楽しんで頂ければ幸いです!
『行政特区日本を再建したい。』
エリア11の総督となったナナリーのアドリブによるこの宣言は以前のユーフェミアが文化祭で宣言した時と同等の────否。 以前の宣言から始まった行政特区エリアの富士山付近で起こった『イレヴン虐殺事件』があったからこそより強い衝撃が生じた。
『口にするだけでもはばかられるモノを』とブリタニアの貴族たちは恐れを抱き、
『ブリタニアの皇族が“日本人”って口にした?』と富士山の周辺に住み着いた旧日本人たちはつぶやき、
『また騙して今度こそ根絶やしにするつもりか?』と租界にひっそりと住んでいた名誉ブリタニア人たちは皮肉めいたコメントを内心で思う。
そんな様々な思惑が蠢くエリア11のトウキョウ租界にある政庁は(またも)ハチの巣をつついたような騒ぎだった。
「まさか特区日本を君が言いだすなんて、驚いたよナナリー。」
「あの、ローマイヤさんは?」
目が不自由な代わりに他の五感が鋭いナナリーは、自分の行政特区宣言で走るどよめきの中で何人か倒れた人の中で補佐のローマイヤもその一人だったことを落ちるときの音の重さと方向で目星をつけていた。
「あー、医者の見立てだと貧血だそうだよ?」
スザクは一瞬先日の宣言を聞き、顔色を青くさせたまま気を失ったローマイヤを思い出して目を泳がせた。
「まぁ……良くなると良いのですが。 (私の所為なのに……スザクさんは変わりませんね。)」
ちなみに新大陸でナナリーの教育係を務めていたローマイヤはナンバーズに対する差別や嫌悪意識を隠そうともしなかった上に、『自分より格下』と思う相手には高圧的な態度を隠そうともしなかった。
その対象にはラウンズであるスザク(の話題)もナナリーも入っていた。
「(それなのに何かで妨害をしたり、何かすると思ったのにここ最近はこちらの指示に小言を挟む事なく従っていますし……むしろ、
「────ナナリー?」
「(あらいけない。 難しい顔をしていた。) なんでしょう、スザクさん?」
「(このタイミングでの行政特区宣言……まさか?) ナナリー、君は……ユフィの事に関して
「私はユフィ姉様がやろうとしたことが間違っているとは思えません。 ただ『あの時は
「……そうだね。 (確かに、アレは悲しかった。 だからこそ、今度こそは……)」
スザクは思わず、ユーフェミアからもらった騎士の証が入れてある胸ポケットに手を添える。
「(そういえば、スヴェンさんも時々具合が悪くなって薬を服用していましたね?)」
ナナリーは時々スヴェンから薬が放つ特有の匂いがしたことをふと思い出し、この後同じ薬を取り寄せてローマイヤに手渡すのだが……
彼女は知らない。
ローマイヤと違ってナナリーがナンバーズに友好的であることとつい先日、どこからか漏れたローマイヤの(表や裏事情を含めた)個人情報が『プルートーン』と自己紹介を一方的にしてきた謎の人物によってさらけ出されて脅され、今度は数々の薬を渡しながら愛想笑いを浮かべたナナリーの行動がローマイヤの胃痛を加速させたことを。
とはいえ余りにも調子が悪くなり半ばヤケクソ気味に渡された薬を服用したローマイヤは元気になり、ナナリーはホッとしたそうな。
そのホッとするナナリーの様子も、ローマイヤからすれば更にプレッシャーを感じさせるものだったが。
…………
………
……
…
「ハッ! あの新しい総督もよく言うぜ! あれじゃあ『虐殺皇女ユーフェミア』と全く同じじゃねぇか!」
「少なくとも、現状の日本で生きていけるような日本人は誰も参加しないだろうな……」
ヨコスカ港区でタンカーとして偽装されている黒の騎士団の潜水艦内で玉城の声が響き、前回の行政特区を扇が思い浮かべる。
例え主催者が目も足も不自由な少女と言えど、『ブリタニアの皇女が主催した一度目の行政特区で日本人の大量虐殺が起こった』という事例がある限り、よっぽど後がない(あるいは余裕がない)者たち以外は集まらないことは容易に想像できていた。
「まぁ……あの時、藤堂さんが掛け声をかけていなければもっと死んでいたよな。」
「そうだな……」
「……」
扇たちは背後にあるテーブルへ────より詳しくするとテーブルのそばの椅子に座りながら腕を組み、難しそうな顔で何かを考えている様子の藤堂だった。
「(スバル君が言ったから、黒の騎士団に身を置いているがよもや行政特区でゼロの指示を待たずして突貫したことで作戦が失敗した今の状況は予想していたより悪くはない……)」
行政特区の大量虐殺に、いち早く異変に気付いて
現に、ブラックリベリオンや総督がカラレスに変わっても数々の協力者や裏ルートで入団希望者や補給物資は絶えずに来るほど。
「(それによもやあの頑固な冴子を傘下に付けるだけでなく、かなり聡明なEUの女性もつくとは……それに桐原殿もどうやら何か考えがある様子……さて、ゼロは如何にして今度の状況を切り抜ける?)」
「なぁ扇? ゼロからの連絡は?」
「……まだない。 何で聞くんだ?」
「そりゃあ……今回の行政特区も何かあるだろ?! だったら黒の騎士団がまた殴り込みを────!」
「────落ち着け玉城。 『殴りこむ』って言っても、この間の作戦で手持ちの戦力はナイトメアもヘリも含めてかなり低下しているんだ────」
「────だったらこの間の奴らに頼めばいいじゃねぇか!」
「“この間の”?」
「ほら、あのオッパイがデカくて髪の毛がキラキラしていた奴とか!」
「ああ、桐原さんの孫の?」
「え? 俺が言っていたのは金髪の方だぞ?」
「(………………思わず口を開けていなくて良かった。)」
南は扇たちのやり取りに参加しなかったことにホッと胸をなでおろしたそうな。
「でもあいつら、いつの間にか消えているんだよなぁ~。」
「ハァァァァ?! “いつの間にか”って、どう言う意味だ?!」
「相変わらずお前は騒がしいな、ヒゲ男────」
「────お前に言われたきゃねぇよ、自称ゼロの愛人気取り!」
「“自称”? お前が勝手に付けたあだ名だろ、このドアホが。」
「ド、ドアホ────?!」
「────って、C.C.はゼロのいる場所は知らないのか────?」
「────扇────!」
「────必要なこと以外喋らないからなゼロは。 直に連絡を寄こす筈だ。」
「……なぁ扇? もしかしてゼロ、この間の作戦が失敗したのがショックになったんじゃないか?」
「あのゼロがか? ……想像しにくいが、正直どうなんだろうな。」
「あら、それはないと思いますわよ?」
「うお?!」
「か、神楽耶さま?!」
そんな場所に以前の様な重苦しい正装とは違う、軽そうなヒラヒラミニスカ巫女装束っぽい服装の神楽耶が顔を開いていたドアからひょっこりと顔を出して部屋の中にいた(藤堂以外の)者たちがビックリする。
「ど、どうしてここに?! 中華連邦にいた筈では?!」
「ゼロさまに会いに来たのです! 信じられます? 新妻の私に文の一つも送ってこないと思えば、今度は何事もなかったように活躍しているんですよ?」
「「「(『新妻』って。)」」」
キョロキョロと部屋の中の様子を見る自称ゼロの新妻である神楽耶を扇たちは内心でツッコミを入れ、藤堂は彼女の言葉によりとあることを思い浮かべた。
「(もしや桐原殿は冴子をスバル君の伴侶に? あり得る。 彼女に初めて敗北を実感させた上に、見事あのお転婆を傘下に付けている。) ……………………フッ。」
「「「(もしかして藤堂さんは『神楽耶がゼロの新妻』って認めている?!)」」」
藤堂の意味深い『フッ』に扇たちは、彼の真意を知らずに自己完結でショックを受けた。
「それとC.C.さん? 私がいない間ゼロさまのお世話をしていたと聞きましたわよ? 礼を言いますね?」
「……そうか。」
「???」
何時もは高飛車にマウントを取ろうとするC.C.が何とも煮え切らない返事をしたことに神楽耶はハテナマークを浮かべる。
「あ、そう言えばカレンさんは?」
「……そういや見ていないな? 扇は知っているか────?」
「────いや、俺はてっきり南とかに────」
「────俺は何も聞いていないぞ?」
「え。」
「「「……………………」」」
扇、南、吉田、玉城の四人は藤堂を見る。
「私も知らんな。」
「「「………………………………………………」」」
「ま、いざとなったらこの俺様が紅蓮に────!」
「────冗談は撃墜されてから言え────」
「────うるせぇよ!」
「(ルルーシュ……お前の『生きる目的』であり、当初ゼロや黒の騎士団の『存在意義』であったナナリーが相手になった今、どう出る?)」
…………
………
……
…
次の日、アッシュフォード学園のグラウンドには数台のバスが待機しており高等部の3年生たちは今か今かと待っていた。
「……ルル、遅いね。」
「電話もつながらないし、アイツは何やってんだか……そういやスヴェンもまだだな?」
「へ?!」
「あれ? 会長は知らなかった? さっきヴィレッタ先生が俺に聞いて来たからさ。」
「先生が……」
ミレイは視線を、引率者の一人であるヴィレッタへと向ける。
「(リヴァルも知らない。 ルルーシュとロロの行方が分からないとなると、黒の騎士団絡みなのはほぼ確実だが……)」
「スヴェン先輩、遅いですねー。」
「う~ん、ライブラは何か聞いていない?」
「ナイナイです、マーヤ先輩!」
「(そういえば今回の修学旅行はこの二人が企画していたな……良し。) マーヤにライブラ、少し急だが二人に頼みがある────」
高等部を見送りに来た中等部たちの中にいたライラはいつものようにぴったりとマーヤにくっ付いている様子に、ヴィレッタは声をかけた。
……
…
トウキョウ租界内の、元シンジュクゲットーであった新宿再開発地区へとルルーシュは気が付けば足を運んでいた。
熱が収まり、やっとゼロとしての行動を再開できると思いきや今度は総督としてナナリーが『行政特区の再建』の宣言があったことで、『ナナリーの為と思っていた今までの行動がまるで無駄に終わる』と考えてしまった彼の脳は物理的に揺すぶられたかのような感覚に陥っていた。
『もうこのまま消えてしまいたい』と彼が思うほどなショックを、そして聡明すぎる故の精神的『負のスパイラル状態』になっていた。
「やっと来たか。」
そんなルルーシュの耳に聞き慣れた声が届くとようやくボーっとしていた思考が驚きから再起動する。
「………………………………スヴェン?」
まるで自分を待ちわびていたかのような言葉遣いと見た目(弁当箱と瓶入りのコーヒー牛乳)にルルーシュはハテナマークを浮かべた。
「(まて、今こいつは何を言った? “やっと来たか”、だと? それに今日は修学旅行の日だという事は知っている筈だ。 なぜここに?)」
「座らないのか?」
「(……もう、どうでもいいか。)」
ルルーシュがスヴェンの隣に座ると、スヴェンが紙袋を手渡してくる。
「……なんだこれは?」
「朝食。」
「見ればわかる。 俺が聞きたいのは────」
────きゅるる。
ルルーシュは今更になって昨日の朝、学園のクラブハウスから出かけてから何も口にしていないことに気付いたのか自分の空腹感が急に襲い、スヴェンに渡された紙袋を開けて中身を取り出す。
「なんだこれは?」
「天丼セット。 天ぷらの丼に────」
「────そういう意味で俺は────!」
「────ハラ、減っていないのか?。」
ルルーシュはいそいそと静かに食べていき、瓶に入ったコーヒー牛乳を飲む。
「なんだこれは?」
「カフェモカ。」
「……」
「ココアが入っているコーヒーだ。 チョコの入ったベルガモット風味のアールグレイにしたかったが、紅茶は時間が経つとマズくなる。」
「……」
淡々と受け答えをするスヴェンに一々リアクションを起こすことをルルーシュは止めてただただ食事を終わらせると、特に言葉がないまま時間が過ぎていく。
「……静かだな。 とても看板に書いてある再開発地区とは思えん。」
「『再開発』という名分のもとに、住民を追放しただけだからな。」
「そうか。」
「「……」」
またも気まずい静かな時間がただ過ぎ去っていき、ルルーシュは耐えられなかったのか口を開ける。
「……聞かないのか?」
「聞いて欲しいのか?」
「……そう言えばお前、皇帝に記憶を書き換えられていないのか?」
「対策はしていたからな。」
「例の、コンタクトレンズか。」
「ああ。」
「そうか……聞いていいか?」
「なんだ。」
「今日、修学旅行だろ? お前は行かないのか?」
「お前は?」
「質問に質問で答えるな。」
「答えて欲しいのか?」
「……わからん。」
「わからないのならば、俺がここにいても何ら問題は────」
「────違う。 俺が“わからない”と言ったのは、“お前がここまでする理由がわからない”という意味だ! それだけでない! なぜ────?!」
「────なんだ、そんなことか────」
「────“そんなこと”……だと────?」
「────『友人』だと思っていたのは、俺の方だけだったか。」
「ッ。」
ルルーシュはギョッと目を見開き、自分の言い方やさっきまで取っていたそっけない態度に慌てだす。
「い、いや。 『友人』というだけで、そこまで────いやそれも違うが! 俺はそう言う意味で言ったつもりでは────!」
「────別にそう思われても、俺がやることは変わらない。」
「……は?」
「俺は
「────約束?」
「“お前
「なんだそれは?」
「だから“お前たちの助けになる”という約束をしたと言っている。 人は誰でも、一度は誰かに寄り────」
「────わからない、スヴェンが……」
ルルーシュは焦りからか、普段は見せない狼狽えるかのような表情を浮かべて考えるよりも先に問いを投げかけるとスヴェンは自分の持っていたコーヒー牛乳を飲み干す。
「お前の言動の行先が!
「周りの皆が笑顔でいれればそれでいい。 前にも言った筈だ。」
「・ ・ ・ ・ ・ ・ は?」
まるで当たり前のように平然と答えながら空になった瓶を単眼鏡のように手に取って中を見るスヴェンを、ルルーシュは明らかに信じられない様な顔でまじまじと見る。
「(こいつ……本気か? え? あれはただの、その場の言い訳とかではなかった? 本気だったのか? いやそもそもそれ以前に、そんなことがこいつの行動原理となりえるのか?!)」
ルルーシュは幾度となく、脳内で並列思考を使って様々なアプローチで検索や憶測をする。
だが自ずとそれらの全てが行く先は一つだけ────否、
「(いや、でもそれは……だったらこいつがここにいたのは……俺のためだというのか? そんな馬鹿な! 俺自身、ここに来ることを全く予想せずにただ歩きまわっていた! 『全ての不可能を除外して最後に残ったものが如何に奇妙なことであってもそれが真実となる』とは言うが────!)」
「────なぁ、ルルーシュ?」
「な、なんだ?」
「今更『ゼロが居なくなった』としても、
「は?」
「ガラスは透明で人の視線を妨げず、気付かれ難い。 人の何気ない行動と同じだ。 世間の話題や
「(だが俺は、ナナリーの為にゼロや黒の騎士団を……そんな彼女が、俺たちを……)」
「『ゼロが象徴』という事を利用すれば、どうにかならないか?」
「む、無理だ。 エリア11の総督となった彼女は、黒の騎士団の大多数を埋める旧日本人の悲願である『日本奪還』の妨害となる……なって、しまった────」
「────どうかな。」
スヴェンはそれだけ言い残し、立ち上がっては歩き出す。
「お、おい!」
ルルーシュが呼びかけてもスヴェンはただ歩き続け、次第に見えなくなる。
「(一体どういう……待てよ?)」
ルルーシュは空腹が満たされるだけでなく、スヴェンとの会話(?)を思い出しながら思考を巡らせる。
「(もしや……いや、これならば無血かつ穏便に────)」
……
…
「なぁレド?」
「なんだシュネー?」
トウキョウ租界の政庁でスザクのコノエナイツは先日ナナリー総督の護衛している艦隊とは別にあった、アラスカ艦隊をフロートユニットを搭載したサザーランドカスタムたちで援護に向かったのだが多勢に無勢で、結局はカールレオンやログレス級の乗員たちの救援活動へと作戦を変えた。
「何故先日、ブリタニアの救助より黒の騎士団の殲滅を優先したんだ?」
否、正確には
シュネーはスナイパーライフルのスコープ越しにアラスカ艦隊の情勢が既に不利だったことを知りレドに伝えた瞬間、レドは躊躇なく艦ごと黒の騎士団を落とそうと動いた。
「……」
「レド────」
「────じゃあシュネーはブリタニアの新型艦を、黒の騎士団に鹵獲されてもいいと────?」
「────それよりも人命が大事だろ?!」
「……その鹵獲された新型艦で、更にお前の言う人命が危険になるんだぞ?」
「それはあくまで
「────新しい技術が広がるにつれて戦局と巻き込まれる度合いが広がることは、歴史で何度も証明されている事実だ。 現に取り締まりが行き渡っていないせいで反ブリタニア勢力にもKMFが行き渡ったために世界各地の紛争は泥沼化し、ラウンズを割かなければならないほどだ。」
「だからと言って、救える人命をそう簡単に割り切れる物じゃない。」
「……そんなことを気にせずとも、お前は立派に職務を全うしているよ。」
「そう言うレドは、周りを見ずにどんどんと突き進むから冷や冷やする。」
「背中は
「茶化すなよ、僕の
「“するのは良いが”?」
「こう、なんというか……レドは最近
「……」
「レドがあまり自分の事を話したくないのは分かるし、僕やスザクさんの事を気にしていない様子は構わないが……僕やスザクさんにとってもレドは大切な仲間と思っているし、失いたくない。」
「……友情ごっこは間に合っている。」
「お前……すぐそうやってはぐらかす。 こっちは真面目に言っているのだぞ?」
「生憎オレの
「はいはい……」
「……………………………………ありがとう。」
「ん? 何か言ったかレド?」
「“威嚇する猫のように枢木卿の事を警戒していたシュネーはどこ行った”と言ったんだ。」
「お前なぁ……せめてガードマンとかに例えればいいのに。」
「はいはい。 (……シュネー、オレは君の思っている様な奴じゃない。 特に『
……
…
「“近衛騎士団を持ちたい”?」
新大陸のニューロンドンでシュナイゼルは珍しく意外そうな表情を浮かべながら通信先相手の言った言葉をオウム返ししていた。
『ええ、ダメでしょうか?』
「カリーヌからの通信なんて珍しい上に、今まで軍の予算を押さえようとしていた君が騎士団を持ちたいなんてね。」
シュナイゼルのニッコリとした笑顔にカリーヌは内心、少々気まずそうになる。
今まではシュナイゼルからブリタニアの予算や経済関係などの通信はあっても、逆にカリーヌからの通信は片手で数えられるほどしかない。
そしてそのどれもが『通信で報告しなければいけない事案』ばかりである。
「……」
『シュナイゼルお兄様?』
何時もは即答するシュナイゼルが顎に手を添えて何か考えている様な仕草にカリーヌは内心ヒヤっとしてしまう。
「……そうだね。 財務長官たちと……そうだね、
『では、そのようにします。 ありがとうございます、シュナイゼルお兄様。』
プツン。
「カノン?」
カリーヌとの通信が切れると今度はカノンとの通信にシュナイゼルは繋げる。
『なんでしょう、殿下?』
「例の“耳”から何か進展はあったかい?」
『そうね、“枢木卿がアッシュフォード学園に学生として復学した”と。』
「(アッシュフォード学園……ロイドの婚約者がいる学園だったか。)」
『それと“機密情報局との連絡も密にしている”とも来ていたわ。』
「(皇帝直轄の諜報部局と? ……なるほど。) カノン、今度視察に出かけないかい?」
『はい?』
「そうだね、テキサス辺りが良いかな?」
突拍子もない事にカノンは生返事を思わず上げてしまい、シュナイゼルは返事をそのまま受けて話を進めた。
…………
………
……
…
上記のルルーシュ、そしてスヴェンがいた場所から少し距離の空いた物陰にブリタニア風の私服ドレス姿になり身を潜め、目をウルウルにさせつつ口を両手で覆って声を押し殺しながら走り去る様子のカレンがいた。
「(『約束を反故にするつもりはない』って……スバル……アンタ本当にあの時の……
だったら私の……