小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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7/7/2022 7:51
誤字報告、誠にありがとうございますbxs06514さん!


第21話 変わったことに戸惑う気持ちより痛い

「このまま君を連行する! 死にたくなければ、すぐにハッチを開けて投降しろ!」

 

 ようやくスヴェン機がスラッシュハーケンのワイヤーを切ったランスロットに追い込まれていた。

 

 「(ヒィィィィィィィィィィィィィ! このままじゃブリタニアというかロイドのモルモットにぃぃぃぃぃぃ?! 万事休すぅぅぅぅぅぅぅ?!)」

 

 スヴェンの機体にはありとあらゆるアラームが鳴っており、モニター画面にもヒビが無数に刻まれ、頑丈であるはずの無線機もいつの間にか強力なガムテープ固定から外れて壊れていた様子はいかにどれだけ彼の機体が限界を超えていたのかを物語らせていた。

 

(表情を変えずに)顔色を悪くしたのは何もスヴェンだけではなかった。

 

「(帰還できるほどのエナジーがあるかどうか……でも、何とか間に合ってよかった……頼むから投降してくれ!)」

 

 ランスロットも殆ど無傷ではあったが、エナジー残量が心許無かったのだ。

 

 そこに、スヴェンにとっては天啓にも似た言葉が辺りに鳴り響く。

 

『全軍に告ぐ! 直ちに停戦せよ! エリア11総督にして第三皇子、クロヴィス・ラ・ブリタニアの名の下に命じる! 建造物などに対する破壊活動もやめよ! 負傷者はブリタニア人、イレヴンに関わらず救助せよ! これ以上、いかなる作戦も行動も私は許可しない!』

 

 クロヴィスが()()()全軍に作戦中止(不許可)を宣言したのだ。

 

「やったー! セェェェェェェフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 ありがとうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 

 ほんにありがたやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 

 もう心の中で“女みたいな名前だな”なんて思わないよカミーユぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!

 

 

 スヴェンは作品も世界も何もかも全然違うことを口にしながら今にでも“アイキャンフライ!”を実行する気分のまま、すべてのアラームが鳴るボロボロの()()()()サザーランドをさらに酷使して、棒立ちしたランスロットから離れて機体が完全に崩れる前に脱出装置を発動させては離脱する。

 

 何故ランスロットが棒立ちしていたかと言うと────

 

「────あの。 えっと、ロイドさん? どうしましょうか────?」

 『────嫌だぁぁぁぁぁ!!!!』

 

「……へ?」

 

『ロイドさん、落ち着いて────!』

 『────僕の! 僕のパーツが逃げていくよぉぉぉぉぉん!!! あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 『もう! ロイドさん────!』

 『────スザク君! 伯爵家当主であるロイド・アスプルンドが君に命ずる! 何が何でも入手せよ────!!!』

 『────ロイドさん? 節度というものを教えて差し上げましょうか?』

 

 『ア、ハイ。』

 

 通信越しに聞いていたスザクでさえ寒気を感じさせる冷たいその一言で、暴走していたロイドが一気に畏まる。

 

『そうですか。 教えてほしいですか♪』

 

『え?! ちょっと待ってセシル君! セシルさん?! じゃなくてセシル様────あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!?!?!?!

 

 ブツン。

 

「…………………………………………」

 

 そして衝撃を受けたスザクは決して声の持ち主であるセシルを何が何でも絶対に怒らせないよう、肝に銘じたそうな。

 

「それにしてもあのパイロット……危険すぎる。 もしあれがグロースターか、もう少しでも僕がミスを犯していたら……精進しないと!」

 

 尚もしこれをスヴェンが聞いていたらスライディング土下座を決めながら『偶発的な事故が事故に重なった億に一にあるかどうかの機転でしたモノですもう勘弁してくださいましもう本当に無理ですお願いします』と全力で媚びていただろう。

 

 

 


 

 

 あれから一晩経った今でも、スヴェンはほぼ寝たきり状態だった。

 

ぐおぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

 俺、疲れたよパトラッシュ……

 

「うぎぎぎぎぃぃ……」

 

 俺は今、シュタットフェルト家の自室でベッドに横たわりながら我慢したうめき声を出して近くのスポドリ入り水筒を飲み干す。

 

 クロヴィスの戦闘中止命令で助かった俺は、あの後すぐに奪取した()()()()()()()()()を隠してから屋敷に戻り、そのままベッドに倒れこむように身を投げて爆睡した。

 

 これも生き残るための布石だ、自室の中に非常食や荷造りしたリュックのように。

 それに、コードギアスの世界でナイトメアを所持しているかどうかで生存率がガラリと変わるからな。

 

 だが今、対ランスロット戦で身体を酷使した反動で体中のあらゆる筋肉と腱がかつてない程悲鳴を上げていた。

 

 と言うか筋肉があったなんて知らなかった場所も痛い。

 今まで筋肉痛はあっても一晩経てばすぐに回復したのに……

 

 これが“若さゆえの過ち”って奴か?

 

 ちなみにいつの間にか目を開けたらフルーツの盛り合わせ(切り分けられたリンゴがウサギ型)がベッドスタンドに置かれていたので多分、寝ている間に留美さんが様子を見に来たのだろう。

 

 本当に気遣いがありがたい。

 

 というわけでシャキシャキシャキシャキシャキシャキ~。

 

 ごっそさんでした。

 

 あとカレンと同じ屋敷にいるというのに上手く動けない状態だから携帯で隠語ありのやり取りを軽くしたが、無事に扇さんたちも原作通りに生き残ったようだ。

 

 玉城も。

 

 俺としては原作通りで結果オーライで満足できる筈なんだが……一つだけ気になることがあった。

 

 未だに夢を見ている気分で、寝たきりのまま腕だけを使ってパソコンを開き、ネットから貴族使用人用の裏サイトにアクセスする。

 

 書かれているものは殆どがガセネタか噂に基づいているものだが意外と使える。

 

 その中でも、俺はとあるスレッドのタイトルを見る。

 

『神聖ブリタニア帝国第三皇子、クロヴィス・ラ・ブリタニアが凶弾にて()()()?!』

 

 ……これ、多分だけど要するに『クロヴィスが撃たれました~!』って書いてあるんだよな? 

『クロヴィスが死にました~!』ではなくて?

 

 原作でクロヴィスはギアスを使い、接近したルルーシュによって尋問された後ノータイム零距離で脳天を撃たれたはず。

 

 つまりは有無を言わさずの即死だった。

 

「(これって俺の、所為なのか?)」

 

 そんな疑問(不安)が俺の脳裏でチリチリと燻っていた。

 

 だがあの日からこうもずっと報道されているのは()()()ということだけ。

 原作で起こったこの事件を俺はよく覚えている、何せクロヴィスの死を皇帝シャルルが葬儀で国威発揚の演説に使うからな。

 

 もしシャルルが“なぜだぁ?!”とでも叫ぶ場面があるのなら、俺はすかさず“坊やだからさ”とサングラスをかけながら返したい。

 

『心の中で』だけど。

 

 ただまぁ……そうなると俺自身が『孤独の復讐をする為に皇族を皆殺しにする』ルートに突入するからご勘弁願いたいけどな。

 

 っと、現実逃避はこれぐらいにしておこう。

 

 俺はベトベトの身体をシャワーで洗い流そうと思い、立ち上が────

 

おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉ?!」

 

 ────ろうとして俺を襲う痛みから動きを断念する。

 

 マジで痛い。

 

 痛い

 

 もうそれしか言いようがない。

 

おおおおおおぉぉぉぉ……」

 

 だけどよく考えたら俺……基本装備の上に不完全だったとはいえ、ランスロット相手に生き残ったんだよな?

 

 地味にすごくね?

 それか現時点で俺なりに考えた対ランスロット対策がかなりスザクを動揺させたか。

 それとも単に運がよかったか……

 

 どっちでもいい。

 

 誰か俺を褒めてプリーズ。

 

 …………………………癒しが……癒しが欲しい。

 

 ガチャ!

 

「すb────スヴェン? 起きている?」

 

 入ってきたのは『病弱設定口調』のカレン。

 

 何しに来たお前。

 

「身体、拭きに来たよ?」

 

 神様、この系の癒しは求めていないッス。

 

 というかもう動き回れるほどに回復していたのかカレン?!

 昨日の今日だぞ?!

 

 分かってはいたけれど、マジで原作ではスザクに次いでの化け物だな!

 

 原作で着ぐるみ着てスザクを追うこともできていたし……

 

 というわけでタライとタオルだけを受け取って、他は断った。

 

 え? 『もったいない!』だって?

 

 あのな?

 今だから言うけど、カレンの辞書に『加減』なんて言葉は存在しないんだよ。

 子供のころ、ナオトさんがマジで痛がる愚痴をしていたぐらいなんだ。

 

 それに扇も参加して、ナオトさんの赤くてヒリヒリしてそうな背中に軟膏を塗ったのは何を隠そう彼だ。

 

 と言うわけでカレンの気持ち(とタオル他)だけは受け取った。

 

 さて、明日からまた学校だ。

 気を引き締めていこう。

 

 あ。 あとアンジュリーゼと毒島にお礼をしなきゃな。

 

 毒島は剣術部に(あと保健室に予約を入れてから)顔を出すとして、アンジュリーゼは多分────

 

『ち、知人として当然のことをしたまでですわ! お礼ならば貴方の作る献上品ならば、考えなくもないわ! (縦ロールふさぁ)』

 

 ────なんてことを言いそうだから、多分スコーンかクッキーを焼けばいいだろ。

 

『紅茶抜きで茶菓子を食べろと? (ジト目)』 ←またもスヴェンの脳内アンジュリーゼ

 

 そうだな、紅茶付きであげよう。

 

『よくってよ! (フフンッ)』←まだスヴェンの脳内アンジュリーゼ

 

 はいはい。

 

 …………………………あ。

 

 カレンに湿布を頼んでおけばよかった。

 

 身体を拭いてからでも呼び戻せないかな?

 

 

 

「なんで私が湿布なんかをブツブツブツブツ……

 

 結局呼び戻せました。

 そしてカレンが自分用に使っていた湿布を今貼ってもらっている。

 

「はい、おわ~りッ!」

 

 バシン!

 

「グッ?! (最後のは必要ないだろうが?!)」

 

「喝、入ったでしょ?」

 

 いらねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

 

 仰向けになっていたスヴェンは見えなかったが、カレンは年相応の無邪気な笑顔を浮かべていた。

 

 

 


 

 

 

 微睡の中、クロヴィスは夢を見ていた。

 懐かしく、酷く、残酷な夢を。

 

 それは7年前、平民でありながら他者を圧倒的に凌駕する能力で騎士侯という爵位だけでなく、実質的な帝国最高の称号である『ナイトオブワン』まで獲得し皇妃になった、ある意味クロヴィスにとっては憧れる、実在する英雄譚の英雄。

 

 自分自身が武勇に優れていなくとも、“別の能力で他人より優れていれば認められる”という象徴。

 

 そしてその象徴は暗殺され、形見であるルルーシュたちは政治の道具(人質)として『日本』という、サクラダイトと言う物質しか取り柄のない極東に送られて戦争に巻き込まれ、呆気なく死んだ。

 

 その銃口が自分に向けられて火を放つ────

 

「────ウッ?!」

 

 クロヴィスが目を開けて身体をビクリと跳ねさせると今までに感じたことの無い痛みが腹部から伝わり、視界がぼやける。

 

「で、殿下?」

 

 クロヴィスは聞きなれた声の方向を見ると────

 

 「────ガマガエル?」

 

「バ、バトレーです……」

 

 明らかにしょんぼりとするバトレー将軍がドア付近に立っていた。

 クロヴィスが目を凝らして周りを見ると、自分が病室にいることがうかがえた。

 

「お兄……さまぁ~……」

 

 そして自分の太股に身を乗せて寝ていたライラに気付き、バトレーが口を開ける。

 

「殿下の妹君様は、“ずっと起きるまでいる”と言ってつい先ほど眠られました。」

 

「状況は? あれからどうした?」

 

「……………………」

 

「言え、バトレー。」

 

「は、はい。 ではまず、“アレ”に関してですが包囲網が崩れた際に見失ってしまいました。」

 

 バトレーが“アレ”と呼ぶのは、彼らが『コードR』と呼んでいたCCという少女だった。

 

「……それで?」

 

「つ、次は『殿下が倒れた』という事でエリア11の総督の入れ替わりを皇帝陛下が命じました────」

「────バトレー。 私が聞きたいことはそんなことではない。 私が聞きたいのは賊の事と、私の状態についてだ。」

 

 バトレーは気まずい顔をし、いつもの豪華そうな服から病院着を着ていたクロヴィスを見る。

 

「…………侵入した賊に関して誰も、私を含めて()()()()()()のです。」

 

「なに?」

 

『覚えていない』。

 これは、ルルーシュがギアスを使うと対象の直前と直後の記憶が脳に入力されない為である。

 

 だがそんなことをクロヴィスたちは知る余地もなく、ただ単に『不可解な侵入経路を使った』と言った事実だけを見抜く。

 

「……恐らく、()()だな。」

 

「ええ、()()でしょうね……ですがまさか私の施設以外に、C()C()()()を────」

「────バトレー。」

 

 クロヴィスはバトレーから、スゥスゥと寝息を立てるライラを見る。

 

「ング……申し訳ございません、殿下。」

 

「それで? 私自身の状態はどうなのだ?」

 

「……………………殿下。 心苦しいのですが……脊髄損傷だそうです。」

 

 重い石がずっしりと体に乗ったような感覚にクロヴィスは眩暈がするのか、目を腕で覆う。

 

「…………………………そう、か…………ライラはもう────?」

「────はい。 既に殿下が損傷したことは見ての通り存じておりますが…………」

 

「見込みはどうだ? はっきりと申せ。」

 

「……医者どもの見立てでは、回復する()()()はございます────」

「────だが低いのであろう? お前のその言い方と態度で丸わかりだ……この後、どうなる?」

 

「ハッ。 皇帝陛下がこちらに来る予定です。 恐らくは殿下の見舞いに────」

「────ハッ。 父上が情だけで動くものか。 恐らくは今の状況を逆に利用するのだろう。」

 

「それと、今は総督の代理として私が任命されていますが……次の総督が引継ぎをなされば、殿下に負傷を許した私は本国に呼び戻されるでしょう。」

 

「……そうか。」

 

「申し訳ございません、殿下。」

 

「よい、気にするなバトレー。」

 

 クロヴィスの目を覆う腕の下から、雫が彼の頬を伝って枕に落ちていく。

 

 感覚が無く、力の入らない下半身を感じながら『これがナナリーたちの感じていた気持ちの片鱗なのか』とだけ彼は思い浮かべていた。




何がどうしてクロヴィスがこうなったのかは次話で明かす予定です。 (´・ω・`)/

『ブリタニア絶対殺す狂犬』を加入させますか? *注意事項*作者はロストストーリーズ未プレイでゲームが完結していないので『高い可能性(ほぼ確定)でキャラ崩壊アリ』とだけ前もってここに書きます

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