小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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次話です!
お読みいただきありがとうございます!
楽しんで頂ければ幸いです!

マオ(女):ちょっと! 『なぜなに』が変わっているじゃん?! (=`ω´=)
作者:展開を進める為デス、ご了承ください。 (;´Д`)
マオ(女):ブーブー!
ミス・エックス:(既視感を感じるのはなぜかしら?) ←『オズ』ではよくふくれっ面のままブーブー言っていた人


第172話 悪、即、斬

 ザー。

 

「………………………………」

 

 やがて(スバル)が見ていた画面の映像は白黒が砂嵐のように激しく映る物へと変わるが、ただ静かにそれをボーっとする頭で見つめていた。

 

「お兄さ~ん?」

 

 ノイズへと変わった画面をまるで石像か何かのように固まって見ていた俺の、股の上に座っていたマオ(女)は首を回して振り返りながら声をかける。

 

 というかいつの間にそこに座った?

 最初は隣だったはずだ。

 

「………………………………」

 

「お~い?」

 

 とりあえず、何か話をして────

 

 「────マオ、今のは何だ?」

 

 え、今の誰?

 俺か?

 俺の声か?

 体は強張っていると自覚していたが、自分の口から出た言葉からいつも以上に感情が抜けていることにびっくりしたぞ?

 

「え? だから言ったじゃん、“()()()()()()()()()()”って。 ()()の様なものだよ?」

 

 は?

 

 ちょっと待て。 という事は、今まで見た痛々しくて生々しい映像は、全部────

 

「────あ、“日記”とはちょっと違うかな? ……うん、それもちょっと違うかな~? ま、いいか────」

「────ちょっと待て、マオ。 まさかだが、今まで見た映像は────」

「────うん♪ 無理やり命名するなら“音声の付いた記憶”だね♪」

 

「…………………………」

 

 俺は言葉を失くし、理解が追いついた(というか実感が湧く)と冷たくてもやもやとした何かが胸の中で沸々とする。

 

『映像の中身』は、まぁおおむね()()だ。

 

 単に『R-18』というより、『R-18G寄り』で────

 

「────でもまさかオジサンも初めての経験が()()()()()()なんてキッツイよねぇ~?」

 

 は?

 “初期型”?

 

 マオ(女)はまるでポーカーフェイスを維持していた俺の疑問を感じ取ったのか、平然と()()()()()()()おちゃらけた笑顔のまま言葉を続けていく。

 

「そうだよねぇ~、軍属から転属したほとんどがイレギュラーズだから想像しにくい? あ、でもお兄さんってギアス嚮団のことを知っているんだよね? アレだよアレ、エデンバイタル教団はギアス嚮団の二軍や予備軍落ちしたヤツの『リサイクル(再利用)』と『処理場』とかを兼ねていてね────?」

 

 なんだろう。

 

「────それに最初の頃はさっき見たように大変だったらしいよ? あっち(ギアス嚮団)は『実験体』扱いだから比較的にマシだったけれどあの地下都市に連れてこられた時点で『実験動物』だもんねぇ~────」

 

 マオ(女)はいつもの様子の筈なのに何故だか、こう……

 

「────あっちの手足に付ける筋力低下装置も、こっちで直接薬物を注入した所為でみんな重症筋無力症みたいになって『実験』が出来なかったらしいから作られたみたいだし────あ! でも薬物の方はマシだね! だって最初は『C.C.細胞の作用で体に隠れて起こる異変対策』としてバッサバッサと手足切り落としていたもんね! 逃げようとしたら片足とか、暴れたりしたら片腕とかバッサリ。 ま、義肢や義手が出来た後でも噛み付いたりする子は抜歯されてたよ────?」

 

 なにか いうべきなのかもしれない。

 ことばが みつからない。

 

「────まぁ普通、抜歯なんかしたら顔の骨格も変わっちゃってヨボヨボしちゃうけれど見た目がいい子たちはゴム製の歯が代わりに入れられたからそこまで変わらないけれど────」

 

 ギュッ。

 

「────え~? このタイミングで抱きつくのお兄さん? なんか早すぎない────?」

「────その……このことを他の……いや、そういえば“10人ぐらい生きていた”と────?」

「────そうだよ~。 見に行こっか?」

 

 マオ(女)はするりと器用に猫のような身軽さで俺から離れて手をまたも引っ張り、ヨロヨロとしながらも俺は付いて行く。

 

 ……

 …

 

 マオ(女)に連れてこられたのはリア・ファルの医務室────って何この匂い?

 

「……」

 

 唐突だが、『フレーメン反応』というモノを知っているだろうか?

 馬とか、猫とか哺乳類に起こる『臭いに反応して唇を引きあげる生理現象』だ。

 

 まぁ、『変顔』とも呼ぶな。

 

 一緒にいたマオ(女)と俺はきっとそうしているだろうよ、何せ医務室のドアが開いた瞬間、中からまるで“泥がついたまま湿った枯葉を燃やした様なムワッとする焚き火の臭い匂い”が鼻に来て二人とも固まったままだからな。

 

「フゥ~……あら? 二人だけ?」

 

 いつもは口に咥えているだけのキセルから黙々と煙を出していつも以上に怠い上に緩い雰囲気のラクシャータが首を回してこちらを見る。

 

 ラクちゃんお前、『アヘン』って……『不思議の国のアリス』に出てくる『イモムシ』そのままやんけ。

 

 って違う。

 

「……えーっと、ラクシャータさんなら元医者だし口も割と固いから────」

 

 マオ(女)が何か言っているが、次第に俺の注意は部屋の中の匂いから部屋の中にいる者たちへと移らせ、片耳でマオ(女)たちの会話を聞き流す。

 

「────あら、マオちゃんってお上手♪ おだててもな~んにも出ないわよ?」

 

「それを頼みにしているんだけど?」

 

 そこにいたのはマオ(女)が言ったように、10人ほどの者たちがいた。

 

「しっかし、まさかこんなところでまた『医者』になるとはねぇ~……しかもとびっきりひどい状態のオンパレードで、悪いことより良いことの方が探しやすい。」

 

 男女で歳は様々な上に見た目から10代辺り……と言っても、脂まみれの髪に貫頭衣の様な服装からチラチラと浮き出ているアバラと共に傷や痣に小さな火傷や手術痕などを考えれば、見た目で判断するの正直難しい。

 

「肉体の成長が遅いのは栄養不足もあるけれど、意図的に薬物で衰えさせている感じね。 ま、軽~く診た感じだけれど後頭葉妨害もあってこの子たちは読み書きも出来なくなっているし、知能も低下させられているっぽいわ……だから数年ぶりにキメているんだけれど────」

「────道理で臭い訳だ────」

 

 それに……俺の気のせいだが目は……いや、自然と俺の目はポッコリと確かな丸みを帯びた下腹部に────

 

「────当り前よマオちゃん。 でなきゃやっていられないわよ……で? この子たちどうしたの? 小児性愛者の巣窟でも発見したの────?」

 

 ラクシャータの続きの言葉がぼやけていき、『リーン』と鈴が鳴り続ける様な音が耳朶に響く中、俺は膝を地面に着いて未だに焦点の定まらない、ボーっとする子供たちと目線を合わせようとするとさっきまでおさまっていた感じが沸々とより強く戻ってくる。

 

 最初から何かを言いたかったが……今はただ目の前の屍のような子供たちを前にヨクワカラナイモノに打ちひしがれていた。

 

「────で? どうするの?」

 

 何時近づいたのか分からない、ラクシャータの声がはっきりと聞こえてくる。

 

「……は────?」

「────だからさ、()()()()助けるの? それとも……」

 

 いき が とまる。

 

 このひとは────

 

「え? 二番目のそれってもしかして、中絶手術?」

 

 のどの すいぶんが さばくのように ひあがっていく。

 

 ────いったい────

 

「じっくりと見ていないから何とも言えないけれど……時間制限(タイムリミット)があるのよねぇ~。」

 

 こえが だせない。

 

 ────なにを────

 

「吸引みたいに母体への負担が少ない手段は妊娠11週ぐらいまで。 その後は通常の手術手段は21週……それ以降も()()可能だけれどおススメはできないわね……それになんだかこの子たちの下顎骨の接合部、なんかされて一定間の圧力かけると外れるようになっているし……あんた達も一服どう~?」

 

「ボクは良いかな~……ね、お兄さん?」

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 ────プッツン────

 

「────お兄さん────?」

 

 ────おれの なかで なにかが はじけた。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 そこからは正直、あまり覚えていない。

 

 気付けばマオ(女)にラクシャータの所に案内をされてから、窓の外の景色に日が沈みかけていたことを配慮すれば数時間は経っているだろう。

 

「「「「………………………………」」」」

 

 場所はまたも医務室だが、前回と違うのは無言で()()()()の俺を手当てするラクシャータだ。

 

 身体の感じからすると脱力感と疲労は増しているが外傷的な痛みは少ないので俺の髪と肌のべったりとした感覚等は返り血だと思う。

 

 もう……何も考えたくない……

 

「………………こんなクソみたいなタイミングだけれどさ? 正直、良い年をした『大人』でもいろ~んな『大人』がいるわ。 一概に“子供だから~”とか“大人だから~”ってのは言えないと思う事もあるわ。 頭ごなしにさ、“子供だからダメ”って決めつけるのなら“大人だからダメ”っていう一定の基準が無ければおかしいのよ。」

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………???

 

「ただその……どんな選択をしてもリスクはそれなりにあるわよ? これは偏見とかじゃなくて科学的統計も含めているけれどまずは身体ね────」

 

 ああ。

 身籠った元エデンバイタル教団の子供たちの事か。

 

「────まず未発達な身体だからホルモンバランスがまだ不安定……元がその、()()だからバランスもへったくれも無いのだけれどそれをまず置くとするわ。 ホルモンバランスが不安定だと体調も気力も不安定でつわりも長引くから余計に負担がかかる。」

 

 気のせいか、ラクシャータの顔がいつもののんべんだらりとしたモノより幾分か柔らかい。

 

「あとは骨盤(こつばん)が発達中で、ぶっちゃけると子宮を含めた内臓が支えられず早産や体重の少ない赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるし……」

 

 ああ、そう言えばそういう事を以前に『世話係』の一環として習ったような気が……

 

「あとは出産のときに色々あって、帝王切開になる可能性もある上に妊娠高血圧症候群のリスクもあり得るわね。」

 

 今ふと考えたけれど、ラクシャータが凄いマトモに見える。

 

 チラッ、チラッ。

 

 ん?

 彼女がチラ見している先を見ると、そこには壁に立てかけてあった一刀の────そう言えば、刀を見て気付いたが俺の掌には久しく感じていない、()()()()()()()があるような……

 

 ああ、段々と思い出してきたぞ。

 

 いつか、遠い昔に誰かが言ったような気がする。

 “()()()()()()()()()()”と。

 

 そして俺は……()()私怨で、人を……

 

「……………………」

 

「考えがまとまらない?」

 

「……少し、考えさせてくれ。」

 

「あいよ……」

 

 ラクシャータに見送られながら、おぼつかない足取りで俺はリア・ファルの中を歩き適当な空き部屋の中に入っては服を脱いでギプスのされた左腕に気をつけながらシャワーを浴びる。

 

 丁度いい温度のお湯に冷え切った身体が暖かさを取り戻していく代わりに密着した返り血が流れ落ちていく様を、まるで夢を見ているかのような気持ちのままただ見下ろす。

 

 シャワーを浴び終えて部屋のタンスにあった適当な普段着に着替え、ベッドに座ってようやくほっと一息ついた感じに身を任せると自然と頭の中に考えがさまざまなキーワードとして思考が浮かんでくる。

 

 グリンダ騎士団。 マリーベル。 オルドリン。 オルフェウス。 ピースマーク。 ミス・エックスことユーリア。 ウィザードことオイアグロ。 エデンバイタル教団の被検体たちに生き残り。 ギアス嚮団。 V.V.。 アマルガム。 リア・ファル。 元wZERO部隊に元イレギュラーズ。 アンジュに毒島。 黒の騎士団。 カレン。 シュタットフェルト家。 旧日本兼エリア11。 R2. ルルーシュ。 ナナリー総督。 ラグナレクの接続。

 

「………………………………………………」

 

 やることと分かったことがクッソ多すぎる上にどれも頭が痛くなる。

 

 以前は『原作から自分を遠ざけて見守る』が『支援組織作ろう』が『いつの間にか膨れ上がってどうしてこうなった』どころか今ではグリンダ騎士団とどっこいどっこいの組織化してしまった。

 

 それが今では政治的に入り組んでいる案件にどっぷりとハマってしまっている。

 

 ……………………なんでじゃい。

 

 あー、何だか冷静に考えだしたらネガティブ思考が止まらなくなってきたぞ?

 

「……ッ…………………ッッ……………」

 

 俺はただ顔を両手で覆って、胸の奥から噴水のように湧き出てくる虚しい気持ちと今更ながらヒシヒシと体中から伝わってくる痛みに身を任せてただ静かに涙を流した。

 

『うっわこいつ泣き出したよキモカッコワリwww』とかもう正直この際どうでもいい。

 

 「……………………………………………………辛い。」

 

 バァン!

 

 「ひゃ?!」

 「ちょちょちょっと?!」

 「滑る滑る滑る!」

 「い、一時撤退にゃ~!」

 

 ドタタタ────!

 

 「────スバル! 疲労に効く湿布薬とか持ってきたから背中を向けて!」

 

 ドアが荒々しく開けられて何人かの焦るような小声と声の持ち主たちの足音をかき消すかのように高々と救急箱を持ったカレンが入室するのを見た俺は涙をそれとなく拭いながらポーカーフェイスを戻す────

 

「────いやちょっと待て────」

「────痛く貼り付けないから────!」

 「────自覚あったのか────」

 「────良いから背中を向けるか無理やり剥ぎ取られるかどっちにする?」

 

「前者だ。」

 

「よろしい。」

 

 

 相変わらず押しが強いカレンの前で上半身から服装をはだけさせながら背中を向けると文字通り、カレンは静かにペタペタと湿布を張っていく。

 

 思わず“痛くない……だと?”と言いたいが言ったら最後、『背中バッチン』が来ると予測されるので────

 

 ペタ。

 

 ────あ♡ そこがヒンヤリするの、めっさええばい♡

 

「……ねぇスバル?」

 

「なんだ、カレン?」

 

「その……話なら聞くよ?」

 

「いきなりどうした?」

 

 あふん♡

 的確な湿布張りが♡

 

「その……なんかあったでしょ?」

 

「……おいそれと他人に聞かせるほどでもない────」

「────アンタが血まみれになるのなんて、日本侵略以来に見たことがないよ?」

 

 う~ん、痛いところを突いてくるな。

 

「それにさ、その……スバルは昔から一人で頑張りすぎ。」

 

 “頑張りすぎ”、か……

 

 「そこがカッコいいんだけれど────」

「────なんか言ったか────?」

 「────“こんなにボロボロになるのは痛そうだな”って言ったの!」

 

 なにその膨れ饅頭気味な答え文句は?

 それに“痛そう”か────

 

 ピト。

 

 ────背中にチクチクする髪の毛の感触が。

 

「だからさ……辛くなったら、スバルも他人に頼ってもいいんじゃない?」

 

「………………………………」

 

「それともさ、()()()()()()()()()()()?」

 

「ッ。」

 

 カレンの言葉に思わずヒュッと息を飲み込みそうになり、我慢した代わりに身体が強張ってしまう。

 

「ねぇ、聞いていいかな?」

 

「……なんだ?」

 

「スバルはさ、ル────()()みたいな事をするつもりなの?」

 

ゼロ(ルルーシュ)みたいなこと』と言うと、『国を作る』ということか?

 

 冗談はよしこさん。

 

「……俺はただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っている。」

 

「それってその……ブリタニアとか、中華連邦とかの人でも入るの?」

 

「ブリタニアも中華連邦もEUも『国家』だけで、市民や民衆全てが皆『人』に違いは無い。 たとえそれが()()()()()()()()であっても自律思考と行動が出来るのなら……それともなんだ? “国家の示す態度や方針を元に格差をつけるのが正しい”とでも言いたいのか? それだと元イレギュラーズやwZERO部隊など『存在しない人たち』になるぞ?」

 

「そ、そんなんじゃ……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()。 そもそも『相容れない絶対的な悪』なんてモノはそうそうない。 皆、自分の行っていることを『絶対的な正義』と思いこんでいるからこそ起こる衝突相手を『悪』と断定しているだけだ。 ナンセンスだ。」

 

「えっと……」

 

 ああ、うん……

 俺きっと疲れているな。

 

 俺の強げな言い方に、カレンが口ごも────

 

 ガチャ。

 

「────じゃあ、君の考えはどうなのだ?」

 

 「アワワ?! まだ全部話させていないのにちょっと気が早いって毒島さん……」

 

 部屋のドアが開かれて毒島が入ってくると、カレンは僅かに慌てるような仕草にブツブツと独り言の様な何かを口にする。

 

「君のその言い草だと、『国家』がまるで悪いように聞こえるのだが?」

 

「『国家』自体は悪くない、所詮はただのシステムだからな。 『悪い』というのならば今の世の中を良しとさせる『政治家』という寄生虫だ。」

 

「き、寄生虫だと────?」

「────政治家とは、国家の市民が納める税金を“公正かつ効率よく再配分する”という任務を託されそれに従事しているだけの存在。 それ等を行使するだけならば良いが、権力を得る絶好のポジションにいる為、システムを私物化して私利私欲のまま国家を自分勝手に運用する存在など『寄生虫』と呼ぶほかに何かあるか?」

 

「かなり極端な考え方だな……人は社会的な生き物だぞ────?」

「────そうだ。 だが『社会が必要な生き物』であって『国家を必要とする生き物』ではない。 そもそも『国家』など、『イデオロギー』や『宗教』などの『大義』と認定されやすいものを『政治家』が旗印に利用した産物でしかない。 人間は『社会』は必要だが、『国家』は別だ。」

 

「……もしや、君は『無政府主義者』なのか?」

 

「いいや? この世で人間にとって、もっとも尊いものを俺は『個人の自由と権利』と思っている。 それには『国家への服従する自由』も含まれている。 『政治家による国家』という事は要するに、自分の生き方や判断などを他人に委ねているようなモノだからな、自分の思想と国家の思想が相違なければそれでいい。 だがそうでなかった場合は『拒否』する自由がある筈なのに『悪』と断定されるのが気に入らない。」

 

「……それでさっき君が言った“周りの人たちが笑顔でいられる居場所”か。」

 

「ああ。 その居場所が『国家』である必要がないと言ったが、『国家』はシステム。 要するに形のない『道具』の一つでしかない。 そして『道具の良し悪し』はそれ等を使う者たち次第だ、力や権力のように。 ナイトメアだって、元々は戦略兵器だが使い方によっては工事や運搬や救助作業にだって使える代物だ。 その話を続けると、“軍”と“テロ”も所詮は国家や政治家の思想が対立するのが原因で衝突する『武装組織』だ。 そこに『民主国家』も『君主国家』などの政権に違いは無い────ッ。」

 

「大丈夫?」

 

 (スバル)の意識が薄れては上半身が思わずよろけ、カレンが支える。

 

「……すまんな、少々苛立っているようだ……すまんが、少し休ませてくれないか?」

 

「そうだな……湿布、ありがとうカレン。」

 

「う、うん……おやすみ。」

 

「ああ……毒島も、ありがとう。」

 

「いや、私()()も良いことを聞けた。 感謝するのはこちらだ。」

 

 パタン。

 

 部屋にはポツンと再び俺だけが残ると、ズキズキと鈍痛が続く身体の良くするまま毛布の中に埋まって睡眠の誘惑に身を委ねていく。

 

 取り敢えず……

 今はガッツリ寝よう。

 そして今までの事を書きだして、俺の知識と照らし合わせて……

 いやその前に、グリンダ騎士団やマリーベルたちとの会談を……

 

 あと、ロロ枢機卿がどうなったのかも……

 

 やるべきことが……いっぱいだが……今はただ寝たい……

 

 


 

 

 パタン。

 

「だ、そうだが?」

 

「「「「「………………………………………………………………」」」」」

 

 スバルの部屋となった場所のドアが閉まり、毒島はすぐそこにいた者たちに声をかける。

 

「(てかギャラリー増えてんじゃん?!)」

 

 カレンが見たのはアマルガムの者たちだけでなく、いつの間にかリア・ファルに来ていたグリンダ騎士団にピースマークの者たちやコーネリアまでもがいた。

 

「概ね、私たちが言ったことが合っていると思うが……異論や感想はないかね、ブリタニアの諸君?」

 

 余談だが、『“ムッフー♪”と高らかに誇るようなどや顔をしながら腕を組むぶっちゃん毒島可愛い』と思ったのは、恐らくダルクとアヤノだけだろうとここで記入したい。




『各人は、平等な基本的諸自由の最も広範な制度枠組みに対する対等な権利を保持すべきである。ただし最も広範な枠組みといっても他の人びとの諸自由の同様に広範な制度枠組みと両立可能なものでなければならない。』

-ジョン・ロールズ氏の『正義論』より
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