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ルルーシュが機密情報局にて、咲世子の安請け合いの所為で現時点から六カ月先にまで至る108人の女性との約束で埋め尽くされたスケジュール表を前に脱力感と血の気が頭部から引いていく立ち眩みに耐えながら頭を抱えている間、アッシュフォード学園の女子寮のテルマエは時間帯もありかなり混雑していた。
シャァァァァァ。
背景音にはシャワーが流れる音と、その一日の出来事や何気ない雑談をしながら入浴する女子たちの声。
「…………………………」
そんな中、シャーリーは自分の髪と体を滴るシャワーの水に気を向けずにボーっとしていた。
彼女が考えていたのは先日、どれだけ自分が以前から────あくまで本人の基準だが────猛アタックしても“予定がある”、“また今度”、もしくは“考えておくよ”などと言ったあやふやな返事ばかりだった。
唯一の例外は一年前のオペラ(デート)で、その時のルルーシュ曰く“予定が空いたから良いよ”だった。
先日までは。
……
…
『ね、ねぇルル? 今度の休日、空いている? 映画館とか行ってみない────?』
『────いいよ。 何時のヤツだい────?』
『あ、ダメだったら別に……え────?』
『────夜でもいいかい────?』
『────へ────?!』
『────??? どうかしたかい、シャーリー? ああ、もしかして来週や再来週とかの予定もあったのかな? 何時でも言ってくれ────』
『────へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!』
……
…
シャーリーの誘いに軽くオーケーを出したルルーシュに、彼女は未だに夢を見ているような気分で周りの事や声はずっとぼんやりと靄がかかった様な感じで過ごしていた。
「(これって、『付き合っている』……と言うことでいいかな? ……あの日から中々話せていないけれど、いいよね? 私の思い違いとかじゃ────)」
「────さっきから表情をコロコロと変えているけれど、どうしたのシャーリー?」
「え?」
シャーリーはようやく隣でシャワーを浴びていたアンジュの声によってハッとしては髪を洗う彼女の方を向く。
「“コロコロ変わる”って?」
「 “ウィヒヒヒ~”って意味不明な笑いを出しながら体をモジモジしたと思ったら今度は真顔になったり、不安そうになってため息を出したり……ま、あんたの事だから概ねルルーシュの事だろうけれど────」
「────う゛。」
「で、どうしたの?」
「……ええええっと……今度の休日、一緒に出掛ける予定をしてさ────?」
「────あ~、うん。 それで大体わかったわ。 (あれ? アイツ、『ゼロ』としてここ最近ずっと蓬莱島とかに居たよね? そんな暇あったのかしら? エルは“スヴェンが生死をさまよっている~”って聞いた瞬間、“笑う為に影武者は休業だ~”とか言っていたらしいし……別の影武者の仕業かな?)」
「アンジュはどう思う?」
「ふぇ? 何が?」
「ルルの事。」
「『どう』って……どういう意味? あ、もしかして私がアイツに興味があるとかかなぁ────?」
「────ふぇ?! あるの────?!」
「────ナイナイナイナイナイナイそれは無いから安心して。 そもそも……」
「“そもそも”?」
「そ、“そもそもなんでここでルルーシュが出たのかなぁ~”って思っただけ! ウハ、ウハハハハハハハ!」
「だってここ最近のルルって、変じゃない?」
「(んー、義理も何もないけれどここはそれとなく否定するかな?) そぉ~? ルルーシュって、相手によって態度を変えたりしていない?」
「う~ん、それはそうなんだけれど……こう……なんて言ったらいいのかな?
「……その“三人”って具体的な数はどこからきたの?」
「
「(なにこの子、アイツみたいでちょっと怖いのだけれど?)」
アンジュの頭上にホワホワと浮かび上がったのは、『ウフフフフ♪』とどこか意味
「そうだ! 会長~? このあと少し時間いいですか~?」
シャーリーは自分の左に居たアンジュから、右側のシャワー室に居たミレイに声をかける。
「……」
「「???」」
だがいつもなら“な~に~?”と言った気の利いた答えやボディチェック背後からの奇襲の気配を見せなかったことから、アンジュとシャーリーはミレイの方を見る。
何時もはヘアカーラーを使って形を作る髪の毛はシャワーとテルマエの湿気に当たったせいで肩にまで届くロングな髪は滴り落ち、腕を組みながらかつてないほど真剣な表情を浮かべていた所為かいつも自由奔放なミレイからは想像できない、儚げな様子だった。
「会長────?」
「────え?! あ。 ご、ごめ~ん? ちょっと考え事をしていて……」
「(う~ん……なんだろうこの既視感?)」
そんな彼女にシャーリーは構わず声をかけ、アンジュは上記の様子のミレイを見ながら上記を内心で思い浮かべる。
まさか一年前、『自分の御家騒動』でアンジュが全く同じ表情をしていたことをど忘れしているかのように。
「会長? 大丈夫ですか? 何か私の方でできます?」
「う~ん、これは自分の家の事だから無理かな? でもありがとうシャーリー、そう言うところ好きよ♪」
「もう! 茶化さないでください────!」
「────それで私に話って何かしら? ルルーシュの事────?」
「────どうして毎回みんな、私の悩みがルルになるって決めつけるの?」
「「……………………違うの?」」
アンジュとミレイの声がハモる。
「ふぇ?! いえその……違わないけれど────」
『────明日私、ルルーシュくんとデートなんだぁ────♪』
「「「────え?」」」
そしてシャーリー、アンジュ、ミレイの三人は通りかかった
「あれ? でも明日、B組のジゼルも“美術館にルルーシュと一緒に行くんだ~”って言ってたよ?」
「は~い!
「「「「私も~!」」」」
「(うわあ~……ルルーシュの影武者、何やっているのよ。 ま、『ご愁傷様』ね────)」
ビキッ!
「────ルゥゥゥゥゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
アンジュが内心でルルーシュを憐れんでいると、シャーリーの恨めしそうな声と共に彼女が掴んでいたシャワー室の仕切り用のガラスに小さなヒビが入っていく。
「シャーリー、ガラスガラスガラス────」
「────え?! あ! ご、ごめんなさい会長!」
「あ、アハハハ~。 良いのよ、やっぱり見た目重視より性能よねぇ~……ねぇアンジュさん? この後、少し話いいかしら?」
「え? え、ええ……構わないけれど?」
ミレイはキャピキャピとルルーシュとのお出かけ話を中心に盛り上がっていくテルマエの様を複雑そうな表情で見ていたが、ふと何か思いついたかのような顔になってはアンジュに話しかけた。
…………
………
……
…
次の日から、ルルーシュにとって『長~い一日の連続』が始まった。
「はいルルーシュ君、あ~ん♡」
「あははは、照れるじゃないか。」
例えば朝食デート。
「ほらルルーシュ! あっちにクロヴィス殿下の新しい展示品があるんですって!」
「ジゼル君、そのまま走ると転ぶよ? こういう物は、なるべく時間をかける物さ。」
「じゃあ……手握ってもいいかな?」
例えば美術館デート。
「あら、早かったわねランペルージ君。」
「ドーナ先生もずっと時計を見ていたじゃないですか。」
「もう、学園の外だから他人行儀はやめてくれないかしら?」
「じゃあドーナさんで。」
例えば年上相手にモールデート。
「ゼロ様、ようやく二人きりですね!」
「周りに護衛や藤堂にディートハルトもいるがな。」
「もう! ゼロ様は分かっていません! 彼らを空気と思えばいいのです!」
例えば黒の騎士団のゼロとして、そして合衆国日本代表の神楽耶の付き合いとして。
「ふぅ~……疲れる。」
そしてルルーシュは移動中、彼らしからぬ愚痴を口にしながら着替えたり仮眠を取ったりしていた。
休日は24時間ずっと動き回り、平日は三時間の睡眠と30分の自由時間。
以前からゼロとして活動し始めた頃から成績上から問題ないクラスの居眠りは増加し、今では体育以外ほぼすべてのクラスでルルーシュは居眠りをするようになっていた。
上記の30分も食事やシャワーに割り当てている。
そんな日々が過ぎていき、元々体力のないルルーシュは徐々にスケジュールを守れなくなっていくのは目に見えていた。
それでも咲世子はスケジュールの再調整をするのだった。
『エルは?』と思うかもしれないが、彼は『仮初とは言え、
それでも咲世子はスケジュールの再調整をするのだった。
大事なことなので二回目。
アッシュフォード学園、私は帰ってきた!
うん? 『何でハイテンションなんだ』って?
そりゃあ勿論、ほのぼのとした学園に戻ったこともある。
「スヴェン先輩、体は大丈夫なんですか?」
「『事故に合った』って聞いたぜ?」
「ええ、まぁ……こうして念のために包帯はしていますが、ほぼ完治しています。」
ライラ、そしてリヴァルの心配する声に対して久しぶりに『優男』の仮面で対応しながらクラブハウスでここ最近留守がちになったルルーシュとシャーリーの分の書類を整理していく。
「つかいつも以上の仕事をやって大丈夫か?」
ふ、甘いなリヴァル。
蓬莱島で桐原のじいさんの手伝いに比べればどうということは無い!
ぶっちゃけ国政、超面倒くさい。
「おお……書類が減っていく……」
「流石先輩です!」
「それに引き換え、ルルーシュは毎日毎日デート……」
「だからルルーシュ先輩って中等部でも話題になっているです! “ようやくお付き合いが出来る”というやつです!」
「キィィィィィ!」
「リヴァル先輩、なんでハンカチ出して噛んでいるです?」
「まぁ、うん……そこはそっとしておこう、ライブラ?」
「アンジュの言う通りね……彼の嫉妬の仕方は男性としてどうかと思うけれど。」
「ほっとけよマーヤ!」
「やっぱりリヴァル先輩って面白いです!」
まぁ、クラブハウスにはマーヤだけではなくアンジュもいるのでルルーシュとシャーリーが居なくてもまだ書類は回せている。
「……」
この頃は確かアニメでルルーシュは咲世子さんの所為でスケジュールが学生側ではデート、ゼロとしては合衆国の国政に交渉に助言やこれからの方針。
うん、俺を思い出してしまいそうなのでこれ以上考えるのはやめるとしよう。
「……」
それになんだかんだで俺も……
「……」
俺も……
「……」
うん、もう気付かないフリはやめてアクションを取るか。
「あの、何でしょうかアーニャ様?」
「なに?」
いや、『なに』って……アンタ、時々俺を見ているでしょうが?
バァン!
「スヴェンせんぱ~い!」
生徒会室のドアが開かれ、現時点で生徒会員のサボり魔ナンバーワンの陽キャが声をかけてきながらビラを見せる。
「見てくれよ! クロヴィス殿下が新しいカジノを建ててオープンしてるんだって! 連れてってくれないか?!」
働け、この陽キャが。
それでも(一応)生徒会員か。
そんなんだから肝心の『庶民の暮らし』の理解も出来ないし、ファンからもウザがられるんだよ。
フラフラしていて仕事らしい仕事はしていないけれどひっそりとしているアーニャを見習え。
しかもこれはこれで『ラウンズで名門貴族の出なのに年相応の感性持ちで気さくで人懐っこい性格~♪』って騒がれて女性に好かれるだけでなくファンクラブも出来上がっているらしいし。
「ゲッ────」
「────アンジュリーゼ先輩嬢もどうだ────?」
「────行かないわ、それに今は『アンジュ』よ────」
「────あ、そうだった! すまんすまん! 昔の名残で────!」
「────その話はやめて頂戴────」
「────今更『令嬢』ぶっても気色悪いだけだぜ────!」
「────余計なお世話よ────!」
「────ハハハハハ!」
「あら、やっぱりお二人って気が合うのですね? もしかしてお付き合いをしたことがあるのかしら────?」
「────ないわよマーヤ────!」
「────ま、むか~しに子供の頃は許嫁候補同士で顔合わせはあったな────」
「────何平然と暴露しちゃってくれているのですかこの野郎────」
「────ぶっちゃけると俺のタイプだけどな────♪」
「────あ゛?」
余談だがジノとアンジュ、二人とも名門貴族の出自の所為かお互いに顔見知りっぽいこのやり取りにも慣れた。
キュ。
と言うかアンジュ、ドスの効いた声の
ライラが怖がって不安そうに思わず俺の袖を取りながら後ろに隠れたじゃないか。
別にいいけれど。
これはその……なんだ?
敢えて言葉にするのなら『タ〇クじゃないけれど中の人的にタ〇クに似たキャラ演じただけに陽キャになったタ〇クと吹っ切れたアンジュのやり取り』を見ているような感じだ。
つまり『ホッコリする』と言うことだ。
からかわれる
「でもスヴェン先輩が元気になってよかったです!」
ライラの満面の笑顔、ナナリーと似たベクトルで癒しになるな~。
こう……『平穏』って感じがする。
異母姉妹だからか?
「ええ、まぁ……ブリタニアの医学は優れていますからね。」
浮かれているからか、思わず立ち上がりながら『ブリタニアの医学は世界一ィィィィ!』と叫びたくなった衝動を飲み込みながら、俺は『優男』を維持しながらもう一つの空席に視線を移す。
「ん~……リヴァル先輩、ミレイ先輩は今日も居ないです?」
「ここ最近、なんだかドタバタしているっぽいし……留年の影響じゃね?」
「アンジュは何か聞いていない?」
ギクッ。
「さ、さぁ~? ナンノコトカナ~?」
アンジュお前、下手くそにもほどがあるぞ?
『マーヤと共に
その『大船』、『泥船』じゃないよな?
一度三人で話し合ってみるか。
………
……
…
「それで、最近何か変わったことはあるか?」
屋上の完成しつつある庭園テラスで、俺は『優男』の仮面を外してからマーヤに早速聞いてみた。
ちなみに機密情報局側からの監視はヴィレッタが外してくれている。
「最近……と言うと、御身が身動きできなかった期間中の事ですか?」
『御身』ってなんやねん。
まだその『神様ネタ』を引きずっていたのか、思わずポーカーフェイスが崩れそうだったぞ?
最初に会ったときと、ヨコスカ港区での衝撃イベントと、少し前にトウキョウ租界付近で多発していた『ブリタニア軍人連続殺人事件』の犯人だと分かったトラウマからあまり関わろうとしなくて放置気味な俺も俺なんだが。
こう……アレだ。
普段はおとなしめそうな雰囲気なのに、いざ火が付くと好戦的で原作のアンジュを暴走トラックに例えるのならマーヤは暴走機関車のごとく『自分の身なんか知ったこっちゃねぇ!』の勢いで自分の命を粗末にするような特攻を仕掛けていざ止めようとすると『血を見るぞ!』みたいな危なっかしい核爆弾の地雷原の上でタップダンスをするような────もうここでこの考えはやめにしておこう。
人に聞けば、最近は落ち着いたようだし。
俺が気を失っている間、エデンバイタル教団の孤児とも会って早々意気投合して世話を見ていたらしいし。
前々から言っているけれどマーヤ、見た目だけならば丁度俺好みドストライクなんだよな~。
長い髪の毛にホワイトプリムっぽい髪飾りに私服時はガーターベルトだし────
「────そうですね……気を失っている間、私は主に御身の活動を目撃した黒の騎士団員たちなどに対して
Oh……
そう言えば俺……盛大にカレンを助け出す為にやらかしていたんだった────ってちょい待ち。
“数々の手続きや根回し”とは何ぞや?
委細は聞きたいような、聞きたくないような……
ええい、ままよ!
「どんな手続きや根回しだ?」
「そうね……手始めに、『アマルガムのスバルは傭兵であり、黒の騎士団のスバルとは別人』と────」
あ、それは良かった。
なら森乃モードはまだ使えるな……
「────あとは『KMFが
ゑ。
「────ですので、貴方様の異能力などは長時間のストレスによる目の錯覚です。」
「……映像の記録は────」
「────すべて残らず消去いたしました。」
「…………人の証言が────」
「────根も葉もない噂です。 仮に報告があったとしても、先ほど言った高ストレス者の虚無の証言です。」
………………………………Oh.
「ただ、幹部の人たちはどうもガードが堅かったのですが残ったのは少人数と言うことで、今後御身に関して根も葉もない噂が出たとしても全て妄言として私
キリキリキリキリキリキリ!
ワイはやはりこの子が怖いでヤンス。
ただ純粋に怖いし、何より俺に対しての信頼(というか信仰?)が正直クッソ重い。
「あ、そう言えばこれからの事ですがどうされるのかしら? やはり桐原さんと掛け合って蓬莱島の領主をやるのですか?」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そう言えばナナリーはどうしているのかなぁ~?
まぁ、『行政特区内』で『背景歴史チェック済み』やら面倒な手順とかを踏んだ名誉ブリタニア人が対象となっているが。
え? 『現実逃避するな!』って?
無理でゴザル。
腕を組みながら崇めているようなマーヤの姿に吾輩の頭が胃と共に痛くなってきているダス。
「……変わった弁当箱ですね?」
「ん? あ、ああそうだな。」
まだ昼飯食べていないんだった。
そういや今朝、ヴィレッタに呼び出しを食らって『シュタットフェルト家から忘れ物が届いているぞ』って言われて渡されてきたな。
取り敢えずご対面と行こうか……って、考えてみれば変な話だぞ?
カパッ。
今の留美さんが厨房に立つなんて無理が────
────カポッ。
「……」
「??? 食べないのですか?」
イマ ベントウバコノナカニ ヘンナモノガ ミエタヨウナキガスル。
い、いや落ち着け俺。
目の錯覚かも知れない。
もう一度弁当箱を開けて刮目するのだ!
カパッ。
「……………………」
「あら可愛い弁当ね。」
ミマチガイジャナカッタ。
『タコさんウィンナー』はまだいい。
前にも見たからな。
でも『クマさんおにぎり』に『ハート型の卵焼き』とは何ぞや?
これ、絶対に留美さんじゃないっしょ?
だが背に腹は代えられない。
パクッ。
あ。 美味い。
それに舌もピリピリしない上に銀のフォークに無反応だから毒もないな。 多分。
余談でヴィレッタは機密情報局のアジトでガッツポーズを決めていたそうな。 (*ゝω・*)ノ
尚、次はあのイベントであってあのイベントではない話の予定です。
次話投稿は金曜日を目指していますが、ちょっと分からないです……(;´ω`)アセアセ