小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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少々長めで勢いで書いた次話です!

楽しんで頂ければ幸いです!


第221話 寝ている間にも世界は動く

『随分と中華連邦は騒がしいようですわね、お兄様?』

 

 アヴァロン内にあるシュナイゼルの事務室にて、要人護送艦『ハイシュナイゼン』を見送っていたシュナイゼルは事のあらましが書かれた報告書を送りながら直々に通信を開くと開口一番にマリーベルから上記の言葉が来る。

 

「はは、すまないねマリー。 ようやく兄上の相手が決まったところで、このような事態を危惧して君の天空騎士団を借りてもこの有様さ。」

 

『それでもお兄様の事でしょうから、得る物はおありだったのでしょう?』

 

「私の頭は兄上の婚約が台無しになったことでいっぱいだよ。」

 

『そうですか……このまま混乱中の中華連邦に宣戦布告いたします?』

 

「いいや?」

 

『あら意外。』

 

 シュナイゼルから予想していた言葉とは違う即答にマリーベルは思わず上記の言葉を口にしてしまう。

 

『ンン……失礼。 私、てっきりこの混乱に乗じるのかと思いました。』

 

「EUとの戦争は順調だけれど、帝国が経済的に何かと不安定な今そんな大それたことをやる必要はないと感じている。 戦争なんて、()()()()だからね。」

 

『ッ……お兄様────』

「────ああ、今のは失言だったね。 忘れてくれマリー、思っていたよりショックが大きかったようだ……それとジヴォン卿たちだけれど、天空騎士団と共にペンドラゴンへ向かう。」

 

『ペンドラゴンへ?』

 

「兄上を送ることも兼ねているけれど、皇帝陛下の名でヴァルトシュタイン卿に呼ばれていてね。 恐らく、今後の事を話す為だと思う。 丁度私も一度ギネヴィアたちと話す必要があると思っていたところだから好都合だけれどね。 もう少し借りることになると思う────」

『────それでしたら、オズたちも喜んでいると思うわ。』

 

「そうかい……ああ、それのお返しと言う訳ではないが今回得た戦闘データも送ろう。」

 

『まぁ♪ それは嬉しいですね♪』

 

「ははは。 では、ペンドラゴンに着いたら天空騎士団をエリア24に送るよ。」

 

 満面の笑みになるマリーベルを見てシュナイゼルは軽い笑いをして通信が終わる。

 

「……」

 

 トン、トン、トン。

 

 シュナイゼルはそのまま仮面の様に散々顔に付けてきた『愛想笑い』を外し、無表情なまま机を指でトントンと軽く叩きながら現状の整理を脳内でしていく。

 

「(中華連邦とのことは残念だが、思っていた以上のリターンがあった。 アールストレイム卿はともかく、クルルギ卿にはいい刺激になっただろう。 まさかニーナたちを艦に乗せたことがこの様な結果を生み出すとは……それよりも、ヴァインベルグ卿だ。 ()()には驚いたが、ヴァインベルグ家の婚姻や人間関係が筒抜けだった事や名門貴族の家だというのに親族の数が異様に少ない等を考えれば腑に落ちる。 セシルが独断で開発してエニアグラム卿にこっそりと取り付けていた技術────)」

 

 ────トン!

 

「(それよりもフローレンスからのデータ、トリスタンとモルドレッドの特徴を知っているかのような対応、こちらの予想と思惑の斜め上をいく行動とブリタニアでもEUでもインド軍区系統の技術に収まらない機体……まさに『幽鬼』と呼んでも違和感がないだろう。 しかし────)」

 

 シュナイゼルは端末を弄り、村正・陽炎タイプが紅蓮を持ち帰る際の映像を出して()()()誤射しやすい状況下で攻撃をしてしまった瞬間を一フレームずつ動かす。

 

「(────ここだ。)」

 

 シュナイゼルが何度も再生するのは攻撃が当たる瞬間、村正・陽炎タイプの位置が前後のフレームの間にいつの間にかズレていた。

 

 アヴァロンは『世界初の航空浮遊艦』ということから未だに設備全てが最先端技術の塊。

 それは無論センサー類やカメラも入っている。

 

「(このような仕様ではないとは言え、この機体の動き方は物理法則を無視しているとしか思えない。 それに────ん?)」

 

 シュナイゼルは自分宛てに送られてきたメールを開くと、彼ののっぺりとした顔に笑顔が戻る。

 

「ほぅ……」

 

 メールの件名には『バトレー将軍たちが行方不明』と書かれ、報告書には『まるで忽然と作業中に姿を消した』や『休憩中に食事していた痕跡あり』などが書かれていた。

 

「(ロイドは嫌がって否定していたけれど、『超』が付く現象も視野に入れて行動をしないといけないかな? それに『幽鬼』はどうやら紅蓮のパイロットの事を……) フフフフフフフフフフフフフ。」

 

 シュナイゼルは鼓動する脈と腹の奥から湧き上がる衝動のまま笑いをこぼし、ペンドラゴンで待ち受けているであろう会談について考えをし始める。

 

 その中には、次の波乱場所となる筈のエリア11と『幽鬼』もあった。

 

 ……

 …

 

 カラン。

 

「……」

 

 モニカは注文してから全く手を付けていないジュースの入ったガラスの中にあった氷が溶けては崩れ、彼女は考えに耽っていたのか全く反応せずにただテーブルに座りながらボーっとしていた。

 

 「ティンク、クルシェフスキー卿の正装姿っていいですね。」

 「そうだね。」

 

 同じ休憩スペースで食事をしていたティンクたちはチラチラとモニカの方を見ていた。

 

「(うーん、クルシェフスキー卿も『幽鬼』と遭遇していたか~。)」

 

 彼女はフローレンスとフローレンス・ドローンと共にアヴァロンではなく、近くに居たグランベリーに回収されてそのまま居残り、ティンクは伝手によりモニカやジノたちにアヴァロンの事を聞いていた。

 

 「なぁ、聞いたか? 『幽鬼』のこと?」

 「ああ、噂じゃアヴァロンの防衛を突破して機関部を停止させたんだろ?」

 「その防衛に、ナイトオブラウンズも絡んでいたって知っているか?」

 

 ティンクの耳に、先日から徐々に広がっていく噂に関してひそひそと話すブリタニア兵士たちの声が届く。

 

「(それに宰相閣下のことだから、恐らくワザと情報操作をして『幽鬼』の危険性を広めているだろうね……あ。)」

 

「ちょっといいかい、モニカ────?」

「────え────?」

「────よっと。」

 

 モニカの答えを待つことなく、ノネットはモニカの向い側に腰かける。

 

「見たよ、フローレンス。 モニカもやられた?」

 

「ええ、まぁ……正確には、()()()()()と言えばいいのかもしれませんが。」

 

「ん? どういうことだい?」

 

「最初は善戦していたんです。 ですが、急に私との対決に飽きたかのような……」

 

「ふぅ~ん? モニカさ、何かやっていない?」

 

「え?」

 

「いやね、勘なんだけれど『モニカが何かやった』って感じるんだよね。」

 

「……降伏するように通信を送りましたが────」

「────ちょい待ち。 アンタ、そんなに有利だったわけ?」

 

「え、ええ。」

 

「通信、なんて送ったんだい?」

 

「えええっと……相手が恐らく黒の騎士団が起こした騒動に便乗した反ブリタニア組織の者と思ったので“紅蓮を捕獲した”と。」

 

「・ ・ ・」

 

「え、エニアグラム卿?」

 

 「ふぅ~ん?」

 

「……何かおかしかったでしょうか?」

 

 「いんや? 別に~?」

 

「でしたら何ですか、その顔は?」

 

「う~ん……消化不良?」

 

「胃薬、飲みます?」

 

「そっちじゃないよ! モニカは真面目だねぇ~……私服とかは()()なくせに。」

 

「は?」

 

「「「「「(私服が……『アレ』とは?!)」」」」」

 

 ノネットの愚痴に似た言葉にモニカはキョトンとし、近くに居たティンクたちは動きを止めて妄想を浮かばせてしまう。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 「「うぎゃあああああああああああ?!」」

 

 リア・ファルの格納庫内に毒島のボロ雑巾ボロボロになった

 村正・陽炎タイプが運ばれ、クロエとヒルダの叫びが響く。

 

 リアクティブアーマーがほぼ全て根こそぎ落とされ中の骨組みと配線がむき出しになっており、その配線等もショートを起こしたのか大半は黒く焦げ、腰と肩等に付いていた六つのサブアームの内にある四つは無理な駆動と負担に曲がっており、マニピュレーターに至って左手は指が全て吹き飛んでおり右手は変な方向に曲げられ、背中と腰の推進部も安全装置を切り離した機動戦で太股同様に所々溶けていた。

 

 武装にしては殆んど全てを使い捨てのように使ったのですっからかん。

 

 ちなみに新しく開発した網膜投影システムとファクトスフィアを連結させる為に通常のガラスと液体レンズを使用したハイブリッドのメインカメラにはヒビが入っている所為か、奥から濁った液体が流れ出ていたので文字通りに『機体が泣いている痛々しい様』だった。

 

「「(これ、絶対にボスたちが見たら────)────ヒッ?!」」

 

 クロエとヒルダの二人はアンナとミルビル夫婦たちが居る隣を恐る恐る見ると三人とも何とも言えない、スンとした表情のまま村正・陽炎タイプを見上げて────

 

 ────ドサッ。

 

「三人とも倒れちゃった?!」

「い、医者ぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 シ~ン。

 

「「皆、シュバールさんに取り掛かり中だったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」」

「と、と、と、取り敢えず担架を~!」

 

 ……

 …

 

 

 クロエたちが格納庫内でアンナたちが倒れたことで慌てている間、斑鳩の一角にある手術室の外ではレイラや毒島などを始めに様々な人たちがソワソワしながらいた。

 

「(まさか単機でラウンズたちとブリタニアのランスロット量産タイプの防衛陣を突破し、あのアヴァロンに手傷を負わせて紅蓮たちを取り戻すとは……やはり彼の実力は底知れない。 『幽鬼』……いや、あれぞ『鬼神』と呼ぶのだろうな。 それにスバルがあのような表情を浮かべるとは、それほどまでに紅蓮……あるいは紅月君の事を……少々、妬けるな。 だがこれで彼という存在も公になってしまった。 おじいちゃんなら、何をするだろう?)」

 

 毒島はそう思いながら、ずっと難しそうな顔をしながら壁に寄りかかっていたレイラを見る。

 

「(これでアマルガムの存在はブリタニア────それもあの第二皇子シュナイゼルの視野に入ってしまった。 いつかはこうなるとわかっていても……それに────)」

 

 レイラはここでそっと左目に手を添える。

 

「(────あの時に感じた()()は間違いなく、ヴァイスボルフ城以来の……とても悲しいような、怒りのようなモノ。 一体、これは何かしら?)」

 

「ハァ~……」

 

「ん?」

 

 毒島は長~いため息がした方向を見る。

 

「どうしたアリス?」

 

こいつ(エル)の監視。」

 

「ふむ、“こいつ”とは心外だな? それにそもそも私はただ通りかかっただけだぞ? 逆にウロウロしていたお前に引きずられ────」

 「────違うし! じゃんけんで私が負けただけだから!」

 

「はいダウト~。」

「あ、やっぱりマ()?」

「そうだよマオ♪」

「ほうほうほう。」

「ウンウンウン。」

 

 「二人ともシャラ~~~~~~~ップ!!!」

 

「(う~ん、良いわねぇ~。)」

 

 ニヨニヨするマオーズに慌てるアリスのやり取りを見て井上はほっこりした。

 

「(まさかこんなところでタケルの知り合いに、しかもデバイス(リモート)手術経由で頼ることになるとはね……)」

 

 その中でソフィは複雑な気持ちで夫の知人であるデイビッド(外科医師)に連絡を取ったこととBRSシステムに関して思い浮かべる。

 

『亡国のアキト』で、ユキヤは聖ミカエル騎士団に襲撃した際ガリア・グランデと共に墜落して重傷だったところを彼女は同じように知り合いであるデイビッドを頼っている。

 

 スバルの行動によりその局面が無くなったのだが皮肉にも、こうやって自分に返ってくるとは思っていないだろう。

 

 余談だがソフィがBRSの研究を続けていたのは昏睡状態であった夫────日本人のタケルの為でもあり、原作の『亡国のアキト』の最終局面で彼はアレクサンダのBRS共鳴で目を覚ました。

 

 今作でも彼はガリア・グランデで輸送中に目を覚ましたがBRSの研究をソフィが止めることは無く、理由は単純だった。

 

「(まさかシュバールも、特異点を発生させるとは思ってもいなかったわ。)」

 

 実は彼女、以前オマケ程度に撃震に付けたBRSから得たデータからかつてアキトがシンたちと共に発生させた『脳波動による時空間への干渉』と似たものを見た。

 

 そして今回も毒島機から似たような反応がぽつぽつとあったことから、スバルが何らかの方法でBRSへ干渉していたことが確信へと変わった。

 

「(そして反応はそこからだけでなく、リア・ファルの……ブリッジからも伺えた。 BRSの使用時に必要なニューロデバイス無しでそんなことが可能とすれば正しくタケルがかつて業界に出そうか迷っていた論文で出てくる『新人類』……になるのかしら? 思いもよらなかったところで、とんだ土産話を得てしまったわ。)」

 

 ガチャ。

 

 手術室のドアが開かれ、寝不足気味のラクシャータが出てきてはドアの一番近くに居たレイラに話しかける。

 

「終わったわよ~。 取り敢えず、最悪な事態は避けられたわ~。」

 

「あ、ありがとうございますラクシャータさん。」

 

「いやいや~、礼を言うのならソフィの呼んだ助っ人……ええええっと、デイビッドに言って。 膵臓が急に出血し出したけれど、彼の速い処置で何とかなったから。」

 

「それでその……彼は?」

 

「うん? まぁ……その……何かしら。 私って『超』とかが付くものが嫌いなんだけれど、正直生きているのが奇跡ね。」

 

「「「「え。」」」」

 

「脊椎損傷、頭蓋骨陥没、内臓破裂、大腿骨の複雑骨折に脳髄損傷にその他諸々……ああ、あと何回か心臓停止もしたわね……ま、息を吹き返したけど♪」

 

「「「「……」」」」

 

「んじゃ、私は疲れたからあとはヨロ~。」

 

 ラクシャータは上手く言葉を探せず唖然とするレイラたちを後にしながらヒラヒラと手を振りながら後にし、斑鳩のエレベーターに入ると違う階のボタンを押すどころか非常停止ボタンを押してさっきから浮かべていた緩~い表情が真剣なモノへと変わる。

 

「(……さてと、どうしようかねぇ。)」

 

 ラクシャータはかなり悩んでいた。

 彼女がスバルの治療に携わる直前、無理やりディートハルトが自分を止めてゼロの前で『スバルの血液調査をしてほしい』と。

 

 実はスバル、これまで黒の騎士団で整備士や情報屋などの裏方役をしていたおかげで黒の騎士団のKMFパイロット全員の健康の為に義務付けられている身体検査から逃れている。

 

『高機動戦を行うKMFの負担は人体に与える影響もバカにできない』……と聞こえは良いが、ディートハルトはこの際に得られるデータを元に黒の騎士団の背景歴史や家系などを洗い出してスパイや利用価値のある人間などのチェックをしていた。

 

 それを知ってからラクシャータは以前、スバルの治療をする際にアマルガムから口止めをされていたことから『ああ、これの為か』と納得をして出来る限りディートハルトの注目をスバルから遠ざけていた。

 

 別にこれは彼の保身とかの為ではなく、『スバルの様な人間が彼女のKMFの実力をフルに出せるから』と言った一種の独占欲からである。

 

「(まさかこんなところで()()血液について話すことになるとはねぇ……)」

 

 ラクシャータは珍しく悩んだ末にエレベーターのボタンを押す。

 

 行先は斑鳩のブリッジ。

 

 より正確には、ゼロが居る場所へ。

 

 

 

「そうか、奴は無事か。 感謝する。」

 

「ま、私だけの手柄じゃないけれどね。」

 

 斑鳩のブリッジでラクシャータはスバルの容態が安定になったことを知らせると旧扇グループの者たちが明らかに安堵の息を出すのを見る。

 

「(よし、これでスヴェンの状態による不安感と士気の低下は防げられた。) そうか。 詳細は後程────」

「────その前に、()()()の事でちょっと話があるんだけれど。」

 

「(例の件? ラクシャータに依頼した件と言えば……) そうか。 扇、私は席を外す。 何かあれば連絡を。」

 

「ラクシャータ、それは私も────」

「────ごめんだけれど、これはアンタの頼んだこととは別件だよディートハルト。 だからアンタはお呼びじゃないわ。」

 

「は────?」

「────以前にゼロから受けた依頼よ。 ほらあっち行った。 シッ、シッ。」

 

 ゼロがラクシャータのいるエレベーターの中に入り、後を追おうとしたディートハルトをラクシャータは犬を追い払うかのような仕草をしながらエレベーターの開閉ボタンを押してドアを閉める。

 

「さて……君が『例の件』と言えば、心当たりが少々あるのだが?」

 

「そうだねぇ……『ヨコスカ港区』って言えば分かるかしら?」

 

「ッ?! あの時、君に送った血液の事か?」

 

「そ。 実はディートハルトに、あのスバルって子の血液検査を頼まれてね? で、見事にあの時の物と照合したってわけ。」

 

「……」

 

「まぁ、ディートハルトに言ったことも嘘じゃないけれど……アンタが秘密裏に頼むぐらいだからちょいとデリケートなことかなと思って、こうやって前もってアンタに報告したわけ。」

 

「……」

 

「ちょっと聞いている?」

 

「あ、ああ。 少々その、考えをまとめていただけだ……間違いないのか、ラクシャータ?」

 

「私がこんな冗談を言うと思う?」

 

「いや、君を疑っているわけではない……ただ、事が事だけにな……よし。 ディートハルトも含め、会議室で話すとしよう。 君も自分ひとりで彼への報告が嫌なのだろう?」

 

「……まぁね。」

 

「この際だから聞くが、君は彼の事が嫌いなのか?」

 

「ディートハルト? 陰険な男って、私にとっては『自分ファーストな男』の次に嫌いな部類よ? 私じゃなくても、女性の大半もそうじゃないかしら?」

 

「そ、そうか。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「それで、私との会談にゼロだけが同席するとは一体どういうことかなラクシャータ?」

 

 会議室に呼ばれたディートハルトは先ほどあしらわれたことが気に食わなかったのか、少々いつも以上にムスッとしていた。

 

「ディートハルト、ラクシャータを責めるな。 事はかなりデリケートなのだ。」

 

「『デリケート』? あの『スバル』という者の検査のどこが────?」

「────検査結果をまとめた資料よ。 まずはこれを読みな。」

 

 ディートハルトは手渡されたフォルダーを開けて中の資料を読み始めると、次第に彼の顔色が変わっていくと同時に表情も険しいモノになる。

 

「……君を疑うつもりは無いが……これは本当なのですか? 私たちの情報部が調べた限り、これに該当する系譜は途絶えている筈────」

「────だから“デリケート”って言ったじゃない。 私も桐原のじいさんと皇の嬢ちゃんに協力してもらってサンプルと比較した結果が()()よ?」

 

「……しかし、生き残りがこうも見つかるとは幸運────いえ、これこそ『奇跡』のようなモノ。 ゼロ────」

「────これは確かにラクシャータの言うようにデリケートな情報である。 しかし、使い方によっては黒の騎士団にとって大きな『武器』とも成り得る。」

 

「“使い方”……ですか。 ()()が果たして、我々の思惑通りに動くかどうか次第です。 文字通り、『諸刃の剣』ともなり得ます……スザク・クルルギのように、()がゼロ────ひいては黒の騎士団の阻害に成り得かねません。」

 

「だからこそ『デリケート』なのだ、ディートハルト。」

 

「……そうかしら?」

 

「「どういうことです/どう言う意味だラクシャータ?」」

 

「ん~……“考えすぎじゃないかしら?”、って言う意味よ。 それに何だかんだで、彼のおかげでブラックリベリオン後の黒の騎士団ってかなり余力を残したでしょ?」

 

「確かに彼のおかげで犠牲はかなり抑えられました。 ですがそれも彼が黒の騎士団に報告せず、独自に持った戦力のおかげによるところが大きい。 しかもその中には桐原殿の孫も含まれていると聞いています。」

 

「ディートハルト、『時には敵の目を欺く為に味方から』とも言うが?」

 

「ゼロ、勘違いなさらないでください。 私はあくまで彼に頼り過ぎる危険性を申し上げているだけです。 彼個人が持っている戦力に、この情報が表に出れば本人にその意思がなくとも、黒の騎士団の分裂を招き────」

「────クルルギの時のように暗殺しろとでも言いたいのかしら、ディートハルト?」

 

「……黒の騎士団は今もはや一つの国家の軍隊とも呼べます。 そのような組織の指揮系統はトップが一人だけで十分でそれ以上となると、効率も伝達の質も落ちる可能性が生じかねません。」

 

「ディートハルト、私に『()を殺せ』とでも?」

 

はいストップ。 それは私が困るわよ? 何せ彼、カレンちゃん並みに優秀なパイロットなんだからね? 彼を殺そうとするのなら────」

「────ゼロ、私はまさにこのようなことを危惧しているのです! 私が言いたいのは彼を特別扱いするのではなく、部下の一員として同列に待遇することだけです。」

 

「つまり、“この情報を表に出すな”と?」

 

「その通りです。 神楽耶様は既にゼロへ思いを寄せておられる様子。 何も危険な爆弾を我々が自ら抱えることは無いのです。」

 

「……………………ラクシャータ。 このデータは我々三人以外に、知られているか?」

 

「さぁ? そこは()に聞かないとハッキリとした答えはないわね……少なくとも、()()()()()検査結果を知っているのはここにいる三人だけよ?」

 

「……そうか。」

 

 ゼロは頭を抱えたくなる衝動を抑え、『冷静沈着なゼロ』を装いながら仮面の下で静かなため息を吐き出しながらこう思ったそうな。

 

『……どうしてこうなった』、と。




スバル:俺のセリフゥゥゥゥ?! Σ(゚д゚lll)ガ━━ン!!
作者:ちなみに今話の元ネタは『アレ』と『アレ』と『アレ』と『アレ』をミックスしたオマージュです! (*ゝω・*)ノ
おはぎちゃん:つまり『闇鍋』だね! (。´ω`。)
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