小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第180話 マドリードの悲運は回避された! エリア11は別です

 旧スペインであるエリア24は以前にも記入したがブリタニア帝国の植民地となってから日が浅く、反ブリタニア活動は続いている。

 

 組織名は『マドリードの星』と呼ばれ、『エリア11と違って幸い』と言っていいのか旧スペイン軍の残党を合併した後は文字通りに旧スペイン人にとっては『希望の星』であった。

 

 だがこちらには『ゼロ』の様な高レベルの指導者がいなかったため、一時は他のレジスタンスのように窮地に追いやられたが、ブラックリベリオンが起きたことでブリタニアの注目がエリア11の鎮圧に向けられた隙を突き、多くのサザーランドの買収や奪取をすることに成功して新たに『エストレヤ』と言う機体の改造に成功した。

 

『ブリタニア機の見た目を改造』という点ではエリア11の無頼と共通しているが、あちらが『グラスゴー(一世代前)の改造機』に対してこちらは『サザーランド(現役兵器)の改造』である。

 

 このことが功績と認められたのか、インド軍区などブリタニアをよく思わない小国を始めに多くの支援をマドリードの星は得ることに成功した勢いでイベリア地域周辺では『第二の黒の騎士団になりかねない組織』として注目の的となっていた。

 

 そしてエリア24がエリア11のように『奇跡』という名のきっかけ(起爆剤)で『第二のブラックリベリオン』になりかねない『火薬庫の状態』を危惧したシュナイゼルは、グリンダ騎士団で活躍を示していたマリーベルを新たな総督として任命した。

 

「(全く面白くない話だネ~。)」

 

 そんな記事が書かれた新聞をポニーテールにまとめたセミロングヘアーの女学生────『マリルローザ・ノリエガ』が読むと、曇りそうになる表情を我慢しながら新聞をごみ箱に捨ててから帝立ペンドルトン学園の門を潜り抜ける。

 

『帝立ペンドルトン学園』とは、帝国の統治によってエリア24となったマドリード租界に建設された一貫校で、その在り方はどことなくアッシュフォード学園に似ていなくもなかった。

 

『ブリタニアの子女が勉学に勤しみ、理事長は殆んど誰も会ったこともなく姿もわからない学園である』、という事を除けば。

 

「(ハァァァァ……お兄ちゃんの頼みで通い続けているけれど、正直かったるいナ~。 じゃなきゃ、先日届いたアマネセール(新型機)のシミュレーターを試しているよ。)」

 

 機体形式番号Type-05G/ESP、通称『アマネセール』とはエリア24の()()()()()()()()()に月下を量産化する過程で開発された『暁』のカスタム機である。

 

 既に察しているかも知れないが、マリルローザは『マドリードの星』の一員でありKMFの操縦スキルもそこそこ良い。

 

 それだけでなく父はブリタニア人、母はスペイン人という事で彼女はハーフであり、実の兄である『フェルナンド・ノリエガ』はマドリードの星のリーダーを務め、マリルローザが反ブリタニア活動に参加して戦うことには猛反対している。

 

『ハーフの兄妹でブリタニアに対してゲリラ活動を行っている』という面では、ナオトやカレンと非常に似ている。

 

 ドン!

 

「「きゃ?!」」

 

 マリルローザが寝不足から来る睡眠欲求を気合いで振り払いながらペンドルトン学園を歩いていると誰かとぶつかってしまう。

 

「いたたた────」

「────ご、ごめん! 大丈夫────?!」

 「────ピースマークの者です。」

 

 ドキッ!

 

 マリルローザがぶつかった学生が鼻を抑えながら尻餅をついたので様子を見る為にしゃがみ込むと、相手が小声で『ピースマークの者』と告げたことでマリルローザの心臓が強く脈を打つ。

 

「(ピースマーク! 反ブリタニア支援組織の────?!)」

 「────マドリードの星の()()()()()()に伝言です。 “ベンタスゲットーの旧闘技場にて待つ”と。」

 

「(お兄ちゃん(フェルナンド)の事を知っている?! いや、それ以前に私がマドリードの星と繋がっていることをどうやって?!) 貴方は……一体────?」

 

 マリルローザと同じくペンドルトン学園の制服を着た()()()()()()()()()()がニッコリとした笑顔を返す。

 

「────()()『ミスティ・イクス』よ♪ あ、それとついでに言うとこれでも貴方より年下よ♪」

 

え?!

 

 マリルローザは驚愕に目を見開かせながら、ワナワナと震えてミスティ・イクスをジロジロとみる。

 

「そんな胸で…………大きい……大きい?! 私より胸が大きそうなのに────?!」

 「────大きい大きい言わないでくださいな────?!」

 「────背も小さいし────!」

 「────そこまで小さくない!!!」

 

『年相応』と言えばそこまでだが、普段の()()()()()()()からは想像もできない低能低レベルなツッコミである。

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 ベンタスゲットーはエリア11の『ダークゾーン』とあまり大差がないほど治安は悪く、ブリタニア人だけで無く、そこに住んでいるツーフォー(旧スペイン人)でさえも夜道の出歩きは極力控えている。

 

 運が悪ければ、『義賊』と称して徘徊する者たちに『ブリタニアの内通者』と一方的に断定されてリンチにかけられかねない。

 

 そんな場所を平然と歩けるのは自衛手段とその手の者相手でも引けを取らない戦力を保有する者たちだけだろう。

 

 一人のツーフォーの青年────『フェルナンド・ノリエガ』が数人の腕の立つ者たちと共にその日のうちに、妹のマリルローザから受けた伝言相手と会う為に闘技場を目指していた。

 

 いや。

 この場合は『目指していた』と言うより、『戻っていた』と呼ぶべきだろう。

 闘技場はマドリードの星が持つ拠点でも大き目の一つで、インド軍区から送られてきた新型機であるアマネセールの保管場所でもある。

 

「(仲介人がピースマークとはいえ、不気味過ぎる。 相手がピンポイントで、俺たちのアジトを会う場所に指定したのも……マリルローザに接触して、俺を名指しに────)」

「────フェルナンド、何かがおかしい。 見回りの奴らが一人もいない────」

「────なんだと────?」

「────あ、お兄ちゃん────」

「────ってローザ(マリルローザ)?!」

 

 フェルナンドたちは耳鳴りがするほど静まり返った闘技場を地下駅から上がって様子を見ていると一足先に足を運んでいたマリルローザと出くわし、フェルナンドが慌てだす。

 

「何でここに?! “大人しくアジトで待っていろ”って言っただろう?!」

 

「だから()()()待っていたけれど?」

 

そう言う意味じゃねぇよ。

 

 コツ、コツ、コツ、コツ。

 

『兄妹コントをまたし出したよこいつら』と呆れていたマドリードの星たちの耳に、闘技場の石で出来たフローリングを靴が踏む独自の反響音が届くとピリピリとした緊張感が場を満たす。

 

「ごきげんよう。 マドリードの星のフェルナンド・ノリエガですね? 私、この間エリア24の総督となったマリーベル・メル・ブリタニアと申します。 ここにいた者たちは一時的に隔離させていただきました。」

 

「「?!」」

 

 まるで夜会に出会った人に挨拶をするかのようなマリーベルに、フェルナンドとマリルローザはギョッとする。

 

「グリンダ騎士団の────!」

「────ブリタニアの皇女殿下────!」

「────影武者でも、ここで打ち取れば────!」

 「────やめろお前ら!」

 

「え────?!」

「な、なんで────?!」

「────多分、俺たちは既に包囲されている。 闘技場の奴らも捕まっているだろうさ。」

 

 フェルナンドの制止する声にマドリードの星の者たちがビクリと体を跳ねさせ、マリーベルはニッコリとする。

 

「賢明な判断です。 それと私は影武者などではなく、正真正銘のマリーベルです。」

 

「……だろうな。 影武者だろうと、皇女の名前を口にしている時点で不敬罪になりかねないもんな。 それにそうでもなければ、色々と説明が付かない……で? 俺を呼び出したのはなんだ? 『夜のデート』への誘いなら、喜んで受けるぜ?」

 

「貴方に……マドリードの星の()()()()である『フェルナンド・ノリエガ』と話をするために、ここに参りました。」

 

「……おいおいおいおい。 買いかぶって恐縮だが、俺は()()だぜ────?」

「────“マドリードメトロ”。」

 

「ッ。」

 

 マリーベルが口にした『マドリードメトロ』とは、名前の通りスペイン首都マドリードの地中を蜘蛛の巣のように張り巡らされた駅地下の事を指している。

 

 エリア11やEUの旧地下鉄と似ているが、エリア24がそれ等を放棄したの近代ではなく19世紀。

 

 故に、地図に載っていない上に土地勘が強い物でも口頭でしか構造を伝われていない。

 

 故に、隠れ家にするにはもってこいの場所である。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』と言う前提が付くが。

 

「……………………チ、そこまでお見通しかよ。 そうだ、俺が君たちブリタニア人によって国を奪われたスペイン人の希望の星、『マドリードの星』のリーダーだ。 で? 俺を捕まえて公開処刑でもするかい新総督さん?」

 

「お兄────?!」

 「────お前は黙っていろ。」

 

「いいえ、先ほど申しあげた通りに話をしに来ました。 このままだと、貴方たちを()()()殲滅しなくてはなりません。 そしてそれを行う事は、本意ではありません。 何故ならば、これから来るであろう大嵐にエリア24────いいえ、()()()()は準備を一刻も早くし始めなければいけません。」

 

 マリーベルの言葉にマドリードの星のメンバーたちはどよめき、フェルナンドがさっきまで浮かべていたチャラい表情がキリっと真剣なモノへと変わる。

 

 何故なら『第88』と皇位継承権が低くとも、仮にも皇女殿下でしかもブリタニア人の総督が『エリア』ではなく『旧名』で地区を呼ぶのは前代未聞どころか、下手をするとブリタニア本国に『謀反の気配アリ』と受け取れかねない発言。

 

 そしてそのリスクをマリーベルが冒してまでわざわざ言い換えることはフェルナンドにとって────否、イベリアの者にとって最も尊き『敬意』が払われていると感じさせていた。

 

 その上、『これから来るであろう大嵐』の言葉に彼の好奇心は大いにくすぐられた。

 

「……話を聞こうか、マリーベル皇女。」

 

「ええ、それと貴方が信頼できる同胞たちにも聞いて欲しい内容になると思いますので────ああ。 それよりも私の仲間たち数名を呼んでもいいかしら?」

 

 「美人さんならいつでも大歓迎だ!」

 

「お兄ちゃん……せっかくの空気が台無しだよ────」

「────だって総督が直々に会いに来て、しかも美少女なんだぜ?」

 

「…………………………私は?」

 

「は? お前がどうかしたか?」

 

「……」

 

 フェルナンドの言葉に、マリルローザがとうとう痛み出した頭を抱えだす。

 

 原作のオズO2では、記憶喪失のオルドリンはマリルローザと知り合いとなり彼女を経由してフェルナンドと出会い、マドリードの星と共に活動をした。

 

 そしてA級パイロットである上に指揮官能力も高かったオルドリンがアマネセールに騎乗して加担したことで、エリア24全土に圧制政治を強いていたマリーベル総督に対してイベリア半島の反ブリタニア戦力を全て上げた、かつてないほどの反旗をマドリードの星を筆頭に翻した。

 

 結果はこれ以上ないほどの『惨敗』。

 

 トントン拍子に作戦が決行されてマリーベルを追い詰めたかのように見えていたがその実、全てはマリーベルのシナリオ通りだった。

 

『生身のマリーベルまであと一歩』というところまで政庁を進入したフェルナンドとマリルローザの部隊は88機のヴィンセント・グリンダで構成された『リドールナイツ』の奇襲により、文字通りに二人は『串刺しの刑』に処されて無慈悲で無残な死に方をした。

 

 オルドリンと同じく記憶喪失になってマリーベルの右腕となったオルフェウスを相手にしていたオルドリンはようやく彼を振り払って政庁に侵入すると、これ見よがしにボロ雑巾のように四肢欠損し、変わり果てた容姿に変えられたフェルナンドとマリルローザの亡骸がアマネセールの前に放り出された。

 

 これによりマリーベルはアマネセールの戦意喪失を図ったが、意図せずにアマネセールに乗っていたオルドリンのトラウマを刺激してしまい、致命的なまでにマリーベルに対してオルドリンが持つ印象を大きく変えてしまうきっかけとなった。

 

 だが原作より様々な要素が変わったおかげで、ノリエガ兄妹は原作の様な犬死する運命と違う道を歩むこととなる。

 

「(まさかここまでとは……まるで、シュナイゼルお兄様だわ。)」

 

 そんな未来を原作では自分が作ったとは知る由もないマリーベルはニコニコとしながらも、内心は高揚感と畏怖が混ざった気持ちにドキドキしていた。

 

「(ですがもし、仮に彼が本当にセントラルハレースタジアムで私と同等の動きを未調整のヴィンセントでした騎乗者ならばシュナイゼルお兄様の様な『知』だけでなく、私の様な『武』までも兼ねそろえていることに……)」

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 晴天の空。

 

 思春期真っ最中でじゃれるアッシュフォード学園の生徒たち。

 

 そして────

 

「子供ならば授業は受けるべきだ!」

「ちゃんと単位は取れていますよ先生?!」

 

 ────とある廊下では日課になりつつある、とある生徒ととある体育教師を中心にした鬼ごっこがまた繰り広げられていた。

 

「毎日毎日毎日! よく飽きないですね、ヴィレッタ先生?!」

 

「教師だからな!」

 

 ルルーシュは授業が終わった放課後、必ずと言っていいほど教室の外にいるヴィレッタに待ち伏せされていた。

 

「そういうお前こそ、今日はいつもの姑息な手を使ってこないじゃないか?! 『補習を受ける気がある』と、取って良いか?!」

 

「そんな訳ないじゃないですか! 今日は頼れる友人が隣にいるだけです!」

 

 そう言いながらルルーシュは横で走っているスヴェンを見る。

 

「ははは。 頼られているところ済まないが、私は手出しはしないよルルーシュ。」

 

「な、なにぃぃぃぃぃ?!」

 

「と、言う訳だルルーシュ! 私が先に話を持ち掛けたのを知らずに、体力勝負に出たところがお前の敗因だよ!」

 

「(クッ! まさか先回りされていたとは! それに俺の体力もそろそろ……いや、まてよ?) なぁスヴェン? ()()()()()()()んだよな?」

 

「ええ。 ()()出さない約束をしているよ?」

 

「そうか、じゃあ()()()。」

 

 ルルーシュの合図にスヴェンは走ることを止めて、自らの足を背後からくるヴィレッタの脚に絡めて転がそうとする。

 

「おわ?!」

 

 だが仮にも体育教師以前に機密情報局の彼女は前のめりになった身体の勢いを利用し、そのまま地面に手をつかずに宙返りをしてからスヴェンを睨む。

 

「手は出さないんじゃなかったのか?!」

 

「ですから()()出していませんよ?」

 

「な、なんだその子供みたいな屁理屈は?!」

 

「だって私たちは『子供』ですから。 ねぇ、ヴィレッタ先生?」

 

「んな?! お、おま────!」

「────それよりも、ルルーシュが逃げてしまいますよ?」

 

 ヴィレッタはハッとしてからルルーシュの走り去った方向へ全力疾走する。

 

 「ぬおおおおおおぉぉぉぉ!!!」

 

 ビュン!

 

「きゃあぁぁぁぁ?!」

「スカートが?!」

 

「ははは。 (白に緑ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! そしてヴィレッタは紫ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)」

 

 スヴェンは清々しく、愛想のよい笑いのままヴィレッタの疾走によって巻き上げられた景色を脳に焼きながらゆったりとした足取りで歩きだす。

 

「あ、副会長だ!」

「頑張って~!」

「今日こそ捕まれ、副会長!」

「俺たちの小遣いを返せー!」

 

「はいはいはい……」

 

 ルルーシュは汗だくになりながらも、自分が学園の日課的なエンターテイメントになっていることに悪い思いをせずただ走る。

 

「ルル~! 会長からの差し入れ~!」

 

 階段を下りていたルルーシュが見上げると上の階段にいたシャーリーによって投げられた焼きそばパンを彼が受け取る。

 

「ありがとうシャーリー!」

 

 「シャーリー! 帰ってきたらお前も覚悟をしておけ!」

 

「えええええええええ?!」

 

「当然の報いだ!」

 

 これを見たヴィレッタの言葉に対し、シャーリーはゲッソリとした顔をする。

 体育教師であると同時に、ヴィレッタはシャーリーの所属している水泳部の顧問をしているので、苦手意識を持つのは無理もないが。

 

 それは何故か?

 理由は至極単純に、ヴィレッタが余りにも教師役に『本気過ぎる』からである。

 

 最初こそどこかたどたどしかったのだが、次第に生徒たちがどこか本国に居る弟妹達を思い出させた所為で()()()同じように接してしまうようになった。

 

 特にルルーシュがゼロだと知っていても、どこか『頭脳だけ突出している所為で体力をおそろかにしている』────つまりは『マセた頭でっかちな弟』として共感してしまった。

 

 ちなみにシャーリーは逆に『脳筋体力バカ』という事で、ヴィレッタは部活動の合間に彼女の勉学を見ている。

 

「(とまぁ、こんな平和な描写、アニメでは無かったから新鮮だ。)」

 

 本校の屋上からグラウンドを見下ろしていたスヴェンはロロと共に学園から逃げ出すルルーシュを見てそうのほほんと考えながら春の季節になったそよ風で眼前に降ろされた前髪を上げる。

 

「(元教師の扇との出会いが無かったから、ヴィレッタが学園に配属されるかちょっと不安だったが……概ねR2通りでよかったよかった♪。 それにリヴァルに聞いたところ今週のルルーシュはバベルタワーに行く予定はなかったし、『バベルタワーひあぁぁぁぁぁ』はまだ先という事か。)」

 

「どうかされましたか?」

 

 そんなスヴェンの背後から、屋上に出てきたマーヤが声をかける。

 

『屋上近くには他に誰もいない』というハンドサインを送りながら。

 

「いや、少し考え事をしていた。 (主に『果たしてバベルタワー事変は俺が居なくともそのままの流れなのか』。)」

 

 とはいえ、カメラはある筈なので態度や仕草は通常時と変わらないが。

 

「そうですか。 (見ていた方角は、メモに書かれた『バベルタワー』……だとすると、恐らくは同じく書かれた『ゼロ奪還』と『飛燕4号作戦』の事を考えていたのね。)」

 

 ゾワッ!

 

「(……なんだか寒気がする。 それに気のせいか、マーヤの目が笑っていないような────)」

「────そう言えば、今日()出かけてくるのかしら?」

 

「ん? どうしたのです、急に?」

 

「出かけるとすると、ライブラは私が見ておくわ。」

 

 実は復帰して以来のライブラはスヴェンとマーヤ、そしてミレイの周りに居ることが多くなっていた。

 

『アリスが居ない』、『ナナリーが居ないどころかまるで元々居なかったような扱い』。

 そして極めつけは恐らく『ロロ』が代わりに居たことで異変が起きていることを悟ってか、ライラは安全地帯に身を置くかのような行動を独自に取っていた。

 

「(おお、ナイスアシストだマーヤ。 そろそろバベルタワーの件がある筈だから、今日でバイトは最後にするか。 バニーカレンは拝められなかったが……仕方がないか。) じゃあ、彼女を頼めるか?」

 

「ええ。」

 

 マーヤはにっこりとしながら屋上を後にするスヴェンを見送ってから租界の上空をゆっくりと飛ぶ、()()()()()を見上げる。




『スヴェンは にげる をつかった!』

『だがにげられない!』
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