小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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切りのいいところまでなので少し短めです、申し訳ございません。 m( _ _;)m

お読み頂きありがとうございます、楽しんでいただければ幸いです。


第23話 手刀でハチを

 俺は珍しく登校したカレンの『従者見習い』をしながらドキドキしていた。

 

 場所は中庭で、カレンの知人たちに加えて以前に『アンジュリーゼビンタ』を目撃したシュニ、マイヤー、ベラルの三人*1とワイワイしながら弁当を食べていた。

 

 一応言っておくが、ドキドキしていたのは何もキャピキャピする女子学生特有の甘~い空気を味わっていたからではない。

 

 カレンは『病弱設定』で相槌を儚げに返すだけだが、蚊帳の外である筈の俺は原作ではいなかった人たちが来たことで冷や汗を掻いていた。

 

 その三人がいつ、『アンジュリーゼビンタ』をうっかり暴露してしまうかどうかで生きた心地がしなかった。

 

 ……ゲロ吐きそう。

 

 ヴヴヴヴヴヴヴ。

 

 おい。 そわそわするなカレン。

 蜂が来ているのはわかっ(聞こえ)ている。

 

 バチン!

 

 というわけで、笑顔のままかつ『紳士の平手で払い落し』じゃい。

 

「きゃ?!」

「は、蜂?!」

 

「お怪我はございませんかお嬢様方? (ニコッ)」

 

「「「「「きゃ~~~~♡」」」」」

 

 ……何で俺こんな設定にしたんだろう。

 

 「プ、プププ……」

 

 何だよカレン?! 文句あるのか?! 笑うなよ! 

 絶対に笑うなよ?! お前の病弱設定が崩れるからな?! 

 腹筋を力ませろ! 耐えろ! 耐えるんだ!

 

 プルプルプルプルプルプルプルプル

 

 それは力み過ぎだ! 身体が震えているじゃねぇか!

 

 ヴヴヴヴヴヴヴ!

 

「きゃあ!」

「また蜂よ!」

「逃げて逃げて~!」

 

 おぅふ。

 蜂が次々と出てきた。

 流石にこれを全部払い落したら確実に咲世子さん並みの超人認定されてしまう。

 

 というわけでカレンと一緒にすたこらサッサ~。

 

 シュパ!

 

 茂みの後ろにカレンの後を追うと彼女が手刀で俺たちを追った蜂を落とす。

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! この設定、イライラする!」

 

 「ぼやかないぼやかない。 覚悟を決めて『病弱設定』にしたのはカレンだろ?」

 

 てかよく見たら蜂が真っ二つに切られているやんけ?!

 

 どんな手刀やねん?!

 

 ……大きくなったらビール瓶を素手で開けられたりして?

 

 ガサッ。

 

「ッ?! だ、誰?」

 

 来たか。

 

 そう思いながら俺はカレンの視線の先を見ると案の定、目を細めていたルルーシュが立っていた。

 

「『質問に答えろ』。」

 

「あ……はい。」

 

 ルルーシュの左目が赤くなり、ギアスの紋章が浮かび上がって隣のカレンが気の抜けた声を出す。

 

 これだ。

 これを俺は狙っていた。

 

 ルルーシュのギアスは『絶対遵守』。 

 直視で視線を合わせた相手の神経(シナプス)をいじって絶対的な暗示状態へと陥れる。

 これに多少は抗うことは出来ても、最終的には命令を実行してしまう。

 

 一見するとかなり応用範囲で強力(厄介)な能力だが、欠点は幾つかある。

 

 1. まず相手がルルーシュの目(詳しくはギアスの宿った左目)を直接見ている

 2. 一番の状態でルルーシュが口頭で命令しなければならない。 (声が聞こえていなくともルルーシュの口の動きで伝わる)

 3. 同じ相手には一度しか使えない

 4. 直視でも射程距離あり(原作でルルーシュは“約270m”と言っていた。

 

 大まかにこうだった……筈だ。

 

 しかも厄介なことに対象の神経(シナプス)をいじった副作用でギアスを使われる直前、途中、直後の記憶は残らない。

 

 てか四番の奴の例え方はなんだよ。

 レーザーかよ。

 “真の英雄は目で殺す”かよ。

 

 ……まぁ、それを置いとくとして?

 見ての通り厄介だから、俺は『同じ相手には一度しか使えない』と、『ルルーシュがまだ自分のギアス誓約に不慣れだ』ということに賭けて()()()()()()()()()()ことにした。

 

「……おい。 『質問に答えろ』!」

 

 あれ?

 ルルーシュの顔がさらに険しくなって俺を見ているぞ?

 ……………………………………え?

 

 …………………………………………………………………………もしかして、ギアスが俺に効いていない?

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ナンデ?

 

 

 


 

 

 どういうことだ?

 

「……おい。 『質問に答えろ』!」

 

 彼女(カレン)はすぐに『命令』を受託したというのに、なぜこいつ(スヴェン)は違う?

 

 まさか、力が通用していないのか?

 それとも抗っているのか?

 もしくは別の要因(ファクター)でもあるのか?

 

「あ、はい。」

 

 そう考えているうちにスヴェンがカレンと同じような口調で答える。

 

 まさかこの(ギアス)、効果が『一人ずつ』だというのか?

 それとも再使用に、時間がかかるのか?

 

 ……やはり早急に、今日中にでも力のスペックを見切らなければいけないな。

 

「おい女。 昨日、シンジュクでグラスゴーに乗っていたな?」

 

「はい。」

 

「そしてお前(スヴェン)。 お前ももしかして、昨日はシンジュクにいたのか?」

 

「はい、いました。」

 

 なるほど、通りで珍しくこいつ(スヴェン)も欠席していたわけだ。

 

「二人はテロ活動をしているのか? それはなぜだ?」

 

「私は日本人だから。 ブリタニアの血も半分入っているけど。」

「私もハーフです。 支援をしている身で、テロ活動自体はしていません。」

 

「な?! (は、ハーフだと?!)」

 

 これは……少し予想外だ。

 

 俺が驚いたのは見た目の事だけではない。

 ハーフはある意味、ブリタニア人からすればナンバーズ(原住民)以上に見下される対象になりがちだからだ。

 

『汚れた混血』、『雑種』、『出来損ない』など。

 ナンバーズ(原住民)は『人ではない』が、ハーフはそれだけということで『軽蔑の対象』だ。

 

 そんな二人がシュタットフェルト伯爵に保護されているどころか、正式な『ご令嬢』と(見習いではあるが)『従者』だと?

 

 いや。 今、それは良い。

 肝心なのは過激になりがちな男のスヴェンではなく、女のこいつが直接戦闘をするという事だ。

 ナイトメアフレームの操縦など強力な兵器を乗る分、それだけ敵の的にされやすい。

 

「何がお前(カレン)をそこまでさせる?」

 

「ブリタニアのせいで、大切なお兄ちゃんは死んだ。 隣の彼も、ひどい目に遭った。 だから、私はブリタニアが憎い。」

 

 至極単純な理由だが、それほどまでに憎んでいるということか。

 兄が亡くなっていれば、なおさらか……

 

お前(スヴェン)は?」

 

「私はカレンの付き添いということで、情報屋まがいのことをしています。」

 

「主人と一緒に、直接戦闘に加わらないのは何故だ?」

 

()()()()()()()()からです。」

 

「……………………綺麗事だな。 ()()()()?」

 

「違う。 私は『綺麗事で何も変わらない』というのを信じない。 『やり方は他にもある筈だ』と視野を常に広くさせているだけで、“人を殺さない”とは言っていない。」

 

 そう俺が思わず吐き捨てると、スヴェンは出された質問に答えた。

 

「ッ。」

 

 こいつ(スヴェン)は……()()()()()()()()()()

 

 まだ昔、スザクと出会ったばかりの……

 

「『もういい』。」

 

『終わり』を告げるとカレン、そしてスヴェンの二人がキョトンとしたような顔を浮かべて俺を見る。

 

「えっと……私たちに何か用?」

 

「いや、もう用は済んだ。」

 

 俺は踵を返し、そこで念には念を入れてギアスをもう一度発動させる。

 

「ああ、それと『シンジュクのことは誰にも言うな』。」

 

「「???」」

 

 ん?

 二人の様子が────

「────ちょっと“シンジュク”って、どういうことかしら?」

 

「?!」

 

 な?! 

 ギアスが、効いていない……だと?!

 

 いや、ただ単に俺の目を見ていなかっただけか?!

 

 それとも不発か?!

 

「『教室に戻れ!』」

 

「先に貴方が質問に────!」

「────お嬢様。 貧血を起こしてしまいますよ?」

 

「ぁ……ご、ごめんなさい────」

『────ルルー! カレンさんにスヴェンく~ん! 次、理科準備室だよ~!』

 

 どこか病弱とは思えないほどヒートアップする予兆を見せるカレンを、スヴェンが落ち着かせると背後からシャーリーの声が聞こえてくる。

 

 だが俺にとって好都合だ!

 

「あ、やっべ! 俺、実験器具を出さなくっちゃ!」

 

 とにかくここは戦略的退散だ(逃げる)

 

 何かまだ言いたげなカレンを俺は無視してその場から走る。

 

 クソ、やはりこの力を優先的に調べつくさなければならない!

 

 このような初歩的ミスを、俺がするとは何たる失態!

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 良し。

 取り敢えずこの力を検証して判明できた条件は幾つかあるが、強力な道具()だということに変わりはない。

 

「お兄様?」

 

「ッ。 ごめんナナリー、ちょっと考え事をしていた。 なんだい、それ?」

 

 俺が意識を愛しい妹のナナリーに戻すと、彼女から渡されたのは紙でできた鳥や動物を形どる紙だった。

 

「これらはね? 咲世子さんとスヴェンさんに教わった『折り紙』というものですの。」

 

「『オリガミ』?」

 

「一枚の紙を器用に折ると様々なものが作れるんです。 鶴やカカシ、カエルにインコにウサギや船に、船長さんの帽子まで。 凄いですね?」

 

「あ、ああ。 確かに。 (やはりスヴェンがハーフだということは本当だったのか。 ならばギアスにはちゃんとかかっていたということか?)」

 

 

 尚原作では咲世子がナナリーに教えたのは鶴だけだったがスヴェンも加わったことと、彼が懐かしみから()()張りきったことでナナリーが折れる折り紙の種類がかなり増えていた。

 

 

 ルルーシュはナナリーと嘘のない、本心からのやり取りをしながら並行で今日の失態を悔いていた。

 

「この鶴をね? 千羽折ると願いが叶うんですって……お兄様なら何を願いますか?」

 

 『ナナリーの幸せに決まっている!』

 

 そう言い(叫び)たい衝動を(ルルーシュ)はグッと全力で抑えて逆に質問を質問で返す。

 

「そういうナナリーは?」

 

「私ですか? う~ん……『優しい世界でありますように』、と。」

 

 ナナリー……

 俺が必ず、少なくともお前にとってはそうである世界を作ってみせるよ。

 

「じゃあそんな世界が出来上がるように、俺は頑張るよ。」

 

「本当ですか? じゃあ約束しましょう?」

 

 そこでナナリーはなぜか小指を出す。

 咲世子さんから教わった、日本流の約束の仕方らしい。

 

 ナナリー……

 お前にだけは、絶対に嘘をつかないと約束するよ。

 

 今も、これからも……

*1
8話より

『ブリタニア絶対殺す狂犬』を加入させますか? *注意事項*作者はロストストーリーズ未プレイでゲームが完結していないので『高い可能性(ほぼ確定)でキャラ崩壊アリ』とだけ前もってここに書きます

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