小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第02話 燃える前の日本に島流し

 あれから更に数年後の今、『それがどうしてこうなった?』と俺は誰かに聞きたい。

 

「着いたぞ。 ここが、()()()世話をする家だ。」

 

 俺の()護衛役の黒服黒サングラスが放心する俺を車の中から引きずり出している間、もう一人の元護衛役が俺の全財産が詰め込んであるリュックをトランクから引きずり出す。

 

 目の前にはどう見ても、一昔前の日本ではどこにでもあるような民家が一件。

 

 俺が()()()()()として送られた家だ。

 

 俺は『面倒ごとから逃げて、貴族ライフを満喫してはブリタニア帝国崩壊後に隠居するために備え、ついでにそれとなく目立たない程度に活躍する!』と言ったな?

 

 あれはどうやら嘘のようだ。

 

 決意を新たにして数年、俺の父親が実は日本人の愛人を持っていて彼女との間に子供ができてしまい、出産後に愛人は死亡したとか。

 その際に、父親は自分の家に嫡男がいなかったことで愛人との子供を家で育てていた。

 

 だがようやく正妻であるハンセン夫人が妊娠し、純粋なハンセン家の子が生まれたことで混ざりものであるハーフはお払い箱だとさ。

 

 これでハンセン家は堂々と腕を振って、『純血の子供を持っている』とほかの貴族たちに宣言(アピール)できる。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 …………………………な、わけがない。

 

 うん。

 お察しの通り、そのハーフとはこの俺のことだ。

 つまり、俺は『混血』だったらしい。

 

 まぁ、これで母さん……いや、今となってはハンセン夫人(元母さん)が俺に一度も接触してこなかった理由が分かった。

 

 ついでになんでハンセン家ではほぼ軟禁状態だったのかも。

 乗馬とか外出する際に、大げさなほどに護衛がいたのも多分俺の監視も兼ねていたんだろう。

 

 最初はデビュタント(お披露目)前だからと思っていたが、新たな事実を聞けば辻褄があう。

 

 というわけで俺は急遽、ブリタニア本国からハンセン家が媚びを売ろうとした有力な遠縁の家に、『従者見習い』として極東の日本に島流し派遣された。

 

 後は保険の意味もあるかもしれない。

 元々ハンセン家は下級貴族らしいから、なるべく打てるカードは保ちたい理由はわかる。

 

 分かるんだが…………………………

 

 コン、コン。

 

 ガラガラガラ。

 

「はい? どなたでしょうか?」

 

 元護衛役……もういいや。

 

 監視役の一人が民家のドアにノックをすると、スライディングドアの向こう側からぼんやりとした目つきの女性が出てくる。

 

『というか、どこかで見たことあるぞ』とさっきから警報を鳴らす考えを俺はすぐに黙らせる。

 

「先日、連絡をしたハンセン家の使いです。」

 

「え────?」

「────こちらが『従者見習い』の者です。」

 

 女性が監視役にがっちりとホールドされている俺を見ると目を見開かせた。

 

「まぁ?! まだ子供じゃないですか────?!」

「────それは我々の知ったことではない。 連絡した通り、確かに送り届けましたよ?」

 

 バタン、バタン!

 ブロロロロォ~!

 

 まるで行動に『ここにこれ以上いたくない』という意を含めたように、監視役たちはさっさと俺の荷物を置いては車の中に戻り、すぐにその場から去っていく。

 

「………………えっと……ま、まずは中に入りましょうか?」

 

 女性はにっこりとした笑みを向け、ホコリまみれになった俺のリュックから汚れを払い落として中へと進む。

 

「お邪魔しマス。」

 

 うわ。

 前世から数年経っている今、日本語が少しぎごちなかった。

 完全にバラエティー番組とかで出てくるエセ外国人の口調だ。

 

 ただまぁ、懐かしい気持ちにはなるのだから雰囲気に流されたことは勘弁してくれ。

 

 できるだけ表札を見ないようにしながら、俺は家の中へとさっさと入る。

 

「長旅、疲れたでしょう? あまりおもてなしをできなくてごめんなさいね? 日本のお茶しかないのだけれど……」

 

「ダイジョブ。 日本のグリーンティー、オーケーです。」

 

 畳の匂いがお茶と混ざって、俺は安らぎが身体に染み渡るのを感じる……

 

『ザ・昭和』の名残の持った平成だぁ~。

 

「えっと……ハンセンくん、だっけ? お名前の方は、何と言うのかしら?」

 

Sven(スヴェン)、言いマス。 九歳、デス。」

 

「そう……」

 

 ギュ。

 

 どういうわけか、女性は俺の隣に移動しては優しく抱きしめた。

 

「そんなに気を張らなくていいのよ? 泣きたければ、いくらでも泣いてもいいのよ?」

 

 なるほど。

 この女性は俺のポーカーフェイスを『我慢している』と解釈したのか。

 

 まぁ精神年齢はともかく、九歳の子供でしかも一人で外国に『従者の練習をしておけバイビ~』だからな。

 

 ただこの浮かべている顔は来るべき未来に備えて、他人に俺の考えていることや心の中を悟らせない為の表情だ。

 つまりは平常通りなので、彼女が気にすることは無いのだが……

 

 今それを彼女に言って、変に勘繰られるのはごめんだ。

 メリットとデメリットが噛み合わない。

 

「私の子供たちの父親がブリタニアの貴族なのだけれど……私はただの主婦だからここにいる間は楽にしていいのよ? えっと……す、すぇ、すうぇ………………少し言いにくいから、“スバル”と呼んで良いかしら?」

 

「かまわなイ。」

 

「じゃあ、今日からは(スバル)ね! 苗字も……そうね、“半瀬(はんせ)”というのどうかしら?」

 

「それでイイ。」

 

「あとさっきも言いかけていたのだけれど、私にはね? 子供が二人いるの。」

 

 はい、()()()()()()

 

「一人は男の子で、スバルより少し年上。」

 

 はい。 それ()知っています。

 

「もう一人は女の子でね? ちょうどあなたと同い年なのよ!」

 

 ハイ、()()()()()()

 

 もう俺の心のHPはゼロです。

 

「だから、互いに仲良くなりやすいと思うの!」

 

 ゼロよ~~~~~~~。

 

「はい。 全力でサポートいたしまス。」

 

 お? そろそろなまりが解けて来たな。

 流石は俺(のハイスペックな身体)。

 

「えっと……同い年の友達として接してね、昴君?」

 

「はい。」

 

 女性は笑みを向けながらも、どこか哀れんだ顔を俺に向ける。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 ……うん。

 もう認めるとしよう。

 この目の前の人こそ────

 

『────ただいま~!』

『あれ? お兄ちゃんのともだちのくつ?』

『いや? 俺の知り合いにこんな高そうな靴を履きそうな奴はいない。』

 

 玄関の方から二人分の声がしてくる。

 噂をすればなんとやらだ。

 

「あらあら、丁度いいわ。 今から紹介するわね、昴君。」

 

 玄関から通じる通路から赤髪の少年と少女は居間へと入ってくる。

 

「あれ? 母さん? その子は誰だ?」

 

 少年は俺を見るなり?マークを頭上に浮かばせる。

 

「ふわぁ~! かみのけがしろい~! しらががいっぱいだ!」

 

 白髪と違うがなオイコラ。

 

「これは銀髪と言います。」

 

「しらがにしかみえない! へんなの!」

 

 ……………………明日から黒く染めるか。

 

「この二人が先ほど言っていた子供たち、()()()()()()()()()()よ。 ナオト、カレン? この子は半瀬(はんせ)(すばる)、貴方たちの遠縁の親戚になる子で、今日から私たちの家で面倒を見るわ。 って、あらいけない! 私ったら自分の自己紹介をするのを忘れていたわ! 私は紅月留美(るみ)よ!」

 

 そう。

 

 ここは『紅月家』だ。

 

 そしてこの目の前にいる兄妹こそ、後に日本を隷属化したブリタニア帝国に対してレジスタンス運動をするグループの中核を担う二人になるのだ。

 

 紅月カレンは実行員と言うだけで頭が痛くなるが、紅月ナオトはそのレジスタンスのリーダーを原作では務める存在だ。

 

 頭と胃が痛くなる、ダブルショックである。

 

 今まさに(内心では)頬に両手を当ててダブルショーック!

 

 ………………良し。

 

『面倒ごとから逃げて、貴族ライフを満喫してはブリタニア帝国崩壊後に隠居するために備え、ついでにそれとなく目立たない程度に活躍する!』

 と言っていたが……それから。

『極力面倒ごとを自分から遠ざけて、距離をとった従者ライフ&裏方仕事でブリタニア帝国の侵略時とその後に備える!』

 へと変更だ!

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 あれから俺はカレンたちとはすんなりと仲良くなった。

 

 友達として。

 

 ナオト……いや、ナオトさんは歳の割に落ち着いて大人びていた所為で精神年齢が近いからか、すぐに冗談を言い合えるような仲になった。

 

 “固い顔するなよ!”と言われているが、そもそも俺はこのポーカーフェイスを今更崩すことはしない。

 

 だから身内以外の前では愛想笑いをしているというのに、今度は時折彼にドン引きされる。

 

 どないせぇ言うねん。

 

 カレンはこの年からすでにやんちゃで、『花より団子』の性格だった。

 川を見れば釣りより泳ぐことを考えるし、クワガタ虫も素手で捕まえたり、ズボンだろうがスカートだろうが木登りをしたりで………………

 

 しかもナオトさんはナオトさんでそれに付き合うし……

 

 取り敢えず兄弟そろって、かなりのアウトドア&アクティブ派なのだ。

 

 それと余談にしたいのだが、留美さんの押しに負けた末にカレンの通う小学校に俺は編入した。

 

 留美さんには『別に通わなくてもいい』と言ったのだが、『子供時代は一度だけ! 青春を楽しんできなさい!』と言われて俺の反対は却下された。

 

「ほぉ? 君が半瀬くんという、おのこか。 噂はかねがね、ナオトから聞いているよ。」

 

 そして今、俺の前には『本当に数か月だけ歳が違うのか?!』とツッコミを入れたい、この歳ですでに美貌溢れる黒髪の少女が値踏みするような眼で俺を頭からつま先を見ていた。

 

「始めましてお嬢様、自分は半瀬(はんせ)(すばる)と言います。」

 

 俺のこの徹底した愛想笑い&人当たりの良い口と設定が憎い。

 

「それも年齢に似合わず作法の知識があるとな、感心ものだな。」

 

 …………どうしよう?

 思わず自己紹介をしてしまったが、問題はそこではない。 

 そこではないのだ。

 

 問題は目の前にいる美少女だ。

 

 ある日、ナオトさんが俺の教室に来てはこの子を連れて来た。

 

 その時に紹介された彼女の名は『毒島(ぶすじま)冴子(さえこ)』だそうだ。

 

 なんでやねん。

 

 俺の知っている『毒島冴子』と言えば、『HOTD(学園黙示録)』に出てくるキャラクターだぞ?

 

 世界が違うやんけ。

 

 彼女と会った瞬間、俺は以下の疑問を思い浮かべた。

『そもそもここは本当にコードギアスの世界なのだろうか?』と。

 

「??? どうした、半瀬くん?」

 

「お? いつもは人に興味なさそうな昴でも、毒島には見ほれるか? ん?」

 

 ナオトさんがニヤニヤしながら俺をからかう。

 

「いえ。 ただ“ナオトさんよりは腕が立つ”と思っていただけです。」

 

「んぐ……こいつ、こういう時は可愛くねぇな?!」

 

 話題を振ったのはアンタだよ、ナオトさん。

 

 実際、今の彼と俺が戦っても純粋な技術で言えば容易に俺が勝つだろう。

 

『俺が全力を出せば』、と言う前提付きだが。

 

 今はまだ原作前。 極力目立ちたくはない。

 原作開始前の時代で、俺が原作キャラを何らかの刺激を与えてしまってはどこで原作が崩れるのか分からなくなる。

 そして一旦崩れてしまえば、俺の持っている『原作知識』と言う圧倒的なアドバンテージはアテにならなくなる。

 

 数少ないカードはなるべくタイミングを見て切らなければならない。

 

 だからナオトさんや他の子供たちとはなるべく、()()()()で勝ち負けするように調整している。

 

 だから『ご褒美が欲しい』と思っていたが、流石に『毒島冴子』は予想外だ。

 

「ふむ? その言い方だと、ナオトに何度か勝利を収めている話は本当のようだな?」

 

 俺が悶々と考え込む(現実逃避している)間に毒島がニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「今日、君は学校後に予定は立ててあるのかな?」

 

 あれ? 

 何この流れ?

 なにぞ?

 

「確か無かったよな、昴?」

 

「いや、俺は────」

「────てか基本的におれやカレンに合わせているだろ? おれもカレンも、今日は毒島の所に行く予定だったからな? おれ等が行って、お前が行かないのはどうだろうな~?」

 

 ナオトさん、それ卑怯です。

 

 でも嫌な予感がするので断固拒否し(逃げ)ます。


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