そしてやっと原作です。
第18話 原作ミッション、スタート
場所はシンジュクゲットー、レジスタンスが今日の作戦の為に全員召集されていた。
数が少なくなったことで戦闘員や非戦闘員に関わらず、全員がまたも今度の作戦に参加していた。
俺も含めて。
「本当に実行部隊と同行しなくていいのか、昴?」
「ああ。 俺は別ルートで、何時ものように後方からフォローに徹する。」
物々しい武装を担いだ扇たちにそう告げる。
皆、ナオトさんがしていた赤いヘッドバンドをして。
「それにしても、そのヘルメットはなんだぁ昴~? それじゃあヘッドバンド巻けねぇじゃねぇか!」
玉城が珍しく正論(に近い)言葉は俺のかぶっているフルフェイスヘルメットを指摘していた。
「だから俺は腕に巻いている。 それに
特殊なメイクだが。
「メイク……って“化粧”の事か?」
「“変装”と呼んでくれ、吉田さん。 これは俺の場合、
「……なるほど、昴の置かれている状況は確かに複雑だからな。 呼ぶ名前も昴のままでいいのか?」
そう言えばそうだな……
「じゃあレジスタンス活動中はカタカナの“スバル”でいい。 急に名前を変えようとしても、作戦に支障が出るかも知れないからな。 他の奴らには“信頼のおける狙撃手を雇った”とでも伝えてくれ。」
「狙撃手、ねぇ……」
扇たちが見たのは前回から更に改良を重ねた火薬使用型ライフル。
「あれ? なんか以前よりもっとスリムになっていないスバル?」
「今回の仕様は対人に変えた。 ナオトさんが練った作戦通りに皆が動けば、警察も軍も出ない筈だからな。」
俺はチラリと玉城を見ながらそう言うと、彼は一瞬ムッとする。
「んだよその目は?! おれが何かしたってのかよ?!」
(原作で)ネタは上がってんだよ玉城。
(原作での
そう。
何を隠そう、今日は『毒ガス奪取』が決行される日なのだ。
「その
「勧めたがきっぱりと断られた。 “どうせ髪型も服装も変えているし、出るときは
「カレンらしいや……んじゃ、行ってくる。」
扇たちを次々と見送った後、俺はすかさずカレンが乗っているトレーラーへと走る。
さて、俺が生き残る為の
「カレン!」
「昴?! 永田、止めて!」
止まったトレーラーから変装したカレンが窓を開けたドアをよじりあがって携帯を出す。
「カレン、これを持っていてくれ。 あと、活動中の俺は『スバル』だ。」
「同じじゃん。」
「日本語と英語ではイントネーションが違う。」
散々日本語から英語に言語を教えて変えたときに言っただろうが?
「はいはい、そうでしたね……それで渡した『これ』は何? ……旧式の携帯?」
「
俺の真剣な顔にカレンが携帯を受け取る。
「分かったよ。 でも、どうしてこれを私に────?」
「────保険だ。
「カレン、スバル! トレーラーを出すぞ、時間が間に合わなくなる!」
「ぁ────」
────カレンが何か言いたげな顔をするが、永田はそのままトレーラーを出す。
「……………………」
ピリリリ、ピリリリ♪
誰も居なくなった拠点に俺一人だけが残され、まるでタイミングを見計らったかのように携帯電話が鳴って出る。
「俺だ。
『手配通りに動いている。』
電話の相手は毒島だった。
「早いな。」
『お前から頼まれて、どのぐらい時間があったと思う?』
それもそうか。
「それとは別に、
ここで俺と毒島が指している“彼女”とはアンジュリーゼの事だ。
今日、彼女は学園を休んでいる俺(そして間接的にカレン)が怪しまれないように『
『上手く“優等生”を演じているよ、君たちの分も。』
そっか。
アンジュリーゼは元々“やれば出来る子”だったからな、『クロスアンジュ』でも。
「それと……
『皆元気にしているみたいだよ? ああ、ランペルージ君は
「そうか。 恩に着る。」
『たまには剣術部に顔を出してくれ。』
「……分かった。」
『君、今躊躇しなかったか?』
「気のせいだ。」
ピ♪
良し。 これで原作通りに事が動いていることも確信が持てた。
今の内に胃薬を飲もう。
…………
………
……
…
『帝国臣民の皆さん! そしてもちろん、協力頂いている大多数のイレヴンの方々も────!』
ああ、うっざ。
オオサカ爆弾事件に対し、『会見の時間』が報道されてクロヴィスの声が町中のスピーカーから聞こえてくる。
『さあ皆さん、正義に殉じた8名に哀悼の意を共に捧げようではありませんか……』
原作で“総督は看板役者”なんて本人は言っていたけど、今の演説を聞いていたら分かる。
とてもパーティ中だったとは思えない。
そんな考えをする俺はシンジュクゲットーの中にあるはずの『とある倉庫』を探していた。
「あった。」
俺がそうボソッと言いながら入ったのは倉庫らしき場所。
地面は土と雑草だらけで運び出されずに放置された木材にはカビが生えはじめ、屋根は錆びて大きな穴から青空からの陽光が所々差し込んでいた。
そして極めつけは入り口の反対側に誰かがスプレー缶で
『日本を解放せよ』
俺はそう書かれた壁を背にして、向かいにあるビルを今度は目指した。
遠くから聞こえてくる爆発と衝撃音をBGMに。
とあるトレーラーはブリタニア軍の出した戦闘用ヘリに追われていた。
「クソ、軍まで出てきた! 玉城の野郎が、勝手なことをするから荒事に────!」
「────その為に私がここにいるんでしょう?!」
運転手は永田。
そして清掃員の帽子を脱ぎ捨てたのはカレン。
二人とも紅月ナオトが行方不明になってから扇率いるレジスタンスのメンバーたち。
「(やっぱりお兄ちゃんの作戦通りにいかなかった! 玉城の奴、無事に合流できたら一発ぶん殴ってやる!)」
「カレン、やっぱり“アレ”を使うか?!」
「ダメ! そんなことしたらただの無意味な虐殺だよ! ブリタニアと同じになっちゃう!」
「そ、それもそうだな……すまん、気が動転していた。」
彼女は助手席からトレーラー内へと移動する際に、彼女自身も慌てていたのか無線機を入れたままの上着を脱ぎ捨て、待機させていたグラスゴーへと乗り込む。
「スゥー……ハァー……」
カレンはグラスゴーに乗り込み、深呼吸して荒ぶる精神を落ち着かせてから作動キーを入れて操縦桿を握り、近くにガムテープで固定されたスペアの無線機に向かって声を出す。
「(大丈夫。 やれる。 あれだけ仮想訓練も、毒島の手ほどきも受けたし、お兄ちゃんがいなくなってからはもっと積極的に戦闘経験も重ねた! やるしか、ないんだ!) 永田! 後方ハッチを開けて!」
『あいよ!』
「(刮目しろ、ブリキ野郎ども! アンタたちの使った兵器の恐怖を、そのままそっくり返してやる!)」
カレンはトレーラーのハッチが開くとすぐさまグラスゴーに搭載された唯一中距離武装であるスラッシュハーケンで追ってきたヘリたちを撃ち落とす。
「どうだ! ッ?!」
だが次に来たのはさっきより大型の空輸機から落下してきたのはグラスゴーより新型であるナイトメアフレームだった。
「サザーランド!」
型式番号RPI-13、第5世代型KMF通称『サザーランド』。
正式にグラスゴーをフェーズアウトするための対KMF運用も設計に入れた次世代量産機が次に出てきた。
「(それでも! 昴が整備してくれたこの機体と、私のド根性で!)」
敵のサザーランドは持っていた銃器でカレン機を撃ち始め、初撃を何とか躱すが既に高速移動した上に急な動きでグラスゴーはバランスを崩しそうになり、転倒アラームが鳴る。
ビィィ、ビィィ、ビィィ!
「うわぁぁぁぁ?! こなクソぉぉぉぉぉ!」
カレンはスラッシュハーケンの可動部をジャイロのように使って無理やりバランスを取り直す。
たった一世代だけとはいえ、グラスゴーはいわゆる“試作機”。
対して次世代機であるサザーランドは実戦データを元に改良に改良を重ねた“兵器”として作られている。
それと性能差だけでなく、この時カレンを追っていたサザーランドを操るブリタニアの純血派たちは多少なりともナイトメアフレームでの実戦を経験した者たちだった。
『カレン! このままじゃ共倒れ────うわぁ?!』
「永田?!」
それを最後にトレーラーからの通信は途絶え、カレンは苦戦を強いられるも何とか再開発地に紛れて一機の不意を突き、スラッシュハーケンで敵の腕の切断に成功する。
「やった!」
カレンはすぐにグラスゴーのランドスピナーを巧みに使って敵の落としたアサルトライフルを通りざまに拾い上げて引き金を引く。
「これでもくらえ!」
ビィィィィィィ!
『現在のOSで非対応の武器使用が認識されました。
「え?! きゃあああああ?!」
カレンが呆気に取られている間にアサルトライフルを持っていたグラスゴーの左腕が破損してしまい、彼女はそのままシンジュクゲットーの奥地へと逃げ込む。
そして空には、数えきれないほどのVTOL機がシンジュクゲットーの上空へと飛んできては、
カレンは逃げ込んだ旧下水道でグラスゴーを潜めながら、開いたマンホールからグラスゴーの通信用アンテナを伸ばしていた。
「扇さん、聞こえる?」
『カレン! 無事か?!』
「ええ、でも状況が急に変わっちゃって永田とは離れ離れになっちゃった。」
『そうか……でもグラスゴーの通信が使えるという事はまだ使えそうなんだろ?
「ええ、でも左腕がやられた。」
『それでも正規のパイロット相手に良くやった……やはり情報通りか?』
カレンは脱水症状対策のために操縦席近くに入れておいたゼリー飲料を飲みながらタオルで掻いた汗を拭きとる。
「ああ、この対応は間違いなく大規模な兵器。 絶対に“医療器材”なんかじゃない。 やっぱり毒ガスで大当たりだね。」
『そうか……なぁ、カレン? スバルからは何か聞いていないか?』
「ううん、私は何も。 扇さんたちは?」
『それが、今日の朝別れた後からずっと音沙汰無しなんだ……もしかしてアイツ見つかってもう、ブリタニアの連中に────』
ダァン!
「────縁起でもないこと言わないで!」
カレンは扇の言葉を遮り、苛立ちからか足で思わず床を蹴って鈍痛が響く。
「あいつは! スバルがそんな簡単にやられるもんか! きっと……きっと私たちの為に今でも独りでいろいろやっているに違いない!」
『……そう、だよな。 悪かった、カレン。』
「ううん、こっちこそ怒ってゴメン……」
厳重な指揮用陸戦艇、『G1ベース』ではバトレーがまたも声を荒げていた。
「テロリストに逃げられただと?! この馬鹿者が!」
『も、申し訳────!』
「────貴様ら親衛隊だけに情報を与えた意味を何だと心得ておるのだ?!」
「もうよい、バトレー。 この際だ、ゲットーを壊滅せよ。」
「ッ?! し、しかし────!」
「────“アレ”が知れ渡ってしまえば私は廃嫡を免れん。 本国には演習を兼ねた“区画整理”と伝えよう。」
「で、では────」
「────第三皇子クロヴィスとして命じる! シンジュクゲットーを、壊滅せよ!」
「「「「「イエス、マイロード!」」」」」
クロヴィスは拳を握り締める。
別に廃嫡されることだけを懸念していたわけではない。
『これでもし、ライラの存在が大っぴらにされてしまえば』と彼は思っていた。
「(絶対にそれだけは避けねばならん! ルルーシュたちのように政治の道具などにされてたまるか! 今までの努力が水の泡と化す!) シンジュクゲットーの包囲が完了次第、根絶やしにしろ!」
「(来たか。)」
戦闘音が鳴り響く中、さっき見つけた倉庫から少し離れた建物の中からスヴェンは狙撃銃を構えていた。
先ほど場所を特定した倉庫は階段を下りれば旧地下鉄と繋がっている。
そこにブリタニア皇族直属の親衛隊が待ち伏せするかのように立っていた。
そろそろだろうと見ていると案の定、彼らが何かに反応するかのように急に慌ただしく倉庫に突入する。
多分、心配したシャーリーが電話でも掛けたんだろう。
なんて間の悪い……
スコープを通して見ていたのは、親衛隊が奥の階段から引きずり出された少年と少女。
白い拘束衣を着た少女が、アッシュフォード学園の学生からブリタニア皇族の親衛隊によって引き離される場面。
緑の髪の毛をした少女と、黒髪の少年だ。
原作のヒロインともいえるCCと言う少女と、原作主人公であるルルーシュだ。
「ッ」
指揮官らしき男が拳銃をルルーシュに向けるとCCが兵士の手を振りほどいてルルーシュを庇うように飛び出すと、彼女は額が撃ち抜かれた勢いでルルーシュの前で倒れる。
原作でも迫力あるこのシーンをリアルで見ると更に現実味を帯びるな。
聞こえないが何を言っているのかは想像できるし、原作でも見たけどルルーシュのショック顔は迫力ある。
多分、自分の母親であるマリアンヌが殺された事態を連想してしまっているんだろう。
更に見ていると、奇妙なことが起きる。
つい先ほどまで呆けた表情をしていたCCの顔がにやけ、ショックに陥っていたルルーシュの顔がいつの間にか自信満々の顔へと変わり、左目を手で覆いながら立ち上がる。
まるで、
恐らく、『契約』をあの一瞬で成したのだろう。
こうして第三者の視点から見るとビフォーアフターがリアルで行われたような、現実離れた光景だ。
これから俺がすることも、
狙撃銃を俺は構え、タイミングを逃さないために神経を集中させる。
動くのはルルーシュが初めて自分のギアスである『絶対遵守』を発動した後、親衛隊たちが
予想していたそのタイミングで俺は狙いを定め、久しく使っていないチートの一部を作動する。
「(『
そしてようやくチートお披露目です。
思っていたより遅く出ました。 (汗