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「……ん。」
閉じていた瞼の向こう側から見える光にまるで靄がかかった意識の中だったままカレンは、顔をしかめて顔を背けようとする。
「う~ん……(眩しいなぁ~。)」
「カレンさん?」
「(あれ? この声って、ベニオ? なんで私の部屋に……そういや体が怠い様な────)」
────ドシッ!
「ぐぇ?!」
カレンは突然自分の胸に何かが圧し掛かってきた感覚に目を白黒させながら潰れたカエルの様な声を出してしまう。
「がれ゛ん゛ざん゛よ゛がっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~!!!」
ギュウゥゥゥゥゥゥゥゥ!
「(え?! ちょっと何?! 何何何何何何?! というか首! 首首首首首首首! ぐるじぃぃぃぃぃ!!!)」
バシッ!
「イデ────」
「────ベニオ! そんなに抱き着いたらカレンさんが苦しいでしょうが?!」
「ゲホゲホ! た、助かった……」
カレンは咳をしながら痛む首をさすり、ようやく室内を照らすライトに目が慣れると次第に自分が医務室にあるベッドの上に居る事に気が付く。
「(というかいつの間に病衣に着替えたの? 確か私……)」
「えぐっ、えぐ────」
「────もう、そんなに泣かないのベニオ。 ほら、ハンカチ────」
────チィィィィィン────!
「────ってそのまま鼻をかむの?!」
「……ええええっと……漫才?」
「違います。 まったくもってそのつもりはないわ。」
「ぐす……そんなボケ殺しはいらないよ、サヴィトリ?」
鼻をかみ終わってポカンとするベニオの言葉にサヴィトリはこめかみをぴくぴくさせるが、深呼吸で落ち着いてからカレンに向き合う。
『無視』? そうともいう。
「とりあえずカレンさん、体の調子は? それと、最後に覚えていることは何ですか?」
「え? う、う~ん……体はちょっと怠い感じかな~?」
カレンは思うままに答えながら腕や首を回すと、ポキポキとした音が鳴る。
「う~ん! 凝っている~! 特に首が~!」
「・ ・ ・ソウデショウネ。」
サヴィトリは背筋を伸ばすカレンに続いて病衣の下からでも主張が強くて揺れる胸を見ながらジト目でコメントをする。
「えーっと……最後に覚えていることと言えば~……………………あの星刻って奴に捕まってから────ああああああああああああ────?!」
「「(────声でっか────)」」
「────あの後どうなったの?! よく覚えていないけどここに二人がいるって言う事は斑鳩の中?! それとも二人も捕まったって言う事なの────?!」
「────本当にバイタリティに満ち溢れているわね、カレン? 隣の部屋から聞こえてきたわよ?」
「井上さん?! じゃあ、ここってやっぱり斑鳩?」
「ん~、ちょっと違うわね。 蓬莱島よ────」
「────え────」
「────それと貴方が捕まってから二日後よ────」
「────二日────?!」
「────そう二日。 ちょっと色々とあったから順序を追って説明するけれど、いいかしら?」
「えっと……その前に一ついいかな?」
「何?」
「お腹空いた。」
「「「え。」」」
きゅぅぅぅくるるる。
「……」
カレンは自分のお腹を押さえて物理的に音を出さないようにするが逆効果だったらしく、彼女から空腹を訴える胃の音が鳴り響く。
「……何が食べたい? お粥なら────」
「────卵焼きを乗せてソースたっぷりかけたハンバーグ。」
「水炊きで我慢してね?」
「ポン酢と肉類アリアリで。」
「はいはい。」
人間、どんな状況下でも腹が極端に減っていれば食欲を満たすことで頭がいっぱいになる単純な生き物である。
…………
………
……
…
「ふはぁ~、食った食った~! 『マ〇ニーの代わりに春雨』ってのも良いわね!」
「(カレンさん細身なのにあれだけの量はどこへ消えたの?)」
サヴィトリはどこからどう見ても物理法則が無視されている量を食い終えて『ご満悦~』というテロップが合うような様子のカレンを唖然としながらそう思った。
「(流石はカレンさん!)」
ベニオは納得(?)した。
「(う~ん……この後のことを考えると、気が引けるわね……)」
井上はニコニコしながらこれからカレンの知らない二日間の出来事を知り、予想するカレンの反応に気が重くなった。
「それで井上さん、この二日間何が起きたの? 私が戻ってきていると言う事は、やっぱり黒の騎士団が中華連邦に乗り込んだの?」
「……いいカレン? 心して聞いてね────?」
そこから井上が口にしたのは以下の通り:
ゼロが反対を押し切り、星刻と予期せぬ対峙による被害。
天帝八十八陵への退路と籠城戦。
ブリタニアと結託した中華連邦による爆撃。
状況に耐えかねて、危ないと知りながらも斑鳩の甲板に懇願する天子と彼女を守る神虎とゼロの蜃気楼。
大宦官が民や天子を蔑ろにする醜態と宣言が堂々と国内放送されたことで民衆とブリタニアに見限られる流れ。
「(ふーん……やっぱルルーシュ、『ゼロ』なだけに凄いわね~。) あれ? スバルは?」
「「……」」
「あー、うん……その事なんだけれど────」
ベニオとサヴィトリはお互いをチラチラと見て、井上は気まずくなりながらも話し出す。
黒の騎士団とは別に桐原がスポンサーしてスバルが所属している『アマルガメーションユニオン』────通称『アマルガム』という組織が所有している航空浮遊艦と合流中に毒島機がナイトオブラウンズの新型専用機と交戦。
同時に黒の騎士団の斑鳩を別方向から奇襲をかけようとしたらしい対テロリスト遊撃機甲部隊グリンダ騎士団の持つ二つの艦隊のうち一つ『天空騎士団』とアマルガムの航空浮遊艦────『リア・ファル』が
「(うわぁ、毒島
「……ううん。 彼は毒島の機体に乗ったまま、ブリタニアの新型機
「え。 なんで?」
「その、さっき言ったグリンダ騎士団とリア・ファルみたいに
「(うわぁ……最悪じゃん。)」
「それでアンナって子曰く、外見からの推測だけれど新型機は彼女たちが使っていた機体をベースにされた物に似ていてね? 動きからするとテスト中のナイトオブラウンズ機だったらしくて────」
「────え。 ちょっと待って。 何故に?」
「どうも動きがぎこちない部分と、通信での自己紹介?」
「自己紹介?」
「確か“自分はナイトオブトゥエルブの~”って言いていたような気がするわ。 まぁ、通信って言っても“一方的な降伏勧告”みたいなモノだったらしいけれど。」
「毒島さんたちに~?」
まるで『ラウンズの人ってバカぁ~?』という続きでも言いたそうなカレンの表情に井上も笑いそうになるが、なんとかその場を乗り切って話を続けた。
「そう。 それでここからは毒島の話によるところが大きくなるのだけれど貴方が中華連邦から引き渡されたことを聞いた瞬間、どうもスバルは人が変わったように操縦を無理やり────」
…………
………
……
…
「“中華連邦から領土を奪え”?」
中華連邦────ひいては蓬莱島から離れたブリタニアのペンドラゴンで、上記の言葉がオデュッセウスの口からオウム返しのトーンのまま出た。
「それを、皇帝陛下が?」
そしてオデュッセウスに続くかのようにシュナイゼルが、ナイトオブワンのビスマルクに確認する様な問いをする。
「はい。 一字一句とまでは言いませんが、そのように皇帝陛下は仰っていました。」
「う~ん────」
「────私としては、兄上に恥をかかせた罰としてそれでもいいと思いますわ────」
「────ギ、ギネヴィア? 天子様の事なら、私は全然気にしていないからね?」
「ブツブツブツブツせっかく低賃金労働者と資源の確保ができると思って今年の経済調整をようやく終えたと思ったらブツブツブツブツブツブツブツ。」
原作の様にメイクでうまく隠しているクマときつい表情をしたギネヴィアはイライラしながらブツブツと独り言をし続ける。
「でもでも婚姻関係とは別に、ブリタニアの領土と人員を確保できるからいいかも────!」
「────カリーヌまで……ほ、ほら? EUとの戦争も順調だし、今は自国の安定に集中した方がいいんじゃないかな? それに、今までトラブルばかりだったエリア11の和平路線もナナリーのおかげで順調だし────」
「────なんでナナリーの名前を出すの? 別にいいじゃん、あんな奴。」
「(う~ん、これはかなりライバル意識が芽生えちゃっているね。)」
一気に不貞腐れながらプンスコと怒るカリーヌを見て、オデュッセウスは地雷を踏んだことに後悔しだす。
実は黒の騎士団の成した『100万人の奇跡』以来、エリア11の状況は日を追うごとに改善していた。
治安も以前と比べれば雲泥の差なほどよくなり、クロヴィスによる『
最初こそ『着任早々に総督権限でほぼ独断のゼロ国外追放』と『100万人の引き抜き』によりナナリーは陰で非難されていたが、現在にまで見られるエリア11を見れば間違った選択どころか最善だった事は一目瞭然だった。
対するカリーヌが担当している香港では他のエリアや領土と似通った統治で、『可もなく不可もなくで例年通り』……と言いたいところだが、大宦官の放送による中華連邦のごたつきによって移民希望者と裏ルートによる亡命者などが多くなったことで治安は悪化しつつあった。
つまり何が言いたいかというと同い年であるナナリーとよく比べられる上に『かりーぬちゃんあたまいたいの~』案件が増えたことでカリーヌは表面上冷静だったが、内心では荒れていた。
それと全く関係ないかもしれないが、ここ最近カリーヌもマルディーニブランドの化粧水を愛用し始めた噂が出回った所為でマルディーニブランドの株が右肩上がりしているとか。
「ハァ~ブツブツブツブツブツブツなんでこんなにも周りは“ナナリーは~”ってうるさいのかしらブツブツブツブツブツ」
カリーヌは原作でも口にした様なセリフをボソッと言いながらそっぽを向く。
「そんなに邪険にすることは無いだろうカリーヌ? 彼女は頑張っているじゃないか!」
「・ ・ ・ ・ ・ ・」
「……ええええと、この前に約束したエクレアとプディングを買ってきたよ? 後で食べる?」
「フ~ンだ。 食べ物で釣られる私ではございませ~ん。」
「あ、あはははは……」
オデュッセウスは乾いた笑いを出すと、珍しくシュナイゼルがいつもの愛想笑いのまま言葉を発する。
「ナナリーの活動はきっと、カリーヌを見習っているものだと思うよ?」
「そ、そうかしら?」
「そうだよ。 でなければ、あの手際の良さは私でさえ見習いたいぐらいさ。 それと中華連邦の件に関してはブリタニアとユーロブリタニアから二個師団ずつを国境に配置しよう。」
「シュナイゼル殿下が自ら軍の指揮を執るとは、意外ですな? EUとの戦争以来、政治だけでなく軍方面にも興味を出されましたか?」
「いいや? これも外交の手段の一つに過ぎない。 今の中華連邦はバラバラだ。 特に西側は統一性のない烏合の衆だから戦闘行為がなくとも三分の二……あるいは半分ほどの領土をすんなりと手に入れられる筈。 これ以上の領土拡大は流石に帝国の経済の穴を更に大きくしかねない。」
「なるほど……皆様からほかの意見が無ければ、皇帝陛下にそう伝えますが?」
プンプンしながらもオデュッセウスの買ったエクレアを食べるカリーヌ。
そんな彼女を見てにこにこするホッと胸を撫で下ろすオデュッセウス。
近寄りがたいオーラと共にブツブツとした独り言をするギネヴィア。
ニコニコと、いつもの愛想笑いとはどこか違う笑みをするシュナイゼル。
これ等皇族の様子を、見て見ぬフリをしようとする文官たち。
「(ふ~む……聞いていたものより
ビスマルクは周りを見ながらそう静かに思った。
『視界が暗い。』
それが、最初に思ったことだった。
その次は『突貫してどれぐらいの時間が過ぎた?』。
気が付けばそんな質問を考えている間、次第に体中をじわじわと蝕むような痛みから意識をそらす為に耳を澄ますと周りから映画で出てくる集中治療室のような音が聞こえてくる。
ピッ……ピッ……ピッ……
各モニタリング用機器の電子音。
シュー、シュコー……
人工呼吸器などの生命維持装置が出すシュコ~と空気が出たり入ったりする音。
一々リストアップすれば終わりが無いので『その他』。
……フローレンスの装備、原作や外伝から変わっていたな。
フローレンス自体の容姿とかではなく、フローレンス子機────強いて名付けるのなら『フローレンス・ドローン(仮)』を使っていたことだ。
元々がwZERO部隊のドローン機だったから量産はしやすいだろうしブリタニアがその気になっていればドローン技術を、人口不足なユーロ・ブリタニアからもぎ取っていてもおかしくはなかったなそう言えば……
それよりも、体に血液の代わりに鉛が入っているかのように重い。
さっきから瞼を開けようとしても接着剤で閉じられているかのようにぴったりと閉じたままだし、手足に力を籠めれば籠めるほどじわじわとした鈍痛が鋭くなっていくだけでうんともすんとも動かない。
これじゃあ、まるで暗い世界の中に『自分』という存在だけがいるかのようだ。
ゾワッ!
考えを切り替えよう。
そんなことを考えても無意味どころか
…………………………うん、ボヤッとするな。
頭が。
あの後からどうなったんだろう?
どれぐらいが経ったんだろう?
ボヤ~とどこか寝ぼけた頭のまま、どれだけ記憶を辿ってもフローレンスからモニカと思われる通信による『カレンを捕まえた』と言われたころから曖昧だセミの鳴る音が耳鳴りのように鳴き続き────
ピッ、ピッ、ピッ。
確か俺はカッとなって毒島から操縦桿を取って焼かれた大地とコンクリートに死体からの死臭の中で────
ピッピッピッピッピッピッ。
フローレンス・ドローンと真面目に対峙することを止めてガイア機並みの踏み台ムーヴを披露して悲しさで口がきけなくなった他人の為に泣くカレンが────
ピピピピピピ!
そのまま噴射機を使った
ピィィィィィ!
「────ごげ?! ガッ?! ごぶぇ────?!」
────かれんガガがガガガががががががががガガガガガガががががががが。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!
バァン!
からだがふるえだし
どろっとしたものがのどからせりあがって
ふさがれているくちのかわりにはなからなにかがでて
からだがおもくなってうごきをとめた
プー、ドォン!
グッ?!
何かの電子音のすぐ後に右の胸と左脇から熱のこもった衝撃が来て、文字通りに頭が一瞬クリアに────だめだ また ねむくなってきた
プー! ドォン!
イデェ?!
またさっきの衝撃が────というか更に痛い?!
今ので体が凄く跳ねたぞ?!
ダン!
体が跳ね上がった拍子に首がダラリと横に曲がり、さっきまでの天井とは違う景色が見られるようになる。
どうも病室のようで、視線が開いていたドアの向こう側に居るカレンと会う。
顔は良く見えないし、病衣を着ている様子だが目立った傷とかは見当たら────「────ごげぇ!」
「────と、宰相閣下が公言しました。」
シュナイゼルたちとの会談が終わり、ビスマルクは報告の為にシャルルと会いにとある部屋へと来ていた。
「そうか……」
「一つ、よろしいでしょうか陛下?」
「もったいぶるなビスマルク。」
「では……何故、このタイミングであのようなことを言い渡すのですか? 普段から政に関わっていない故に、怪しまれかねないのですが?」
「『今』必要なことだからだ。 それが何か?」
「いいえ。 これ以上、私から言う事はございません。 では、私は────」
「────ビスマルク。」
「何でしょう?」
「スザク・クルルギは確か、シュナイゼルに“エリア11への休暇と待機”をヴァインベルグたちと共に言い渡したのだったな? であれば私の名を使い、奴にナナリーの補佐に入るように言い渡せ。」
「それは……よろしいので?」
「今の奴とルルーシュを学園で会わせるのは厄介な
「承知致しました。」
ビスマルクは立ち上がり、そのまま部屋を出るとシャルルは頬杖を付く。
「(シュナイゼル、ユーロ・ブリタニアも動かすか……ふむ。 ファルネーゼ卿だけなく、ヴィヨン卿も生きていれば不思議ではないと言えばそれまでだが……)」
……展開、遅くて申し訳ございません。 (;´д`)ゞ