楽しんで頂ければ幸いです!
スバルが全力でエデンバイタル教団から救った孤児たちや技術部に料理を振る舞っている蓬莱島の別の場所では、公園のベンチに座りながらボーっと空を眺めるベニオの姿があった。
「……」
彼女が考えていたのは、先日行われた『圧政から村人を救う』作戦だった。
初撃はカレンの紅蓮による強襲を合図にした、四聖剣の暁を突入させて敵の本隊にわざと包囲網を完成させたところを、ベニオを含めた本隊が包囲網を背後から奇襲すると言った単純なモノだった。
これならばベニオの様な、経験の浅いパイロットでも十分中華連邦の正規兵に後れを取ることはほぼない。
何せKMF技術が低いため二足歩行ができないどころか『尻尾』の様なランドスピナーに機体が支えられている状態に、『正面への集中砲火』だけを追及させたようなデザインをした中華連邦の
ベニオは初めての出撃であったこともあり、他の新人たちのように興奮しながら元カレンのグラスゴー兼無頼を他の黒の騎士団の暁と一緒に突撃させた。
本来、この時点で無頼は『型落ち』どころか『時代遅れ』と言った認識になっている。
何せ元々はブリタニアの第四世代KMFのグラスゴーの外装などのマイナーチェンジをした機体、既に第六や第七世代KMFが出てきている。
だがあろうことか、元々カレンが乗ることを想定しつつ彼女の(無茶ぶりな)注文を、『後に紅蓮が来る』と分かっていたスバルの魔改造によって『外見だけは無頼』となっていた。
まずナイトメアの可動摩擦面の摩擦抵抗を減らす仕組みが施こされ、その過程で駆動部の見直しと共に『ナイトメアの内骨格と外装の独立化』も試された。
結果、『見た目だけ無頼』のパイロットの入力に対する応答時間と機動力は大幅に上げられて半ば『化け物化』していた。
余談だが、このおかげでスバルは『亡国のアキト』への介入時にリアクティブアーマーの開発に経験を活かしている。
設計の想定外である『背後からの奇襲』に『接近戦』に戦いが持ち込まれた中華連邦の
元々無頼の元となったグラスゴーも接近戦を想定された設計ではないのだが、アサルトライフルの反動を押さえる仕組みが後付けされたスタントンファやナックルガードよりもパイルバンカーの相性は非常に良かった。
『だ、助げ────ゴボ……』
しかしパイルバンカーの当たりどころが悪かったのかベニオが倒したと思った
幸い、作戦はほとんど終わった頃なので難無くベニオは他の者たちと一緒に帰還したのだが最後の敵の言葉と光景がベニオに衝撃を与えていた。
「ベニオ────」
「────あ、カレンさん……」
「どうかした? サヴィトリから貴方が寝ていないって聞いたけれど?」
「あー、そうですかねぇ~。 初めて実戦を間近で経験した興奮だと思います。 どうしてですか?」
「……なんだか辛そうだったから。」
「……」
カレンの言葉にようやく堪えきれなくなったのか、俯いたベニオの目から大粒の涙がボロボロと出始めた。
「べ、ベニオ────?」
「────私、今更ながら『人を殺した』って実感が沸いて。 戦争だから、
────ギュ。
どんどんと取り乱すベニオを、カレンは出来るだけ優しく抱擁する。
「ずみまぜん……ごんなごど
「────割り切らなくていいよ、ベニオ。 私も、初めは同じだったから。」
「ズビ……カレンさんが???」
「うん。 私もね、初めてナイトメアに乗って人を殺した実感に凄く悩まされたわ。 食欲は無くなったし、何を口にしても吐いちゃうし、瞼を閉じれば殺した相手の事を考えちゃうしで……とにかく、凄く大変だった。 」
「カレンさんは、どうやって乗り越えたんです?」
「……今の私のように、知り合いが抱擁してくれながら語りかけたんだ。」
「その人、なんて言ったんです?」
「“慣れなくて良い。 誰もこんなことに慣れるべきじゃない、慣れれば人として大事なものを失くしたという事だ。 だから、泣いても良い”って。」
「それって、ひょっとするとゼロの言葉ですか?」
「ううん。 私にとって……うん。 私にとって、大切な人が言ったことなんだ。」
「……どうしてカレンさんは私にここまでするんです?」
「う~ん……ベニオが『妹』って感じがするからかな?」
「カレンさんがお姉さんだったら鼻高々ですよ! 絶対に周りの人たちに自慢しています!」
ピリリ♪ ピリリ♪
そこで二人の和んだ空気を壊すかのように、ベニオの通信機が鳴る。
着信相手は『ゼロ』で、用件は単純に『零番隊への配属』だった。
「どえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」
まるでさっきまで泣いていたことが嘘かのように、ベニオは一気に元気(?)になった。
『態度がコロコロ変わる』? ソウトモイイマスネ。
…………
………
……
…
「朱城ベニオ、先日の作戦では目覚ましい活躍をしたと高評価を受けている。」
「こここここ光栄です!」
カレンと一緒にゼロの執務室に来たベニオはカチコチに言動が怪しくなるまで緊張していた。
「データの解析も済み、君のその操縦技術とセンスを見込んで零番隊へ正式に配属したい。」
「あ、あ、あ、ありがとうございま
カァァァァ。
「(うぎゃあああああ?! かかかかか噛んでもうたぁぁぁぁぁぁ?!)」
「う、うむ。 喜んでもらえて何よりだ。」
「(スルーされたからセェェェェェェェフ!)」
「あー、ベニオ? そこまで緊張しなくても良いよ────?」
「────無理ですよぉぉぉぉぉ!
「……カレン、すまないが彼女が馴染むまで先輩として面倒を見てくれないか?」
「え? いいけど、歓迎会を開いた方が手っ取り早くない?」
「それなら丁度いい。 実は桐原殿の計らいで、甘味の大量生産に目途がついたので試食を兼ねたパーティーを先ほど始めた。 そこで朱城を他の者たちにも紹介しよう。」
そこからゼロは立ち上がり、カレン達が後を追うと既に零番隊の者たちがいる部屋へと着く。
「見ての通り、もう主な者たちは集まっている。 テーブルの上にあるのが────」
「────ポッ〇ーだ!」
「────まさか、ルマ〇ド?!」
ゼロの言葉をカレンとベニオが遮り、テーブルの上にあった数々の懐かしい菓子に目を光らせた。
二人が言ったようにポッ〇ー、ルマ〇ドだけでなく、バーム〇ールにア〇フォート、果ては
「(……まぁ、たまにはこういうのも良いか。)」
テンション爆上がり&盛り上がる旧日本人たちの様子を部屋の端から見ていたルルーシュは、ゼロの仮面の下でほくそ笑みながら景色を楽しんだ。
「(報告によると、学園の修学旅行も『黒の騎士団による行政特区への参加による危惧』という名目で租界内のデパートやモールへの出かけや友人の家での宿泊などに変わったと聞く。 早い話が『学園がスポンサーするお泊り会』なような物にイベントを変えたのは、恐らくミレイ会長辺りか?)」
これはルルーシュがゼロの仮面を防水仕様にした為、(食事はともかく)飲み物も堪能できなくなったことに気付く5分前の出来事である。
どうでも良いことかもしれないが。
…………
………
……
…
「何? 黒の騎士団が?」
中華連邦の首都である洛陽にて、大宦官たちは『黒の騎士団によって辺境にある村たちから軍が退けられている』という報告を受けた。
「如何なさいますか? 奪還いたしますか?」
「ふふ、そのままにさせておけ。」
「は?」
「“捨て置け”、と言っているのだ。」
「は、はぁ……」
だが大宦官たちは慌てることなく、困惑する武官に放っておくように大宦官たちは言い渡す。
「ただし、ネズミ一匹見逃さぬほどに洛陽の守備は更に固めろ。 他の都市に居る者どもを動かせてもよい。」
「な、なぜ???」
「そちは支払いを受けたくないのかね? ならばそのまま質問を続けるといいぞ?」
「し、失礼しました。」
「うむ、金はいつもの口座に振り込んでおく。」
金によって大宦官に飼いならされている武官はそそくさと部屋を出て洛陽の守備に取り掛かる連絡をし始める。
「黒の騎士団……哀れよのぉ?」
「ブラックリベリオンが失敗して今は所詮、蟷螂の斧よ。」
「今に知る。 この世の中、どのような道具でも『消す』よりはるかに良い使い道があることを。」
「「「「ホホホホホホホ。」」」」
…………
………
……
…
『いやぁ、すまないねマリー。』
エリア24の上空をアヴァロンで通りながら通信の画面内に居たシュナイゼルは、申し訳なさそうな声でマリーベルにそう声をかける。
「いいえ、皇族の一人と言えど今の私はエリアの管理を任された一総督にしかすぎません。 帝国宰相の頼みとあらば、『イエス』と答えるまでです。」
愛想笑いを受かべるマリーベルはそう返しながら、レーダーに映るシュナイゼルのアヴァロンの近くを飛ぶグランベリーをチラッと見る。
「ですが驚きましたわシュナイゼルお兄様? まさか“天空騎士団を借りたい”などと。」
『これから中華連邦に向かうからね。 本来なら、エリア11を経由したかったが拠点を中華連邦付近に移した黒の騎士団の襲撃にあっては冗談にならないからね。 念には念を入れて、君の天空騎士団を護衛にしながらユーロ・ブリタニアを横断するよ。』
「良い旅を、シュナイゼルお兄様。
『ああ。 マリーもエリア24をよろしく頼むよ。』
シュナイゼルとの通信が切れるとマリーベルは静かに席を立ち、自室内へと歩いてからベッドでうつ伏せになりながら顔を枕に埋める。
ダァン!
「(やられた!)」
ベッドを殴ったマリーベルは静かに沸々と怒りが湧き上がっていく。
「(まさかオデュッセウスお兄様の婚約のスケジュールをここまで前倒しにするとは、不覚! その上、ゼロの行った『100万の奇跡』を逆手にとってオズたちをこの時期にスペインから引きはがすなんて! ……いえ。 落ち着くのよ、マリーベル・メル・ブリタニア。 ここまでするという事は、シュナイゼルお兄様が危惧するほどの動きが中華連邦であるということ。 それにエニアグラム卿の目も離れた今ならば────)」
……
…
アヴァロンの中から、カノンはグリンダ騎士団のシンボルが横に描かれた数々の浮遊航空艦の景色に圧倒される。
「噂に聞いていましたがまさか、グリンダ騎士団がこの規模の艦艇を有しているとは……殿下────」
「────大丈夫だよカノン。 未だに
「オデュッセウス皇子殿下なら、先ほどグランベリーに向かわれました……」
「カノン。 顔色が優れないようだから今から言う事は独り言とでも受けてもらって構わない。 昔、私に『面白い』と思えるほどの異母弟が居てね? 名を『ルルーシュ』と言う大人しい子だった。」
ピクッ。
「(『ルルーシュ』────?)」
「────チェスで負けたクロヴィスに煽られたのか、私に何度か試合を申し込んだ。 本気で悔しさに満ちた彼は羊の皮をかぶった炎だったよ。 決して私に灯らない感情で、私はルルーシュがいとおしくてたまらなかった。 彼と似た気迫を、私はマリーに見た。 まだ幼い体と心が悲しさと怒りに駆り出されるまま父上────神聖ブリタニア帝国の皇帝の眼前に刃を向けた。」
「(皇帝暗殺未遂事件の……)」
「あれは非常に、とても面白みのある光景だったよ。 まるでルルーシュの再来の様だった。 それに……」
「殿下?」
「いや、なんでもないよ。 (さてゼロと幽鬼よ、今度はどう動く? どう私を楽しませくれるのだ?)」
余談であるがこの時、グランベリーに挨拶に向かったオデュッセウスに気落ちしたソキアが泣き付いた所為で一波乱あり、後日『私は無神経な騎士で反省中です』と書かれた看板を首から下げながらシュバルツァー将軍に見張られて廊下に立つソキアの姿があったそうな。
そしてオデュッセウスの『楽しそうだね』により、彼もソキアの隣で立ったことでソキアの『罰』は『ご褒美』へと転換したそうな。
……
…
「会長、どうしたんですか?」
アッシュフォード学園では、いつもの元気な姿ではないミレイに怖いもの知らずのシャーリーの問いがクラブハウス内に響いた。
「う~ん……ちょっとねぇ。」
「会長は、例の婚約者から連絡が来たんだよ。 な、リヴァル?」
ルルーシュ(に変装しているエル)がハンカチを思いっきり噛み締めていたリヴァルに話題を振るう。
「むきぃぃぃぃぃ! 今までさんざん会長をほったらかしにして、何様のつもりだあの女たらし?!」
「「「伯爵。」」」
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 正論を言うなよお前ら!」
「あれ? でもリヴァル先輩も子爵家じゃないです?」
「↑ひょあ?!」
「え?! リヴァルって、子爵の嫡男なの?!」
ライラの他意のない、純粋な質問にリヴァルは素っ頓狂な声を出してマーヤがびっくりする。
「そそそそそそそそそそれはクソ
「あー、だから先輩って母親の旧姓名乗っているです?」
「ライブラちゃん、それ以上はもう止めてくれ……」
「それで会長、伯爵はなんて?」
「あー、結婚のこと────」
「────ぬおああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
先ほどまでショボショボしていたリヴァルは『結婚』というキーワードに反応し、復活しながら叫んだ。
尚、ミレイの口にした『結婚』が彼女自身の物ではないことをリヴァルに伝えるまでに数時間はかかったそうな。
…………
………
……
…
「『天子と第一皇子の政略結婚』、か……」
中華連邦の辺境を圧制から解放し始めた数日後、緊急招集の号令を出した神楽耶に『中華連邦の天子とブリタニア帝国の第一皇子の結婚』を聞かされ、静まり返った斑鳩のブリッジでゼロが上記の言葉をボソリと出す。
「(想定より早い、こんなことになる前に天子を確保するつもりがまさか人工島のインフラが整い過ぎていたことで気が緩んでいた────!)」
「────如何なさいますか、ゼロ?」
ディートハルトの声と彼の険しい表情で、ルルーシュは色々と察しながら考えを走らせた。
「(これではディートハルトと共に進めていた例の計画の準備が間に合わん……険悪な仲であるブリタニアと中華連邦の仲を一気に回復させるこの手腕は、あの凡庸な
「ええ。 天子様が私と冴子宛に出したものかと思われます。」
「(なるほど、では正式なモノでほぼ間違いないな……) 人数制限は?」
「一応書かれてはいませんが、大人数だと門前払いを受ける可能性が出ると思います。」
「なぁ、どうして皆そんなに気掛かりにしているんだ?」
「「「「「ハァ?」」」」」
緊張感が漂う中で玉城の何気ない言葉に、ブリッジに居た全員が呆気の取られてしまう。
「だって俺ら、ブリタニアに追放されたじゃん?」
「あの~……追放されただけで罪が消えたわけじゃないんですけれど────」
「────それに『政略結婚』ともなると、中華連邦とブリタニアが同盟になる訳ですし────」
「────かえって黒の騎士団はヤバい状況に……最悪、ブリタニアに差し出されるんじゃないかしら────?」
「────ちょっと待て! じゃあなんだよ?! 俺ら黒の騎士団は結婚の結納品かなんかかよ?!」
「本当に使えない才能だけに溢れた髭男だな?」
斑鳩のブリッジにいた新人オペレーターたちの言葉でようやく事の重大さを理解して慌てだす玉城に、C.C.の鋭いツッコミがさく裂する。
「呑気にしている場合か────?!」
「────さっきまで呑気だったのはお前だけだろ?」
ここでC.C.と玉城の何時もの言い合いをまるで合図かのように黒の騎士団は話し合い始め、ルルーシュはいったん考えた策略にブレーキをかけた。
「(よし、ある程度の条件はクリアできる。 あとは────)」
ルルーシュは仮面の下から、さっきからひっそりとブリッジの端で立っているスバルを見る。
「(────彼と彼のグループがどう出るかだな……果たして彼は今、何を考えているのだろうか?)」
同時に毒島もスバルの方向に視線を送ることなく、内心で思考を走らせていた。
「(さて、彼のメモにあったこの時が来たか。 『天子奪還』と書かれていたが、果たしてどうやってそれをするつもりだスバル?)」
「(ムヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ♡)」
スバルはヘルメットの下でポーカーフェイスを維持しながら、斑鳩のブリッジにいた茶髪っぽい紫の髪を左右の肩の前に垂らした桃色ニーソにピンクのミニスカ服装の
「(『斑鳩オペレーターの
誰もスバルが内心でゲスバル化しているとは夢にも思っていないだろう。*1
リヴァルの父親に関しては独自設定です。
暑い日が続きますが、読者の皆様も身体にはお気をつけくださいませ。
余談:
次話が少々長くなる……かもしれません。 (汗