「(このままではジリ貧────!)」
「────毒島────」
「────スバル────?」
「────俺と代われ。」
スバルは普段ではめったに見せない力強い宣言とともに、ほぼ無理やりに操縦桿を毒島から奪い、外にいる無人機のフローレンス──『フローレンス・ドローン』が迫ってくる景色を
「敵は12時、1時、10時の左右に下。 更に時間差で5時と3時────」
スバルは村正・陽炎タイプの操縦桿とコンソールを使って次々と安全装置を切っていく。
「────毒島、口を閉じていろ。」
「え────ガッ?!」
村正・陽炎タイプは、毒島が操縦していたとき以上の瞬発力を発揮し、スバルの身体が毒島に押し付けられ、彼女は肺から息を吹き出してしまう。
ピィー! ピィー! ピィー! ピィー!
「(武装は近接戦闘の物ばかりだが何丁かずつあるしエンジンと機体のエナジー残量は良好────)」
「(────こ、こ、これは流石というべきか?!)」
コンソールだけでなく毒島の網膜投影システムに様々なエラーと注意事項が音と共に出てくるがスバルはそれを気にする様子はなく、そんな彼に息切れする毒島は久しぶりにビックリする。
急加速により機体の軌道は揺れ、自然と直進しながら武器を持った右方向にロールし始める。
スバルは毒島に押し付けられながらも歯を食いしばりながら操縦桿のボタンを、ピアノをプレスティッシモに従って弾くピアニストのように操作していき機体のスラスターの僅かな噴射でロールを制し、急激な速度に戸惑うようなフローレンス・ドローンを一気に二機ほど通り様に村正・陽炎タイプが持っていた超硬度大太刀モドキによって
「(こいつ、急に動きが?!)」
モニカは背筋が冷たくなっていき、ドローンのバトルプログラムAIに指示を送りながらフローレンスを後退させる。
「(逃がさん────)」
「(────更に、早く、なった?!)」
スバルは右の操縦桿を上、左、上と動かすと村正・陽炎タイプの元となった
「やられる────?!」
────ガァァァン!
村正・陽炎タイプの超硬度大太刀モドキはモニカの予測通りに上から振るわれたがフローレンスのドローン制御通信装置とフロートユニット、そして右半身を斬る。
「な、なぜ?!」
だがモニカは別に安堵する訳でもなく、ただ困惑した。
なぜならば村正・陽炎タイプの超硬度大太刀モドキの軌道が
ガァン!
「ぐあ?!」
次に村正・陽炎タイプは飛び蹴りに似た追撃でフローレンスのコックピット内に居るモニカに衝撃が伝わり、フロートユニットにダメージを受けて高度維持が困難になったフローレンスは落ちていく。
「(こいつ! 私を無視するのか?!)」
残ったフローレンス・ドローンに新たな指示を出して落ちていくフローレンスを保護させながら、あっと言う間に遠ざかる村正・陽炎タイプをモニカは仕方なく見送る。
「(早く……もっと早く!)」
村正・陽炎タイプの速度を維持しながらスバルはそう思っていた。
早く、速く、
その願いに応えるかのように、機体から
……
…
『艦隊戦では不利』と判断したグリンダ騎士団の天空騎士団はナイトメア部隊を展開させ、リア・ファルもこれに応じた。
「「(こいつ、やる!)」」
その結果、自然と可変型であると同時に(デザインはともかく)同じ開発者を親に持つブラッドフォードとビルキースが見事な
否、グリンダ騎士団とマリーベルの功績が(渋々とだが)ブリタニア帝国の貴族に認められたことでキャメロットによる強化────通称『エメラルド・プラン』によって電力駆動プラズマ推力モーターから正式にトリスタンと同じハイブリッド仕様を施された『ブラッドフォード・ブレイブ』になったこととビルキースのアンジュが太平洋での様なエナジー消費を抑えるために噴射機によるゴリ押し機動戦を止めているおかげで『ようやく互角』と言ったところが現状である。
アンジュがレオンハルトの背後を取り、レオンハルトはコブラで急激な減速を図るとアンジュもコブラ────否、クルビットをしてようやく二つの機体は隣合わせとなってレオンハルトは気流を使って横方向へ偏移する『スリップ』でアンジュの機体に近づく。
「アイツ、私に取り付こうとしていたの?!」
「機体性能はそちらの方が上の様ですが、ミルビル博士仕込みの空中戦なら僕の方が上だ!」
ブラッドフォードがフォートレスモードからKMFになるとビルキースも人型となり
「(こいつ、やっぱりウィルバーさんが褒めていただけはある────!)」
「(この人の操縦! まだまだ荒々しいけれど、ダイヤモンドの原石の様だ────!)」
「「(────『まだまだこれから』と思うとゾッとする!)」」
純粋な機体性能ではビルキースに軍配が上がるが、それを補うほどレオンハルトもミルビル博士の元でしごき訓練された経験と理論を使っていた。
決してアンジュの操縦が悪い訳ではない。
彼女の操縦はゴリ押しによるところが多い『力技』に近い反面、レオンハルトは洗練された動作。
皮肉にも、二人の操縦スタイルは正反対でありながらお互いを高めていった。
「う~ん、どうしようかなぁ。」
ブラッドフォードのように強化されたゼットランド・ハートの中でティンクはのほほんとしながらも、展開した広範囲のブレイズルミナスの隙を探って攻撃しようとするアシュレイの操るレッド・オーガ(フロートユニット付き)を見ていた。
「テメェ! この野郎! 隠れてないで盾の裏から出てこいやぁぁぁぁぁぁ?!」
余談だがアシュレイはお預けを食らった柴犬のようにきゃんきゃんと吠えてブチ切れていたと追記しよう。
『あー、これってなんていうんだっけ?』
『“暖簾に腕押し”……だったと思う。』
『それな。 サンキュー、アヤノ。 ここは良いっぽいからアキトの所に行ってみたらどうだ?』
『私の腕じゃ、邪魔になるだけだよ。』
『ま、シュバールさんが認めているアキトと引けを取らないあの赤と金色のランスロットっぽい奴も相当ヤベェからな。』
「う~ん、あの子……腕を上げたね♪」
リア・ファルの甲板に膝を着けながら狙撃と電子戦を並行していたアレクサンダ・ヴァリアント(バックアップタイプ)の中でユキヤはライフルのスコープ越しに見える景色から、別画面で彼のアバターであるゆるキャラの大群が『貴族学生オルドリンちゃん♪』のマスコットの大群と激しい攻防を繰り返していた。
お互いのキャラの目が×印になるまで手らしきものでポカポカとお互いをテシテシと叩いているだけにしか見えないのだが、実際にはリア・ファルのユキヤとグランベリーのエリスの電子戦の状態が分かりやすいように無理やりグラフィック画像をユキヤが付け足しただけなのだが、彼にしてもシュール(子供心?)な絵面である。
「あれ? レイラ~?」
『なんでしょう、ユキヤさん?』
「この反応、もしかしたらぶっちゃん機じゃない?」
『……ええ。 角度も、識別信号も照合しますが────』
「────うん。
『……ユキヤさん────』
「────はいはい。 “カタパルトの妨げになるから退け”ってんでしょ?」
レイラはリア・ファルの中からユキヤの機体がぶっきらぼうな返事とは裏腹にそそくさと移動するのを見て今度は格納庫へ通信を開く。
「ミルビル博士、出撃準備の途中で申し訳ありませんが例の換装システムの発射準備をしてもらえませんか?」
『ん? いいが、試運転させる予定の蒼天は宝来島にあるぞ?』
「分かっています。 ですが機体のデザインが似ている
『まぁ、そうだが────』
「────270の方向から彼女の機体を操縦していると思われるシュバールさんが来ています。」
『分かった、すぐに出そう。 本番ぶっつけになるが────』
「────紅蓮の時も同じとラクシャータさんから聞き及んでいますよ?」
『……レイラ君。 もしやラクシャータに出来たことを私が出来ないとでも言いたいのかね?』
「え? いえ、ただ“状況が同じ”と言いたかっただけなのですが……」
『そ、そうか。』
「「「(うわぁ……)」」」
ブリッジに居たサラ、オリビアとBRSのチェックをしていたソフィたちは純粋なレイラに毒気を抜かれたウィルバーに同情した。
「(??? なんだろう、この空気?)」
レイラの言葉の意図を察していたユーフェミアだけはレイラと同じくハテナマークを頭上に浮かべていた。
「(これは────)」
強化スーツの補助でもスバル(の身体)に押しつぶされそうだった毒島はようやく乱れていた呼吸を整えながら網膜投影システムの表示にリア・ファルからの通信で新たに更新されていく戦域マップに、『補強パーツ』と友軍信号を出している物がリア・ファルから村正・陽炎タイプの向かっている射線上に動いているのを見る。
「(────流石はレイラたちだ。 天空騎士団相手に、主砲を使わず単純な艦隊戦とKMFによる攻防でここまで消耗させながら死者を極力出さないようにするとは……しかし、BRSのテストで測定不能と出たスバルに網膜投影システムは見えない────!)」
スバルは速度を落とすことなく再び跳躍するとリア・ファルから射出された補強パーツが機体信号を受信し、機体を通り過ぎてからUターンをして追いながら軌道修正を自動で行って村正・陽炎タイプに急接近する。
「スバル────」
スバルにこのことを伝えようと毒島は口を開けるが、どういう訳か最後の最後で彼は機体のスラスターと肩と背部のサブアームを使って吸い付かせるように補強パーツを手動で受け取る。
「さ、流石だな────ウッ?!」
毒島は網膜投影システムによって機体ステータスの表示に安堵しながら外部モニターに戻しながら声をかけようとして機体が追加されたフロートユニットに腰の跳躍システムや足裏の噴射機が点火して更にG(とスバル)がのしかかる。
村正・陽炎タイプはただ速く、銃弾やビームが雨霰のように降る空を駆けた。
「来る?! グランベリーのシールド位置修正────!」
「────間に合いません────!」
「────面舵!」
村正・陽炎タイプの行く先に居たグランベリーは慌てながら機関部に予備のエナジーを注入して無理やり艦を動かす。
「(ぶつかる?!) 総員、ショックに備えよ!」
シュバルツァー将軍は近くの手すりを両手で握り、オペレーターのエリスとエリシアは頭部を両腕で守り、トトは犬耳をぺたんとさせてから眼鏡を外し、エリス達のようにかがむ。
「「「「…………………………………………」」」」
だがどれだけ待っても予想していた村正・陽炎タイプとの衝突や攻撃が無かったことから、先に状況把握に動いたのはシュバルツァー将軍だった。
「(バカな、このレーダーによると機体はグランベリーに────)」
『シュバルツァー将軍~! こちらソキア! あの所属不明機、グランベリーの甲板を地形代わりにランドスピナーで更に加速して飛んでいった!』
「「「「は?」」」」
『エニアグラム卿のクラブ・エアも追いかけるように飛び出たにゃ~!』
「「「「は?」」」」
『なんでじゃ~?!』
「「「「こっちが知りたい/よ/です/わい!」」」」
グリンダ騎士団の設立とメンバーが揃ってから恐らく初めてブリッジ要員のエリシア、エリス、トト、シュバルツァー将軍の心は通じ合ったそうな。
「(あの機体……だが動き方はシュバールさんか────)」
「(あれは……セントラルハレースタジアムで見た立体機動? 乗っているのはマリーを守った奴ね────)」
「「(────速いな/わね。)」」
ようやく完成したフロートユニットを装備したアレクサンダ・リベルテとランスロット・トライアルの中に居たアキトとオルドリンは全力を出していた攻防を一瞬だけペースを下げて村正・陽炎タイプを見送ってから戦闘行為を再開した。
「「(彼があれほどの速度を出せるというのなら、俺/私の機体も!)」」
二人が何らかの閃きをしたのか、感化されたのか、更に二人のせめぎあいはヒートアップした。
……
…
「中華連邦軍、前進してきます!」
「(来るか、星刻。)」
天帝八十八陵が夜に包まれ、黒の騎士団とのにらみ合いに業を煮やした大宦官によって中華連邦軍の一部が動き出す。
ザザ。
「ん? 今のは、なんだ?」
斑鳩のブリッジ内にあるスピーカーからノイズの様なモノに扇は誰かに向けたわけでもない問いをする。
「恐らく────」
『────黒の騎士団、こちら黎星刻! ゼロ、聞こえるか?!』
「(やはりな。) 洛陽以来だな、星刻?」
『ゼロ、お前ほどの者ならば私が合同作戦用の周波数でこの通信を開いた意味を理解している筈だ。』
「ああ。 (そして、それに乗じて────)」
────ヒュルルルルルルルルル、ドガァン!!!
「い、今のは────?!」
「これは────?!」
「────ここを中華連邦軍が空爆しているのだろうな。」
「「「「「え?!」」」」」
扇たちがゼロの平然とした答えにギョッと目を見開かせる。
「中華連邦は────いや、大宦官どもはこの天帝八十八陵ごと我々を潰すつもりだろう。」
「それって……天子様を見捨てるという事か?!」
「ああ。 (とうとう化けの皮を剥がしたか。 タイミングは恐らく、星刻の通信だろう。 そして首謀者はブリタニアの────)」
……
…
「な、なにを?! 全軍攻撃を中止しろ! あそこには天子様もおられるのだぞ?!」
天帝八十八陵への攻撃を見た星刻は慌てながら周波数を中華連邦に戻して上記の通信を飛ばす。
『星刻、分かっておらんな?』
『天帝八十八陵は“歴代の天子様が眠られる所”。』
『そしてオデュッセウス殿下とも釣り合う新しい天子の手配は既に済んでおる。』
「貴様等、天子様を────?!」
『────全軍、反乱軍共々黒の騎士団を攻撃せよ。 ブリタニアの方々も、ご自由に。』
ガァン!
神虎を上空からトリスタンがハドロンスピアーで切りかかり、星刻はこれを巨大中国刀で受け止める。
『そこを退け、ブリタニア! これは中華連邦内の問題だ!』
『そうもいかないんだよね。 シュナイゼル殿下経由で中華連邦の
神虎が介入要請(とパイロットの私情)によって襲い掛かるトリスタンと空中戦を行う間、モルドレッドは星刻の部下たちを文字通り一方的に壊していく。
斑鳩からフロートユニットを搭載し直した藤堂や四聖剣の機体、ベニオを含めた零番隊とピンク色の暁が発進する。
「スゴイ! まるで機体が空気の一部みたい────!」
『────機体性能に感動しているところ悪いけれど、作戦の方針を伝えるわよ────?』
「────そう言いながらサヴィトリも嬉しそうじゃん────♪」
『────この戦いで一番の脅威は言うまでもなくブリタニアのナイトオブラウンズよ。 そして彼らの専用機に対抗できるのは藤堂機、千葉機、朝比奈機、卜部機、仙波機。 そしてC.C.機────』
「────え? 本当に~? あのC.C.さんが~?」
ベニオが思い浮かべるのは先日のお菓子試食パーティで文句を言いながらもピザのトッピング用としてそれぞれの種類が入った箱を確保する食い意地を張ったC.C.だった。
『言いたいことは分かるし私も同感だけれどデータは嘘をつかない。 だから彼ら彼女らがラウンズを相手にしている間、貴方は零番隊と共にブリタニアと中華連邦の航空戦力を押さえなくちゃならない。』
「えええええええええ?! でも私、部隊長なんてやったことないよ?! 無理だよ!」
『そこまで期待していないから。 貴方はいつも通りに突貫すればいいのよ。』
「あ。 うん。 そだね……」
『……(確か日本ではこの状態のベニオを“叱られた犬”って呼ぶのかしら?)』*1
「さ・て・と! 砕け散れぇぇぇぇぇ!」
ベニオは新たな強化パーツの出力に耐える為、無頼弐型の本体を一段階上のエナジーフィラーを搭載した暁用に変えた上にカレンの紅蓮用パーツを付けた『
「ッ! データのないヴィンセントタイプでも────!」
ベニオは空中回転で大型キャノンから打ち出されたロケットを躱し、ヴィンセントに似た機体────RPI-212B、『ヴィンセント・ウォード』に接近して特殊鍛造合金製ナイフで切りかかる。
『ヴィンセント・ウォード』とはベニオが一目見て分かるようにヴィンセントを更に量産に向けた結果に出来た機体で、ランスロットを基にした機動力のおかげで『グロースターの次世代機』として少しずつブリタニア帝国内で指揮官機として配備されていく予定の機体である。
本来、原作ではこのような戦力をアヴァロンは持っていないのだが元々マリーベルが独自のルートや交渉などでヴィンセントのパーツなどを取り寄せる『言い訳』として『ヴィンセントの量産化のテストを行っている』という事をカノンから聞いたシュナイゼルは、グリンダ騎士団が旅立つ前に数機ほど『実戦テストの為』と取り寄せていた。
つまりスバルの所為である。*2
『うわぁぁぁぁぁ?! 脱出機能が発動しな────?!』
────ボォン!
「ッ……ごめん!」
紅鬼灯に捕まって輻射波動の所為でコックピットブロックが歪み、脱出機能が作動しないことに慌てたブリタニア軍の兵士の叫びがベニオの機体に届くと彼女は謝罪の言葉を漏らす。
『ベニオ! 今だから言うけれど最初は貴方の事はあまり好きじゃなかった! 新参者でカレンさんの様な戦い方をわざとして気にいられたと思っていたけれど、貴方と暮らしてそれが貴方の素だって分かった!』
「(ありがとうサヴィトリ。 でも私は目を逸らさない。 今、私は人殺しをしている。 でも────!)」
『すまない。』
「(────ゼロだって人の心があるんだ! だから、カレンさんの事とか全部含めて私に謝るぐらい普通の人なんだ! だったら、ゼロもカレンさんを助けたいと思っている筈なんだ!)」
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追記:
更新ペースが週三から二に落ちるかも知れません、ご了承くださいますようお願い申し上げます。 m(_ _)m