リアル関連で投稿時間が一時的に変わっていますが、楽しんで頂ければ幸いです。
第175話 『無知は幸福なり』
『矯正エリア11』。
かつての旧日本にして、ブラックリベリオン後に反ブリタニア活動が燻るエリア11の正式名称だった。
特に治安の悪いゲットーは『ダークゾーン』と呼ばれ、アッシュフォード学園が占拠されそうになったことで以前より租界エリアとは徹底的に隔離されるようになっていた。
そんな様子を、エリア11支部の機密情報局に着任したヴィレッタは租界内を走るモノレールから見下ろしていた。
「(表面上、街並みはそれほど変わってはいない。 だが、明らかに中央から離れれば離れていくほどに路地裏の人だかりが目立つ。 それも、総督が変わってからだ。)」
パパパパーン!!!
『このイレヴンどもはゼロというペテン師に踊らされ、かつて蛮族だったころの“日本人”に戻ろうとした好戦的で危険な種である!』
ヴィレッタは大型スクリーンから乾いた銃声と共に大々的に映し出される、
『よって我らブリタニア人による管理、およびに武を用いた教育を!』
人の流通までは流石に無理だったが租界とゲットーの間を行き来する物資などは厳しくチェックされるようになり、『怪しい』という理由だけでその場に居合わせただけや周りの人たちまでも連行されるようになっていた。
その者たちが行きつく先には『事情聴取』という名だけの尋問が待っており、一人が告白すれば同じ場で連行された者たちもまとめて公開処刑されるという流れだった。
「あらやだ、またイレヴンどもよ。」
「もう少し控えてほしいものだ、これから通勤だというのに……」
「銃声は良いから紅茶の質が戻ってくれないかな?」
「………………」
そして
「お待ちしておりました、ヌゥ男爵。」
「(以前からエリア11に配置された者たちか。)」
ヴィレッタは頭を短く縦に振ってから外から様子が窺えないようにガラスが黒張りになっていた車に乗ると、中には既に15,16歳ほどの少年が既に乗っていたことにハテナマークを浮かべる。
「君は────?」
「────初めまして、ヴィレッタさん。 ボクは『ロロ』。 とある機関に所属していて、貴方への簡潔なブリーフィングを任されています。」
目の前の少年が淡々と冷めた様子のまま言葉を並べながらフォルダーをヴィレッタに手渡そうとする。
「『とある機関』と言ったが、君も機密情報局なのか────?」
「────そこまであなたが知る必要はありません。 ただ────」
ファサ。
急に髪の毛が擦れるような音と共にヴィレッタのサイドテールが解けていき、『ロロ』と自己紹介した少年はヴィレッタに髪留めを手元のフォルダーと一緒に手渡す。
「────こうすれば、貴方ほどの方ならばお分かりになられるかと。」
「(バカな……今のは、どうやって?)」
「これは『ギアス』と呼ばれる……そうですね、『超能力』とでも呼びましょう。 これは機密情報局でも限られた者しか知らされていない情報ですが、ゼロの捕縛に献上した功績を見込んで貴方に話すことを許されています。」
「“許されている”? 皇帝直属の機関の者が────?」
「────これ以上の詮索は無用ですし、知ろうとすれば貴方だけに
ロロの言葉にヴィレッタはゾッとしながら本国に残した弟妹たちを想像し、出来るだけ平常心を保とうと渡されたフォルダーを拝見すると、ゼロとルルーシュに関する書類を読む。
「(ところどころの情報が伏せられているが、この少年は……なるほど、ゼロが学生だったとはな。 道理で見つからないわけだ、これならば噂になっていた『クロヴィス殿下が二重人格者説』がよっぽど現実味がある。 しかし180の監視カメラに50名ほどの監視役に政庁とは独自の指揮系統を持つ機密情報局のナイトメア一個小隊……これでは『学園』と呼ぶより差し詰め、『監獄』だな。 対象が『ゼロ』とくれば、わからなくもないが。)」
「貴方の様な聡明な方ならば察しているかもしれませんが、ゼロも『ギアス』を保持しています。 ですが今では
「その……『ギアス』とやらはどんな────?」
「────彼が万が一思い出す前兆があればボクが殺しますので貴方が詳細を知る必要はありませんが……そうですね、彼のギアスは『他人を操り、操られている間の記憶を消す』モノです。」
「(なるほど……だからあの時のジェレミア卿や、バトレー将軍も……) だがこれだけの監視とはいえ、もしそのギアスを使用されれば────」
「────貴方は過去に術中にハマったので『もう効かない』という事が、このエリア11トウキョウ租界支部の機密情報局指揮官のポストを任された最大の理由とご理解すればいいです。」
「……」
ヴィレッタは盛大な溜息を出すのを我慢し、情報過多によってくらくらとしそうな思考を無理やり動かして資料を読み続けながら口を開ける。
「アッシュフォード学園の教師役────?」
「────貴方たち外部の人間が最も効率よくかつ怪しまれずに記憶喪失であるゼロの監視を行える為の身分です。 不服ですか?」
「別に……任務であれば従うが、私がゼロの……この『ルルーシュ・ランペルージ』の教師役を通して監視は────」
「────貴方の過去に示した履歴などを配慮して最も無難な『体育』が割られています。」
「……私が教師役をするとして、君は……ロロは何をするのだ?」
「ボクは彼の弟として潜入しています。 兄弟で同じ男性ならば彼とどこへでも一緒に行っても怪しまれません。」
「そ、そうか。 ん?」
ヴィレッタがページをめくるとほぼすべての情報が伏せられている、緑髪の少女を映した写真に目が留まる。
「少女のコードネームは『C.C.』。 本作戦の捕縛対象であり、最優先事項です。」
「『C.C.』? なんだそれは、人の名前では────」
「────ええ。 仰る通り、
「それほどまでの者なのか?」
「目撃者の口封じも兼ねている許可ですが?」
「な────?!」
「────何を驚くんです?」
「だがもし、彼女が人ごみの中に紛れ込めば────?!」
「────通行人含めて全員殺します。 最も確実な方法でしょう?」
見た目も態度も違うが、ヴィレッタは『ベルマ』としてマオ(女)と共に過ごした時に感じた危うさをロロに重ねながら資料のページをめくると────
「────こ、これは────」
「────その方もC.C.同様に危険人物として捕獲、あるいは抹殺の対象となっています。」
ヴィレッタが見たのは手書きの、スバル(森乃モード)の人相だった。
「体面的にボクは機密情報局の指揮官である貴方の『部下』ですが、どちらかというとあなたがボクの『協力者』の方が近いですね。 必要とあれば、前任者のように消えてもらいますし────」
「────は────?」
「────ですので貴方とその部下はC.C.、またこの絵の男性の捕獲か遺体の回収に専念してください。 無用な詮索が過ぎれば、ボクも消されかねませんのでお控えください。」
「……わかった。」
ようやく車が動き出し、ロロが携帯を取り出して操作しながらハート形のロケットを片手で弄り出し、ヴィレッタは車の窓ガラスに頭を預けて空を見る。
「(スバルさん……貴方は一体、何をしているのでしょうか?)」
…………
………
……
…
「これは……」
モジモジモジ。
「えっと……設計図通りに試作を作ったけれど?」
モジモジモジ。
スバルは無言でただただ『勝・利』の二文字を内心に刻み、ボディラインにぴったりと密着した斬新なデザインをしたパイロットスーツを着込んだ毒島の姿を記憶に焼き付ける。
ジー。
「その……そう見つめられると、気まずいのだがスバル?」
「(パーフェクトだマリエル! ムホホホ♡)」
今すぐそう叫びたいのか、スバルのポーカーフェイスはムズムズとしていた。
「うーん……やっぱり男の子なんだね────」
「────何か言ったか、マリエル?」
「い、いや~……その、みんなから聞いた話だとこう……君って異性に興味がなさそうな感じもあったから、こういう風なことを提案するの意外だったというか。」
マリエルのボソッとした小声にスバルがツッコミを入れると、彼女は目を泳がせながら話をはぐらかそうとするが。
「フ、分からんか? このパイロットスーツの────いや、今は見た目だけだが
「────いやまぁ、性能は────」
「────まずは高度な伸縮性を持ちながら衝撃に対して瞬時に硬化する光ファイバー回線技術を用いた特殊保護破膜に対G、防刃、耐熱耐寒耐化学物質性の機能に、スーツには通信機器やセンサーによって着用者のバイタルモニターにラクシャータがデザインしたパイロットスーツのような生命維持装置兼緊急救護処置────」
……
…
スバルにしてはかなり珍しい饒舌な演説が続くので時間を少々飛ばしながら、この状況までたどり着く一連の出来事をここで書きたいと思う。
1. 彼はリア・ファルの個室で、R2の大まかな流れを単語で繋ぎ合わせて書いていると外が急に騒がしくなった。
2. 『気のせいか近づいてきてね?』と思い、顔を出したら何人かを引きずっていた大きなカブコーネリアがいたことに『ナニコレ』と思う。
3. そう思っていた彼とコーネリアの目が合うと彼女は奇声を上げながらしがみついていたサンチアたちを無理やり振りほどき、銃剣を抜きながら突進。
4. スバルは逃げた。
5. 彼はひたすら逃げた
6. 彼は軋む体と背中と痛む左腕を無視してただ全力ダッシュのまま、背後からくる奇声から逃げた。
7. リア・ファルの甲板に追い詰められた彼が振り返るとどこからどう見ても童話や『オズの魔法使い』に出てくるような『魔女』が文字通りいた。
a. 獣の様な『フシュルルルルル!』な唸り声とかもあり、彼は内心で言語化できない焦りの声をひたすら浮かべていた。
8. リア・ファルのスピーカーから突然『そんなお姉さまは、嫌いです!』とユーフェミアの声で流れてくると『魔女』はまるで溶けるかのようにシワシワ顔ショボショボとしたコーネリアへ急変していく。
9. そのまま弱々しい姿に変わったコーネリアは甲板に出てきたユーフェミアに説教されながらも、以前より逞しくなった彼女を見て感動する。
a. この説教で、騒動がユーフェミアの言葉の綾が原因と知る。
i. 『俺にNTR趣味はない!』と叫びたい衝動をぐっとこらえる。
10. 難を逃れてスバルがホッとしているとマリエルから連絡が入る
11. マリエルとソフィがいる技術部用の部屋にスバルは(内心)ウキウキしながら早歩きする
12. 行先で(試着をスバルが名指しした)毒島が例のパイロットスーツに着替えていた
……
…
「────そして対となるヘッドセットにはランドル博士のBRSを応用して機体と直接リンクすることで、戦域情報や機体のセンサー類を直接かつ自然に視界上に浮かべてパイロットの脳波と体電流を測定し、間接思考制御で機体とのダイレクトなインターフェイスを可能とさせ────ってオイ、聞いているのかお前たち?」
「「あ、ハイ。」」
スバルはどう反応したらいいのかわからなくなって『ポケー』としたマリエルとソフィに声をかけ、ようやくずっと続いていた演説が途切れる。
「まぁ……今までの機能はあくまで例えで、そういった方針で開発を頼みたい。」
「そこまで考えていたなんて────」
「てっきり壊れかけて思春期特有の
「────何か言ったか?」
「「イイエ、ナニモ。」」
「それでその……今のでスバル君の提案したパイロットスーツが凄い代物を目指していると分かったが、何故こうも
「(エロパイスーなのに、凛々しい美人が着るとカッコイイとは何故だ。 いや、エロいのは変わらんが惜しい。 非常に! 惜しいぞ!) ちょっといいか毒島?」
「「「(彼女/私の質問をスルーした?!)」」」
毒島の問いに答えず、スバルはただどこからか櫛と白いリボンにワックスを取り出しながら彼女に迫る。
「へ。 あ。 その、え────?」
頬を赤らめていた毒島は更に赤くなって行き、ついさっきまで廉恥心から出来るだけくっきりとボディラインをあらわにされた胸部装甲や下腹部から手を除いては日本刀を落としそうになり、アタフタと慌ててようやくスバルが眼前にまで近づくと目をギュッと力強く閉じて硬直してしまう。
「────はわわわ?! 大胆?!」
「────え? え? え?」
マリエルは目を両手で覆うスタンスをしながらもはっきりと見えるように指に隙間を作り、ソフィはキョトンと目を点にさせる。
スバルがササッと毒島の髪の毛を手際よく櫛とワックスで整えると今度は白いリボンをつける。
「よし、目を開けていいぞ。」
「………………………………うん?」
思っていたのと違うのか、毒島は困惑しながら目を開けるとスバルが拝むような姿勢になっていた。
「……なぜ拝む、スバル君?」
「(黒髪ロングの
「「「…………………………」」」
旧日本風に拝みながらどんどんと顔色が良くなっていくポーカーフェイスのスバルを前に毒島、マリエル、ソフィはどうすれば良いのか困惑した。
「……よし、ありがとう。 もう一つパイロットスーツが出来上がるのが楽しみだ。 (ええもん見れたわ~♡ 眼福眼福♡ デュフォオホホホホホホホ♡)」
時間が経ち、スバルはそれを最後に(ウキウキな雰囲気を出しながら)退室する。
「……………………思っていたより、重症だな。」
「「え?」」
毒島がボソリと上記の言葉を発しながら申し訳ないような表情を浮かべる。
「ブラックリベリオン後から、“彼は無理をしているかも”と思っていたが……連続の激しい戦場でかなり疲弊したのだろう。 それこそ普通の彼から考えられないような……………………この様な………………その────」
「「────合理的な機能を予定されて胸から股間まで薄い生地の様なデザインをしたパイロットスーツ────?」」
「────“奇天烈なモノを依頼するほどまでに” 。 と、私は言うつもりだったが、その通りだ。 私は
ガチャ。
「私もそう思うわ冴子。」
毒島がそう声を近くのクローゼットにかけると、中からマーヤが出てきてマリエルとソフィがビックリする。
「「(そこにずっといたの?! いや、何時から?!)」」
「君の感想を聞かせてくれ。」
「「(しかも毒島/ブスジマは普通に受け入れているし……)」」
「そうね……私はエリア11で、良く学園から抜け出して租界やゲットーを彷徨っていた時期があったからそれなりに視線に対して敏感になっていると思うけれど、
余談だが、マーヤとの出会いと彼女の見た目に反する過激な言動が衝撃的だったこともあってか、マーヤをスバルがそのような目で見る前にトラウマが彼の脳内で先に浮かんできているだけである。
「ねぇ、マリエル? 今この子、
「あー、うん。 色々あってあの子を崇拝しているみたい。」
「えぇぇぇぇぇ。」
「やはり君もか。 スバルは今まで記憶している限り、この手の様なモノを見せたことはない。だがまぁ、この様な…………………………『異性を意識したデザイン』は少なくとも、“人並みにひと肌が恋しくなる時がある”という事でそれはそれで喜ばしい────」
「────回りくどい言い方の最中にごめんだけれど、
「────言わないでくれマーヤ。 彼の意図を確認するためとはいえ……その………………恥ずかしいものは恥ずかしいのだ────」
「────そうかしら? 彼の話を聞くところ、彼の目指している装備としては高性能な強化スーツなのだから、完成すれば通常時でも私は着るつもりだけれど?」
「「え。」」
「あ、もちろんアマルガムの一員としての行動時だけよ? いくら私でも普段着にするつもりはないわ。」
ニッコリとしながら上記の言葉をマーヤは発するが、ソフィとマリエルは言葉を失う。
「でもそうね、彼がこのようなことをし出すという事は思っているよりも気を張り詰めているかもしれない。 何せ、こんな時でもこの様なものを用意しているぐらいですもの。」
マーヤはとある紙を取り出し、それを毒島に渡すと彼女の目は見開かれていきながら彼女の手がワナワナと震えだす。
「こ、こ、こ、これは────?!」
「────筆跡から恐らく、彼の手書きのメモね。
マーヤが手渡したそれは、スバルがR2やその同じ時期頃のことを思いだしながら書き上げた単語などが記された紙だった。
魔女コーネリアの騒動時にスバルが逃げている間、一番介入してそうなマーヤがそうしなかった理由は単にこのメモを見つけた所為である。
「……はぁー……今でもここまで先を考えているとは……“彼の事をある程度は理解していた”と思っていたが、自分が情けない。 これ以上彼に自身を酷使させるわけには……マーヤ、他の皆を集めてくれ。」
「ええ、集合場所はここでいいかしら?」
「……私が着替え終えてからな。」
「それと、紅月さんはどうしますか?」
「……私としては加わらせても良いのだが、彼女は
「そうね。 彼女の魅力的なところでもあるけれど、
「(せっかく言わないようにしたのに……マーヤは容赦がないな。)」
その日からスバルの行動を深読みしすぎた者たちは書いた
スバルはこのことを露知らず、何か月ぶりの緩やかな一時を密かに楽しんだ。