『本当に卒業するんだミレイちゃん。』
「うん」
『キューピッドの日後夜祭』の夜、アッシュフォード学園でルルーシュとシャーリーが学園公認の恋仲となった詳細や結果をミレイは今や日課となりつつあるニーナとの
時間差で起きたばかりの様子で髪を下ろしていたニーナの背後に見える窓からは陽の光が差し込んでいたが、ミレイは風呂からまだ湿っている髪にタオルを巻いて服装は既に寝間着へと着替えていた。
『でも本当に
「うん、良かったわよ。 むしろ良すぎて、最後の最後まで迷っていたぐらい。」
『“迷っていた”? ……ミレイちゃんの考えを変えるほどの
「え? うん、おじいちゃんとアンジュさんと話を、ちょっとだけ。」
『ふ~ん……あ! この間の論文、スヴェン君に渡してくれた?』
「ううん────?」
『────え────』
「────逆にニーナの連絡先をあげちゃった────♪」
『────え、えぇぇぇぇぇぇぇ?!』
「(青くなったり赤くなったり、まるで信号ね♪)」
『み、ミレイちゃん!』
「これでニーナもスヴェンに連絡を直接取れるようになったでしょ?」
『ちょ、直接?! って、絶対に面白そうになるからそうしたでしょ?!』
「あははは、バレちゃった♪ 流石はニーナね!」
『茶化さないでよ、もう! ……それでその、スヴェン君はどうなったの?』
「ん? 何が?」
『キューピッドの日の帽子。』
「う~ん、取られちゃったわね────」
『────だ、誰に?!』
驚きの声と共にスクリーン越しにミレイのところに突き抜ける勢いでニーナの顔がアップになる。
「ちょ、ニーナ落ち着いて────!」
『────まさかミレイちゃんが取ったの?!』
ギクッ。
「あ、あはは────」
『────目を合わせてミレイちゃん。』
「と、取っていないわよぉ~? スヴェンの帽子を取ったのはライブラちゃんよぉ~?」
『ライブラちゃんが?! あ。 でも確かにスヴェン君はアリスちゃん
「に、ニーナ?」
驚愕の表情から突然、神妙な顔に変えて一人でブツブツと何かを小声で言いだしたニーナにミレイは声をかけたがニーナの耳に届いた様子はなかった。
『もしかしてスヴェン君はツインテールが? だとしたら二つ結びのおさげから髪を下ろしたのは失敗? だとしたら────』
「────お~い、ニーナ~?」
『ハッ?! な、何?!』
「私の勘だけれど、大丈夫なんじゃない?」
『だ、だだだだだだ“大丈夫”ってナンノコトカナ~────』
「────多分だけれど、ライブラちゃんにとっては“棚から牡丹餅”みたいな感じで帽子を取ったと思うのよねぇ~。」
『“タナカラボタモチ”……って何?』
「あ。 えっと……スヴェンが以前口にしていたエリア11の“コトワザ”ってヤツで“ラッキーな感じ♪”っていうこと。」
『???』
「まぁつまるところライブラちゃんとスヴェンが
『なななななな
「(お嬢様口調のニーナなんて久しぶりな気がする。)」
『↑↑↑オホホホホホホホホホ~!!!』
「(余程焦ったのねぇ~、可愛いわね♡)」
…………
………
……
…
更に日々が経つと、元々単位が足りていたミレイはあっと言う間に卒業した。
クラブハウスでもリヴァルが正式に生徒会書記から生徒会長へと昇進し、人手不足気味だった生徒会は『キューピッドの日』にミレイが準生徒会員として迎えた生徒たちの参加で解消されたことで生徒会の事務作業もかなり減ったことでエル(体育は咲世子)と入れ替わることでルルーシュは予定通りの二重生活を送れるようになっていた。
「意外と、呆気なかったな。」
「でもゼロ様の根回しや采配があったからこそ、武力の行使が無くとも領土を得ることができるのですよ。」
そんな彼はゼロとして合衆国日本と黒の騎士団の業務処理中に思わずトントン拍子に進んだミレイの卒業に関する感想を口に出してしまい、近くに居た神楽耶が言を並べる。
「(口に出していたか。 だが確かに想像していた以上に簡単だったことも……この際だ、神楽耶から桐原の考えも聞いておくか。) いや、これは私だけの成果ではない。 星刻と藤堂たちが優秀なのだ……神楽耶様は、桐原殿から何か聞いていないか?」
「“何か”……そうですね、強いて言えばあちらの……えええっと。 タイガー……『アマルガーム』でしたっけ?」
「(神楽耶の頭上に外用鎮痛消炎薬となぜか卜部が見えたような気が……) 『アマルガム』ですよ、神楽耶様。」
「はい、アマルガムの認識と先日の活躍が一致しないということから黒の騎士団との間に軋轢が生じないよう、色々と手配しておりましたわ。」
「ふむ…… (確かに、『アマルガムは黒の騎士団の支援組織』と今まで通してきていただけに黒の騎士団と同等かそれ以上の活躍をしていたことは団員たちにとって寝耳に水。 ディートハルトの危惧していたことの一つだな。)」
「まぁ、桐原殿の活躍と冴子の事もあったので概ね協調性に欠け────でなく、じゃじゃう────
「(なるほど。 『重なる役割を持った組織』から『敢えて二つに分けて手綱を握っている』という認識に変え、実の孫もそれに利用するとは流石は桐原だ。 扇も『元教師だけだった男』と考えればそれなりの才能を持っているのは明白だが、政治と統治能力はやはり本職の桐原がずば抜けている……少々古い時代の行動だが理に適ってはいるやり方だ────)」
「────それと、新しい菓子の試食を頼まれています。」
「ん? 新しい菓子の試食? (もしや
「はい! 羊羹です!」
「(ヨウカン……ああ、あのこしあんの塊か。)」
ゼロの頭上に浮かぶのは『蓬莱島産』として合衆国日本の貿易の味噌や醤油と並ぶほど人気が出ている数々のお菓子。
余談で貿易相手は表側では旧中華連邦や元インド軍区のインド人民共和国にEUが主であるが、ブリタニアの植民地でも密かに流出し始めていた。
「それでその……ゼロ様がよろしければ、私がお茶を入れますが?」
「ん?」
何時もと違う様子の神楽耶に
「どこか落ち着きがない様子ですがどうかされましたか、神楽耶様?」
「え? いえその……」
「(神楽耶ほどがここまで狼狽えるのは珍しいな……何かあったか。)」
「お聞きしても?」
「私に答えられるものならば。」
「ゼロ様がこのところご多忙な中でも、浮足立っている様子でしたので。」
「(“浮足立っている”? 俺が? ……確かにこのところ順調すぎて不気味がっているが────)」
「────もしやゼロ様、C.C.さんと進展がありました?」
「“進展”?」
「お赤飯が必要ならご用意を────」
「────少し待ってくれ。 神楽耶様は何か勘違いをされている。 彼女と私はそんな関係ではない。 C.C.は……持ちつ持たれつのギブアンドテイク、ビジネスの関係だ。」
「そうでしょうか? ここ最近のゼロ様は女性が出来た殿方そのものでしたけれど?」
「・ ・ ・ あ。 (そういえばここ最近学園に戻った際にはよくシャーリーの周りに居るようになったな。 だが態度にまで出てくるとは────)」
「────心当たりが御有りのようですね?」
「そ、それは。 その────」
「────私はさほど気にしておりませんわ。 ですが言い淀むほどならば、一つだけお願いしたいことがございます。」
「なんでしょう?」
「『神楽耶』、とお呼びしてください。」
「は? (何故?)」
「いずれ、貴方の妻になるのですからこれぐらいはしてもらいたいです♪」
「(追及されないのであれば安いものだ。) ……まぁ、二人の時ならば────ん?」
ゼロが神楽耶の入れたお茶を見ると、湯呑の中で茶柱が立っていた。
「あら、流石は私! 茶柱が立つのは良い事が起きる前兆と昔から伝わっておりますわ!」
「ほぅ、そのようなことが。 (分からん。 『良い事』など一人一人によって定義が違う上に、飲み物とどう『良い事』が連動するのだ?)」
「以前は言いきれませんでしたが、やはり勝利の女神とは私の事ですね!」
「(……『勝利の~』はともかく、『女神』? どこからその自信は湧いてくる?)」
…………
………
……
…
「(“何かいいことがある前兆”、か。)」
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
先日のことを思い浮かべながらルルーシュは学園のグラウンドを歩き、クラブハウスの中に入ると泣きじゃくるシャーリーが抱き着いてくる。
「おわ?! シャ、シャーリー?!」
「もう駄目! 無理! 無理無理無理無理無理~!」
「(な、何があった?! シャーリーがここまで動揺して泣くなんて余程の事が無ければあり得ん! ハッ?! もしや記憶が戻ったのか?! あるいは脅迫?! それとも────?!)」
「────シャーリー先輩、早く戻って来るのです! 玉ねぎはまだまだあるです!」
「は?」
「ル~ル~! 玉ねぎもう剥きたくないよ~!」
「あー、これはどういうことだ?」
「シャーリー先輩、料理を覚えたいからって言ったので教えているです!」
「なんでライブラちゃんは平気なの~?!」
「シャーリー先輩はまだまだ料理の道を歩き始めたばかりです! スヴェン先輩に比べればまだまだマシです、えっへん!」
「料理? シャーリーが? ……複雑なモノは、やめた方が────」
「────手の込んだものは無しです! 取り敢えず『カレー』と『唐揚げ』が作ればいいと思ったです! 流石に鶏肉を骨入りのまま唐揚げを作るのは無いと思うです……一応アリで美味ですが骨が粉々になりやすいのに注意が必要とスヴェン先輩も言っていたです。」
「(ライラも苦労している様だな。) だがシャーリー、急に料理なんてどうした? もしや会長に何か言われたか?」
「う。」
「チッチッチ~、ルルーシュ先輩は分かっていないです! シャーリー先輩は────」
「────わ、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ライラの言葉を真っ赤になったシャーリーが遮り、ライラは面白がりながらクラブハウスの中に撤退していく。
「??? (何だったんだ?)」
「べ、別にルルは私が料理しだしたことを気にしなくていいからね!」
「(ああ、そう言う事か。) ……気長に待つよ。 何なら、時間が空いたときに俺が教えようか?」
「へ?」
「むっふっふー! 成功したです!」
「そのようだな、手柄だぞライブラ。」
へっへ、『ゴル〇尉』風に言えば『シャーリーを誘導してルルーシュの天然を発揮させた進展作戦』は成功だぁ~。
あ、違った。 これだと『カミンスキー』だ。
そう思いながら
ここの所、俺やライラなど料理が出来る人たちは主にキッチンに缶詰めだ。
何故かって?
事務作業が減った代わりに人が増えたから。
あと誰だ、裏学園サイトで『クラブハウスのピッツアは手作り~』なんてスレッドを載せやがったのは。
その所為でクラブハウスは人気スポット的なカフェみたいに準生徒会員とその知り合いたちが集まって作業し始めて、毎日俺たちは事務作業の代わりに料理とその下ごしらえ。
『ちょっと苦労する』と思いきやアンジュ(キノコ柄エプロン着用)やマーヤ(花柄エプロン着用)とライラ(ヒヨコ模様エプロン着用)の手伝いで想像していたより結構ゆったりとした時間を過ごせているが。
そしてストレス解消的な意味合いでも甘~いルルxシャリ展開を堪能している。
ガチャ!
「よぉハンセン
「Ha、ha、ha。 『卿』ではなく『先輩』とルルーシュのように呼んでくださいよジノ様。 それと正式な名称はピッツアですよ?」
「そう言えばそうであったな! ナハハハハハ!」
ピッツアをたかるだけでなく少しは生徒会の一員として働けよジノ・ヴァインベルグ。
無断でナイトメアの出撃をさせたことで租界を騒がせた事後処理を済ませたジノやアーニャも帰ってきて、ミレイが居なくなっても
これが『漆黒の蓮夜』で出てきたあの騎士道精神の堅物アルト・ヴァインベルグの子孫と思うとなぁ~。
アルト本人が化けて出てきて、英和辞典を読みながら中途半端な日本語で『目先の感情で動いているだけに背景が伴っていない! 失礼ながら我、大・爆・笑である!』って呆れながら怒っていそうだ。
あ、でも今の標準語は英語だからそれはないかも。
「ジノ先輩の分は右奥のオーブンに入っているです!」
「お! サンキュー!」
クッ! 太陽の光を反射する髪に明るい性格でキラキラ星付きオーラを放つ金髪碧
「……」
アーニャ があらわれた!
ジッとこちらのようすをみているようだ……
「それとアーニャ様のアンチョビピザはその隣のオーブン内に保温してあります。」
「ん。」
うむ、今日も『無表情ながらホッコリするアーニャ』が見られてグッド。
ちなみにロロが休んでいる間はリヴァルかアーニャがジノに付き合っている。
リヴァルは元々体力がある方だが、アーニャは15歳で成長期とはいえまだ小柄だが、体力はラウンズだから高い。
が、振り回すジノもラウンズ。
表情があまり変わらないアーニャでも普通に疲れるし、やつれたりしてもおかしくは────
────ガブ!
あいたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
「フシィィィィィ!」
こ、こ、この
ま、ま、ま、また俺を噛みよった!
「アーサー、めっ。」
「……にゃー。」
アーニャに抱き抱えられたアーサーはプイッと顔を俺から背ける。
まるで『フン! いい気味ね!』とでも言うかのように。
奇遇だな。
俺もお前の事は気に入らんよ。
嵐のようにピザを取ってはクラブハウスの厨房を後にするジノとアーニャ。
そしてピザを持ったアーニャにテクテクと浮き足で付いて行くクソ猫のアーサー。
噂によるとトッピングであるアンチョビを食べているらしい。
……フ、たくさん食べて太りに太れよクソ猫が。
太ればその分、お前の『かみつく』の命中率はデフォルトの100から下がっていくのだ。
フハハハハハハハ!
……はぁぁぁぁぁ。
初見でこのネタ分かる人ってこの世界じゃ誰もいないだろうな。
「……」
「何か質問です、アンジュ先輩?」
「ふぇ?! ななななな~んの事かしら~?」
「ここ最近、ずっとチラチラ私やスヴェン先輩を見ているです。 何故です?」
「う。」
ほほぉ、ライラも気が付いていたとはな。
流石皇族、ちょっと威圧がかかった言い方もどこかルルーシュを思い出させる。
語尾に“です”を付けているが。
「そ、そのさぁ~? ライr────ライブラって、キューピッドの日にスヴェンの帽子を取ったでしょ?」
ん?
アンジュがソワソワしたと思ったら珍しくよそよそしく質問をした?
全く似合わないが、何かグッとくるな。
「ハイです!」
「と、いうことはさぁ? その……………………………………」
「です?」
「…………………………ど。」
「「「“ど”?」」」
「“どうしてスヴェンの帽子を取ったのかなぁ~?”って思っていただけよ! 別に深い意味とかないから! うは、うははははははははは!」
なんだこのアンジュ?
棒読みというか、ギクシャク過ぎるというか……不気味というか。
「あ! その事ですか! 帽子を取ったら『
ライラさんや! それ語弊がメッサ入っとりまっせ?!
「は?」
ほらぁぁぁぁぁ。
アンジュも目を見開いて俺とニコニコする
いやん♪ 熱い視線が痛いわ♪
多分ライラの事だから、身の安全の為に俺たちの周りに居られる正当な口実が欲しかっただけだと思うぞ?
現にあれから何日間か経っても、ライラの態度や仕草は何時も通りだし。
『何時も通りじゃない』のは俺の周りで、主に中等部と高等部の男子学生たちから悪意や敵に向けるような熱~い視線?
あとはライラの行き返りの際は(ヴィレッタの目のあるところで)見送るときに真っ黒なスーツを着たSPさんたちの殺気と威圧がこもった冷た~い視線などの餌食になるぐらいか?
ちなみにマーヤはブツブツと『なるほど、もしやその事も視野に? それならば……』となにか独り言を言いながら頷いて納得しているかの様子だったが深く考えない様にした。
オレ、ナニモキコエナ~イ。
デキテナーイ……って、パズルをやっているわけじゃないから、ワカラナーイ。
そんな日々が更に経ったある朝、珍しくホームルームが始まる時間だというのにヴィレッタがまだ教室に来ていなかったことで教室内はざわついていた。
無理もない、ブリタニア軍人だからか時間や規律に関して厳しいからなヴィレッタは。
それに今朝は珍しく校門前に居なかったし。
ガチャ。
お、噂をすればなんとやら。
「ま、待たせたな皆。」
うん? どこかぎこちないぞ?
「ほ、ホームルームを始める前にその……発表することがある。」
んんんんんんんんん?
なにこの流れ?
「今日から私のほかにもう一人、実習を兼ねて助教が加わることになった。 は、入ってくれ。」
ヴィレッタが諦めた様な顔になりながら教室の空いたままのドアを見るとハイヒールにストッキング、タイトスカートにたわわな胸を主張するワイシャツってどこのイメクラ教師────
「おっはよぉ~♪ 今日から貴方たちの助教となったミレイ・アッシュフォードで~す☆」
────ミレイ……だと?
ガタッ!
どよめく教室の中、シャーリーが立ち上がる。
「かかかかかか会長?! 何やっているんですか?!」
「シャーリー、気持ちはわからないでもないが────」
「────だ~か~ら~、助教よ助教♪ ゆくゆくは教師になって~、おじいちゃんの代わりに理事長!」
「「「「「えええええええええええええええええええ?!」」」」」
Oh。
これは……超予想外だ。
「よっと。」
新人の助教であるミレイが教壇にすわ────むほほほほほほほほほほほほほほ♡
見えそう、見えそう♡
「と、いうワケで教師として張り切っていくわよ! 生徒会の顧問としてもね♪ あ、それと明日は普通に定期試験があるからね~?」
「「「「「え。」」」」」
「大変かもしれないけれど、『大人になる』ってそういうことだからねぇ~?♪」
この仕草、言葉遣いに服装……
柏木だ。
柏木がいる。
完全にペルソ〇4の柏木だコレ。*1
おほ♡
ミレイがこっちを見てウィンクしてきた♪
……もしやミレイがレポーターにならなかった理由って、俺やルルーシュの所為?
キリキリキリキリキリキリキリキリキリ。
フ、胃薬が無ければ即死だった。
俺の胃が。
…………
………
……
…
「もう! 心臓に悪すぎですよ会長!」
「あはははは、ごめんごめん。 サプライズにしたかったから♪ それと『会長』じゃなくて『先生』ね?」
「ほぇ~……ミレイ先輩がミレイ先生になったです!」
「んもう~! ライブラちゃん可愛すぎ~♪」
「先生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 俺にもハグを~!」
その日のクラブハウスはミレイの登場によってかつての騒がしさを取り戻した。
余談で涙目のリヴァルをミレイは躱し、彼は顔面を壁にめり込ませている。
ドンマイ、リヴァル。
「それにしてもシャーリーの言うように人が悪いですよ、ミレイ会────先生。」
「あら、ルルーシュは嬉しくないわけ?」
「……でもいいんですか? 家の事とか。」
「いいのよ! ね、アンジュさん?」
「そ、そこで私なのね……」
生徒会の皆がタジタジになったアンジュを見る。
「ま、まぁ……本来は『貴族の女性は家同士の繋がりを作るためにどこかへ嫁ぐ』って考え方が主流だけれど、それは安易で確実な手段だからよ。 でも婚姻政策を取らなければならないほど家が弱く無ければいいだけ。 ちゃんとした後ろ盾や功績とかがあればの話だけれどね。」
「「「「「……………………………………」」」」」
「な、何よその目は?」
「ううん。 皆多分、『そう言えばアンジュさんって貴族令嬢だったなぁ~』って思っているだけだと思う!」
「シャーリー、それ……慰めのつもり?」
「え?」
「ま、まぁいいわ。」
シャーリーの天然がさく裂し、アンジュの眉毛はピクピクする。
「……」
「スヴェン先輩────?」
「────私は少し席を外しますね。」
ライラの返事を聞かずに、俺はモヤモヤとした気持ちのままクラブハウスの屋上にある庭園を目指す。
ドアを開けるとクラブハウスの位置もあり、下のどんちゃん騒ぎも租界のゴタゴタや車のクラクションも届かない静寂な空間へと出る。
日が沈んだ心地よい風が体を撫で、庭園のテラスに寄りかかって何気に見上げると夜が訪れた空には人工の光に負けるまいと星が数個キラキラ光っていた。
夜空を見上げていると、以前の花火……正確にはリヴァルがイベントの打ち上げ時に言っていた言葉が脳を過ぎる。
『世界は人によって変わり、人によって世界は変わるけれど思いが一緒ならば繋がっている』、と。
うん。
腹をくくろう。
色々俺が変えたことで、『世界』は変わっているんだ。
もうここまでくれば『原作』なんて参考にならないし、俺のやりたいようにするしかないか。
周りの皆を信じて。
ガチャ。
後ろから、クラブハウスから庭園に続くドアが開く音がする。
マーヤだろうか?
トッ、トッ、トッ。
いや、足幅がアンジュにしては短すぎる。
それに地面を踏む音が
だとすると……ライラか?
だが彼女であれば、元気よく声をかけて来る筈。
それにこの歩き方は相手を逃がさない為のしっかりとしたモノ。
もしやロロか?!
「やっと二人で話せる。」
そう思いながら俺が振り向くと、意外な人物がいた。
「貴方に聞きたいことがある。」
そう言いながら庭園に来た相手────アーニャが携帯を弄って画面を俺に見せる。
「これは貴方?」
そう言いながら俺が携帯の画面を見ると
そこに映っていたのは男性の服装が無ければ『少女』と言っても全く疑わない、幼いルルーシュが写っていた。
「いえ、違います。」
「…………………………………………」
アーニャが携帯を見て、更に弄る。
フゥ~……驚かせやがって。
そもそも俺とアーニャの間に接点はない筈だ。
アッシュフォード学園に来た時点で、『先輩』と『後輩』の────
「────じゃあ、これ。」
そこでアーニャが画面を再度俺に向けるとアニメや設定集でチラッとしか知らない幼女アーニャが自撮りを取っていた。
急に寒気が体を覆い、俺は息をするのも忘れるほどの悪寒が駆け巡り、脳の奥で何かが俺の意識に訴えてくる。
『彼女の隣を見るな』と。
それで尚、『好奇心』という人間の本能によって視線は徐々に移ってしまう。
心の臓はドクドクと力強く脈を打ち、視界が細くなっていき、血が氷水に変わったような感覚の中で耳鳴りが心拍音と共に耳朶にくる。
自撮りをするアーニャの横に
目を移した先には
幼女アーニャに手を引かれて映っていたのは
無表情の6、7歳ぐらいの少年がいた。
一目見るだけで分かる顔だ。
『俺だ』と。
“あなたが何者なのか、あなたには見えない。 あなたが見えるのはあなたの影法師にしかすぎない。” -ラビンドラナート・タゴール
余談:
今年のインフルエンザはかなり酷いタイプです。 読者の皆様もくれぐれもお体に気をつけて、健康にお過ごしください。