楽しんで頂ければ幸いです!
夜の朱禁城は(今夜も)活気に溢れていた。
ブリタニアの貴族たちに大宦官側の中華連邦の重鎮たちが楽しく腹の探り合いをする中で、主役であるはずの天子は俯きながら、出来るだけ感情を殺して時間が過ぎるのを待っていた。
天子は今日もせっせと折り鶴をして、ようやく千羽になったところで突然呼び出されては一方的に『ブリタニアの第一皇子との結婚祝いに出ろ』と言い渡され、訳も分からないまま天子は迎賓館に連れ出されて現在へと至る。
「(どうしよう……結婚なんて急に言われても……良く分からないよ……)」
見た目と位置で天子が判断しているだけだが隣には体格も歳も一回りどころか二回り上回る、変な髭のおっさんことブリタニア第一皇子のオデュッセウスをチラッと見て視線が合うと天子は更に俯いてしまう。
「(う~ん。 この子の怯え方は尋常じゃないね。
逆にオデュッセウスは天子の仕草にかつての自分を見ているような既視感を思い出したのか、出来るだけ和やかな雰囲気を出し、ワインを飲むふりをしながら考える。
「(でもなぁ……ここで私が彼女を支えるとあらぬ疑いをかけられそうだし、何より更に彼女の立場が悪くなるだろうね。 どうしたものか……ん?)」
オデュッセウスはニコニコしながら、珍しい人物を見て目を点にしてしまう。
「(あれは確か……シュナイゼルの元特派の?)」
彼の視線先に居たのはブリタニア貴族の正装姿をしたロイドであり、隣には『幻』と噂されている彼の婚約者らしき姿があった。
そんな二人がどうしていいのか分からない表情で見ていた先には、ウキウキしながら鳳凰の形を模したデコレーションを食するセシルの姿があった。
「(うわぁ……飾り用の物を食べるなんてちょっと……いや、かなり『ない』わね。 ソキアもやっていたけれど。)」
前にも来たことがある経験から客人兼護衛を務めながら部屋の端で静かに立っていたオルドリンは、複雑な顔を浮かべながらセシルを見て内心では引いていた。
「ハァ~……マリーカさん……」
「まぁまぁ。 ブラッドリー卿のあまり良くない噂はあくまで『戦場でのこと』ですし、前に会ったときの印象からして何もないでしょう。 多分。 それよりほら、今は眼前に広がる景色を共に楽しもうじゃないか。」
そんなオルドリンの隣には、元気がないまま項垂れるレオンハルトとそんな彼を励まそうとするティンクがヒソヒソと話し合っていた。
「楽しむも何も、今の僕たちはオルドリンの防波堤じゃないか。」
レオンはチラッと、ソキアの『郷に入っては郷に従おうぜ!』といった流れのままチャイナ服を着せられたオルドリンを見る。
既に美少女である彼女にチャイナ服を着せた効果は絶大なモノでブリタニア、そして中華連邦双方の男性の興味を引くだけでなくレオンハルトたちが来るまでずっと言い寄られていた。
というのも、オルドリンのイラつきボルテージが限界に達して拳が出そうだったのをティンクが察して文字通りの『流血沙汰』になる前に横から無理やり(レオンハルトを引きずりながら)入ってきたのだが。
ちなみにソキアは持ち前のコミュ力で難無くオルドリンの周りに出来上がった人だかりに溶け込んでは自分一人だけ逃げて以前訪れた際に食い損ねた珍味と雑談を再び楽しんでいた。
「防波堤だから出来ることだよ、レオン。 こういう時こそ、脳内フィルターを使うんだ。 中華連邦の女性の服ってボディラインや腰のくびれがくっきりと出るタイプだからね。」
「あ、なるほど……チャイナ服、良いですねティンク。」
「ああ、良いものだともレオン。」
「マリーカさんに着せたい……絶対に似合う。」
「「(うわぁ、重症だ。)」」
レオンハルトの言葉にオルドリンとティンクの笑顔は引きつった。
「(うーん、こうしてみると何の変哲もない少年少女たちなんだけどなぁ。)」
「どうかされましたか、エニアグラム卿?」
三人とは少し離れた場所から感慨深い気持ちで見ていたノネットに、スザクが声をかける。
「ん? んー……“君と同じぐらいの子たちがこうやって戦士として駆り出されるのもどうかなぁ”、とね。」
「帝国は争いを良しとしていますから。」
「……ま、そうだね。 ところで、君から見た天子様はどう思う?」
「え? どう……とは?」
「いや何、一国を背負う立場の者だが彼女はまだ幼い。 “彼女は果たして、この件に納得しているのだろうか?”という質問さ。」
スザクはうつむく天子を見ては日本に来たばかりで心細い時期のナナリーの姿を重ねてしまい、複雑な心境になる。
「……どうでしょうね?」
「(ふ~ん? 以前なら“平和への道の一つ”とか言いそうだったけれど、やっぱり前とは違う心構えだね。 何かあったのかな────?)」
「────あ、エニアグラム卿────!」
「────おや、今回のセシルも中々に大胆な衣装だね? そう思わないかい、枢木卿?」
「“彼女に似合う”とは思いますけど?」
「も、もう! スザク君もふざけないで!」
「え? 今のはいたって本心からですけれど?」
「(………………………………あー、スザクはこういうタイプなのか。)」
「なぁスザク────?!」
そんなスザクたちにジノがお皿に乗っていた飾り用の竜(?)を持ちながら無邪気な子供のように持ってくる。
「────おおおっと、エニアグラム卿もここに来ていたのか!」
「ジノじゃないか。 何だい、その手に持っているのは?」
「いや、これを食う前にスザクに見せたくてさ!」
「……それ、飾り用だよ?」
「え? でもポテトで出来ているっぽいぜ、これ?」
「あら、それもポテトなの? 私はケチャップの代わりにラー油をかけて鳥の様なものを食べたけれど────」
「「────え。」」
セシルのゲテ物好き味音痴なアレンジにスザクとノネットは固まる。
「おお~、その手があったか! じゃあ先にレオンに食わせるとしよう!」
「「え。」」
「お~い! レオ~ン!」
スザクとノネットは近くのテーブルに乗せてあったラー油入れを取りながらオルドリンの防波堤役をしていたレオンハルトに近づく景色を見送る。
二人はジノの手に持った料理(?)を見てギョッとするレオンハルトたちの声は届かなかったものの、どういうやり取りが交わされているのか動作で容易に想像できた。
『レオン、これ食って見ねぇか?!』
『な、なんですかそれ?』
『ポテトで出来たドラゴン!』
『……その赤いシミは?』
『タバスコの代わりにラー油をかけてみた!』
『…………………………………………………………エンリョシマス────』
『────遠慮するなって────!』
『────あ、ちょ、ま、やめて────ぐほぉおえあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛?!!』
無理やりラー油がたっぷりかかっていた大量のポテトをレオンハルトが口にすると彼は吹き出しながら気を失い、それを見たセシルが気付け薬として持ち歩いていたワサビを出して事態は悪化していく。
「「………………………………そっと距離を取っておこう。」」
「ンフフフ~、エニちゃんも楽しんでいるね?♪」
「おや、ロイ坊にアッシュフォードの令嬢じゃないか!」
「お久しぶりです、エニアグラム卿。 前回の文化祭に参加してくださって、ありがとうございます。」
「いや何、ロイ坊に泣きつかれたからね。 “どうしても(ガニメデが)見たいんだよ~”って。」
「過去の話はもうそこまででいいんじゃない? 今の話をしようね、エニちゃん────?」
「────あら、これはまた珍しい組み合わせね。」
ノネットたちの様子に気付いて、物珍しい表情のカノンがジロジロとロイドと青いカクテルドレスで着飾ったミレイを見る。
「まぁ、たまには体調の為に散歩ぐらいはしないとね♪」
「それとそのポニーテール、意外と似合っているわよロイド────」
「────えっと────?」
「────ああ。 紹介しよう、こちら僕の婚約者。」
「始めまして、ミレイ・アッシュフォードです。」
「ふぅん、かわいい子じゃない……“ロイドが婚約をした”っていうのは、デマじゃなかったのね?」
「……えっと?」
「
「(────『あの一件』────?)」
「────あー! あー! ぼーくーきーこーえーなーいー!」
「相変わらずね……ああ、紹介が遅れたわね。 私はカノン・マルディーニ。
「へ。」
呆気に取られたミレイの思考が言われた言葉に追いついていくにつれて、顔が徐々に赤くなっていく。
「こらこらカノン、ワザと誤解するような言い方しないの。 彼女、困っているじゃない。」
「相変わらずマルディーニ伯爵は冗談がきついね♪」
「
『────神聖ブリタニア帝国宰相! シュナイゼル第二皇子様、ご到着!』
迎賓館の警備をしている者からのアナウンスに、中にいた者たちは視線を入り口へと映すとシュナイゼルがいた。
だが彼は自分一人ではなく、ドレスを着てウェーブのかかった髪をなびかせる
「宰相閣下の隣、誰?」
「随分と若いわね……」
「どこの馬の骨なのかしら?」
「しかし美人ではある。」
「もしや宰相閣下は
「いえ、アレは確か閣下直属の技術部の主任だったはず……」
「ああ。 時代遅れの。」
「確か……『サクラダイトを使わない電力』だったか?」
「今更よねぇ……」
周りからヒソヒソとした話声を気にするどころか、ただ真っ直ぐ見ながらシュナイゼルの隣を女性は歩く。
「(あ、あれはまさか……ニーナ?!)」
思ってもいなかった来客にミレイは目を点にしてしまい、内心驚愕する。
『どこかよそよそしく、他人の目を避けながらオドオドする人見知りな子』。
それがミレイの知っているニーナであるのだが、眼前のニーナらしき女性からその様子は全く見受けられなかった。
「(ニーナ……元気になって、よかった……ニーナよね?)」
「(あ、ミレイちゃんだ! それにロイドさんたちも!)」
ミレイが微笑ましい笑顔を浮かべながら手を振ると、ニーナの顔も無邪気に喜ぶ笑顔に変わる。
「(あ、やっぱりニーナだ。)」
「ここは祝いの場だ、もっと楽にしてくれたまえ君たち。」
その間にラウンズたちは全員シュナイゼルの前で膝を付き、頭を下げるがシュナイゼル本人は困ったような表情浮かべて上記の言葉を放つ。
『皇コンツェルン代表、皇室神楽耶様! およびNAC代表
「「「「ッ?!」」」」
新たに到着した客人たちの所属と名に会場にいた者たちは驚愕に目を見開かせた。
天子は思わず嬉しさから椅子から立ち上がりそうになったところを、大宦官が彼女の肩に手を置いて制止され、シュナイゼルの口端がピクリと反応し、オルドリンたちはギョッとしてしまいレオンハルトは気が遠くなりまた気を失いそうになる。
「(神楽耶に冴子まで?! なぜここに?!)」
スザクに至っては久しぶりに見聞きする幼馴染たちに血の気が顔から引いていった。
余談だがセシルはのほほんとしながらわさび醤油を
迎賓館の会場内に正装姿の神楽耶とエスコートにゼロ、そして毒島のエスコートにライダースーツにフルフェイスヘルメットをした者たちが臆する様子を見せずに歩いてくる。
「ゼロが、堂々と……」
「一体誰が招いたのだ?」
「こんな似つかわしくない場所に、我が物顔で来るなんて……」
「テロリスト風情が……」
狼狽えたり、戸惑いや警戒や困惑を言動で示す人たちの中で、唯一シュナイゼルだけは心の奥底からの笑みを浮かべていた。
「(やはり来ると思っていたよ、ゼロ。 大方、“一連の主導者の確認”と言ったところかな? ん?)」
会場の中華連邦の兵士たちは神楽耶たちを囲み、槍を彼らへと向けると会場内は更に騒がしくなる。
「神楽耶────?!」
「────天子様、どうか静粛になされよ。 貢物が自ら来たのですよ?」
天子が思わず立ち上がるとさっきの大宦官がまた彼女の肩に手を置いて、ニタニタとした笑みのまま無理やり座らせる。
「神楽耶たちも、ブリタニアに────?!」
「────所詮は死罪になるべき者たちです、お忘れなさい────」
「────おかしいわ! だって、ここはブリタニアではないのに────!」
「────
「────で、でも────」
「────やめませんか、中華連邦の方々?」
友人に危機が迫ったことで焦りを勇気に変えた天子と大宦官との言い合いを、シュナイゼルの静かな提案に場は静かになる。
「本日は、我々の国にとって祝の席でしょう?」
「で、ですが────」
「────皇さん、後日の婚姻の儀ではゼロの同伴をご遠慮いただけますか? 彼にその意思がなくとも、現れるだけでこうも平和をかき乱してしまうからね。」
「それは、いたし方ありませんね。」
「それに、毒島さんもご遠慮を願いたい。」
「フム? 私の事を知っているのか?」
「『あのタイゾウ・キリハラの親族』、というだけで注目に値すべきだからね。 それにあなた自身も、ゼロほどではありませんが場を刺激しかねない。」
「光栄だな……では残念だが、欠席するとしよう。」
シュナイゼルがチラッと天子、そして大宦官を見ると兵士たちに合図が送られ、彼らは会場の端と戻っていく。
「(やはり一連はシュナイゼルの策略だったか……ちょうどいい、昔と変わっていないか分析できるまたとないチャンスだ────)────シュナイゼル殿下、チェスの一局でも如何ですか?」
この様子を見て確信したルルーシュは『チェスによる分析』を開始するのだった。
……
…
ゼロの提案した『チェスによる対局』を承諾したシュナイゼルたちは別の部屋に移ってからチェスを打ち始め、その様子は会場にある大型モニターに映し出され、双方が一手を打つごとにチェスに精通した者たちが歓声を上げたり、良く分からない者たちは説明を乞う。
「君は見なくていいのか?」
そして会場の外にあるバルコニーにて、着物姿の毒島は手すりによりかかるライダースーツの男────スバルにそう問う。
「ああ。 (どうせ色々あって引き分けになるだろうし……でもまさか毒島にこの格好のままで引きずられてくるなんて……どんな羞恥プレイだよ。)」
「そうか。 (なるほど、既に
毒島は自分たちを遠目から見る視線に気づいて視線を送ると、少し離れた場所に影が見え隠れするのを見る。
「(あれは……なるほど、こういう意味もあったのか。) スバル、何か飲みたくないか?」
「俺はいい。 (幸いにも、変装はしているが……)」
「そうか、なら私は取ってくる。 (彼ほどの者が気が付いていないはずがないし、大丈夫だろう。)」
「ああ。」
毒島が離れ、ようやく一人になったところでスバルはバルコニーの手すりにヘルメットごと突っ伏した。
ドスッ。
「(ああああああああ、早う帰りたいがな。 なんで俺がここに? 天子ちゃんから、何故か自称女神(笑)だけじゃなくてぶっちゃんにも招待状が送られているし、ここにいる筈のないグリンダ騎士団もいるし……まぁソキアだけじゃなくてオルドリンがチャイナ服だったのは嬉しかったけどな?! スリットの間からチラチラと見えた紐は十中八九、オルドリンの紐パン────)」
「────ミレイちゃんは、どうするの? 単位、あと少しなんでしょ?」
「(↑↑↑ほわぁぁぁぁぁぁ?!)」
スバルは予期していなかった声が聞こえてきたことでびっくりしてしまい、思わず声のする方を向くとニーナとミレイがいた。
「(そういやニーナ、シュナイゼルに連れてこられたんだった……ミレイはロイドに────ムオホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ♡ バインダーっぽいドレスなんてナイスチョイスでヤンス♡ 立派なおっπがほぼ見えるのグッドジョブだわさ♡)」
「そうなのよねぇ……でも卒業すると、『婚約』じゃなくて『結婚』になっちゃうんだよねぇ~。」
「えっと……ロイドさんは、悪い人じゃないよ?」
「でも自分のしたいことに没頭しそうじゃん? 妥協点を見つけられる相手ならともかく……それにママも“早く伯爵と既成事実を作りなさい”ってうるさいし。」
「“既成事実”……(ポッ)」
『既成事実』と聞いたニーナは頬を赤らめ、ミレイから視線を外す。
「そう言えば、学園の皆は元気にしている?」
「ええ、元気にしているわ。 学生と先生のほとんどが総代わりしちゃったけれどねぇ。」
「そっか……でも
「え? ナナリー
「だって、あんなに若いのに────え?」
ニーナはナナリーに関するミレイの言い返しに顔が困惑を現す。
「ミレイちゃん、貴方────あ。」
そんなニーナはジリジリと影の中で動く人影────スバルを目撃する。
「ま、待って!」
「(うぎゃあああああああ?! 見つかったぁぁぁぁぁぁぁ?!?!)」
「御免ミレイちゃん────!」
「────え? あ、あの人は────」
ニーナはドレスの裾を両手で上げ、早歩きでスバルを呼び止めては彼のそばへと駆け寄る。
「────えっと……ブラックリベリオンの時以来だよね?」
「……………………何の事だ? (急に何を言って来ちゃってんのこの子?! よく覚えていないが俺の素顔ってあの時出ていなかっただろうな?! 出ていたら大問題だよ?!)」
「ですから────」
「────ニーナ────って、あら? 貴方、ブラックリベリオンの────?」
「(────ミレイまでも見覚えがガガがガガガが?!)」
「あー、なるほどねぇ……あの時、ニーナを止めてくれてありがとうね?」
「(お? もしかしてミレイは知らない?)」
「え? ミレイちゃん、何言っているの? だって────」
「────まぁ、確かに
ニーナの言葉をスバルが無理やり遮る。
「この様な姿だからな。 あまり人の目に触れるように動いていないから、その時に
「えっと……“このような姿”?」
ミレイの言葉にスバルはヘルメットのバイザーだけを上げ、ミレイは口を手で覆い思わず一歩引いてしまう。
「……ぁ。 ご、ごめんな────」
「────謝らなくていい。
「あまり詳しいことは言えないけれど……一言で言うのなら『順調』かな?」
「そうか。」
「(ニーナ……本当に男性恐怖症を乗り越えたのね。)」
ミレイは成長して平然とするニーナと、ブラックリベリオンで彼女の暴走を止めた
「終わったぞ。 それと久しぶりだな、ミレイ会長に……ニーナだったか?」
「あ、ブスジマさん……やっぱり黒の騎士団だったのね?」
「ブリタニアは引っ括めて我々も黒の騎士団としているが……まぁ、おじい様がNACなので実際は『協力者の疑い』がかけられているだけだな。」
「だったら────」
「────だがこのままノコノコと学園に戻れば身柄を拘束され、スザクの時の様に証拠も裁判もでっち上げられてブリタニアに良い様に道具にされるのは目に見えている。 まだしばらく、学園には戻れんな。 これ以上の長居は無用だ。」
「そうだな。 またな、二人とも。」
毒島の言葉にスバルは同意を示し、二人は出口へと歩き出す。
「毒島、ゼロと第二皇子の結果は?」
「君ならもう知っているだろう?」
「引き分けか?」
「ああ。 “すりーふぉーるどれぺてぃしょん”とやらだ。」
「第二皇子はキングを前に差し出してきたのか?」
「まるで見てきたかのようだな?」
「(原作で見ましたとは言えねぇ。) 引き分けから双方が得るものはないからな。 そして揺さぶりをかけるとなると、
スバルはハラハラドキドキしながらそれっぽいことを口にし、その場をやり過ごした。
毒島はチラリと背後の柱へ視線を繰ると一瞬、稲穂の様な金髪が柱の陰に隠れていくのを見る。
「(彼女たちがここにいたのは予想外だったが……まぁどうにかなるだろう。)」
余談だが毒島の見解にスバルの評価がさらに彼の知らないところで上がるのはまた別の話である。
…………
………
……
…
「嚮主様、おくつろぎの所を失礼します。」
「ん?」
宙に浮いている神殿のような場所に、フード姿の者が語り掛けるとV.V.は何かを書きこんでいた世界地図から目を離す。
「やはり先日から始まり、いくつかの資金が凍結されている模様です。」
「そっか。 多分、僕の姪たちだね。」
「如何なされますか?」
「気付かれるのは時間の問題だった。 それが今になっただけだよ。」
「……良いのですか?」
「まだまだ資材はある。」
「いえ、その……差し出がましいようですが、オイアグロやジヴォン家に付けた『枝』とも連絡が付かない今は……」
フード姿の者は敢えて言葉を終わらせず、ただ今現在の状況が変わってきているかを訴える。
「(『オイアグロ・ジヴォン』……やはりあの時、オリヴィアを殺して交渉に来たときに殺すべきだったかもしれないね。 飼い馴らせると思っていたのに、エデンバイタルの一件から明らかに離縁するための動きをし始めた。 トトやクララも消息不明、オルドリンは健在。 それに、弟であるシャルルも僕に隠し事を……まさかシャルルがマリアンヌの亡骸を、大切に保存しているなんて……何をする気だ? 僕たちの計画が成功すれば『死による隔離』に意味がなくなるというのに……いや、もしやシャルルは
V.V.はため息を出しながら金色に近い空を見上げる。
「(だとすればマッドやエデンバイタルの事を放任していたことも頷ける。 だったら、僕が成すべきことは────)」
次話も(多分)長くなると思います。 (;´д`)ゞ