小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お読みいただきありがとうございます、少々長めの次話です!

楽しんで頂ければ幸いです!


第177話 動き出すファクターたち

「(シュタットフェルト家の存続に、アッシュフォード学園への帰学手配、それにズタズタにされたエリア11の復旧作業と手配……やっぱり、凄いな。)」

 

 ジョナサンからブラックリベリオン後に上手く立ち回りをしたシュタットフェルト家の事と現在の事情を聞いたスバルは感心と驚きを内心でしながらも、久しぶりに自室のベッドに背中を預けて雨がパラパラと降り出し始めた外を窓越しに見る。

 

「(だがまさか、『ナナリーが旧日本政府の残党に人質として囚われていた』というニュースを報道していたとはな。)」

 

 雨が本格的に降り出した外から、スバルはパソコンの画面に視線を戻すとブリタニア帝国のニュース局の記事が映し出されていた。

 

 映されたのはブリタニアのSPに車椅子を押されながらも少し困っている(あるいは困惑している)様子のナナリーで、題名は『旧日本の残党に囚われていたナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下がブリタニアの特殊部隊に発見されて保護される!』とデカデカと書かれていたウェブページだった。

 

「(原作一期後と、R2を最初に見たときは違和感ありまくりで『はぁ~?』な感じだったが……なるほど、こういう風に事前に報道されていれば違和感は無いし、R2では記憶を取り戻したとはいえルルーシュはアッシュフォード学園が自分専用の檻に作り替えられたのを知っていたから『慎重に行動をしていて不用意にナナリーのことをネットなどで検索できなかった』と考えれば辻褄はそれとなく合う……のだろうか?)」

 

 余談だが実はブラックリベリオン時に行方が分からなくなったナナリーのことを親友のように思っていたアリスは心配していたのだが、原作知識で『展開がどれだけ変わっていても皇帝シャルルは(多分)ナナリーを保護しているだろう』と思った彼の“多分無事だがブリタニアの手に渡っているだろう”とブラックリベリオン後のリハビリ中にボソリと言ったほぼ次の日にナナリーの安否がニュースで報道されていたのをスバルは知らない。

 

「(ま、『アニメが~』とかじゃなくて実際に繋がっているからセーフとしよう。)」

 

 というか彼はリハビリが終わった後に『亡国のアキト』の介入に向けて準備や手配をしていてそれどころではなく、EUでの用事が終わると今度は『オズ』に介入を試みたら連続で予想が出来なかった事件に立て続けで巻き込まれていったので文字通りに怒涛の日々の中でそこまで考える余裕がなかった。

 

 このおかげで彼がいない間にも、アマルガム内での評価が更に上がっていったのは言うまでもないだろう。

 

「(マーヤとレイラはいつの間にか留美さんに挨拶を済ませてカレンと一緒に黒の騎士団の拠点に向かった。 後はアッシュフォード学園に顔を出しながらR2との状況の違いをそれとなく探りを入れて、ルルーシュとロロと……ああ、そう言えばライラのことも……俺……何かほかに……忘れているような……気が……グゥー。)」

 

 悶々と考えて精神は興奮していたが、最近物理的にドタバタとしていた上に緊張していたスバルは寝る直前にモヤモヤしながらそう思ったが、眠気にとうとう抗うのをやめて泥のように彼は眠りに入った。

 

『忘れ物』とは言うまでもなく、リア・ファルで『コーネリアの魔女化騒動』の直前に書いていたメモであるが……

 

 彼が目覚めた頃には、その違和感は綺麗さっぱり無くなってしまっているだろう。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 ザァァァァァァァァ!

 

「あーあ。 本降りになってしまったな……」

 

 トウキョウ租界内でアッシュフォード学園から距離の離れた場所で()()()アングラチェス大会で賭けに出掛けていたルルーシュが雨宿りをしながらボヤくと、そんな彼の横にいたのは癖のある栗色の髪に紫色の瞳をした少年────ロロが文句のような言葉を言い返す。

 

「だから言ったのに……“今日は土砂降りになるらしいからバイクを使った遠出はやめた方がいい”って。」

 

 この『ロロ』こそ機密情報局のヴィレッタにゼロだったルルーシュの事情を話し、彼の監視兼いざとなれば殺す為に『弟役』をギアス嚮団から命じられたエージェントの一人であり、彼のゆったりとした表情はとても淡々とヴィレッタと話していた時より柔らかい、見た目相応のモノだった。

 

「なのに兄さんは“バイクがなければ条件は満たせない”って────」

「────はは、そういうことを言うなよロロ。 そうでもしないとあのやる気に満ちた、新人体育教師のヴィレッタ先生に追いつかれちゃうじゃないか。」

 

「それも兄さんの所為でしょ? 体育の授業なんて、ヴィレッタ先生の言うようにやる気ぐらい出せば兄さんは────」

「────体育ぐらい、別に健康管理が充実していれば怠けてもいいだろ? 元々俺は汗を掻いたりするような行動や労働は嫌いなんだし、今の現代社会は()()()()()によって支えられているんだ。 よっぽどのことがない限り、ブリタニア人が汗水を流すことはないさ。」

 

 ルルーシュの言葉にロロの眉毛がピクリと反応し、彼は腰に携帯している拳銃をいつでも抜けるよう、僅かにだけ腕を動かす。

 

 彼がV.V.から受けた命令は主に『ルルーシュがゼロの記憶らしきものを思い出せば即抹殺』、『C.C.の捕縛』、『ギアスや嚮団の情報漏洩を防ぐ』の三つ。

 

 そしてV.V.とは()()モノだった。

 

「……兄さん(ルルーシュ)は、ナンバーズのことをどう思っているの?」

 

 それはシャルルから更に、『ナンバーズ(非ブリタニア人)』に関しての話題をそれとなく時々出すように命じられていた。

 

 普通なら『なぜわざわざそんなことを?』と思うかもしれないが、ロロにとってはどうでもいいことだったので『()()とあらば従うだけ』。

 

 そしてV.V.にはシャルルから『“ジュリアス・キングスレイ”の事もあったので、ルルーシュを試す過程』と伝えられている。

 

「“ナンバーズのことをどう思っている”、か……俺が彼らのことをどう思おうが、関係ないだろ?」

 

「でも、兄さんはその……()()()()()()の?」

 

「そう問われると……そうだな、『哀れ』とは思っているよ?」

 

「……」

 

「『哀れでバカな連中』という意味だけれどね。 何せこの完成された世界で『敗者』となったんだ、それも二回も。」

 

 ルルーシュは土砂降りの中で雨宿りをするブリタニア人たちを見て、そのまま視線を土砂降りの中でも働くことを強要されている名誉ブリタニア人たちに移す。

 

「一度目は第二次太平洋戦争。 そのあとでも『降伏』したことで他のエリアのような徹底的な粛清を免れたのに、二度目の敗北となったブラックリベリオンの所為で、彼らの立場と風当りはさらに酷くなった。 自業自得だよ、ブリタニアに逆らうなんて馬鹿馬鹿しい……」

 

「……そうだよね。 ブリタニアに逆らうなんて、馬鹿げているよね。」

 

「ああ。 そんな不毛なことより、()()()()()()()()()()を考える方が有意義さ。」

 

 チャリ。

 

 ルルーシュの答えに満足したロロがリラックスすると僅かに携帯とハート形のロケットを繋いでいるチェーンが動き、金属音が出てしまう。

 

「ッ。」

 

 彼の発現したギアスは強力な能力であると共に冷淡な彼の態度は他の者たちからも気味悪がられて距離を置かれ、ギアス嚮団の実行エージェント(暗殺者)として申し分ない性格と能力をロロは保有していた。

 

 例外は外部から来たオルフェウスや元からコミュ力の高いエウリアだが、二人とロロが接した時間も短く、その二人はクララやトトの様な深い影響を及ぼす前に脱走をしたのでさほど問題はないと嚮団は判断し、彼を5歳の時から既に暗殺任務に送り出していた。

 

『少年兵』、『臨時の見習い』、『配達員』、『迷子』、『通りすがり』などの様々な『役割』をしてきたが、今回の様な『ターゲットの身内役』────それも長期的にターゲットに身近で接する『弟』は初めてだった。

 

 それだけならば別に思うところはないのだが、ゼロへの『普通のブリタニア人であるルルーシュ・ランペルージ』の処置は今までに見ない非の打ちどころのないモノなのか、完全にロロへの接し方がブラコンレベルのモノだった。

 

『リハビリ中』のロロは出来るだけ処置に綻びが出来ないように、かつてのオルフェウスやエウリアを慕うトトやクララを思い出しては彼女たちの真似をしながら『弱弱しい弟』設定をしていると過激なまでに過保護なルルーシュの連日の対応を涼しく、距離を置いた対応ができていた。

 

『10月25日』が来るまでは。

 

 その日、ロロが“リハビリ”(実際は機密情報局からの報告会議に居座っている)から生徒会のクラブハウスに帰ってきてまたも退屈(というか正直暇)な『病弱な弟』の一日を過ごしているとウザイ人騒がせな生徒会長のミレイが部屋を訪れては無理やり連れだすとホールには彼をクラッカーで歓迎するシャーリーやリヴァルとルルーシュがいた。

 

『クラッカー』などロロにとっては初めてで、思わず乾いた発砲音に似た音が耳に届くと反射的にギアスを使ってしまいそうになったがすんでのところで自重できた。

 

 何事かと聞くとどうやら生まれた日を祝う『誕生日パーティ』という、ロロにとっては不可解なモノだった。

 

 記憶の限り、他人が自分に関心を持つのはギアス関連、あるいは暗殺任務の最終段階な時だけ。

 

 意味も分からないまま、取り敢えず周りにロロが態度を合わせていると今度は『誕生日だから』とプレゼントを記憶を失ったゼロ(ルルーシュ)に渡された。

 

『あ、ありがとう……でもこのロケット、()()()()()()()()?』

『何を言っているんだよ、ロロ。 それはもう、俺がお前一人だけにプレゼントしたモノだ。』

 

 その時のロロは混乱した。

 

 彼個人の所有物なぞ、今までなかった。

 

 装備や備品に服装や携帯に自身の体や命でさえも、今までは全てギアス嚮団から一時的に借りているだけだったロロは初めて、『自分のモノ』をその日受け取った。

 

 別に小さなロケット一つで何かが変わるわけでもないが、少なくとも『自分以外の他人全てを背景景色の一部』として見続けてはいてもそのロケットは『彼だけのモノ』だったことに変わりはない。

 

「(本当に変わりはない筈なのに、どうしてこうも気になるんだ?)」

 

 ロロはそう思いながらハート形のロケットを手で弄り、ルルーシュは雨に影響されてかいつも以上にアンニュイかつもどかしい心境で曇る空を見上げていた。

 

「(本当にこの世界はどうしようもなく完成して、腐っている……このままじゃ、ロロや()()()()()()()なんていずれは大人たちが浮かべるような上っ面だけの表情に……)」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「(また今日も知らない人が来ているです。)」

 

 トウキョウ租界の政庁にいたライラは()()()相槌を打ちながら暇そうにクロヴィスやギルフォードなどと雑談をするブリタニア本国の役員たちを見ながら静かに抹茶ラテを飲んでいた。

 

 ズズズ。

 

 セントラルハレースタジアムのテロ事件後からエリア11に帰って来たライラは、ほぼ毎日誰かがクロヴィスやギルフォードに謁見の申し込みをしては同席されて、『他愛のない世間話を長々としては帰る』という毎日が続いていた。

 

 クロヴィスがエリア11の総督時だった頃は別に珍しくもなかったが、脊髄損傷後はめっきりとこの様な事は減った……というか限りなく無くなった。

 

「(これ、絶対に私かギルギルマン(ギルフォード)の様子を見に来ているです。)」

 

 それが突然()()()()()()()()()から昔のようにブリタニアの役員がクロヴィスに会いに来るとなれば、いくらこういう事に興味がないライラでも気付くだろう。

 

「(それに話の内容も()です。 少し前まではアッシュフォード学園の話に時々『クララ』という名前が出てきていたのに、今は『ロロ』という名前ですしお兄様(クロヴィス)たちも当たり前のように話しているです……)」

 

 ライラはモヤモヤとした得体のしれない感情を心の奥底に埋め込み、その日の会話後にクロヴィスからの連絡でアッシュフォード学園に戻れることに期待を寄せた。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

『紅巾党の残党狩り、お疲れ様。』

 

 中華連邦の空域からユーロ・ブリタニアに渡ったグランベリーは補給とようやくオーバーホールらしき作業に本腰を入れ、艦長室ではマリーベルと通信越しのシュナイゼルに報告をしていた。

 

「シュナイゼル兄さま────」

『──── “予定より遅い”というつもりはないよ、中華連邦は広大だからね。 むしろ “艦一つだけでよくやった”と言うよ。』

 

「ありがとうございます。 中華連邦との交渉具合はどうでしょうか?」

 

『“十分すぎた”と言いたいぐらいに、こちらの条件に合わせているよ。 これで航空浮遊艦、そして空の戦力の重要性を本国の連中にも証明できてログレス級とカールレオン級の本格的な製造に目途がついた。』

 

「シュナイゼル兄さま?」

 

『何だい、マリー?』

 

「カンボジアのトロモ機関に寄って預かったKMFは現在、グランベリーに載せたままですが……」

 

 マリーベルが思い浮かべるのは先日、巾党の残党の拠点らしき場所をグリンダ騎士団が殲滅した後にシュナイゼルから来た頼みで、“そのまま中華連邦からカンボジアに寄ってユーロ・ブリタニアに来てくれ”という一連だった。

 

「あの機体、もしや『幽鬼(レヴナント)』に対抗するためのモノでしょうか?」

 

『鋭いね、マリー。 確かにアレはユーロ・ブリタニアから譲り受けたEUの新型KMFらしきフレームをベースに改良した、第八世代に相当するナイトメア。 名前は“フローレンス”と呼ぶそうだよ。』

 

「『フローレンス』……」

 

 RZX-12TM1、正式名『フローレンス』。 元々はスロニムでユーロ・ブリタニアのアシュラ隊が撃退した無人機のアレクサンダだったがシュナイゼルの()()によってブリタニアへと渡り、ドローン技術が解析された後に有人機として改造された。

 

 そしてマリーベルの『幽鬼(レヴナント)に対抗するためのモノ』という言葉は、スロニムでシンの機体から得た画像データを閲覧したマリーベルだからこそ言えたことだった。

 

『“相手が使っていた機体の改良型なら”というのは楽観的だけれど、少なくとも乗り手が優秀であればいざという時の為に対抗できるし何より通常時でも大きな戦力となる。』

 

「乗り手は、グリンダ騎士団の騎士ですか?」

 

『実は乗り手には心当たりがある。 そして()()は現在、エニアグラム卿の領地にいる。』

 

「(エニアグラム卿……という事は、あのフローレンスをラウンズの専用機にするということかしら?)」

 

 マリーベルは風の噂でロンゴミニアドファクトリーがシュナイゼルの命令リクエストで、『スザク以外のラウンズにも専用機を』という動きに勘付いていた。

 

 元々グリンダ騎士団も『新技術のモルモット部隊』という事もあるが。

 

「(エニアグラム卿と繋がりを持つラウンズと言うと……) なるほど。 ではグランベリーのオーバーホール後は彼女にフローレンスを送り届けるのですね?」

 

『ああ、そしてマリーにはそのまま()()()2()4()に向かってくれ。』

 

「ッ。」

 

 マリーベルはこの言葉をシュナイゼルから聞いた瞬間、わずかに体が強場ってしまうだけでなく息もヒュッと素早く飲んでしまう。

 

『どうしたんだいマリー?』

 

「いえ、何も────」

 

 画面越しでもマリーベルの緊張感が伝わったのか、シュナイゼルが(彼にしては)珍しく心配するような声をかけ、マリーベルは平然さを保とうとしながら言葉を続けた。

 

「────もしや、『マドリードの星』に関する情報を得たのでしょうか?」

 

 エリア24となった『旧スペイン領』はエリア11ほど激しくはないモノの、ブリタニアの植民地となってから日が浅い故に反ブリタニア活動が起きていた。

 

 だが今までのエリアのように、その活動も徐々に時間が経つにつれて『激しく荒々しい炎』から『燻る風前の灯火』へと沈黙化していたが先のブラックリベリオンで息を吹き返すかのような動きを見せていた。

 

 これは別にエリア24に限ったことではないのだが、エリアになってから日が浅いことが災いして余力を残していた『マドリードの星』は今ではかつて、ナリタ事変で名を上げたような『第二の黒の騎士団』になりえる存在となりつつあった。

 

『そう、マドリードの星は今までの活動から黒の騎士団ほど優秀ではないという仮説が変わるほどに活発な動きを見せ始めている。 ブラックリベリオン後に主要メンバーが入れ替わったのか、あるいは背後にエリア11の“キョウト”のような組織がついたのか……どちらにせよ、この状況を楽観的に見るつもりはない。 そこで────』

「────“エリア24の総督をやってみないか”と、提案するのでしょうか?」

 

『……』

 

 シュナイゼルの言おうとしたことを先んじてマリーベルに言われたのが意外だったのか、シュナイゼルは一瞬だけ呆気に取られるかのような表情を浮かべてマリーベルはニッコリと笑顔になる。

 

「お兄様でも、そのような顔をするのですね?」

 

『いやはや、これは一本取られたかな。 流石はマリーだよ。』

 

「恐れ入ります。」

 

 シュナイゼルはいつもの笑みに戻り、マリーベルもいつものニコニコした愛想笑いを返す。

 

『ではやってくれるかね、エリア24の総督?』

 

「はい、エリア24の平定を任されました。」

 

『期待しているよ、マリー。』

 

 通信が切れて数秒後、マリーベルは大きなため息を出しながら椅子にもたれる。

 

「(まさか、本当にエリア24に……しかも『総督』……)」

 

 マリーベルは先日、アマルガムのリア・ファルと別れる前に毒島に言われたことを思い出していた。

 

「(“エリア24の総督”、“マドリードの星への対処”、そして“恩人の力になりたいと思うのなら”……か。)」

 

 上記の元は言わずもがな、先日スバルが原作知識を書いたメモ用紙に『オズO2』に関する単語から由来していた。

 

「(あれだけの戦力、先読みする様な計画性、サエコ・ブスジマ(毒島冴子)タイゾウ・キリハラ(桐原泰三)、ユーリアやオズの事……そして────)」

 

 マリーベルは瞼を閉じて、セントラルハレースタジアムとスロニムのデータ画像と似た機動戦を行っていた試作型蒼天を思い浮かべる。

 

「(恩があるとはいえ、全ては彼女(毒島)の憶測。 私自身が、見極めなければ……)」

 

 

 ……

 …

 

 

 

 マリーベルとの通信が切れ、シュナイゼルはグランベリーから送られてきた報告書を読んでいるとどこか浮つく空気をカノンは彼から感じ取る。

 

「……如何がなさいましたか、殿下?」

 

「ん?」

 

「いえ、殿下はどこかご機嫌になられたような────」

「────そうだね。 『やはりマリーを総督に任命して良かった』と思っていたところさ。 何せ彼女はもう既に()()()()をし始めている。 それも私たちに内密で。」

 

 カノンはグランベリーから送られてきた報告書に目を通し、シュナイゼルが上記の言葉を言わせる根拠を見つけようとする。

 

 グランベリーやKMFの通信履歴、エナジーに物資や兵装などの消耗具合などはどこからどう見ても予測された作戦の範囲内だった。

 

「独断行動……ですか?」

 

「そうだね、それも巧妙かつ徹底的な隠蔽工作がされている……恐らく、私でなければ気付かないだろう。 確かに、パッと見ればすべてのパラメータは予測範囲内だ。 ()()()()()()()()()()。 ここを見たまえ、カノン。」

 

「……お、『汚水タンク』?」

 

「報告されている活動や作戦時間より()()気がしないかい?」

 

「へ────」

「────人間はバイオリズムの一環として定期的に排泄を行う。 これは人間だけでなく生き物すべてに適用できるのが、日々のルーティーン化。 そこからある程度の観察をすれば一定のカロリーなども消費や生活の予想ができる。 そして人間は活動をすればするほど使ったエネルギーを排泄物に変える。 このデータを見る限り、私の目安だが数日間ほど他のすべてのモノと釣り合わない。 つまり、何らかの隠蔽をしているという事さ。」

 

「ですが、それだけで断言するのは────」

「────そうだね、普通はできない。 だが逆に送られてきたデータにバラツキが無いところに、意図的な作為を私に感じさせている。」

 

「もしや、マリーベル皇女殿下をエリア24の総督にしたのは────?」

「────最初はマドリードの星の殲滅と、彼女に総督としての経験を積ませるのを兼ねていたけれど……」

 

 急にシュナイゼルが、彼にしては珍しく言い淀むような態度をカノンは静かに見守る。

 

「……………………いや。 それよりカノン、ユーロ・ブリタニア方面の報告は?」

 

「スザク君と、彼のコノエナイツが奮闘しているわ。 もちろん、ナイトオブスリー(ジノ)ナイトオブシックス(アーニャ)も頼み通りにどんどんと前線に出ています。」

 

「なら、()()()は順調だね。」

 

 表面上、シュナイゼルは平常運転に戻っていたが内心では何故か子供の頃の自分に『敗北』を何度も味わう寸前のところまで追いつめていたルルーシュと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()を密かに重ね、少々早くなっていた心拍を気合で押さえつけた。




♪o(●´ω`●)o♪ ←息抜き用に買った『ゼルダの伝説』が今日届く予定に踊る作者
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