小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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次話です!

お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです!

あとロイドが若干(?)暴走します。 ご了承くださいますようお願い申し上げます。 (汗

7/6/2022 10:13
誤字報告、誠にありがとうございます神薙改式さん!


第20話 連邦……帝国の白い悪魔(意味深)

「で、殿下……様子がおかしいです。」

 

 汗を掻くバトレー(ガマガエル)がふんぞり返っていたクロヴィスへと振り返る。

 

「ゲットーにいる筈のイレヴンが、報告より圧倒的に少ないようです。」

 

「それがどうした? 危険に敏感な臆病者たちが散っただけなのだろう?」

 

「そ、それがまるで、我々の壊滅作戦を予想していたかのような────」

「────ならばネズミ共が同胞を逃がしたのだろう、問題はない。 作戦を続行せよ。」

 

 

 余談だがスヴェンが過去、夜のゲットーへと出る毒島に頼んだのは以下の通りだった。

 

 “時間が余った時でいいからシンジュクゲットーの住人達を避難させる手筈をしてくれ。”

 

 これは勿論、来るべきシンジュク事変に備えての頼み。

 

 原作では沢山のゲットーの住人が老若男女問わずに一方的に虐殺される描写があったこと知っていた彼は毒ガス強奪作戦が行われる朝、即座に毒島に連絡を取った。

 

 そして毒島は躾をした奴隷者たちに連絡を送り、ゲットー内に住んでいる者たちの撤去避難を命じていた。

 

 それを知らないクロヴィスたちはそのままテロリストたちの殲滅を行おうとするが────

 

「────バ、バカな! 我が軍がテロリスト風情に?!」

 

 クロヴィス達は焦った。

 一方的に立場が180度変わったのだ。

 

 今まで優勢だったブリタニア軍が次々と撃破され、その手腕はまるで相手にこちらの情報が筒抜けであるような────

 

 『────こんにちは~!』

 

 G1ベースの作戦モニターに映ったのは場違いなまでに白衣を着ながらゆる~~~い口調と呑気そうな学生らしきもののドアップ顔。

 

「な、なんだ! 今は作戦中だぞロイド!」

 

 モニターに映っていたのは『ロイド・アスプルンド』。

 軽~~い態度と調子の外れたテンションで性格は印象的に『マッドサイエンティスト』が当てはまる彼は世界初の第七世代ナイトメアフレーム、作中でもぶっ壊れドチート性能と最先端の技術を誇る『ランスロット』の開発者だ。何気に色々な意味で『変人』ではあるが伯爵の爵位を持つ貴族でもある。

 

『いやねぇ? そろそろ特派の嚮導兵器の導入許可をクロヴィス殿下にお願いしようかと……ダメ? まだダメなの? もういいでしょ?』

 

「貴様! 殿下に向かって不敬であろう!」

 

ロイド。」

 

 そこで怒り狂いそうなバトレーと違い、冷静を装うクロヴィスがロイドの名を呼ぶ。

 

『あ、は~い?』

 

「勝てるか? 貴様の()()を使えば?」

 

『“ランスロット”とお呼びくださいよ、で・ん・か♪』

 

貴様────!

「────よい。 では出撃させろロイド。」

 

『いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!♪ セシル君、聞いたよね?! ね?! ね?!

 

『あの……通信切りますね、ロイドさん?』

 

『あっは♪ 忘れてた!♪』

 

 プツン。

 

 バトレー達が不安になるが、ものすごいスピードで突貫するランスロットが戦場へと出ると不利だったはずの戦況が次々とランスロット一機によって打破されていく。

 

「「「「「おおおお!!!」」」」」

 

「全く……いらん借りを兄上(シュナイゼル)に作ってしまったな……」

 

 


 

 

「クソ! 一体どうなっている?! 敵は本当に一機だけなのか?!」

 

 ルルーシュは荒れに荒れまくっていた。

 

 彼の練っていた戦略通りに、事は進んでいた。

 あと一息と言うところまで計画は着々と進んでいた。

 

 そう、過去形だ。

 なぜなら新たに導入された一機が戦場に現れてからその全てが覆されていったからだ。

 

 あらゆる戦略も作戦も、予備の万が一で練った伏兵もまるで『関係ない』とごり押しで突破した行動はルルーシュにとって屈辱でしかなかった。

 

「こんな! こんなバカげたことがあってたまるか! 一機だけの活躍で、たかが一機だけで俺の戦略が────ッ!」

 

 ルルーシュのサザーランドが身を潜んでいた廃ビルの会場に、今まで見たことが無い白いナイトメアフレームがスラッシュハーケンを使って登ってくるのを見た。

 

「貴様か! 俺の作戦を────ッ!」

 

 だが『登ってきた』とルルーシュが思った頃にはすでに敵は至近距離まで近づき、ルルーシュは防衛戦を余儀なく強いられる。

 

「(こいつは! こいつはイレギュラーだ!)」

 

 そのまま白いナイトメア────ランスロットはその余りある性能差でルルーシュのサザーランドを追い込んでいく。

 

「この動きに場所……こいつが指揮官か!」

 

 ランスロットに搭乗していたのはルルーシュの幼馴染で、名誉ブリタニア人である『枢木スザク』。

 

 そう。

 皮肉にも親友同士であるスザクとルルーシュは今、命を懸けた戦いに身を投じていた。

 

 スザクはシンジュク事変に巻き込まれて死んだと思ったルルーシュの為に。

 ルルーシュは、己の復讐のために。

 

 各々が目的のために動いていた。

 

「ッ?! (やられる?!)」

 

 ついに追い詰められたルルーシュを、カレンが不意打ちでランスロットに襲い掛かる。

 

「おい! 借りはこれで返したからな!」

 

 だが第七世代と第四世代のナイトメアフレームの差は一目瞭然。

 しかもカレン機に至っては既に限界以上に駆使したために本調子ではなかったことから彼女の脱出機能は数秒後に発動してしまい、カレンもその場を離脱した。

 

 だが意外な行動にランスロットが出たことで、ルルーシュは無事に逃げることができた。

 

「……はぁ?」

 

 その行動は、変人であるロイドでさえも気の抜けた声を出させる程。

 

「戦場で人助け~?」

 

 ランスロットはルルーシュを逃がす代わりに、逃げ遅れたと思われる人たちを崩壊するビルから助けていた。

 

「彼、変わっているねぇ~?」

 

 その場にいた整備士は『お前が言うな、ロイド・アスプルンド!』と同時にツッコミを入れたそうな。

 

 

 

 


 

 

「よし、次は────」

 

 スザクは次々とテロリストが奪ったと思われる識別信号を出していないサザーランドを撃墜していた。

 

 その姿はまさに『無双』そのものである。

 

 彼の乗っているランスロットは試作機であるものの、現在開発中の遠距離武器に耐えられるほどの機体強度と運動性、両腕と両腰に2基ずつ装備されている強化型スラッシュハーケン、そして腕部に搭載された『ブレイズルミナス』で実弾を防げる、何某ゲーム風に呼ぶ『光の盾』を持っている。

 

 この時点で未完成ながらも圧倒的に従来のナイトメアフレームをあらゆる面で凌駕しているのだからまさに『バケモノ』だ。

 

「これで!」

 

 ランスロットの腕に取り付けられたスラッシュハーケンの応用手刀で敵であるサザーランドの頭部を身体から切り落とすと相手の脱出装置が作動するのをスザクは見送り、胸部に内蔵されたファクトスフィアを展開する。

 

 ビィィィィィィ!

 

「上?!」

 

 ランスロットのアラームが鳴り、スザクは上を見ながら来る銃弾を躱す。

 

 彼が見たのは両手にアサルトライフルを装備したサザーランドが、ビルの中へと後退する後ろ姿。

 

「逃がすか!」

 

 ビィィィィィィ!

 

「罠?!」

 

 スザクはサザーランドの後を追い、崩れた壁の穴を通るとまたもアラームが鳴り響くと同時に彼はブレイズルミナスを展開して、ランスロットは作動したケイオス地雷から発射された散弾を防ぐ。

 

 ダダダダダダダダダダダダダダ!

 

 土煙の向こう側からランスロットを襲う銃弾を、スザクはブレイズルミナスを展開したまま前へと進んでいく。

 

 そして土煙の向こう側へと突き抜けると────

 

「────誰もいない?!」

 

 彼が見たのはアサルトライフルを固定した簡易的なトラップだった。

 

「(こんな短期間で罠を仕掛けるなんて……かなりの手練れだ!)」

 

 スザクはまた追おうにもアサルトライフルが設置された通路を進んでいくときらりと何か糸のようなものを見て全力でランドスピナーに急ブレーキをかける。

 

 彼が糸の先を見るとケイオス爆雷を使ったトラップだと気付く。

 

「……(まさか、こいつが指揮官だったのか?!)」

 

 スザクは今まで以上に、慎重にファクトスフィアを展開しながら行動へと移る。

 

「(さっきの罠、明らかに僕の乗っているこのランスロットじゃなければ二段目のトラップでやられていた。 何者なんだ? 戦略でも、操縦技術でも優れているという事は部隊長か何かで、さっき交戦したのは彼の観測機か何かか? それともまさか……)」

 

 指揮官=有能な戦士か罠好きと結び付けて。

 

 

 


 

 「(やばいヤバいヤバいヤバいヤバいやばいやばいやばい。)」

 

 スヴェンは体中と内心でも嫌な汗を掻きながら移動し、そこら中に倒れていたブリタニア軍とレジスタンスの機体から武装を調達しながらありとあらゆる時間稼ぎ()を張っていった。

 

 スザクが追っていたサザーランドとは言うまでもなく()()()()()スヴェン機だった。

 

 本当はランスロットに撃墜されたふりをして、襲われる部隊から直前にIFFをカットして離脱し、ランスロットの検索範囲ギリギリで原作の流れになるかどうか潜んでいたのだが。

 

「(どうしようあれ本当にナイトメアフレームか? 原作で見たけどマジ激ヤバ以上の運動性でケイオス爆雷とアサルトライフルにまたケイオス爆雷の三段構えの罠を全部突破しやがった理不尽の塊だロイドもロイドだがランスロットを使いこなせるスザクも意味わからないしブレイズルミナスなんて攻撃無効化の術なんてどうやって破れる? ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………無理。 無理無理無理無理無理無理無理無理むりむりむりむりむり無理無理無理無理無理むーり。)」

 

 スヴェンは『無理』という言葉を内心で連打しながらも動くことを止めなかった。

 

 だが────

 

 ────ドォン!

 

 きゃあああああああああ?! でででででででででででで出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 未だかつてない危機感を感じながらスヴェンはB級ホラー映画で出てくるヒロインのような叫びをあげながら迫ってくる死神の鎌(ランスロット)にサザーランドを180度ターンさせて器用にジグザグに逆走しながらアサルトライフル二丁で応戦する。

 

 それはまさに必死の『敵前大逆走』だった。

 

「クゥ!」

 

 そんなスヴェンを追うスザクはルルーシュを庇った時、脇に受けた銃弾の傷がジクジクと痛み出すのを気力で抑えながら無理に体を酷使していた。

 

 いや、“せざるを得なかった”といったほうが正解だろう。

 

 スザクが『ここぞ!』と言うときに放つ攻撃が上手く当たらなかったことで、彼はランスロットと言えども()()無理をした機動戦を行っていた。

 

「(この操縦技術! まさかテロリストにも熟練のパイロットがいるのか?!)」

 

 ちなみにスヴェンと言えば────

 

 「(♪くぇ×¥●rちゅい&%おp~~~~~~~~!!!)」

 

 ────言語化できないほど猛烈にテンパっていた。

 

 よって彼の行う行動一つ一つは必死に『生き残る』ことに特化させた全身全霊を集中し、無我夢中で行ったモノ。

 

 どれほど必死だったかというと、さっきから無意識に『“時間”に意味はない(Time Has No Meaning)』をランスロットの攻撃が当たる直前に使って()()()()()()()()()ようにちょくちょく発動させて己の機体から逸れるようごくわずかに当たり位置を調整させるほど。

 

 いわゆる戦車での『避弾経始(ひだんけいし)』の応用である。

 

 さっきスヴェンは『乱発したくない』と言っていたが、今の危機満載の状況下でそんな悠長なことは言っていられない。

 そして彼は確かに『“時間”に意味はない(Time Has No Meaning)』を何度も発動させてはいたが一つ一つが(体感で)一秒未満だったことも幸いしていた。

 

 故に、『初期状態での一秒』を超えて彼が懸念している副作用は見当たらなかった。

 もしくは、ただ単に命がけの鬼ごっこに全神経を集中していた故にそれさえも考えていなかったか。

 

 このせいで、スザクがさらにムキ(本気)になっていたのは言うまでもないが。

 

 そしてやっとサザーランドの両手を破壊できたと思った時、スザクはまたも目を見開くこととなる。

 

「なに?!」

 

 次にスザクが驚いたのは逆走するサザーランドがまるで予測していたかのように、今度はスラッシュハーケンを使って()()()()()()()を空中移動し始めたことだけでなく、左右のスラッシュハーケンの巻き取り速度さえも利用して従来では出せない加速をしていたことだ。

 

 ビィィィ!

 

「な?! え、エナジーが!」

 

 その間にもサザーランドはひっきりなしにアサルトライフルとケイオス爆雷を互いに使って攻撃の一手をやめなかった。

 

 おかげでランスロットは必要以上に回避運動とブレイズルミナスを原作以上に使っていた。

 

 ランスロットは確かにあらゆる面で厄介な存在だが、試作機とロイドのロマンを詰めた機体故にエネルギー消費が激しく、稼働時間が極端に短かった。

 

 一応、スヴェンはランスロット対策にそれを視野に入れたあらゆる時間稼ぎパターンを想定していたが……

 

「(ヒィィィィィィィィィィィ! やっぱり無理だぁぁぁぁぁアハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! そうだ! これは夢だ! 夢だぁぁアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァァァ!)」

 

 流石に今の彼にはそこまで考える余裕はなかったし、今スラッシュハーケンを使った行動も何某漫画で見た立体機動装置を使った動きをがむしゃらに模していたに過ぎない。

 

 ただし、ここは巨人がいる世界ではなく『コードギアス』。

 

「な?! 僕のランスロット並みの動きを……たかが量産機であるサザーランドがしているだとああああああぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 よって、スヴェンのした行動はランスロットを経由してモニターしていたロイドに奇怪な声を出させていた。

 

 「セシル君! スザク君に敵のパイロットの捕獲命令を出して! 今すぐに出して!」

 

「え? で、でも────」

「────出して出して出して出して出して出してぇぇぇぇぇぇ!!! ハァ、ハァアハァァァァァ!!! 欲しい! 欲しいィぃぃよォォォォォ!!! 美味しそうなパーツが欲しいぃィィィィぃぃぃぃぃヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!

 

 未だかつてない程興奮しながら息を荒くし、目を皿にしてはだけさした白衣を今にでも脱ぎ捨てる勢いのまま画面を舐めそうになるロイドに誰もがドン引きした。




ショックと好奇心とその他の感情が混ざって変な方向性にねじ曲がった故の暴走です。 (汗汗汗汗汗汗汗

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