小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お待たせしました、次話です!
少々展開を早めていますが、楽しんで頂ければ幸いです! m(_ _)m


第179話 ブラックリベリオンの影響

「…………………………」

 

 朝の始業式と教師の『役』を無事に終え、活動を始めて日が浅いヴィレッタは少々疲れながらも、アッシュフォード学園の地中深くに設置された機密情報局の拠点からモニターに映っていたクラブハウス────正確には監視対象であるルルーシュの、当たり障りのない言動でその場をやり過ごす姿を見ていた。

 

「(呑気なものだな……こうしてみると、とても世界を揺るがした人物とは見えん。 せいぜい家族思いの優等生。 とはいえ────)」

 

 ヴィレッタはルルーシュに関しての資料に目を移す。

 

「(────そんな彼が、こうも頻繁にアンダーグラウンドでの賭博行為をするとも思えんが。)」

 

 資料にはアッシュフォード学園がテロによって占拠し、空気が抜け出していく風船のように経済難と活力が一気に縮小していく対策として総督のカラレスが導入したのは『娯楽の増加』だった。

 

 コードギアスの世界でも芸術品やオペラ、スポーツなどと言った娯楽は存在するが、富裕層などが真に心から楽しめる()()()娯楽は本国外だとかなり少ない。

 

 そこでカラレスが目を付けたのは『賭博』系のカジノ、闘技場、競馬場などはそれほど立ち上げて管理するのに難しくなく、客受けもかなり幅広くかつ経済的にも良い起爆剤になるものだった。

 

 幸い、『娯楽施設』のデザインなどはクロヴィスが居たことで万人に受けたがそのような市場が増える程、自然とクロヴィスが総督だった時代のように治安も悪くなり、汚職も増えるのだが……

 

 そこは“流石は(性格と信念が急変しても)カラレス”と言うべきところか、一方的な『搾取』ではなく逆にその手の者たちを徹底した管理下におきつつ『Win-Win』な双方が得をする協力関係を結んでいた。

 

 よって租界の表世界はブリタニアの保安局が、そして法の手が届きにくい裏社会は認知かつ政庁に黙認されているマフィアが仕切っている。

 

 そしてルルーシュは週に何回かそのような賭けをする場所に出ては、連戦連勝している。

 

「(しかも勝ち加減が上手く、相手もそれなりにプライドを持っているが故に学生の彼に対して強く出られない者たちばかり……か。)」

 

 そんな考えに耽っていたヴィレッタの背後に、機密情報局の部下がフォルダーを渡してくる。

 

「マイロード、こちらが頼まれていた学生の資料です。」

 

「ん? ああ、ご苦労────ってブルーノはどうした?」

 

 ヴィレッタがクラブハウスに居る学生たちに関しての資料を受け取ると、彼女が当初頼んだ機密情報局の者と資料を渡してくる者が違う事を問うと、部下は目を逸らす。

 

「ブルーノは……()()()()()()────」

「────な、なんだと? どうしてだ────?!」

「────わ、私は偶然その場に居合わせただけです! た、ただその……『ロロ』が言うには“機密事項に触れたかも知れない”と……ですが! ブルーノはただ彼の携帯を拾って、開けただけですよ?! それのどこが機密事項なんですか?!」

 

「……………………」

 

 ヴィレッタはモニター越しのロロ────正確にはロケットの付いた彼の携帯────を見る。

 

「そもそも、彼は機密情報局の者では無いはずです! 無礼を承知で申し上げますが────!」

「────ロロは別機関の人間だ、皇帝直属のな。 彼がここにいるのも別件で、我々とはあくまで協力関係にあるだけ。」

 

「あのガキがですか────?!」

「────そうだ。 他言無用だぞ? どうやら私の前任者も気になり過ぎて行方を晦ませたらしいからな。」

 

「イエス、マイロード。」

 

 ヴィレッタは一応ルルーシュが所属する生徒会メンバーの資料を目に通していたが、それはあくまで必要最低限のモノだったが故に、より詳しいことが書かれた資料を頼んでそれに目を通していた。

 

『そうすれば、生徒会メンバーの異変や行動原理をある程度は推測できるから』というのは建前上。 実際は────

 

「(────結局何だったのだろう、あの()()()は?)」

 

 ヴィレッタはそう思いながら、スヴェンの情報が書かれている書類を見る。

 

「(『スヴェン・ハンセン』、“病弱なシュタットフェルト家の跡継ぎ令嬢カレンの世話係兼従者見習い。 ブラックリベリオン時に行方不明になった彼女を最近までは探す為に休学していたが、現在は家が本腰を入れて捜索を続けている”────)────ん?」

 

 彼女はそんな当たり障りのない情報を読み上げていると、さっきの部下がまだ立ち去っていないことに気付く。

 

「それが……」

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

 部下が更に気まずいまま書類を渡し、ヴィレッタが受け取ったそれを読むと、彼女が固まってから胃薬を取り出して服用してから頭を抱える。

 

「……………………………………な、なるほど。」

 

 “書類にはライラの写真が付いていた”と、ここで追記しておこう。

 

 

 


 

 

 「久しぶりなのです!」

 

 うーん、こっちの気持ちが良くなるほど元気の良い挨拶!

 

 っと、いきなりですまなかった。

 簡単に言うと“数日後に胃痛案件ライブラを名乗る金髪縦ロール皇女ライラが学園に復帰してきた”。

 

「あ~ん、もうやっぱり可愛い!」

「久しぶり~!♡」

 

 「グニュ~……くるしいですせんぱい。」

 

 そして今ミレイとシャーリーの双山に挟まれてもみくちゃにされている。

 

 大変けしk────和みますな~♪

 

「ぁ。」

 

 ドドドドドドドドド

 

 そして気のせいかライブラ(ライラ)とロロの目が合った瞬間から『奇妙な冒険』特有の背景音がワイの背後から来る幻覚が聞こえる気がするデヤンス。

 

 あと気のせいかも知れないけれど大量の汗もじゃんじゃんとオイラの首から下の身体中から流れている気がしないでもないでゴザル。

 

 “なんで首から下”だって? 気合。

 

「久しぶりだね、ライブラさん。」

 

「あ、そうそう! ロロってばこの間ようやく歩けるようになったんだよ! 驚きよねぇ~?」

 

「…あ、はい! そうです!」

 

 ん?

 今一瞬間があったような────

 

「────ロロちゃん、良かったです!」

 

 『ロロちゃん』。

 

 いやまぁ、ライラはいつもナナリーと親しげにしていたからこれぐらいは普通……かも?

 

 「ろ、ロロちゃん?」

 

 うっわ。

 ロロが原作や外伝含めてみたことの無い、何とも言えない『複雑な引きつった顔』をしている。

 何気にレアな表情を見たぞ、今。

 

()()()()()ね、ライブラさん。」

 

「あ! マーヤ先輩、()()()()です~!」

 

 いっっっっっっっっよっしゃあぁぁぁぁぁぁ!

 ナイスだマーヤにそれを察したライラ! これで第一関門、クリア!

 一番恐れていた『ライラ経由でボロが出る』はなさそうでよかった!

 

 やっぱコードギアスの世界ってばモブ子とモブ皇女でも優秀な人材がわんさか居るのな。

 ただルルーシュとか腹黒皇子とかスザクとかカレンとかシンクーとかラウンズとかマリーベルとかオズたちとか名前が付いた登場人物が圧倒的過ぎて、霞んでしまうだけで。

 

 玉城もしぶとさだけで言うのなら、『毎度出撃しては撃墜されて生還する能力』はピカイチだし。

 そして『毎回青筋を浮かべた井上に説教される』までがセット────おっと脱線した。

 

 ライラの件がクリアになったことで、次に取り掛かるべき案件と言うと……アレだ。

 

『カラレスの“へぁぁぁぁ”ならぬバベルタワー』。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「久しぶりだな。」

 

 夜のトウキョウ租界は以前と比べて、政庁のある中央から離れれば離れる程ブリタニア人でもヤバくなっている。

 

 だが逆に言うと、それだけ中央に近ければブリタニア人は動きやすいという事だ。

 

「へ、へぇ……坊ちゃんもお変わりなく。」

 

 俺の付けた『印』に、以前酔っぱらってアンジュに危害を加えようとしたモブA,B,CのBが冷や汗を掻きながら挨拶を返す。

 

 情報屋として行動をしていた時から結構時間が経っているが、裏世界の事情を知っているこいつらが生きていてよかった。*1

 

 それに心なしか、当時よりかなり身に付けている物がグレードアップしている。

 

「で、今回坊ちゃんの依頼とは?」

 

 そして俺の付けた『重要性が高い印』を見た所為か、ゴマすりをするモブA。

 

「そうだな……租界の外縁部にある、バベルタワーを知っているか?」

 

 モブA,B,Cの三人がキョトンとしてから、お互いを見る。

 

「おい、お前がバラしたのか────?」

「────ちげぇよ────!」

「────ならどうして────?」

 「────知っているのか?」

 

「「「シッテイマス。 と言うか雇われています。」」」

 

 Oh……なんだか偶然にしては出来過ぎていてちょっと怖いが好都合だ。

 

「そうか、なら丁度いい。 俺もそこに興味が出てきてな、紹介をしてもらえないか?」

 

 実は第一関門(ライラ)後に、こういう話が分かりそうなリヴァルにバベルタワーの事を相談してみた。

 だがバベルタワーはカジノ兼デパートという事で一般に公開をしているものの、『従業員』となると()()によって採用のされ方が変わってくる。

 

 ブリタニア人だと紹介制。

 名誉ブリタニア人だと『見た目』と『技能』で更に分かれる。

 名誉ブリタニア人未満のナンバーズは基本、噂によると『技能』を持った囚人が横流しされているとか。

 

 あるいは人種に関係なく『金貸しなどへの返上』だが、これは結構ありきたりだな。

 

「坊ちゃん、金が必要なんですかい?」

 

「いや? ()()()の次の仕事に関係しているらしいだけだ。 紹介だけで良い。」

 

 ちなみにこの『依頼人』とは真っ赤な嘘だ。

 

「お、俺らじゃ他のことはできないんでしょうか?」

 

 モブC……お前らもっと俺から金をとる気だな?

 俺も変わって欲しいが、事が事だけに『代理』では駄目だ。

 

 だがそうだな……考えようによっては良いかもしれない。

 

「ならそうだな……()()()()()()()()()()()()()()()()()を入手できるのなら追加報酬を考えてもいい。」

 

「それは、二つで追加報酬ですかい?」

 

「いや、一つに付き追加だ。」

 

 金さえあれば(ある程度は)何でもするモブA,B,Cが、明らかに嬉しそうな空気を出す。

 

 ちなみに『設計図』と『地下周辺の地図』は言わずもがな、R2の一話で起きる『ゼロ奪還作戦』の為だ。

 

 俺自身はゼロの奪還に直接関与するつもりも必要も無いが、黒の騎士団に設計図を渡せば幾分かバベルタワーの占拠と、ゼロとして記憶を取り戻したルルーシュが動きやすくなるだろう。

 

 原作よりかなりマシな戦力を保有する黒の騎士団ならば、上手く作戦も進めてブリタニアの機密情報局を阻止して、ついでに民間人の大量虐殺も止められるかもしれない。

 だがそこは保険をかけて、地下周辺の地図をアマルガムに渡して動いてもらおう。

 

『何故か』って?

 シンプルに『そろそろ俺無しで展開がより良い方向に動かせるか』を見たいから。

 

 ちなみにモブA,B,Cたちに聞いた『紹介』は……まぁ、平たく言えば俺の我儘だ。

 

 どうせなら、バニーカレンを拝みたい!

 

 

 


 

 

「やはり、彼は動くみたいね。」

 

『そうか……』

 

 モブA,B,Cと別れて夜のトウキョウ租界を歩くスバルが分かれてから数日後、マーヤが夜のトウキョウ租界を見下ろしながら暗号機の付いたインカムに話し込むと、毒島の声が返ってくる。

 

『こちらも、匿名で黒の騎士団にバベルタワーの設計図が送られたと、困惑した仙波達から聞いたぞ。』

 

『バベルタワーというと、シュバールさんのメモに書かれた建物ですね?』

 

『ああ。』

 

「やはりこれは、“ゼロ奪還”に関係しているのね。」

 

『恐らくな。 ん?』

 

「どうしたの、冴子?」

 

『いや、先ほどスバルからバベルタワーの地下周辺のデータが送られてきた。 ()()()()()()()()()()()、という言伝付きで。』

 

『黒の騎士団には設計図、そして我々には地下……避難案……飛燕4号作戦……』

 

『レイラ?』

 

『……………………サエコ、黒の騎士団の人たちに連絡は取れるかしら?』

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

「……」

 

 現在では『新大陸』と呼ばれる、正史ならば『アメリカ合衆国』が出来ている筈の土地に、スザクはシュネーの様子を見にアイダホの首都ボイシまで足を運んでいた。

 

 周りは自然豊かで、市街地の外縁部のほとんどの土地が畑であるその印象は、幼い頃の日本に似ていた。

 

「枢木卿!」

 

 ヘクセン家の屋敷内から、元気そうなシュネーが驚いた様子でスザクを出迎えに出てくる。

 

「やぁシュネー。 休暇中に来てすまない、邪魔したかな?」

 

「と、とんでもないです! 枢木卿ならば、僕はいつでも歓迎します! 来てくれてありがとうございます!」

 

 「“来てくれてありがとうございます”、か……」

 

「枢木卿?」

 

「(歓迎されるなんて、いつぶりだろうか……) いや、なんでもない。 実は僕も休暇を取った────と言うかマルディーニ卿に取らされてね、君の様子を見に来た。」

 

 スザクとシュネーが話しをしている間に“何事か”と思ったのか、何人かが屋敷の中から出てくる。

 

「そうですか、では紹介しましょう枢木卿。 こちらが家族────」

「────ようこそいらっしゃいました枢木卿、ボイシ地区の領主であるヒンメル・ヘクセンです。 こちらが妻のエーゲラ。」

 

「……息子がお世話になっております。」

 

『枢木卿』と聞こえた瞬間、髭を生やしたシュネーの父の困惑顔が愛想よい笑みへと変わり、彼の妻はスンとした表情のまま挨拶をする。

 

「初めまして、枢木スザクです。 事前に来る連絡をせず、急な訪問で────」

「────いえいえ、ラウンズの方とあればいつでもヘクセン家は歓迎いたします! なぁエーゲラ?」

 

「ええ、まぁ。」

 

 外に出てきてからスンとしたエーゲラの背後にずっと隠れている14,5歳ほどのショートカット縦ロール少女が、ずっと困惑したままシュネー達を不思議そうに見る。

 

「これ、スノウ。 そうやって隠れずに、枢木卿に挨拶をしないか?」

 

「すみません枢木卿、いつもは元気過ぎるぐらいの妹なんですが……」

 

 ヒンメルがそう言うとシュネーが困ったような苦笑いを浮かべ、スノウは更に困惑する様な顔のままヒンメルたちとスザクを互いに見る。

 

「…………………………どうした、スノウ?」

 

「どうして三人とも()()()()()()()に畏まっているの?」

 

 サァァァァァ。

 

 スノウの言葉にヒンメルとエーゲラの顔から血の気が引いていき、シュネーは意味不明なビンタを食らったかのように唖然とする。

 

「……」

 

 逆にスザクはどこか()()()様子のまま顔色を変えず、ヒンメルは次第に赤くなっていきながら口を開ける。

 

 「スノウ! 枢木卿の前で、なんてことを────!」

 「────だ、だってお父様もお母様も何時も仰っているじゃない?! “イレヴンなんかが栄えあるナイトオブラウンズになったのは浅ましい手段を使った筈だ”って! それに、ブラックリベリオンなんてことを起こす野蛮人のイレヴン────!」

 「────スノウ! いい加減にしないか?!」

 

 顔を真っ青にしてブワリと汗が出始めたヒンメルはハンカチを取り出して額を拭くと、申し訳なさそうな顔に変わり、スザクを見る。

 

「……不敬罪に当たることは承知して申し上げます。 貴方は確かにナイトオブラウンズという高い地位におられる方ですが……私たちは貴方に対して、敬意を払いながら歓迎はできません。」

 

「分かりました、突然の訪問に関わらず出迎えをしてくれてありがとうございます。」

 

 スザクは急激に冷めていく心を表情に出さず、ただそう口にしてからヘクセン家の屋敷に背中を────

 

 「────勝手なことばかり言わないでくれ!」

 

 さっきまで奥歯をかみ砕く勢いだったシュネーの怒りに満ちた叫びにスザクは足を止め、ヒンメルたちはびっくりする。

 

「確かに枢木卿はブリタニア人ではないかもしれない! だからと言って“敬意が払えない”なんてのはおかしい────!」

「────シュネー、お父様になんて口を────」

 「────母さんは黙っていてくれ────!」

「────ひっ────?!」

「────枢木卿は自分を犠牲にしてまで私の命を何度も救ってくれただけでなく、こうやって僕の見舞いにも来てくれる素晴らしい人だ!」

 

 シュネーは歯を食いしばる代わり、グローブの生地が軋むほどの力で拳を作る。

 

「そんな人に対して、父さんは何という侮辱を────!」

「────非ブリタニア人がブリタニアの、それも貴族の命を守るのは当然だろう。」

 

「口で言うのは簡単だよ、父さん。 でも実際に身を挺してまで他人を守れる人間がどれほどいるというのです?」

 

「私がいるだろう。」

 

「…………父さん、本気で言っているんですか?」

 

「ヘクセン領の領主である私がどれだけの民の人生や命を守っていると思う?」

 

「父さん……ヘクセン領は一度も戦火に晒されていないですよね?」

 

「戦火にならないのは私のおかげだ。」

 

「枢木卿、申し訳ありません────!」

 

 ヒンメルとのやり取りが無意味と悟ったのか、視線を彼からスザクに移したシュネーは歩き出す。

 

「────まさか私の家族がこんなにも恥ずかしい人間たちとは思っておりませんでした! 来客用の離れがありますのでそこに案内し、今日からは私もそこで休暇を過ごします!」

 

「なっ────」

「シュネー────」

「兄様────?」

 

 ヒンメル、エーゲラ、そしてスノウはこのようなシュネーが見たことが無いのか驚愕した。

 

「────遠路はるばる来てくださった枢木卿を父さんたちが歓迎していなくとも、私には関係ありません。」

 

 ドンドンと歩きだすシュネーを、スザクが追うように歩くとあたふたとしていたヒンメルが口を開ける。

 

「まて、シュネー! 話はまだ終わって────!」

「────いいや。 私の命の恩人であり客人である枢木卿を侮辱した時点で終わっているよ、父さん。 誰が何と言おうと、私は彼に感謝はしているし一人の人間として尊敬もしている。 行きましょう、枢木卿。」

 

 シュネーの“尊敬している”などと言う、自分を褒め称えるような言葉を聞いたスザクは、思わず胸の奥にジンワリとした温かい気持ちになった。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 その夜、使用人たちに私物を本家から離れに移したシュネーは宣言通りにその日から離れに住むことを伝えた。

 

 仲のいい家のシェフや使用人が数人移り込み、その日の夕食をシュネーは家族ではなくスザクと過ごした。

 

「……………………」

 

 熱くなったまま行動をしたシュネーはクールダウンして気まずくなったのか、静かになって食後の紅茶を飲んでいた。

 

「夕食、美味しかったよシュネー。」

 

「ッ。 あ、ありがとうございます! お口にあったのなら嬉しいです!」

 

「やっと笑ったね。」

 

「ウッ。」

 

「でも良いのかい? 何も僕の為に、ここまで────」

「────いいえ、する必要がありました。 誤解されがちですが人種が違うとはいえ、同じ人間なんです。 それをまさか、枢木卿のことを幾度となく話した筈の家族が……」

 

「………………………………」

 

「く、枢木卿! どれだけ考えても分からなかったことがあるのですが!」

 

 シュネーは自分の所為でまたも気まずい空気になってしまったことを気にしてか、以前から考えていた疑問を口にすることにした。

 

「以前お聞きにした、『願い』の事*2なのですが……一体、その願いとは何なのでしょうか?」

 

「……僕には、心から尊敬できる人が二人────いや三人ぐらいはいるんだけれどね? その内二人は“周りを笑顔にしたい”と言う理想を口にしたんだ。 ブリタニア人、非ブリタニア人に関係なくね?」

 

 スザクの言葉に、シュネーがハッとしたような顔をする。

 

「そ、それは……もしや枢木卿を騎士にした────?」

「────うん、一人はユフィ……ユーフェミア皇女殿下だよ。」

 

「……? 二人と言いましたが、もう一人は?」

 

「ブリタニア人だけれど、君のように差別をするどころか人を『平等な人間』と見ている友人だよ。」

 

「では枢木卿の願いとは、“周りを笑顔にしたい”ということでしょうか?」

 

「……少し、違うかな? 僕は自分が器用じゃないのは自覚しているから、『その業を成せる人たちを今度こそ守ることが僕の願い』……になるのかな?」

 

「では、私にも“手伝え”と命令してください。」

 

「……それは出来ないよ、シュネー。」

 

「な、なぜです?! 私は貴方に付いて行くことを決めたいのです! 例え相手が旧友であろうと、同じブリタニア人であろうと戦います!」

 

「“何故”って……だって友達に『命令』は、なんだか違うような気がするから?」

 

「…………………………………………はい?」

 

 目が点になったシュネーを見てスザクは何かしでかしたと思ったのか、“明日は別の場所を探す”と口にすると、シュネーはムキになりながらスザクに、“休暇が終わる(気が済む)まで離れを共に使っていい”と無理やり言い渡したのだった。

 

「(一度言い出したら止まらないんだね、シュネーは。)」

*1
30話より

*2
159話より




天然、恐るべし。 (゚ー゚;Aアセアセ
もうそろそろR2と思いますです、ハイ。 (;^ω^)ゞ


あと余談ですが、ブレスオブザワイルドがゼルダ版スカイリムで面白すぎ♪
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