小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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お読みいただきありがとうございます、楽しんで頂ければ幸いです!


第232話 『思(想)いはパワー』の後夜祭

『あー、テステスー。』

 

 アッシュフォード学園のクラブハウス内で『キューピッドの日』の打ち上げと、ミレイへの感謝を示すパーティーがその夜開かれた。

 

 参加者は主に寮やトウキョウ租界でも学園から近くに住んでいる者達……の予定だったのだが、残った生徒の数がかなり多かったので以前にキャンセルされた修学旅行の代わりに開かれた『お泊り会』もクラブハウスのパーティーと並行に準備されつつあった。

 

『えー。 皆さまキューピッドの日イベントの参加、ご苦労様でした~!』

 

 主催者っぽく振る舞うリヴァルの声がスピーカーを通して館内の中で響き、拍手と歓声が送られる。

 

『ではでは! これより打ち上げ兼“ミレイ会長ありがとうございました”イベントをおこないま~す!』

 

『皆~! アッシュフォード学園の生徒会がここまで大きくなって、私は大変嬉しいです!』

 

 ちなみに『あまりにも部活が小さい』、あるいは『内容の所為で部活費が乏しい部員』は全員『準生徒会員』として生徒会の傘下となったことで、部費は個々では得られないほどまとまった大金となった。

 

『これで皆の部活費の悩みは消えたかな~? たっぷりと感謝をするがよい!』

 

『『『『おおおおおお!』』』』

 

 これから準生徒会員となった彼らや彼女らは『事務作業』という別の地獄を見ることとなるのだが……

 

 皮肉にもこれが学園卒業後に活躍するスキルとなるのは、後の話である。

 

「……感謝祭も兼ねているイベントで、感謝を参加者に強要するってどうなのだろう?」

 

「う~ん……でも、なんだかこれって会長らしくない?」

 

 この様子を、壁に寄りかかりながら困ったようなルルーシュとシャーリーが遠目に見ていた。

 

「確かにそうだな……でも、『会長が卒業する』というのがどこかまだ……」

 

「うん、実感ないよね?」

 

「………………………………」

 

「スヴェンは?」

 

「………………………………そうだな。」

 

 ルルーシュがチラチラと見ていたことに気づいたシャーリーの呼び掛けに、目からハイライトの消えたスヴェンは棒読みで同意の言葉を発した。

 

「あらあら、主役()()がこんな端っこに居て良いの~?」

 

「か、会長?! どうしてここに? 感謝会の挨拶とかはしなくて良いんですか?」

 

「リヴァルが仕切りたがってそうだったから、抜けてきちゃった♪」

 

『さぁさぁさぁ見てらっしゃい! 会長の偉業をまとめた、映画の上映でーす!』

 

「リヴァル、ずっと生徒会の業務作業をしていたはずなのにいつ映画を作ったの? 」

 

「真面目に仕事をすれば、そこそこ才能は普通にあるんだが……まぁ、アイツにも色々あるんだろ。 なぁ、スヴェン?」

 

「………………………………そうだな。」

 

 ビックリするシャーリーに、それとなくリヴァルの個人的苦労を察せる言葉でルルーシュが答える。

 

「そう言えばスヴェン、お前はなぜ帽子をかぶったままなんだ?」

 

 そこで彼は無表情のスヴェンの頭上にある、()()帽子を見る。

 

「・ ・ ・」

 

「す、スヴェン?」

 

 ハイライトの消えた目のまま自分を静かに見るルルーシュは胸がザワザワしだし、思わず一歩下がってしまう。

 

「あー! ルルーシュも帽子をちゃんとかぶりなさいよね?!」

 

「へ? だって、イベントは終わりましたよ────?」

「────一週間かぶりっぱなしに決まっているじゃない。」

 

 「一週間かぶりっぱなし?!」

 

「参加注意事項にちゃんと書いてあったじゃない。 もしかしてルルーシュ、読んでいなかった? 珍しいわねぇ……」

 

「あー、そう言えば書いてあったような気がする……小さい文字だったから虫眼鏡で見ないとわからなかったけれど。」

 

 「それは果たして『ちゃんと書いてあった』と数えられるのか?」

 

「それはちゃんと読まなかった人の責任よ────」

「────それって詐欺師の手口じゃないですか会長!」

 

「人聞きの悪い言い方ね! ま、これも『人生経験』の一環として取ればいいじゃない。」

 

「ぐ……」

 

「あ、それとID登録されたGPSチップも入っているから勝手に外しちゃ駄目よ?」

 

 「何故そんな無駄な機能が帽子に?!」

 

「いつでも会いたくなったらカップル同士がすぐ会えるよう、科学部に頼んだから♪」

 

「無駄な技術を……」

 

 ルルーシュはニコニコするミレイから、視線先をスヴェンに移して彼の様子に納得した。

 

「(だからスヴェンはどう反応して良いのか困っていたのか。 いや、彼の事はこの際どうでも良い。 今は俺だ。 この後は合衆国中華に戻る予定だっというのに! 蜃気楼で通信妨害は可能の筈だがそれをするとGPS反応が消えて怪しまれかねない! 下手な騒ぎで注目を集めては逆効果になるな……………………………………あとでエルにでも渡すか。 シャーリーも奴のことを知っているから好都合だがこのタイミングは────)」

 

「────あれ? リヴァルの映画に映っているのって……会長、もしかして初等部の頃から生徒会長をしていたんですか?」

 

 上映している映画には『ガッツ!』と書かれた(たすき)をした、小学生サイズぐらいにダウンサイジングされたミレイが涙目で困る同級生たちを振り回す映像が映されていた。

 

「うん、というか当時は『児童会』だったのよ? アッシュフォード学園ってウハウハ時代のおじいちゃんが気まぐれ……というか、エリア11に入植してきた人たちと子供たちが安全に生活したり勉学に勤しめる環境を整え始めた勢いに乗って設立したのは良いけれどもうあの時は暇で暇で……あの頃はがむしゃらに思ったことをそのまま実行に移して大変だったなぁ~♪」

 

「(あの頃は本当に大変だった。)」

 

 ミレイの言葉にルルーシュが思い浮かべたのはミレイによって、学園全体が振り回される数々の記憶。

 

「(第二次太平洋戦争後、昔母さんと仲が良かったアッシュフォード家を頼った俺とナナリーを匿ってくれた時からミレイ会長に振り回されて……っと、()()()は知らない筈の時代だったなそう言えば。) へぇ、そうだったんですか? かなり幼い頃からアッシュフォード学園を仕切っていたんですね?」

 

「あれ? ルルーシュは知らなかったっけ?」

 

「(??? もしや『そこ』は改竄されていないのか?) 何を言っているんですか会長。 俺が学園に入学したのは中等部からですよ?」

 

「う~ん? そう……だったかな~? ルルーシュじゃなかったら中等部は……他の誰かが居たような気が……」

 

「(なるほど。 あの頃は(ロロ)ではなく(ナナリー)だった上に俺の元皇子としての素性も知っていたアッシュフォード家との関係も、今では『ごく普通の平民』だからな……

 あの男に記憶が改竄されたとしても、『本来の記憶』と大きな違いが無意識表層と記憶の衝突で『違和感』として残るのか。 今考えてみれば、俺もその『違和感』を『日常と現状へのイラつきともどかしさ』として感じていたな。

 幸い、俺はギアスのことと記憶改竄の過程を知っていたから何とか冷静に居られたが……会長たちの記憶が戻れば、混乱は免れないだろう。 以前と今までの記憶の違いから疑心暗鬼、いや最悪の場合だと錯乱してしまいかねない。 だがどうすればいい? 『今の俺』だとミレイ会長に説明が────)」

「────やだな会長、それってきっと僕ですよ。」

 

「あー、ロロ。」

 

「(ナイスだ、ロロ!)」

 

「そうですよ会長、きっとロロですよ!」

 

「そう……だったかなぁ?」

 

「ですよねシャーリーさん? ()()()()()()兄さんの隣に居るというんです?」

 

 モヤ。

 

「うんうん♪ でも足が治ったから、そろそろ独り立ちも良いと────」

「────あははは、治ったばかりですよシャーリーさん? それにほら、ちゃんと立っているじゃないですか?」

 

「う~ん、そういう意味じゃないけれど……」

 

「アッハッハッハ。 じゃあどう言う意味でしょうか?」

 

 モヤモヤ。

 

「・ ・ ・ ・ ・ ・ (シャーリーとロロの間に────というか主にロロからどういうワケか火花が飛び散っているような幻覚は何だ?  ……俺の気のせいだろうか? この頃、ロクに睡眠も取れていないからな。)」

 

 ルルーシュはお互いニコニコし合うシャーリーとロロを見て、ハテナマークを頭上に浮かべたがあることに気が付いてはハッとする。

 

「そう言えば会長、『卒業する』ということは……その……やはり結婚されるのですか?」

 

「ん? んっふっふ~♪ ルルーシュはやっぱり気になる~?」

 

 ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ!

 

 「しませんよね会長?!」

 

「「「リヴァル?!」」」

 

 ステージの上でミレイのアレコレをプロデュースしていたリヴァルは必死な表情を浮かべ、ステージの上からミレイたちの居る場所へと目に捉えられないほどの速度で駆け付けたことにルルーシュたちはビックリする。

 

「(やっぱりやればできるのに……才能を使うところが勿体なすぎる。 〇郎とは大違いだな……声だけに。)」

 

 近くにいたスヴェンだけはボーっと微動だにせず、上記を冷静に内心で思っていたが。

 

「ええ、まぁ……結果的に言うとそうなるわね。 実は色々と()()をしてから家も何とか納得させることが出来たの。 だから急ぐ必要は無くなった……かな?」

 

 いやっほ~い! ありがとう神様!」

 

「(リヴァル、自称神にもう一度会うことがあったら腹パン決めてから伝えるぞ……また会えるかどうかわからないが。)」

 

「リヴァルったらはしゃぎ過ぎ。 そう思わない、スヴェン?」

 

「………………………………そうだな。」

 

「ってスヴェン、まだイベント(キューピッドの日)の最後からこんな様子なのね。」

 

「まぁな。俺も三年間ぐらい知っているが、今のような状態のスヴェンは初めてだ。 (学園でも、黒の騎士団やアマルガムでも、以前もすべて含めて。)」

 

「「……(やっぱりスヴェンも人間なのね/だな。)」」

 

 上の空状態のスヴェンをみて、ミレイとルルーシュは内心でホッとした。

 

「……でも『急ぐ必要がなくなった』ってのも、ニーナやアンジュさんたちに相談してもらったからなんだけれどね。」

 

「ニーナに、アンジュ?」

 

「シャーリー、なぜそこで意外そうな顔をする?」

 

「だって、ルルは分からないかもしれないけれどその二人って……う~ん、どう言ったらいいのかなぁ? ……『不器用そう』?」

 

「「(うわぁ、ド直球。)」」

 

 シャーリーの身も蓋もない全く悪意も何もない言葉にリヴァルとミレイが同時に内心で感心(?)した。

 

「そ、そう思うかもしれないけれどねシャーリー? 二人とも、それなりに苦労した所為か社会に関しての知識も経験も豊富なのよ?」

 

「会長はニーナと未だ連絡を取り合っているのですか?」

 

「まぁ……ね。」

 

 チラッ。

 

「(今スヴェンを見た? ……ああ、そう言えば彼もニーナとは仲が良かったな。) やはり長く一緒に居たから話しやすい、と言ったところですか?」

 

「それもあるけれど、彼女の()()も兼ねているわ。」

 

「応援……ああ、そう言えば彼女の……えっと、『サクラダイトに変わる電力供給』でしたっけ? 世間ではあまり評判が良くないようですね?」

 

 今度はルルーシュが横目で未だにこれと言った反応をしないスヴェンを見る。

 

「ま、ずっとサクラダイトを中心に企業とか大勢の国が回っているから風当りは強いわね……と、いうわけで~? スヴェンもたまに連絡を彼女に入れてね? 連絡先を送るから。」

 

「そうだな。」

 

「「(これ、聞いていないんじゃないのか?)」」

 

「あ、映画がそろそろ終わるわ!」

 

 ミレイは再びマイクを手に取り、二回へ通じる階段をステージのように上がっていくとスポットライトが彼女に当てられる。

 

『は~い! ではここに集まった皆さんに、私からのお返しをしたいと思いま~す! メイド会の皆さん、どうぞ~!♪』

 

 ミレイの号令に、どこかから現れたのか大勢のメイドたちが現れてテキパキといつの間にか設置された数々のテーブルの上に料理や飲み物などが並べられていく。

 

『メイド服のタイプはなんぞや?!』ですと?

 勿論、ロングのエプロンドレスにホワイトプリムのヴィクトリアンメイドです。

 

『これらは全て、私が感謝の気持ちを込めて作った料理で~す!』

 

「スゴイや兄さん!」

 

「これ全部が()()()手作り?!」

 

「はっはっは、『会長もやれば出来る』ということさ……なぁスヴェン?」

 

「……ソウダナ。」

 

 子供のようにビックリするロロとシャーリーからルルーシュが視線を外してスヴェンを見ると一層どんよりとした雰囲気をスヴェンは纏った。

 

「(あ。 これは手伝わされたな。 多分、ミレイ会長の事だから『ルルーシュ()の代わりにスヴェン』……と言ったところか?) あー……スヴェンもご苦労だったな?」

 

「ああ。」

 

「……まだ元気がないようだけれど、大丈夫?」

 

 「病み上がりなのに、(無理やり)学園にくるからじゃない。」

 

 メイド会に交じって料理を運び込んでいたマーヤとアンジュ(双方ヴィクトリアメイド服を着用)がスヴェンの様子を見てはそっと寄ってくる。

 

「………………………………そうだな────」

「────あ! スヴェン先輩です!」

 

 ビクゥ

 

 自分の名が呼ばれ、スヴェンの身体がビクリとして声がした方を見るとメイド服を着たライラがトテテ~と走ってくる。

 

 ホワイトプリムの代わりに彼女がかぶっている帽子をなるべく見ないようにして。

 

「どうしたです先輩? 顔、真っ白です。」

 

「………………………………大丈夫だ。」

 

 


 

 

 嘘です、全ッッッッッッッ然大丈夫じゃないです。

 

 キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ。

 

 必死に痛む胃の所為でゲロりたい吐き気と悪寒を我慢するためにポーカーフェイスの維持に専念するほどに余裕がない。

 

「そうですか! あ! ヴィレッタ先生を呼ぶです?」

 

「イイデス(DEATH)。」

 

「そうですか!」

 

 呼ばれたら多分、我慢ができなくて吐く。

 

 誰がって?

 

 俺だが?

 

 ……話を戻すとしよう。

 これまでの流れで察せたかもしれないが、スタートが少々違っても最終的にキューピッドの日は原作アニメ通りにルルーシュとシャーリーがお互いの帽子を交換した。

 

 ちなみに今の打ち上げパーティー等は、アニメでは省略(オミット)されていたからミレイから『自分の卒業イベントの相談』は予想が出来ていたが、そのあとに『料理の手伝いを~』なんて頼まれるとは思っていなかったが結果的に体を安静にし過ぎて固まっていた筋肉をほぐす良い機会となって、キューピッドの日にあれだけ動けるようになったとも。

 

 まぁつまりは『原作通り』ということでめでたしめでたし……の筈だが何だろう?

 ルルーシュとシャーリーのやり取りとか距離感(?)がこの時点のアニメ以上に近くなっているような気がする。

 

 何時もならシャーリーがグイグイ来るところをルルーシュがサラッと鈍感スキルを条件反射的に使って躱すところだが、いまはどうだ?

 ルルーシュはグイグイ来るシャーリーを拒むどころか『体を寄せている』っぽいぞ?

 

 ナニアレ。

 

『思春期』って言えばそれはそれで微笑ましいが何故に?

 そりゃあカレンやナオトさんとかの原作どっぷりの人たちと関わりが出来たからルルーシュが後々『冷徹&非道の魔神ゼロ』ではなくなるために裏で色々やったけれど……せいぜい彼が躊躇なく他人を『使うピース()』として見られないようにしただけだぞ?

 

 あ。 あと人間の心が保てるようにシャーリーとのデートをミスさせないため、桐原のじいさんと無理やりアポを取ったっけ。

 

 ニーナとかと相談したおかげでシャーリーパパは生きている所為か、シャーリーも気落ちしていないしルルーシュも後ろめたい気持ちがないし。

 

 …………………………………………今にして考えれば今でも原作通りっぽい事が起きているのが不思議なほどだな────

 

 ────キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ────

 

 ────良し、現実逃避でも胃が痛むから代わりに俺のことをなるべく簡単に整理しておこう。

 

『俺はイベント終了を告げる鐘が鳴る直前にアーニャのモルドレッドから降ろされたところで俺の青い帽子を狙ったアンジュと黄色いタバタッチ(アリス(多分))のダブルタッグから逃げた先にマーヤが居たから本能的に角を曲がったらライラが居た。』

 

 ハッキリと申したので、もうお分かりでしょうか?

 

 ライラがかぶっているのはホワイトプリムではなく、()()帽子だ。

 

 つまりはアレだ。

 

 俺の帽子。

 

「それでスヴェン、私たちに何か言うことは無いのかしら?」

 

「皆、綺麗だぞ。 (別に。)」

 

 チラチラと俺を見ながら“いうことは無いのかしら”なんて回りくどい言いかたするなよ、アンジュ。

 あまりにもテンプレ過ぎて思わず本音と建て前を逆にしてしまったじゃないか。

 

「へ?! そ、そう~? そんな当たり前のことを言われてもねぇ~。」

 

 強い態度を取るなよアンジュ、お前のアホ毛がウキウキ気分に揺れてバレていて逆にホッコリするぞ。

 

「スヴェン先輩、私はどうです?」

 

「まぁ、さっき“皆”と言ったときに入れたつもりだが?」

 

 俺の口下手チクショウめがぁぁぁぁぁ!

 

「(う~ん……神様の事だから、いとも簡単に帽子を取られるなんてことは無いはずだから何か考えがある筈……そういえば、この学園で私たちやアマルガムの事を知っている『部外者』は彼女だけだわ!

 だから敢えて監視しやすいポジションにご自身を置いたというの?! いえ、それだけでなく学園の機密情報局まで手駒にしているから外堀も……流石は神様です!)」

 

 なんだかマーヤのキラキラした目から上の様な考えが手に取るようにわかる。

 

「(まさかイベント終了直前の鐘が鳴るタイミングで、ああもサラリと角を曲がったスヴェンから風のように帽子を取り変えるなんて……ううん、この子もだけれどまさか『教師権限』をヴィレッタ先生が行使して『健全なお付き合いの監視役』として自分をねじ込むとは……)」

 

 アンジュもどこか晴れない表情(とアホ毛の動き)で考えていることが分かった……ような気がした。

 

 ちなみに黄色いタバタッチはいつの間にか逃げたというか消えた。

 音沙汰がないから『戻った』と思いたい。

 

 ヒュルルルルルルルルルルルル~……ドン

 

「きゃ?!」

「な、何よ今のは?!」

「爆発?!」

 

 外から空気を突き抜けながら笛の様な独特な音と爆発音にブリタニア人の学生たちの間にどよめきが走る。

 

 ギュっ。

 

 そしてメイド服を着たライラがすかさず俺の後ろに隠れる。

 彼女の今の動きは咲世子さん並みの速度だったと追記する。

 

「あら? これって……」

 

 そして俺みたいにハーフのマーヤや旧日本文化に通な生徒たちはすぐに窓を見ると案の定、花火が夜の空を照らしていた。

 

『花火をご覧になっている皆さん、今この時この瞬間も世界は変わっています。 世界が変わっているから我々が変わり、我々の行動で世界は変わるのです。 これからいろいろなことがあるでしょう。 良い事も、思ってもいない悪い事も含めて。 進路だけでなく、社会での行き先も違うようになって別れるかもしれません。

 でも、今この景色を見ている気持ちを覚えていることで我々は繋がったままでいられるんです。』

 

 リヴァルお前……やっぱり才能の使い方を間違っているぞ。

 思わず涙腺が緩みそうだったじゃないか。

 

「リヴァルのヤツ、たまに良い事をいうな。」

 

 ルルーシュと同意見だ。

 

『では皆さん! 最後は後夜祭恒例のダンスです! 初めはもちろん、イベントの主役たちで~す!』

 

「「何?!」」

 

 花火が次々と上がっていき、次第に勢いが徐々になくなった頃にミレイの声によって俺とルルーシュの声がハモる。

 

 周りを見ると花火に気を取られている間、ホールの端へと飲食類の乗ったテーブルなどが既に寄せられていた。

 

「ほぇ?」

 

 隣に居たライラも目を点にして、気の抜けた声を出しながら無数のハテナマークを頭上に浮かべた。

 

「最後の最後まで、会長は……」

 

「そうだな。」

 

「ほらほら二人とも、早く着替えに行きなさい!」

 

「会長?! ちょっと押さないでください!」

 

「それに『着替え』って、私たちの服のサイズは────?!」

「────そんなの、制服のデータベースをちょちょいと♪」

 

 ルルーシュと目を合わせ、ミレイに押されるまま部屋に入ると中には確かに燕尾服が二着あった。

 

「早くしなさいよねぇ~♪」

 

 パタン。

 

「……スヴェン。」

「ルルーシュ。」

 

 ドアが閉まり、俺とルルーシュはお互い頭を切り替えて着替える。

 

 その時に俺は一応、体の傷とか手術の縫い後などが見えないか鏡で確認し────

 

「────……」

 

「ルルーシュ? 何故俺を見て固まっている?」

 

「あ。 いや、その……俺も筋肉を付けようと思ってな。」

 

「(モヤシの)ルルーシュが?」

 

「ああ、ちょっとな。」

 

「珍しいな、汗を掻いたりするのが嫌だったと思ったが?」

 

「何故お前がそれをしっ────じゃなくて、咲世子からお前の睡眠時間を聞いて今納得した。」

 

 どういうこっちゃ?

 意味がわけわかめ。

 

『♪~』

 

 おっと、ダンスの音楽がクラブハウス内に広がり始めた。

 

 ササッと着替えて……それに久しぶりのダンスだ、前髪は上げて視界の妨げにならないようにする。

 

 良し、出陣だ。

 

「では先に行ってくるルルーシュ────」

 「────はや?!」

 

 フハハハハハ!

 黒の騎士団以前から森乃モードとかでたっぷりと『早着替え』と『身だしなみチェック』のスキルたちは(多分)カンストしているのだ!

 

 俺が久々に『優男』と従者見習いの仮面を二つともかぶりながらクラブハウスのホールへと出てくると周りから様々な思惑や感情を乗せた視線とかがチクチクと突き刺さる。

 

 ヒソヒソとした声も聞こえてくるが、今の俺は『優男』で『従者見習い』だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()であって、()()()()()()()()()

 

 ホールに出ると薄い青とオフホワイトカラーが混じった、優しいデザインのドレスを着たお嬢様(ライラ)が居た。

 

「ライブラお嬢様、僭越ながら一曲お相手願えませんか?」

 

 貴族流マナー全開で腰を折りながら、びっくりした様子のライラに手を差し伸べてダンスを申し込む。

 

「ッ。 はい、よろしくお願いしますです。」

 

 うむ。

 即座にしっかりとした答え、キッチリした表情と気品ある立ち振る舞いに変えるとはやり手だな。

 流石は皇族、ハイスペックだ。

 

 ユーフェミアも話によると化けつつあるからなぁ~。

 近いうちにKMFに乗るとかなんとか。

 ……ゲームで見たピンク色のグロースターを特注していたりして。

 

「スヴェン先輩……ですよね?」

 

 お互いホールの中央に歩き、向き合うとマジマジと自分を見るライラが不安そうに聞いてくる。

 

「ええ、もちろんです。 何か?」

 

「雰囲気が違い過ぎるです。」

 

「ええ、そうでしょうとも。 ()()()はレディをエスコートしているので。」

 

「……」

 

「ライブラさんは、ダンスの経験は?」

 

「一応、嗜む程度だけです。」

 

「ではキツイターンや踊りは避けてなるべくゆっくりとしたダンスでライブラさんに合わせます。」

 

「あ。 シャーリー先輩たちも来たです。」

 

 燕尾服のルルーシュ、かっこええのぉ~。

 シャーリーもシャーリーで、色白の彼女に似合う橙色のドレスで着飾られている。

 

『♪~』

 

 おっと、彼らも出てきたことで本格的にダンスが始まった。

 

 それともう一つ、確認しておくか。

 

「ライブラさん、シャーリーさんや貴方はコルセットをしていますか?」

 

「??? 一応緩めの物をしているです。」

 

 良し。

 

「ならシャーリーたちにも合わせたダンスで行きましょう。 無理そうでしたら声をかけてください、何とかしてみます。」

 

「ハイです。」

 

 スヴェン、行きま~す。

 

 

 


 

 

「う~ん……ルルーシュたち、凄いわね。」

 

 ルルーシュたちがダンスし始め、他のカップルやキューピッドの日で縁を結んだ学生たちが加わって数分後にアンジュはポツリと上記の言葉をこぼす。

 

「??? 何が凄いの、アンジュ?」

 

「恐らく、スヴェンは全く本気を出していない。 それどころか、ルルーシュやシャーリーにライブラたちが足をもつれさせたりしないように()()()()()を合わせているわ。」

 

「え?」

 

「ライブラはほら、()()だけれどシャーリーも体力お化けじゃない? その上ルルーシュってスタミナはゼロなのにダンスを続けられている。 普通、ダンスって周りの人たちに合わせようとして中央に近づくほど速度が速くなっちゃうの。 一見するとお互いのダンスに参加している人たちが自由にダンスしているように見えているけれど、スヴェンが上手く自分たちだけじゃなくて周りのペースをも調節している。 それに本来、ダンスは一人や一組だけが上手くても空回りや浮いたりするのがオチ。 周囲は気づいていない……相当手慣れているわ。」

 

「(ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)」

 

 余談ではあるが、皇族であるライラのような英才教育を受けていないシャーリーは目を回しそうだった。

 

 ダンスそのものは嗜んでいるが相手が今までいなかったせいでそれほど上手いわけではなく、現状の彼女はドレスを着たままのダンスを抜群の運動神経で何とか付いて行っている状態だった。

 

 なるべく、ルルーシュと過ごしているこの時を手放さないように。

 

「(ルル上手すぎ! キラキラしすぎ! 近すぎィィィィィィィィィ────)────ぁ。」

 

 とはいえ何れは来る限界が来たのかシャーリーがルルーシュの足を踏みそうになるのを避けるために無理やり後ろへ下がった事が災いし、体がグラつく直前小さな声を出した。

 

「(倒れちゃう?! やだ、ルルに恥ずかしい思いをさせちゃう────!)」

 

 ────クル! フワッ。

 

「ひゃ?!」

 

 だがシャーリーが倒れそうなところにルルーシュは彼女の足が地面から離れるほど勢いの付いたターンをし、彼女の姿勢を正す。

 

「大丈夫かい、シャーリー?」

 

「い、い、い、い、い、いま! 体がフワッて浮いた!」

 

「シャーリーが倒れそうだったからな。 それに……」

 

「??? “それに”?」

 

「いや、何でもない。 もう少しステップを緩くするよ。」

 

 ルルーシュが思い出すのはシャーリーの異変にいち早く気付いたスヴェンが勢いの付けたターンを見て、自分もそれでやっと彼女の体勢が少し変だったことに気付いたこと。

 

「(偶然……ではないだろうな。 やはりスヴェンの観察力と洞察力は凄まじい。 それだけに、ディートハルトが危惧する理由も……)」

 

 ちなみにその時のスヴェンと言えば────

 

「(ふぅ~。 ルルーシュが気づいて良かった~。)」

 

「スヴェン先輩、ビックリしたです。」

 

「ライブラさん、驚かせて申し訳ない。 大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫です……今のは、シャーリー先輩の為ですか?」

 

「(気が付いていた?! 流石は皇族! さすこう!) ええ。」

 

「……やっぱりスヴェン先輩は凄いです。」

 

「ははは、お世辞でも嬉しいですよ。」

 

「ならペースをもうちょっと遅くさせます?」

 

「ええ。 流石ですね。」

 

「エッヘンです!」

 

 かくして、シャーリーや多くの学生たちは心ときめくダンスに興じたのだった。

 

 余談でこの夜のダンスの録画された映像が『理想的なダンスの見本』として他の学園や貴族たちなどを相手に学習材として広まっていくのだが……それは後の話である。




後書きEXTRA:
ギルフォード卿:ヴァインベルグ卿……貴方の趣味は政庁を騒がしくさせることでしょうか?
ジノ:アハハハ! やだなぁギルフォード卿、勉強不足じゃない? しょ────普通の学校ではよくあることだよ?
スザク:ジノ、それは違うよ。 あの学園にはミレイ会長が居るからだよ。
ジノ:あー、そう言われるとそうだった!
アーニャ:やっぱりトリ(頭)。
ジノ:え? 私はどこかの誰かみたいにKMFを出撃させていないけれど? ヾ(-∀・*)
アーニャ:ジ~。(ㆆ_ㆆ)

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