグリンダ騎士団も混乱し、動きやすくなる。 クリストファーの活性化と暴走は予想外だが近くに『器』があることを証明した。 ならそれを強奪────)」
────ドッ!
ガラガラガラガラガラガラガラ!
頭上からさっき聞こえた轟音よりさらに大きなものが地下都市全体に響き渡り、この直後に天井がさらに崩れていく。
グランベリーのVTOLやそれ等に乗って脱出しようとしていた研究員たちは慌てながら落ちてくる岩石や土砂崩れを避けるために動き、落ちてくるオブジェ────『クリストファー』を見上げる。
クリストファーは人間でいうところの首から下の上半身を左肩と腕以外のほとんどと皮膚や筋肉、そして下半身の右半分が丸ごと無くなった状態で地下都市へと落ちてきていた。
そしてその
うん。 カオスだな。
イケボでの“喜べ少年!”が好きそうな、まごうことなき
俺とカレンの乗った試作型蒼天、凸凹闇鍋白炎にソードマン装備のガニメデ、グリンダ騎士団のランスロット・グレイルとブラッドフォードとゼットランドと良い臀部ソキアたんの乗るD-3サザーランド・アイ。
そしてそれに対するクリストファーに『ナイトメア・オブ・ナナリー』仕様のヴィンセント。
しっちゃかめっちゃかでどうすれば良いのだろう?
そう
ピッ!
そんな時に文字だけの通信が試作型蒼天に────いや、
いやこれ、『各機、メ〇・バズー〇・ランチャーの射線上から退け』の意味合いだよね?
つまりはさっきアマルガムの艦が出した高出力攻撃が来る!
「カレン、掴まっで────」
また喉をせりあがってくる感覚に俺は口を閉じて、試作型蒼天のブースターを展開し、他の機体たちも送られてきた情報を見てどれだけ危険かを本能で悟ったのか同じように表示された射線上から出る。
ドッ!
さっきの攻撃時よりまばゆい光と、ナイトメアの中だというのに鼓膜が破れるかのような音が辺り一面を埋め尽くしてモニターには異常を示すアラートなどが浮かび上がる。
そんな中、俺はしっかりと攻撃直前にクリストファーの取った行動とさっきまで見ていた地形を頼りに画面が回復する前に機体を動かしていた。
「昴────?!」
「────このまま逃げだやつを殺ず!」
さっき喉をせりあがったモノを何度も飲み込んだせいか、声はガラガラだった。
だがさっきも宣言したように、クリストファーは本能で危険を感知したのか攻撃の直前に上げていた左腕で地面をたたき割って、地中へと逃げ込んでいた。
記憶と感覚を頼りにクリストファーがいた場所に試作型蒼天が着くと案の定体は浮遊感に襲われて、画面が復活するとナイトメアは落ちていた。
その先には体のほとんどを失くしたクリストファーが目を開けてこちらを見て、背後にはエデンバイタル教団(多分)の地下都市が広がっていた。
ボツ!
重力と機体の噴射機で加速は増していき、浮遊感は幾分かマシになりつつも試作型蒼天の左腕のパイルバンカーの装填と、右腕に後付けられた輻射波動の出力を最大値まで上げてクリストファーの頭部にようやくたどり着く。
奴の残った左腕が上がってくるが、もう遅い。
ドン!
ボキボキボキボキボキ!
左腕のパイルバンカーをクリストファーの脳天に打ち込むと残った血肉が弾け、頭蓋骨が崩れるような音が杭を伝ってコックピットにまで響いてくる。
すかさず杭をパイルバンカー本体から外し、埋め込んだままの杭に右腕を覆った輻射波動装備を付ける。
シチュエーション的には『(プチ)貫通電極』だが、敢えて口にして言わせてもらおう。
「渇かず! 飢えず! 無に還れ!」
ポチッと輻射波動展開でガラガラ声を誤魔化そう。
「インパクト!」
あ。
これじゃあ『ベイン』の方じゃなくて『空島の玉』じゃん。
ホッホホ~♪
輻射波動がパイルバンカーで打ち込んだ杭を伝達し、クリストファーの頭部はみるみると内部からブクブクと膨れ上がっていく。
見た目もやっていることもグロいがどうでもいい。
今ここで、クリストファーは殺す。
やがて限界を超えたのか、クリストファーの体は次第に膨れ上がった頭部から爆さ────
……
…
……ん?
気が付けば、立っていた。
周りを見渡すと真っ白な空間が広がっていた景色に思わず『あ、これってギアス契約とかで見る謎空間に似ている』という考えが浮かび上がる。
ここには俺以外、誰も────いや、違う。
ブリタニアの騎士服を着た成人男性が、さっきまで何もなかった筈の空間で立ちながら俺を見ていた。
互いの目が合うと、するするとまるでカレンとのアイコンタクトを取るかのように相手の言いたいことがゆっくりと文字化された『感情』が脳内に浮かぶが、急に『
…………
………
……
…
「昴!」
カレンの焦るような声で、俺はハッと目を覚ます。
何時の間にか気を失っていたようだ────ってなんで闇鍋白炎とグレイルがドンパチを繰り広げてグリンダ騎士団とアマルガム側がにらみ合いをしているの?!
ああ、いや。
『オズ』で起こった『ベジャイア基地襲撃』はこの世界でもチラッとニュースでやっていたから、『
とりあえずカオスだが、ここまで来てオズが潰しあうのはマズい!
どっちも有能な人たちだしね!
「一本角! 今度こそ決着を────!」
「ベジャイア基地で戦ったランスロットタイプか────!」
オルフェウスとオルドリン、二人はジヴォン家の双子でありながらまるで正反対な環境と生活をしてきながらも似た歩みをしていた。
一人は平民の家に捨てられて、ギアス嚮団に売られては『ギアス』を発症し暗殺者として訓練され、恋人と脱走したが恋人は殺された。
もう一人は、貴族の家のしきたりに従って騎士として訓練を積んでは家族を叔父に皆殺しにされた。
その上、お互いはベジャイア基地で初めて相対した時から、『お互いの存在が許せない』という謎の衝動によって闘争本能が無理やり引き出されていた。
大局的に見ると、それはまるで運命そのものが『二人で一人分だけの幸せを互いから奪い取れ』と仄めかして似て非なる人生を送った二人がワザと争うように仕向けているかのようだった。
「(そうだ……ただ『双子としてジヴォン家に生まれた』というだけで、運命は二人がともに微笑むことを拒む。)」
オルドリンの叔父、オイアグロ・ジヴォンはそう考えながらガウェインと似てなくもない上に同じく通常より一回り大きいナイトメアの中で着ていた服をブリタニアのモノから仮装パーティーなどで見るような少々派手なマントと帽子に仮面をつけて、フロートユニットの出力を上げて空を飛んでいた。
ナイトメアは“
「(だがまさか、オズとグリンダ騎士団がまたこうも早い段階に衝突することが……)」
オイアグロは焦りながら、操縦桿を握っていた拳に力を入れているとレーダーに反応が出て、それらの所属を見てはできるだけ映像を拡大化する。
「(二人のオズが?!)」
……
…
『共通の脅威』であるクリストファーがいなくなったことで白炎とランスロット・グレイルはかつてベジャイアで有耶無耶に終わった攻防の続きを繰り広げた。
普通ならきっかけのない戦闘はないのだが白炎は『一本角の
互いは互いがいつ攻撃をするのか、あるいは今の状態を好機と見たのか攻撃はほぼ同時に行われたが闇鍋状態の白炎とほとんど独断で出撃したグレイルはともに本調子からほど遠く、さらにはクリストファー相手にエナジーを消耗しすぎたのか激しい攻防を開始してから数分後に二機に不具合が出始めてオルドリンとオルフェウスの操縦入力から応える時間の差はどんどんと空いていった。
「「チィ!」」
次第にイラつきはピークに達し、以前のように両者は己の機体から出ては白兵戦を交え始める。
オルフェウスは使っていたナイフのリーチが長いことを逆手に取り、逆にオルドリンの使う剣が脅威になりにくい密着状態に入り込もうとする。
対するオルドリンの動きは一つ一つの動作が長い分、パワーもカバーできる範囲もあって彼女の技術も重なってまともにカウンターを当てれば決定打をオルフェウスに与えられるモノだった。
だが時間が経つにつれて互角に見えた二人の間に差が徐々に表れていき、
ギィィン!
「う────?!」
「────迷いを持ったまま、俺をかみ砕けると思うなブリタニア!」
ここでオルフェウスはオルドリンの剣を無理やりナイフで弾き、隙ができたオルドリンに返す刃で────
ザクッ!
「────やめろ!」
「あ、あんたは
ナイフはいつの間にかオルフェウスとオルドリンの間に現れたスバルの右手に掴まれ、オルフェウスは彼とユーロ・ブリタニアで出会った際に名乗られた偽名とEUで再会した時の名を口にする。
「ッ! 貰った────!」
グッ! ゴキッ!
「────アンタもだ、オルドリン・ジヴォン!」
オルフェウスの攻撃が来なかったことで反射的に反撃しようとしたオルドリンの腕をスバルは左手で掴むと不穏な音が彼の腕から発されて彼女は彼と、近くに来た
「(こいつ、まさか紅蓮タイプに乗っていたヤツ? なら、セントラルハレースタジアムでヴィンセントもこいつが────)」
「────二人に、
「────戦う理由ならあるわ。 『テロ』という行為で混乱と破壊を────」
「────そんなことを言う前に国の在り方をどうにかすればどうだ? 民が国の『恩恵者』よりも『破壊者』に称賛を惜しまないと言う事は国に問題があると言うのは自明の理だ────」
「────それでも『被害を拡大化していい』というわけには────!」
スバルの言葉にオルドリンはイラっと来たのかすぐに反論し、今度はオルフェウスが正論で反発すると戦闘は止まっているのにヒートアップしていく。
「オズたちよ────!」
「────ウィザード?!」
「────黒いKMF!」
そこに急降下して辺りに砂塵をまき散らす真っ黒なKMF────アグラヴェインのコックピットから身を乗り出した
「お前もだ! ナイトメアから降りて来い、
「え?!」
「は?!」
オズたちは目を点にしながら素っ頓狂な声を出し、
「いいいいいいいいいや、私はウィザードだ。 そのオイアグロは誰だか存ぜぬ────」
「────そんなことはどうでもいい。 お前もオリヴィア・ジヴォンと同罪で言葉足らずだ、
ツルン!
「ほわ?!」
ガシッ!
ついにこけた滑ったウィザードは変な声を出して必死にアグラヴェインの装甲を掴んでナイトメアから落ちるのを防いだ。
……
…
「バ……カな。」
地下都市の監視カメラを経由してスバルたちのやり取りとアグラヴェインの登場を見たマッドは明らかに動揺していた。
「こんなことはありえん……いや、
彼は動揺しながらも、そのまま座っていた席のコンソールに入力をすると彼は地下都市のどこかにあるモノレールの車両に乗っていたことが判明する。
「ありえん……何故だ……何故……は?!」
グサッ!
ブツブツと何か独り言を言っていると、何かに気付いたのか振りかえろうとした彼のうなじを貫く。
「V.V.様より伝言、“面白かった────”」
身体から力が抜けていき、声も出せないマッドはうなじから喉ごと貫いたものを見ると針の様なものがきらりと光っていた。
「“────だから君も再利用する”とのことだ。」
仮装パーティー男のキューエルはそう言いながら針をシュッと袖の中に戻してからぐったりとするマッドを見下ろしていた。
(゚д゚ )
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
余談でようやく簡単なキャラ紹介出来そうな目途が立ちました。
……カモ。 (汗