楽しんで頂ければ幸いです!
「(ギルフォード……『騎士道精神の堅物』の
ルルーシュは表面上、平然としていたが内心は穏やかではなかった。
約一年分、自分の遅れている現状把握中にこの様な事態が起きればなおのことイラついて彼らしくもない内心の言葉が浮かび上がるのは仕方のない事だろう。
「(『時間』と『合理的な配慮』を味方に付けるとはやるな、ギルフォード。 『領事館内のテロリスト』ではなく『ゼロ』を指名してきた以上、ゼロが出て来なければ名声とイメージダウン、その他諸々に今後とも悪影響が出ることを承知した大胆な行動だ。 これで俺が学園を『檻』から『庭』に変えるタイムリミットは明日までと────)」
────ガチャ。
「あれ? ルル一人なんて、珍しいね? ロロは?」
「シャーリーか。 ロロなら散歩だよ、そっちこそ水泳部はどうした?」
「あー、実はくじ引きで私がヴィレッタ先生の誕生日プレゼントを買う事になって……でも先生が好きそうなもの、ちょっと分からなくて────」
「────お酒なんてのはどうだ? 確か好きだったんだろ?」
「あー、うん……でもなんか最近は『胃が~』とか言って控えているみたいだし、そもそも銘柄なんて私知らないし────」
「────じゃあ付き合おうか?」
「エ.」
ルルーシュの提案にシャーリーは目を点にさせ、パチクリと瞬きをすると次第に顔が赤くなっていく。
「つつつつ
「────これからプレゼント選びに出かけるんだろ?」
ガクッ。
「相変わらずのルルに期待した私が……」
「ん? どうしたシャーリー? 腹が痛いのか?」
「なーんーでーもーなーいーでーすー!」
「変なシャーリーだな。」
「(うわぁ……ルルーシュ、それはねぇよ……)」
シャーリーとルルーシュのやり取りを窓の外から様子を窺っていたリヴァルはシャーリーに同情した。
「(だから骨は拾ってやるぞ!)」
そして面白いネタに感謝をしながらも、ミレイやライブラたちにメッセージを送る背中姿をルルーシュは見逃さなかった。
「(よし、これで初期段階の条件は整ったな。)」
…………
………
……
…
「ちょっと何でロロまで連れてくるんですか会長?」
租界内のオモテサンドウモールで、シャーリーの誕生日プレゼント選びに付き合うルルーシュたちから距離を開けて尾行していたリヴァルがそうミレイに問いながら彼女に無理やり引きずられてきた様子のロロを見る。
「だってロロも興味あるでしょ? ひょっとしたらシャーリーとも家族になれるかも知れないんだもの♪」
「おおおおお! 大人の階段というヤツですね?!」
「まぁ……シャーリーの性格からしたら、
「『ソレ』って何です?」
「ライブラは分かっているのだか、分かっていないのだか……」
「???」
「『家族』……」
ミレイとリヴァルの言葉に対してライラはただハテナマークを浮かべ続ける。
傍からすれば小動物が首を傾げてキョトンとしているようなライラの隣で、ロロは何とも言えない心境のまま周りに配置された機情の者たちを確認してから再びルルーシュとシャーリーを見ると、思わずギアス嚮団にまだいた頃のオルフェウスとエウリアを連想してしまって更に荒ぶる心境をロロは無理やり任務に神経を集中させて抑える。
ワインボトルをルルーシュは手に取り、ボトルに反射された景色で周りの様子を窺う。
「(相変わらずだな。 会長とリヴァルにライラが来るのは想定内だったがまさかロロまでくるとはな……それにしても、尾行者が多いのは学園の外だからだろうな。)」
実はルルーシュの監視とは別にライラの護衛も兼ねている者たちも今回加わっているだけなのだが、『ルルーシュはおおむね間違ってはいない』とここで追記しよう。
「(これってデート? デートだよね?! デートにしよう!)」
ちなみにいつもより少々身だしなみに気を使って髪の毛もツーサイドアップにしたシャーリーは、ミレイたちの尾行に気付くどころか内心ルルーシュと出かけられることに有頂天かつ浮足気味だった。
「やっぱり俺もお酒を飲んだことはないから、何とも言えないが……ああ、すまないシャーリー。 この間、携帯電話をどこかで失くしたみたいでさ? 新しいのを見てもいいか?」
「あ、うん!」
何時もならドジを踏んだルルーシュを茶化したり、詳細を聞くなどをするシャーリーはただ肯定の言葉を口にした。
「(さすが皇帝直属の機密情報局……尾行は完璧だな。)」
ルルーシュは新しい携帯電話のお店に入り、そこでもサンプル用品の液晶パネルなどを鏡のように使って予想していた監視者がガラリと変わった様子に感心していた。
「(だが完璧すぎるがゆえに、予想外のアクシデントには
そう
「それと『お願いしたいことがあります。 16時に、人気のないところで非常ベルを押してくれませんか?』」
「ええ、良いですよ。」
「(条件は整った、あとは俺が普段通わない店舗に入ればいい。)」
ルルーシュは電話会社との契約書にサインをし、新しい携帯電話をポケットに入れるとどこかボーっと一点だけを見ていた様子のシャーリーの後ろ姿を見る。
「シャーリー?」
「うひゃああ?!」
「(うお?!)」
素っ頓狂な声をシャーリーが出して思わず体が跳ねようとしたい衝動をルルーシュが気合で押さえつける。
「(危ない危ない、思わずタイムロスになりそうな行動をとりそうだったぞ。) 何を見ているんだ?」
「え?! あ、えっと~……あ、あれ! あれを見ていたの!」
実はシャーリー、モール内で熱~いキスを交わしていたカップルに釘付けになってしまったことを慌てて隠す為に宣伝用のポスターへ適当に指をさす。
原作ではここでシャーリーが『ゼロによって父親を殺された』、『ゼロ=ルルーシュ』などの記憶を皇帝シャルルのよって捻じ曲げられたことにルルーシュはシャーリーに対する負い目と罪悪感を覚えるシーンなのだが────
「温泉?」
「ふぇ?!」
────色々と違う今作でシャーリーが指でさしたのはエリア11の名物と経済を潤す為にクロヴィスが推していた旅行の宣伝だった。
余談であるが、ブリタニア帝国で言うところの『温泉』は古代ローマ時代からの公衆浴場────いわゆる『テルマエ』が一般的であるが、普通に思い浮かべる『温泉』と違うところは風呂のみならず運動場やサウナ、マッサージ室や風呂後の食事にくつろげるスペースなどがある総合レジャー施設が一般的である。
『それってスー〇ー銭湯じゃん』? 逆です。
「あわわわわ!!!」
シャーリーは思わず何故か風呂に自分とルルーシュが肩を並べた、ホワホワとした想像をしてしまい余計に慌てだす。
ちなみにテルマエは普通に男女別で、混浴は非常に稀である。
「(『温泉』か……確か疲れが取れるのだったな? 全てが収まった後で、『慰安旅行』として行っていいかもしれん。)」
少々先の話になるのだが、原作と少々違うこの出来事が後に大変な事態へ繋がるとはルルーシュ含めて誰も思う由もないだろう。
「(っと、時間が迫っている。) シャーリー、ちょっと良いか?」
「え?」
「会長たちが後をつけている、驚かせてみないか?」
ルルーシュとシャーリーはそのあとすぐに高級ブランドを扱っているEUのブティック、『
……
…
「『
「これだから子供は……」
「学生……だよな?」
「でも確かシャーリー・フェネットは令嬢だよな?」
「(ハァァァァ……いいなぁ……)」
ルルーシュたちをモールのカメラなどを通じて監視していた学園の機情員たちは愚痴を口にしながら、ヴィレッタは(内心で)ため息交じりに羨ましがっていた。
「(……ハッ?!) コ、コホン! 監視は怠るなよ! 黒の騎士団が表れたのだ! C.C.が出現する可能性が高くなっていることを忘れるな!」
……
…
「しばらく、俺がここにいるようなフリをしてくれないか?」
「うん、わかった!」
「(よし。 ここなら監視や盗聴器の類はないだろう、何せ俺が普段来ない場所の上に使わない店だからな。)」
ブティックの店内にある着替え室にルルーシュが入ってドアを閉めると、先ほど契約した携帯電話に暗号機を繋げて『黒の騎士団からの爆破予告』を小声でモールの警備室にしてから変装の服装に着替えて時間を見る。
「(よし、後は────)」
────ゴト。
「(うん?)」
着替え室の天井から変な物音がして、ルルーシュが見上げると
「↑ひょ────?!」
素っ頓狂な声を出したルルーシュは驚きから思わず上げた腕を天井裏に居た自分────否、エルに掴まれて上に引きずられていく。
「私だ、エルだ────」
「────な、な、何故────?!」
「────時間がないから取り敢えずお前に成りすますように頼まれている。 それとモールから出た後はこれを読め────」
「────??????」
暗闇でエルには見えなかったが、手紙の様なものを手渡したルルーシュの顔はポカンとした猫の様なものだったと追記する。
…………
………
……
…
ガチャ。
変装(と言っても服装と帽子だけ)したルルーシュはバクバクと脈を打つ心臓を悟られないように平然を装いながらブティックの裏口から出るとモール内のスピーカーからアナウンスが流れる。
ピンポンパンポーン♪
『ハコダテ租界よりお越しのマクシミリアン様、お電話が入っております────』
「────こ、これって────」
「────『テロに警戒せよ』の────?」
「────黒の騎士団────?」
このアナウンスが流れると、モールの店内にいる作業員たちの間でひそひそ話が繰り広げられて不安感が高まっていく。
……
…
「オモテサンドウモールに、黒の騎士団より爆破予告が入ったようです!」
「ルルーシュは?!」
「『スコーピオン』によると、ブティックの裏口から────え?!」
「どうした?」
「た、“ターゲットが後をつけていたアッシュフォードの学生たちを背後から驚かせた”と────」
「────は?」
……
…
「わ!」
ルルーシュ(に変装したエル)はミレイたちに背後に忍び寄ってから大声を出す。
「ひゃああああ?!」
「うきゃあああああ?!」
「のわぁぁぁぁぁぁ?!」
「ッ?!」
予想通りにミレイ、ライラ、リヴァルの三人は叫び、ロロは思わず携帯していた拳銃を抜きそうになる。
「アッハッハッハ。」
エルは愉快そうに笑い、ブティックの店舗内から様子を窺っていたシャーリーに手を振る。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
丁度そんな時、モール内では耳をつんざくような非常ベルの音が鳴り響くと一気に各々の店の中からパニックになった作業員たちにつられて客も慌てだし、それがさらに訳の分からない者たちにも広がっていく。
……
…
「も、モール内で非常ベルが────!」
「────スコーピオンが対象を見失いました────!」
「────対象を見失っただと────?!」
「────パニックが────!」
「────ロロとの連絡は────?!」
「────治安維持の為、電波が────!」
「────えええい! 私が直接出向かう────!」
「────中佐?!」
モールの混乱具合に機密情報局の完璧と思われた監視がガラガラと脆いガラスのように崩れてズブズブになっていく慌て様にイライラしてしまい、ヴィレッタは自ら現場へと直行するため学園を後にする。
……
…
「(『それっぽい情報で民衆の不安を煽ぎ、恐怖心を限界突破させる状況でパニックを起こす』……まさかジュリアスだった時の記憶を活用する日が来るとはな。 胸糞悪いが、効果的なのは認めよう。)」
パニックに陥ったモール内を慌てて逃げ惑う人々を冷静な思考で防波堤のように使い、ルルーシュは一種の『自己嫌悪』に似たものを感じながら、人ごみに紛れてモールを後にする。
「(よし、ここなら良いだろう。)」
地下水道を使ってルルーシュが移動したのは『万が一の為に』と、ゼロとしてディートハルトに依頼した隠れ家の一つだった。
「(これは……畳か? 落ち着く匂いだな。)」
余談でその隠れ家がどこか和風だったのはディートハルトが個人的に雇った咲世子の所為である。
ゼロ、ディートハルト、そして用意した咲世子のみが知るアジトの中でルルーシュはエルに手渡された手紙の封蝋を専用のレターオープナーを使って中身を拝見する。
「………………………………………………………………………………????」
今度はルルーシュがライラのように無数のハテナマークを頭上に浮かべることとなった。
…………
………
……
…
「あ、お疲れ様なのですギルギルマンさん。」
上記が部下たちに無理やり政庁に戻らされたギルフォードを滑走路で出向かえる第一の声である。
「フブ! ぎ、ギルギルマン……」
そしてそれを聞いたクロヴィスは吹き出して笑いをこらえる。
「……ライラ皇女殿下、その……『ギルギルマン』とは?」
「ギルギルマンさんはギルギルマンさんです!」
どや顔と胸を張るライラの後ろにとうとう笑いを堪えることが限界になったのか、クロヴィスは震えながら急いで(車椅子に付いたブースト機能を使って)そそくさと政庁の中へと逃げた退却する。
「いえ、その……胸を張られて言い直されても……」
ライラは『ギルバート・G・P・ギルフォード』から『ギル』を取っただけなのだが、きびきびしているギルフォードに『あだ名をつける』などコーネリアかダールトンぐらいしかいなかったので正直どう反応すれば迷っていた。
「(どうすれば良いのだ? 相手は子供とはいえ仮にも皇女殿下……笑い飛ばすには……こんな時のダールトンなら平然と笑って場をごまかしているのだろうな────)」
「────そういえばギルギルマンさんに質問です。」
「あ、はぁ……私に答えられればいいのですが────」
「────中華連邦の包囲網、なんだかガチガチ過ぎじゃないです?」
ライラから想像もしていなかった、意外な言葉に歩いていたギルフォードは固まった。
「あ、ギルギルマンさん止まったです────」
「────ああ、これはその……ライラ皇女殿下から兵法が出てくるとは意外だったもので……それにしてもその……“ガチガチ過ぎ”とは一体?────」
「────皆が近すぎて
ライラに言われてギルフォードはハッとする。
「(確かに『逃がすまい』と、徹底的に警察も総動員して物理的な包囲網を敷いた。 だがそれでは逆にナイトメアの強みである『機動力』を自ら封印するとは……私もまだまだという事か。) 感謝しますライラ皇女殿下。」
「あ、うん。 どういたしましてです?」
上記の小動物的なライラの様子を見て『あ、可愛い』と思ったブリタニアの兵士や文官は少なくなかったそうな。
「(ああああ、やっぱりライラは可愛すぎる~!!!)」
その様子を単眼鏡で見ていたクロヴィスもそのうちの一人であると記入する。
その夜、中華連邦の領事館を包囲していたブリタニア軍の配置が少々変わる間にアッシュフォード学園でも動きはあった。
こちらはブリタニア軍と違って水面下での動きだが。
………
……
…
オモテサンドウモールでのテロ騒動で警察にロロはミレイたちと共に事情聴取を受ける順番待ちになっていたが、その場に駆け付けたヴィレッタが色々と融通を聞かせて受ける順番を速めていた。
「(仲間、か……)」
ロロは帰り道に自分やミレイたちと共に学園へ戻るためのタクシーを呼んだりなど、世話をしたヴィレッタの言葉を思い出していた。
その時彼女が言いかけたのが『仲間』という単語である。
すぐに彼女は『生徒』に言い直したのだが、『仲間』という文字がロロの頭から離れなかった。
「(仲間なんて馬鹿馬鹿しい。 結局は体のいい呼び名だよ。)」
余談だが色々と気張っていた所為か(あるいは原作と違ってライラの護衛任務にも気を使ってか)、疲れていたヴィレッタは機密情報局の日報のまとめを彼に任せていた
「(大切なのは任務遂行だけ────)」
「────やぁロロ。」
ロロが地下拠点の指令室に入ると機密情報局の者たちではなく、
「俺────」
カチャ。
「────は別にお前をどうこうするつもりはない……と言ってもお前は信じないだろうな、ロロ?」
ルルーシュが喋っている途中で入り口近くのロロの姿が消え、ルルーシュは背後から構えられる拳銃の音に驚かずに平然と喋り続けた。
「驚かないんですね?」
「まぁ、な。」
ここでルルーシュは本来、驚いて部屋に仕掛けておいたカメラの映像などでロロのギアスの秘密に目星を付けながら『威圧』に似た
だが現在は『そのようなことをする必要はない』と判断したのか、平然としたままルルーシュは言葉を続けた。
「お前の今とバベルタワー時の行動を見ると、どうやらお前のギアスが止めるのは『時間』ではなく『体感』、あるいは『時の認識』と言ったところだろう。 俺では到底敵わない────」
「────それを知ったところで僕の任務……ゼロとしての記憶が戻ったルルーシュの処刑は変わりません。」
「そうだ、俺では到底お前に敵わない。 だがこのままでは、君には永遠に未来は訪れないぞ?」
「未来なんて────」
「────俺が言う『未来』とは時の流れで自然に訪れるモノではない。 『生きる希望』だ。 お前が任務を達成した先にお前を待っている未来は何だ? 何も変わらず、延々と言いなりになったままだ。」
ルルーシュはゆっくりと、手をあげたまま立ち上がってロロの方向を見る。
「明日、俺は処刑される筈の黒の騎士団を助ける────」
「────貴方にはここで死────」
「────それは『黒の騎士団』の為ではない。
「……ハッ。 何を言うかと思えば────」
「────これは新しい未来の為だ。 だから俺が明日、妙な動きやお前からすれば疑わしいと思ったら躊躇なく俺を殺しに来てもいいと思っている。」
「だから敢えて宣言したと? 貴方のメリットが無さすぎますね。」
「メリット? それこそ“何を言うかと思えば”だよ……
『兄弟』だからだよ、ロロ。
だから、お前には嘘はつかないよ。」
仏頂面をするロロにルルーシュが向ける表情は幾度となくナナリーに向けたものと大差ない、優しいモノだった。
(´・ω・`;)