小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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第22話 ある事ない事、さすミレ

「(“第二皇子シュナイゼルと第二皇女コーネリア……彼らが知っている”、か。)」

 

 ルルーシュは先日、ギアスを使ってクロヴィスから聞いた『実の母親を殺したのは誰だ』の問いで得た情報を考えながら生徒会の書類処理をしていた。

 

 とても初めてギアスのような超能力を使ったとは思えないような行動に出た彼は、クロヴィスのいるG1ベースの付近にいたバトレー将軍含めて警護の兵士たちまでも巧みに離れさせてからクロヴィスと(変装越しとはいえ)直接相対した。

 

 その勢いは初めて自転車を乗りこなした子供のように興奮、感情が高まった状態だった。

 初めてのギアス、初めての指令経験、初めての勝利。

 

 それ等が全て合わさり、原作での彼は怒りと復讐の意味もかねて皇族であるクロヴィスをわざと煽るような言動をしていたが、アッシュフォード学園にライラが突然来たことで警戒からガスマスクを脱いではすぐにギアスをかけて単刀直入に質問へと切り出していた。

 

「(だがまさか、ライラが転入してきた理由が“愛する妹に頼まれたからだ”とは夢にも思ってもいなかったがな。)」

 

 余談だが、その答えを真顔のまま答えたクロヴィスに対してルルーシュ本人は思わず『はぁ?』と気の抜けた声を出して呆れていた(すぐに気を引き締めたが)。

 

「(しかしまさか、『人を自らの手で撃つ』という行為があれほどまでに精神的負担を強いられるとは……予想外だった。)」

 

 意外なことに、ルルーシュは質問をしたあとクロヴィスを殺すつもりだった。

 持っていた拳銃のレーザーポインターをうろたえながら命乞いをするクロヴィスの額に合わせて引き金を引こうとした瞬間、()()()()()()()()()()()のだ。

 

 これは別に物理的な変化があったわけではない。

 

 人は初めて他人を害するとき、特殊なケース(例えば上記で記した興奮状態)や慣れ(訓練を積んだ兵士)などを除いて『躊躇い』を本能で感じる。

 

 これは別に『相手を傷つけたくない』等といった同情からではなく、単純に『相手を害すれば己も害される可能性が出てしまう』という保守的本能が無意識に働くからである。

 

 これをルルーシュは『引き金が重い』と錯覚し、指に力を入れ過ぎた結果に彼が撃った弾丸は距離もあり、クロヴィスの額から腹部へと着弾した。

 

 それと同時に足から感覚がなくなっていくことと気分が悪くなったルルーシュは最後までクロヴィスの状態確認もせずに無理やりその場から走って撤退した。

 

 意外にも、スヴェンがルルーシュの(ギアスを使った間接的手段とはいえ)『初めの殺し』を妨害した結果が既にここで出ていた。

 

 よって原作とは違い、クロヴィスは重症ながらも生き永らえていた。

 

 さらに余談だがライラと少しの間(監視の為)とはいえ時間を共にしたことも関係あったのかもしれない。

 ルルーシュは決して認めはしないし、表面的な意識もしていないが、ほぼ毎日のように生徒会に来てはシャーリーやミレイとともに空気を軽くさせる姿はどこか昔のナナリーを彼に思わせていた。

 

 そんな彼女の兄を殺せば、どうなるかは予想がつくが上でも記したようにこのことを言われても未だに吐き気がするルルーシュは決して認めないだろう。

 

『自分がそこまで(覚悟が)甘かった』だなんて。

 

 

 


 

 

 

 ベシ!

 

「うぉ?!」

 

「こぉら、ルルーシュ! 今お得意の居眠りをしていたでしょ?!」

 

 考えに耽っていたルルーシュの頭をミレイが丸めたポスターで叩いていた。

 そしてスヴェンこと俺は、コードギアス特有である学園(癒し)パートを全力で満喫していた。

 

 これだよこれ♪

 思春期真っ最中の少年少女のやり取り……

 ええのぉ~~~~♡

 ほっこりする♪

 

「いえいえ、今のは考えごとをしていたんですよ会長。」

 

 シレっと嘘をつけるところもルルーシュだな。

 

「なら俺と動かなくなったバイクを置き去りにした罰だと思えばいい!」

 

 そういや、リヴァルは原作で置いてけぼりを食らったっけ?

 

「リヴァル、お前なぁ……」

 

「そういえばルルって結局、昨日は何していたのよ? 何度も掛けなおしても繋がらないし!」

 

 リヴァルの次に、今度はシャーリーがルルーシュに問いをかける。

 

 何せシンジュク事変、彼はシャーリーに電話をかけて外部からのニュース情報を取るだけ取って電話を切った。

 

 一方的にである。

 

 俺から見てもそれは『無い』な。

 え?

『毒島の時もお前はやっただろ?』だって?

 

 だって……毒島だし?

『気にしていないぞ私は! ただし私の相手(サンドバッグ)をしてくれ! ん? 何か他の単語が聞こえただと? 気のせいだ!』

 

 保健室の予約制ができたのも、彼女のおかげ(?)だ。

 

「ああ、昨日は────」

「────ルルーシュのことだから、賭け事で負けた奴に追われて逃げていたのではないでしょうか? あとミレイ会長、これらの確認をお願いします。」

 

 そこにニコニコしながらペンを走らせていた俺は言い訳を考えていたルルーシュの言葉を遮り、終わった書類の束をミレイに渡す。

 

「「早?!」」

 

 ミレイとシャーリーの呆気顔、ゲットだぜー!

 フフン!

 従者見習いと貴族の英才教育は伊達じゃない!

 

「スヴェン、お前早すぎだろ?! もっとのらりくらりしようぜ~?」

 

「リヴァルも本気を出せば、これぐらいどうということはない筈さ。」

 

 つかお前、本気出したら普通にお前の本命を知らない女子にモテまくるぐらいの実力あるのに、カリフォルニアの親父が嫌いだからってグレて母方姓の『カルデモンド』を名乗ってブラブラするから『ダメ男』とレッテルを張られてミレイが相手をしてくれないんだよ。

 

「そこでシャーリーの名前を省いた理由はあるのかな?」

 

 ほらな? こいつ(リヴァル)、実は聡い方なんだよ。

 能力の使い道が間違っているだけで。

 バイクの魔改造をしたり、裏サイトで女子のスリーサイズ表なんか作ったりして。

 

 ナナリーの欄があったからそこは念入りに潰したけどな。

 

『ユーザーからのご希望?』だと? 知らねぇよ。

 

 園芸部の男子の何名かはその金を別のモノに使えよ。

 

「シャーリーは元から脱線しようとしたリヴァルに便乗しただけ、と言えばわかるかな?」

 

「はいはいはいはい! スヴェンの手伝いがあるといっても、彼がいつ出ないといけなくなるか分からないから部活の予算審査に専念しましょ!」

 

 俺の反論にリヴァルは苦笑いを浮かべ、ミレイが無理やり話を戻す。

 

「ま、降りないだろうけど馬術部がまた乗り込んできたらスヴェンに賭けてまた勝ってもらおうぜ?」

 

 そこで俺に頼るなよ。

 

 俺は何某猫型ロボットじゃねぇっつーの。

 

 今度からお前を『の〇太』と呼び始めるぞコラ。

『しょうがないな~リヴァル君』を言い始めるぞ?

ゴルディオンハンマー(ピコピコハンマー)』をミレイに渡すぞ?

 

 それに馬術部がカチコミしてきた時も、あれは状況が重なっただけだ。

 

 ミレイが俺の腕を離さずのまま頼み込んだ角度でその日の彼女が装着した大人の下着をチラ見させている間、勝手に話を進めて俺が生徒会代表として駆り出されるし……

 

 マシュマロ(たわわな胸)の誘惑には勝てなかったよチクショウ。

 

 ま、馬は人と違って素直だし? 馬乗も案外楽しいから全力出して勝ったけどな。

 けど二度目はノーサンキューだ。

 俺はそもそも生徒会役員じゃないし、勝手に準生徒会員のような扱いを流れ的にされているだけだし。

 

 ミレイが猫祭りをまた開催したら考えてもいいが、その時は絶対に口にするぞ?

 

 ナナリーに着せる衣装の丈をもっと長くしろ!

 車いすに座っている彼女にミニスカワンピースなんてものを着せたらパンツが見えちゃうでしょうが?!

 

 それにな、リヴァル?

 あの後馬術部がどれだけしつこかったか土下座のまま説教してやろうか? ん?

 お前のバイクがボロボロだったのも、奴らから逃げるために俺が乗っていたからだぞ?

 

 ガァァァァァッツ!」

 

 キィィィン。

 

 近くにいた俺は耳鳴りに耐えながら淡々と書類を片付けながら原作シーンがリアルで演じられたことで癒しを味わい、次の来るはずのシーンに内心ワクワクする。

 

 そういえば次回は『ミレイガッツ』を録音して、彼女の着メロにすればいいな。

 着メロが~♪ 増えてく、増えてく~♪

 

「ま、またそれですか?」

 

「そう♪ これは皆が頑張りたくなる呪文で~す♪」

 

「そんなインチキ魔法にかかりませんよ、会長。」

 

「あ、じゃあ私はかかったことにします!」

 

「うん、皮肉屋ルルーシュと違ってシャーリーは素直で肉体派だから安定の返事ありがとう~!」

 

「“鍛えている”って言ってください!」

 

「う~ん、確かに鍛えているから腰も贅肉も引き締まっていてトップとアンダーのバランスが整って良いわね~♡」

 

 ミレイ(と彼女に釣られてリヴァル)が見たのはシャーリーの決して小さくはない、制服の下からでも主張をする双山()だった。

 

「なななな何言っているんですか?! 会長の変態!

 

 シャーリーはパッとそれらを隠し、ミレイはニコニコし、リヴァルはニヤニヤし、ルルーシュは困った笑いを出し、ニーナは黙々と書類を片付ける。

 

 俺はと言えば書類を片付けてはいたが内心、ここにいる筈であるライブラのことが気になっていた。

 彼女も彼女でシャーリーに負けず劣らずのムードメーカーだからな、いるだけで楽しくてウキウキする。

 

 彼女は昨日から学園から姿を見せていなく、代わりにアリスがクラブハウスに来ては『今日、ライブラは恐らく来ません。 そして彼女の付き添いで病院に行くので私も早退します』とだけ言い残したのだ。

 

「(このタイミングで『病院への付き添い』となると、ライブラにはブリタニア軍人に知り合いがいるということか? それともシンジュク事変に巻き込まれた人────?)」

「────ねぇスヴェン? ここにいて大丈夫なの? 今日、“彼女”来ているでしょ?」

 

「大丈夫ですミレイ会長。 もしダメでしたら私はここにいませんよ。」

 

 ミレイが言う“彼女”とはカレンのことだ。

 流石に一年とは違って二年は何回かは顔を出さないといけないらしく、今日は登校しているのだ。

 

「お?! 会長、『幻』の一人が今日来ているんですか?! 珍しい!」

 

 ちょっと待て。

 何だそのあだ名は?

 どっから来た?

 

 というか“幻”とはどういうこっちゃ?

 

「あれ? スヴェンは知らないの? 女子たちの間でスヴェンは『幻の紳士』で通ってて~、カレンは……ええと?」

 

「『幻の赤バラ』だ!」

 

「そうそう、それ! ありがとうリヴァル!」

 

 シャーリー、俺の心境を読んでからの説明ありがとう。

 

「……『幻の赤バラ』?」

 

「お? さすがのルルーシュも気になるか?」

 

 あ、この流れは……

 原作でルルーシュがカレンにギアスを使う日だ。

 

 危うく俺の生き残る次の布石を打つタイミング見逃すところだった。

 

 “ダメだ、気が緩んでいたな”と思いながら、俺は今処理していた書類を最後に立ち上がる。

 

「ミレイ会長、やはり彼女の様子を見に行ってきます。」

 

「ちなみにアンジュリーゼちゃんは今日、剣術部に通う予定らしいから~♪」

 

「……?????」

 

 ニマニマしながらそう言うミレイに対し俺は?マークを浮かべる。

 なんでそこでアンジュリーゼの名前が出てくるんだ?

 

「……なぜミスルギ嬢の名が出てくるのかは存じませんが、ありがとうございます。」

 

「そういうことにしておくわねぇ~♡」

 

 いや、そんな顔をされてもマジで分からんがな。

 たまにミレイはこのように意味不明なことを言うが……

 

 彼女のことだ、悪いことではないだろう。

 

 あ。

 焼いたクッキーを渡しやすくする為に居場所を教えてくれたのか。

 

 流石ミレイだ。

 

 

 


 

 

 

 ルルーシュたちはニコニコしながらも?マークを浮かべていたスヴェンをクラブハウスから見送る。

 

「……会長?」

 

「ん? なぁにルルーシュ?」

 

「今のはどういう意味でしょうか? なぜアンジュリーゼさんの名が出てくるのですか?」

 

「むっふっふー! 知りたい? ねぇ、知りたい?」

 

 ルルーシュたちは『聞いて! ねぇ聞いてよ!』といった空気を出すミレイを見て全員が頷く。

 

「実はね、噂なんだけど~────」

 

 

 

 

 スヴェンは知る余地もないが、数分後にクラブハウスからは『えええええええ?!』と顔を紅潮しながら叫ぶシャーリー。

 

『アイツが羨ましいぃぃぃぃぃ!』と(心の中で)血の涙を流しながら叫ぶリヴァル。

 

『あ、そうなんだ』と呆気らかんに平然と口にするニーナ。

 

 そして────

 

「(────ほう。 これは使えるな……使えるか?)」

 

 ルルーシュはわずかながら邪悪な笑みをしながらそう思い書類が終わった皆と一緒に教室へと向かう。

 

 教室にルルーシュが戻るとクラスは先日のシンジュク事変のニュースで盛り上がっていた。

 

「あ……ルルの言っていたことって────?」

「────そう、このことだったんだシャーリー。 知り合いがリアルタイムで見ていたらしくてね? (おかしい……なぜあのことを伏せる?)」

 

 “あのこと”とはクロヴィスが撃たれたことの情報が出ていなかったのだ。

 

『総督が賊によって撃たれた!』など、メディアにとってはこれ以上ない美味しいネタの筈だというのに────

 

「────カレン! 久しぶり!」

 

「(ん?)」

 

 ルルーシュが見たのは儚げな、あるいは眠たそうな表情を浮かべた赤髪の少女がクラスメイト達に囲まれた場面だった。

 

 そして彼女の半歩後ろに立っているスヴェンの姿。

 

「(なるほど、あれがスヴェンの仕えているシュタットフェルト家のご令嬢か。)」

 

「ん~? ルルーシュ、もしかして彼女を狙っている?」

 

 リヴァルがからかいと本気半分ずつの問いをルルーシュにするとシャーリーの耳がぴくぴくと聞き耳を立てた。

 

「違うよ、“珍しい”と思っただけだ。 始業式以来だからな。 (なるほど……グラスゴーに乗り込んだ女をどこかで見たと思ったら、似ていたからか……あるいは……)」

 

「お目が高いね~、ルルーシュ。 『カレン・シュタットフェルト』。 体が弱いらしくて去年もお目にするのは数回程度。 

 でも成績は抜群に優秀で、もっぱらの噂ではスヴェンが手取り足取り教えているとか教えていないとか。 あ、これちなみに男性陣の妄想ね?

 あとシュタットフェルト家のご令嬢だから金はあるし、箱入りで性格も穏やか♪

 でもバラ(お姫様)に近づくにはトゲ(スヴェン)を突破しなくちゃいけない。 難易度が高いけど、ルルーシュなら出来なくも────」

「────だから違うって。」

 

 余談だがシャーリーは体をよじらせてまで聞き耳を立てていた。

 

 そしてその所為で思わず机から落ちそうだったそうな。




ペンが! ペンが止まらない~~~! *注*実際はキーボードです。

『ブリタニア絶対殺す狂犬』を加入させますか? *注意事項*作者はロストストーリーズ未プレイでゲームが完結していないので『高い可能性(ほぼ確定)でキャラ崩壊アリ』とだけ前もってここに書きます

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