楽しんで頂ければ幸いです!
長い、長い夜に夜明けによる陽光が天帝八十八陵とその周りの地形を照らすと昨夜の軍事行動が如何に激しかったか一目瞭然だった。
数々の敵味方双方の鋼髏の残骸、中華連邦の戦闘ヘリや爆撃機、ブリタニア側のヴィンセント・ウォード、黒の騎士団の暁、片翼を切り落とされた神虎によって大穴を開けられた
比較的にダメージが少なかった斑鳩も、殆どの理由は戦闘に参戦していないおかげだった。
『大宦官の醜態を晒す段階から戦後、星刻派との上下関係をはっきりとさせる為』という考えも入っているが。
それだからか、戦闘処理後に星刻派と黒の騎士団と行われた会談は斑鳩の甲板だったのかもしれない。
「怖かったでしょう、天子様……」
「怖かったけれど、朱禁城の外を見ることが出来たし……えっと……怖かったけれどそれとは違うドキドキがしたというか────」
「(────強くなられましたね、天子様。)」
星刻は上手く描写が出来ないことにドギマギする天子を見て微笑ましい気持ちになりながら、今後の事を考えていた。
「(探していたシュ・リーフォンと連絡が取れたことで一斉蜂起をした民衆たちの大部分を紅巾党経由で我々の方針の下で広めたおかげか、予想していた以上の領土を確保できたのは幸いだった……)」
余談だがオルフェウスに『洛陽の警備に黒の騎士団と共に潜入』という依頼をスバルがしたついでに彼から“紅巾党のシュ・リーフォンと会っていないか?”と聞いたことで(オルフェウスからすれば)全ての点がそろい、彼はリーフォンと以前に受けた
ちなみにスバルの何気ない問いは原作から『オズ』の展開がかなりかけ離れたためであり、まさかオルフェウスとコーネリアが既にシュ・リーフォンと接触していたのは完全に予想外であり、単純に『潜入任務(女装)』のついでで気になっただけである。*2
そのおかげでオルフェウスとルルーシュはお互いと相手のギアスを知ることとなったが完全に偶然であり、スバルには全くそのような思惑は無かったと再度付け足したい。
「(さて、中華連邦の混乱を収める前にもう一つの難問を超えなければ。)」
星刻は天子から斑鳩の甲板で自分の部下たちと相対するかのように向こう側に立っている黒の騎士団たちとゼロを見る。
……
…
「(いいなぁ……)」
黒の騎士団側に居た千葉は頬を赤らませながらチラチラと仏頂面の藤堂を見て、そんな様子の彼女を見た朝比奈と卜部は微笑ましい笑顔を浮かべ、扇、南、吉田に杉山も天子と星刻のやり取りに微笑ましい顔、そして嬉しそうな表情浮かべた神楽耶とアンニュイなC.C.とは別にディートハルトがゼロに耳打ちをする。
「ゼロ、『天子とブリタニアの第一皇子の婚姻が無効になった』と世界中に喧伝する必要があります。 同時に、力関係を知らせる為に日本人の誰かと結婚して頂くのが上策かと考えますが?」
「………………………………」
本来、ゼロも『花嫁強奪計画』の初期段階からディートハルトが提案したような政治的宣伝に天子を利用するつもり満々だった。
原作でも彼が躊躇なくディートハルトに同意し、内心で『藤堂……いやこの際、玉城でもいいか』と思っていたほどでその場にいた
「……少し、席を外す。」
だが原作より少々物分かりの良い天子と触れ合い彼女の評価が上がったこと、星刻が彼女との約束の為にクーデターを起こしたことが自分とナナリーを連想させたこと、そしてカレンが戻ってきたことで焦る気持ちが無くなり冷静になっていたことでルルーシュはゼロの仮面の下で迷い、思わず上記の言葉を出した。
「(何故だ? ディートハルトの提案していることは理論的にも政治的にも正しく、わかりやすく妥当な正論だ。 だというのに、なぜこうも胸がざわめくのだ? 一体、どこに問題が────?)」
「────あ、ゼロ!」
思わず近くにある斑鳩内部へ通じる通路でうろうろしていたところに、玉城が声をかけてくる。
「玉城か、カレン達の様子はどうだ?」
「んー……ラクシャータたち医療チームはまだスバルに総動員中だが、取り敢えず
「そうか……」
「なぁゼロ? この時に言うのもなんだけどよ、俺になんの肩書もないのも後輩連中に示しが────」
────プシュー────
「────中々俺たちが喋る機会が無いじゃん────?」
────ガコン────
「────って、シカトかよ?! なんかあるとすぐ別の用事つくりやがって! ケッ!」
玉城は無言で近くにある物置部屋の中にゼロがスーッと入ってはドアを閉めるのを見て、彼はブツブツと言いながら斑鳩内部へと戻っていく。
「(一体、何をすれば────ん?) もしもし?」
『あ、ルル? 今いい?』
ルルーシュはマナーモードにさせていた学生の身分用の携帯電話が鳴っていることに気が付き、電話を取るとシャーリーの声が届く。
「シャーリー? どうしたんだい?」
『実は今日、理事長にこっそり教えられたんだけれど
「そ、そうなのか?」
ルルーシュは携帯の着信履歴を見ると確かに理事長からの連絡が何回か届いていた。
「(しまった。 黒の騎士団活動で忙しくて咲世子に変装させているとはいえ、携帯の確認を怠るのはマズいな。) それで、理事長は何て?」
『“
「(そんなの、俺に聞かれても……) いっそ、会長自身に決めさせれば?」
原作同様に、黒の騎士団のゼロとしての活動が始まったことでミレイに対する投げやりな態度は変わらなかった。
『う~ん……でもそれだと、ちょっとねぇ~。』
「(そうだ! シャーリーに聞いてみよう!) なぁシャーリー? とある男女が別れたら国────じゃなくて、双方の家族と周りにメリットしかないんだが……シャーリーならばどう思う?」
『その男女、別れたいの?』
「は? いやでも、別れた方が、その……得が────」
「ふぉ?!」
キィィィン。
ルルーシュは携帯電話越しに聞こえてきたシャーリーの断固拒否を示す叫びに素っ頓狂な声を出してしまい、耳鳴りに顔をしかめる。
「な、なぜだ?! どうし────?」
『────その二人、想い合っているんでしょ?! 家の問題は家の問題! そのカップルたちに全然関係ないでしょ────?!』
「────い、いや。 そうは言うが、シャーリーも一応フェネット家の令嬢なら理解でき────?」
『────ダメダメダメダメダメダメ、絶対にダメェェェェェェェェェェェ!!!』
「(シャーリーにここまで言わせるとは……一体?) だが、その二人が一緒だと、家も周りも────」
『────
「(────“思いは力”、だと────?)」
『────強ければ強いほど、何でも出来ちゃう気持ちになるし実際できちゃうの! 毎日毎日毎日そのひとのことを考えちゃって詩を書いちゃったり、夢見て早起きしちゃったり、冬になってきたらなけなしの裁縫能力でマフラーを編んじゃったり、プールに飛び込みながらそのひとの名前を叫びたくなったり────!』
「────そ、そうか。 つまりその……なんだ、“想いにはその人の世界を変えるほどの力がある”と言いたい……あ。」
『ルル?』
「(そうか。 だからアイツはボロボロになっても、ああやって特攻を……)」
『……』
「(案外、以前リヴァルが言ったことも“あながち間違ってはいなかった”と言う事だろうか────?)」
『────ルルはさ、普段やらないことをやらせる人って……いない────?』
「────ありがとうシャーリー!」
『へ? あ、うん。 どういた────』
────プッ。
ルルーシュはシャーリーの言葉を遮るかのように携帯を切ってから、斑鳩の甲板に戻っては高らかに天子の処遇に関しての答えを出す。
「天子様よ! 貴方は最早、自由の身! 己の未来は、己の心で決めるのだ!」
「へ?」
「心は力の源……大宦官に対して決起した人々も天子様と国を憂う心、我々黒の騎士団も正義という心で戦ってきた!」
ゼロの言葉に中華連邦や黒の騎士団のほとんどの者たちは『ゼロにも人としての心がある』と、ホッとしながら内心で安堵した。
「(“心は力”? ゼロ……貴方は、本当にブラックリベリオン前と同じゼロなのですか?)」
ディートハルトだけは違ったが。
……
…
プッ。 ツー、ツー、ツー。
「もう! ルルったら、こういう所は変わらないんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アッシュフォード学園にある水泳部の更衣室内でシャーリーの叫びが響く。
「どうしたシャーリー?」
「ルルの事ですよ! 聞いてくださいよヴィレッタ先生!」
「ま、まぁ彼も多忙な身だからな────」
「────ルルにミレイ会長の事を相談するために電話をかけたら自分の聞きたいことだけ聞いて一方的にあっちから電話を切ったんですよ?! 理不尽と思いません?! それにこの頃まるで人が変わったように変になっているから心配しているのに全然会えなくて肝心なところで連絡が届かなくてもどかしくてやっと繫がったのに具合も調子も聞ける前に切られる私の気持ち分かります?!」
「その気持ち、分からないでもないぞシャーリー。」
「「「「「「へ。」」」」」」
水着に着替え終わったヴィレッタ先生がいつになく本気の表情を浮かべながら同意すると思わずシャーリー本人含めて水泳部の者たちが目を白黒させる。
「「「「「「……」」」」」」
「あ……その……えっと、なんだ……いいいいいい今言ったことは忘れてくれ!」
ヴィレッタは静かになった更衣室を見渡すと、部員がポカンとしながら自分を見ていたことに慌てだしながら部屋を後にすると更衣室に居た者たちはキャピキャピし始め出す。
「今の聞いた?!」
「聞いた聞いた!」
「あれって絶対、ヴィレッタ先生も彼氏持ちだという事よね?!」
「そうじゃなくても誰かを思っているみたい!」
「相手は誰かな?! やっぱり教師?」
「それとも生徒だったりして!」
「「「「きゃああああああ!♡」」」」
「(……あれ? 確かナイトオブセブンの歓迎会で……う~ん?)」
ふんわり紫ロングで学生なのに4位の井上と同等の胸の持ち主で水泳部のミーヤ・I・ヒルミック*3は思わず水泳部カフェを連想してしまい、持った違和感に対してハテナマークを浮かべて首を捻った。
「ハァァァァァァ。 (最近のルルってば変。 何時も通りだったり、妙に優しかったり、距離を取ったり……アレだと、
シャーリーも(ミーヤとは違うベクトルだが)違和感を持った。
…………
………
……
…
中華連邦に介入する大義名分を失ったアヴァロンは応急処置を終えたシュバルツァー将軍が率いる
「(ハァァァァ。)」
そんなアヴァロンのラウンジスペースにミレイは自分の携帯電話のメッセージアプリを見て、スヴェン宛のモノ等に未だに『未読』が付いていることに内心でため息を出す。
「(なかなか連絡が付かないなぁ~……どうしよう?) ハァ~。」
ロイドが紅蓮の事で狂喜したり、発狂したり、アヴァロンやラウンズの機体の修理に取り掛かって手持ち無沙汰のミレイは先日の歓迎会から自分の母の『さっさと嫁ぎなさい』
それもこれも“庶民の~”と言う口癖(?)以外、ラウンズであると同時に古くから続いている由緒正しき名門貴族ヴァインベルグ家という肩書に人柄の良さそうだったこととノリの良さもあって意気投合したジノが、後夜祭を始める合図として相手を探して困っていたミレイを誘ったことから始まった。
いつの間にか『絵になる』と軽い気持ちでジノとミレイのダンスする姿を写真に収めてブログにアップし、それがミレイの母に伝わったからである。
「(どうした良いのかなぁ~……あら? 噂をすればヴァインベルグ卿。)」
ミレイはソファの背もたれに身を預けると、いつの間にかラウンジスペースで外を見られる窓際に立っていたジノを見かける。
これぐらい何ともないのだがジノの顔はいつもの自由で奔放な振る舞いをする彼からかけ離れた、暗いモノだった。
理由として単純であり、先日の戦闘で未確認機が送った通信が原因だった。
“ジノ・ヴァインベルグとは?”という問いを投げれば以下の様な返答が返ってくるだろう。
『卓越したKMF操縦技術でラウンズの地位を自らの手で得た実力派。』
『スザクと同等の動体視力を持ち、空戦シミュレーター(ミルビル博士の手製)ではSランクの評価。』
『初見の相手に余裕を持つ自信家。』
『浮世離れした好奇心旺盛な貴族。』
『与えられた命令に疑問を持たず、忠実に実行する。』
等々と纏まっているように見えるのだが、見方を変えれば『自分自身の思想や主義主張を持たずにただより大きな存在に帰属しているだけ』という一面もチラホラと見え隠れしている様に見えなくもない。
「(“皇族殺しのヴァインベルグ”、かぁ……まさか知っている奴と会うとはなぁ~。)」
ジノにとってヴァインベルグ家は誇りであり、ブリタニアを古くから支えていた一族。
今でこそ『ブリタニア帝国』と名乗っているが、一時は『ブリタニア共和国』となったので厳密には『第二ブリタニア帝国』であり、ヴァインベルグ家は初期時代のブリタニア帝国を宮中伯として政務を支え、皇帝と皇族たちが殺された所為で国として滅亡を迎えようとした時に活躍しただけでなく復興に大きく貢献し、それからもブリタニアを中枢から支える屈指の名家。
だが皮肉にも、初期のブリタニア帝国を終わらせようとして皇族を殺したのもヴァインベルグ家の者だった。
名は『ガヌロン』と言い、その少年は当時のヴァインベルグ家の嫡男であるアルト・ヴァインベルグとは所謂『幼馴染』であり、二人はお互いを補うような関係を築いた。
アルトは『武』を、ガヌロンは『知略』を。
ガヌロンはある日、自分がアルトの妹アネットと恋仲であることを告げ、アネットの婿になりたいことを申し入れた。
アルトは何の疑いを持たず、ガヌロンと自分の妹のアネットが結ばれることを家族同様に祝福し、共にブリタニア帝国を支え合うことを誓った。
事件が起きたのはガヌロンとアネットが結婚してから一年後、アルトが騎士として蛮族退治の遠征から返ってくる途中で、皇帝と皇位継承権を持つ皇族たちが暗殺され、捜査の結果『ヴァインベルグ家の献上品に遅効性の毒が見つかった』という報告だった。
ヴァインベルグ家の者たちを捕縛した際、ガヌロンが逃亡したことで連帯責任としてアネットやガヌロンに近かった者たちは
皇帝と皇族が亡くなり、ブリタニア帝国を束ねる権力を持つナイトオブワンも行方不明になったことで覇権をめぐる内紛に突入する直前、ロレンツォ・イル・ソレイシィが無理やりブリタニアを『帝国』から『共和国』に体制を整えたことで国家を首の皮一枚で繋ぎ止めた。
そしてロレンツォは絶対の忠誠をアルトに課すと引き換えに一時の自由を与え、反皇帝派を集め出したガヌロンの
アルトにとってこの依頼は衝撃的だった。
今まで騎士道精神一筋で生きてきたことで卑怯な手を強いられたのもあるが、幼馴染のガヌロンを追い詰めて“何故皇帝たちを殺した”という問いに対しての答えだった。
『
そう言いながらガヌロンは茫然とするアルトの前で自ら持っていた剣で自分の腹を切り裂き、笑いながら自殺した。
この一連が『皇族殺しのヴァインベルグ』の由来であり、未だにヴァインベルグ家が
全ては過去に(入り婿とは言え)先祖のした罪の贖罪と、第一ブリタニア帝国が崩壊した真実を隠匿するための監視。
これ等を知っているのは皇族でも現皇帝と、ヴァインベルグ家の現当主、ヴァインベルグ家の次期後継者を含めて
さて。
上記のこれ等を並べた今、それまで自分の家に絶対的な誇りを持ち、『かの英雄アルト・ヴァインベルグの現身』とまで呼ばれ、貴族らしくチヤホヤされてきたジノが『次期後継者』に選ばれたことで喜びながらヴァインベルグ家の真実を告げられた時の気持ちを想像できるだろうか?
想像しにくいのならば、これも付け足しておこう。
『表向き、シュタイナー家はヴァインベルグ家に仕える騎士家だが実は監視役と不穏な動きを見せればヴァインベルグ家の
つまり今まで兄弟のように平然と接してきたレオンハルトが、『一歩道が間違っていればジノを殺す刺客になっていたかもしれない』という事。
これを発端にジノはレオンハルトに模擬戦を申し込み、それまで両親の目から隠れてひっそりと読書などの騎士らしくない生活に明け暮れていたレオンハルトの人生と彼の軟弱さが明るみに出たことでシュタイナー家の状況も一転することとなるのは、模擬戦を申し込んだジノ本人もこの時は想像もしなかっただろう。
「ハァ~。」
「ジノ、ため息が多い?」
「んあ? アーニャ? 何時からそこに?」
「ロイドの婚約者に呼ばれた。」
「……ああ、アッシュフォード家のご令嬢か。」
「それとマルディーニ卿から伝言もある。 “モルドレッドとトリスタンのメンテをエリア11で行わせるから、休暇をアッシュフォード学園で取って来なさい”と。」
「は?」
「大丈夫、ジノの制服サイズは合っている筈。 私の
「は?」
というわけで『皇族殺しのヴァインベルグ』は『漆黒の蓮夜』からでした。
ジノについては独自の解釈&設定です。 (;´ω`)