小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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少々長めの次話です!

濃いカオスですが、楽しんで頂ければ幸いです!


第234話 少し変わりつつある『世界』

「あ、ロイドさんはミレイ会長の事を聞きました?」

 

 ほぼ同時刻のアヴァロンでスザクはランスロットの調整に付き合ってロイドを目にしてふと思ったネタで雑談をしていた。

 

「うん? ああ、彼女が助教をするってやつ~? うん、婚約解消と一緒についこの間に聞いたけれど?」

 

「へぇ~、婚約解消といっ────え。

 

「「「「「ええええええええええ?!」」」」」

 

 近くにいた整備士や元特派の者たちがビックリする声が租界の政庁の格納庫内に響く。

 

「え、ぇぇぇぇぇぇ~へへへ……えぇぇぇぇ?」

 

 一人、セシルだけは小さく声を出して思わずにやけそうな口端を表情筋に力を入れて御した。

 

「うん♪ “流石は僕のフィアンセ”と思っちゃうほどにサラッと告げてきたよぉ? まぁ、僕の付き合いが悪い上に僕がこっちの作業に専念したいと言ったからなんだけれどねぇ?」

 

「……つまりロイドさんがフラれたってこと?」

 

「アハハハ~!」

 

 「それにしてはロイドさん、ショックを受けていないような……」

 「カラ元気とか?」

 「元々“本気じゃなかった”とか?」

 「ロイドさん、結婚とか興味なさそうだもんなぁ……」

 

「いや~、でも人生で()()も婚約解消されるなんてねぇ~?」

 

「そうですか~。 婚約解消ですか~……」

 

「セシルさん、急に元気になりましたね?」

 

「え?! そ、そんなことないわよスザク君?」

 

「それとその髪型、似合っていますよ?」

 

 長くなりつつあるポニーテールの髪を弄るセシルにスザクは声をかける。

 

「も、もう! グランドリゾートの時といい、中華連邦でも貴方はそうやって冗談を────!」

「────冗談? 僕は思ったことをそのまま口にしているだけですけれど?」

 

「え。」

 

「ん?」

 

「「「「「(こっちはこっちで『進展』なのか『いつも通り』なのか……)」」」」」

 

 ……

 …

 

「(そうですか、ミレイさんが……)」

 

 総督室の中でブライユ語に変換されたスザクからのメッセージを読み取ったナナリーは静かにそう思っていたそうな。

 

「(『キューピッドの日』、面白そう……足が不自由でも、参加したかったな……そう言えばライラちゃんは誰かに帽子を取られたのかな? ……それとも取る側?)」

 

「どうかしたのかい、ナナリー?」

 

「へ? あ、いえ。 何でもありませんクロヴィスお兄様……あら?」

 

 バァン

 

「ただいまです~!」

 

「あらお帰りなさいライラちゃん。」

 

 ナナリーは元気いっぱいのライラ(そして少々息を荒くしていた彼女のSPたち)にニッコリとした笑みを向ける。

 

「ライラ……毎度言うが、もう少し静かに開けてくれないか?」

 

 クロヴィスはビックリする表情を苦笑いへと変えながら、バクバクと脈を打つ心臓のある胸を押さえてニコニコするライラへと振り向く。

 

「だから今日はドタドタと走って来たです!」

 

「(ああ、だから今日は足音が聞きやすかったのね。)」

 

「(“ドタドタと走って来た”の意味が分からない。)」

 

「(あ、ナナリーには通じたっぽいです……ポカンとするお兄様、変な顔です!)」

 

 納得するナナリーと、ハテナマークを頭上に浮かぶクロヴィスにライラは内心でさらにホッコリした。

 

「いや、そもそもライラは皇女としての自覚が……それにこの間、最近のライラのことを知りたがっていたカリーヌからまた連絡が来ていたぞ?」

 

「ああ、アレですか……」

 

「ああ、アレだ。」

 

「アレです。」

 

「“アレ”とは何です?」

 

 今まで黙り込んで黙々と書類を分けていたギルフォードはクロヴィスと同様の遠い目になり、クスリと笑みになるナナリーの三人はハテナマークを頭上に浮かべるライラの横で思い浮かべたのは先日、カリーヌから『植民地化について』とだけ通信項目に付いていた会談だった。

 

 通信時間はライラが学園に通っている時と、どこか幼少期時代からよく突っかかってくるカリーヌだったこともあってかナナリーはネチネチとした一方的な話を覚悟していた。

 

 だがいざ話をしてみるとやはり予想通りに小言が飛んできたのだがカリーヌはソワソワとして次第にはクロヴィスに『それでライラはどうしているのかしら?』とストレートにライラの様子を聞いて来た。

 

 総督でも何もなく、皇族内でも立ち位置が危うくなっていたクロヴィスはエリア11に半ば放逐されている状態で更に何の心変わりかエリア11の文化の取り入れなどをしているので正式な『廃嫡』を受けた彼と話すには世間的にも『それなりの理由』が必要となってきていた。

 

 つまるところ、『ナナリーはクロヴィスを引きずり出すダシにされた』とも。

 

 そこでクロヴィスは『お手本としての義務が~』や、『以前より時間があるのならもっとライラの庶民的感覚を正す義務が~』などと、ギネヴィアレベルの説教をカリーヌから受けた。

 

 そしてその後、ギルフォードはとばっちりで一方的にクロヴィスからの愚痴に付き合わされた。

 

「“アレ”とは、その……ライラ皇女殿下の事を、カリーヌ皇女殿下が気にかけていることです。」

 

「そうですか! カリーヌお姉様、元気でしたか?!」

 

 ギルフォードは眼鏡を直しながらスッと目を逸らす。

 

「……ええ、まぁ。 (元気は『元気』だが、どうも疲れを隠している姫様(コーネリア)と同じ仕草をされていたが……)」

 

「そう言えばライラ、この間アッシュフォード学園で催し物があったと小耳に挟んだのだがどうだったのだ?」

 

「楽しかったですお兄様!」

 

「そうかそうか、それは良かった。」

 

「これで安心できるです!」

 

「……“安心”?」

 

「あ……こ、こ、こっちの話です! ウハハハハハハ!」

 

「ライラ、そう口を大きく開けながら笑うのもそうだがなんだその笑い方は? 悪い事は言わない、品位を疑われるぞ。」

 

「うぅぅぅ~……アンジュ先輩の真似です……」

 

「(フム……その“アンジュ”とやらも所詮は庶民ということか。 しかし“アンジュ”、か。 かつてどこかで聞いたような名前だな?)」

 

「(“安心できる”? じゃあやっぱり帽子を?)」

 

 ライラはしょんぼりとし、クロヴィスは『アンジュ』という名にどこか引っ掛かりを感じ、ナナリーは先ほどライラが口にしたことに関して考えた。

 

 横にいたギルフォードは『果たして和んでいるところにこの報告を今出して害するのはどうか?』と『いやしかしエリア11も近いので警戒はすべきだ』という、二つの相対する思いに板挟みされていた。

 

 シュナイゼルの案でEU方面からブリタニアとユーロ・ブリタニアのKMF部隊を国境に配置した効果は覿面で、旧中華連邦の領土を星刻たちの合衆国中華との取り合いとなっていた。

 

 一部分を除いて。

 

 そしてギルフォードが見ていた報告書には『未だにブリタニアでも合衆国中華の圧力に屈していない旧中華連邦の領土と国境が面している東ユーロ・ブリタニアが膠着状態』と言った類のもの。

 

『軍のにらみ合い』としても、本来相手を挑発する為の突発的な衝突や攻める口実の撃ち合いが起きてもおかしくはないのだが全くそのような出来事が起きる予兆も無いのが現状だった。

 

 つまり異様なほどに『()()()()()』のだ。

 

 そしてギルフォードが危惧しているのは『それ(静かすぎる)』が理由だった。

 

「(……位置的には『可能』だ。 もし、旧中華連邦の武官共が資源の提供を交渉材料に()()()の傭兵たちを抱き込んでいると考えれば……)」

 

 ギルフォードが思い浮かべたのはかつて、シャルルの命により『アジア制覇』をブリタニア帝国が試みた時代で唯一、()()()()()()()()()()()()()()過去だった。

 

 それまで殆んど『勝利』しか認めていなかったブリタニア帝国にとってこの出来事は実質上の『敗北』とも呼べるソレで、圧倒的な戦術を前にナイトオブワンであるビスマルクが前線に出て直接全軍の指揮を執ってようやく『互角の戦い』となった。

 

「(()()()が関与しているとなると、厄介になる。)」

 

 ギルフォードが思い浮かべるのは軍事国家のジルクスタン王国、通称『戦士の国』。

 

 ブリタニア帝国が投入した戦力数十万に対し、1万未満という寡兵でビスマルクの介入まで互角以上の戦いを成し、小国でありながらブリタニア帝国と対等な不可侵条約を結んだ国家だった。

 

 講和の条件は帝国からの不可侵略、代わりにジルクスタン王国は周辺国や他国への不可侵略。

 

 そしてこの条約の()を使ってジルクスタン王国は未だに兵の(経験)を研ぐために自らの兵士を『傭兵』として世界中の依頼人(クライアント)に貸し出していた。

 

 ピースマークが『民間の傭兵部隊』ならば、ジルクスタン王国は『国家の傭兵部隊』である。

 

 ギルフォードは冷や汗を流し、自分の想像にごくりと思わす喉を鳴らしてしまう。

 

『帝国の先槍』である彼でも躊躇させるほどまでに、ジルクスタン王国は未だにブリタニア軍にとって『厄介な国』という認識だった。

 

 ……

 …

 

「この件に関して、ジルクスタン王国からの直接の関与はないよ。」

 

 まるでエリア11のギルフォードが危惧している事態に答えるかのように、涼しい表情をしたシュナイゼルが上記のセリフを口にする。

 

「珍しいですね、かの国に関して殿下が断言するというのは?」

 

 一瞬ポカンとしてカノンがいつもの表情に顔を戻す。

 

「あの国は父上(シャルル)が皇位に就いて初めて侵略を断念させた。 カノンの危惧していることはもっともだよ。 ()()()()()ね。」

 

「“本来”?」

 

「我が国とジルクスタン王国の間に不可侵条約があるのは知っているだろう? それが理由だよ。」

 

「ですがあの国は傭兵という、条約の穴を使っています。 それらを使って、帝国に対する代理戦争が行えるのでは?」

 

「それ故に、先ほどの言った“本来”だよカノン。」

 

 シュナイゼルは椅子から立ち上がり、背後にある窓から暗い夜空を見上げる。

 

「7年前、世界を変える程の何が起きたかね?」

 

「7年前……と言いますと、第二太平洋戦争でしょうか?」

 

「その通り。 かつてエリア11がまだ大日本帝国────『日本』を名乗っていた頃、彼らは過去から何度もサクラダイトという貴重な資源を独占していた事実を笠に『重商主義的軍事国家』とも呼べるような立ち位置、第一太平洋戦線後はお互い『不可侵条約』に近い関係を続けていた。 そして宣戦布告とほぼ同時に、我々が電撃作戦を行った。」

 

「それが、どうしてジルクスタン王国の関与がないと断言できるのですか?」

 

「俗に『第二太平洋戦争』と世間では呼ばれている出来事が理由だよ。 暗黙の了解に近い不可侵だったとはいえ、我々が宣戦布告と共に電撃作戦を行ってエリア11を瞬く間に植民化したことが幸運にも『前例』となった。」

 

「なるほど……では今回、どのように対応なされるのですか?」

 

「あの場所は自然資源が豊富だからね、資源そのものを直接使えなくとも金にはなる。 よって先ほど『王国からの直接的な関与はない』と言ったが、時間が経てば経つほど状況の予測がしにくくなる。 だから冷静な判断が下される前に激発させるよう仕込んだからもう()()()()事態が動くはずだよ。」

 

「……ッ?! もしや、部隊の配置を先日変えたのはワザと?!」

 

「カノン。 どれだけ技術が発達しても、人間も恐怖に対して急性ストレス反応を示す動物。 そして判断力が低下した動物の誘導は造作もない。」

 

「(さすがは殿下ね……)」

 

「(さて、餌は撒いた。 果たして食いつくのはマリーベルか、ゼロか……あるいは、幽鬼だろうか。) ……ふ。」

 

「殿下?」

 

「いや、何でもないよカノン。 (まさかエリア11よりこちらが速く進行するとは……本当に思いがけないきっかけでタイミングがズレるものだ。)」

 

 ……

 …

 

『大公閣下、いつまでにらみ合いを続ければいいのでしょうか?』

 

 ユーロ・ブリタニアのヴェランス大公は凛とした表情を保ち、顔を覆いたくなる衝動を我慢していた。

 

 彼の執務室にある二つのスクリーンのうち一つに映っていたのはユーロ・ブリタニアの東方面に展開させた部隊の指揮官、レヴァンドフスキ辺境伯。

 

『もうこれで二週間目ですぞ! ヴェランス大公は何を躊躇っておられるのか?!』

 

 そして二つ目のスクリーンには旧中華連邦で合衆国中華やブリタニアに属することを断った領土を束ねる武官たちの代表者、シャオロン将軍だった。

 

「双方待たれよ。 合衆国中華は外交で話が付けられるがブリタニア帝国はそうもいかぬ相手、 今はまだ待つ時だ。」

 

『今のブリタニアはまだEU方面に軍を広く割いている。 独立の好機だと思われます大公閣下。』

 

『それにヴェランス大公閣下には、西からの()()があるのであろう?!』

 

「確かに当てはある。 だがあの国(ブリタニア)が強硬手段に出るどころか戦線を緩めるなどどう考えても妙だ。 ここは、むやみに動くべきではないと西の者も仰っている────」

『────大公閣下、あのような()()の助言を我らより重んじると仰られるのか?!』

 

『ヴェランス大公……もしやと思いますが、かの者の()()()()に惑わされているのではないのか?』

 

 ギュ!

 

 ヴェランス大公の隣で立っていたファルネーゼが今にでもシャオロン将軍に向かって怒鳴りそうな怒りの形相に表情を変えたゴドフロアの肩を掴んで制する。

 

「シャオロン将軍、私は貴公らの事を勇気ある者と評している。 そして今の状況も貴公だけでなく、レヴァンドフスキ卿にも厳しいモノであることも。 よって今の発言は極限状態から由来するものと片付けよう。 だが、貴公が先ほど『小娘』と称した少女はこの私や側近たちが手を取るに値する同盟者と認め、エリア11のゼロを思わせるほどの才を持つ。 ほぼ無償で我々に知略を貸し、着実な手と技術をも────」

『────なるほど。 ヴェランス大公、我々は貴方のことを誤解していたようだ。 慎重論を通り越した優柔不断だったか────』

「────シャオロン将軍! 待ちたまえ、早まるな────!」

『────大公閣下、私は辺境伯として常に祖国の奪還を夢見てずっと仕えていました。 “閣下がEUの者たちと通じている”とキングスレイ卿やシャイング卿に通告されても信じず、中立どころか大公閣下の味方であり続けようと思いました……先日、証拠が()()()()までは。』

 

「レヴァンドフスキ卿?」

 

『大公閣下、ご武運を。』

 

 プツン。

 

「……愚かな。 準備不足の決起など、ヒステリー以外の何物でもない。」

 

 二つのスクリーンの通信が相手側から切られると、ヴェランス大公はため息を出して天井を見る。

 

「(しかし犠牲をなるべく抑えるためにEUの者達と連絡を取り、あのジィーン・スマイラスが既に内通していたと分かってから手を引いたとしても未だその遺恨は続くか……) ファルネーゼ卿、聖ラファエル騎士団を南東に動かせるようにしてくれないか?」

 

「閣下……」

 

「何、こうなっても彼らの部下は同胞に変わりは無い。 しかし我々ではなく本国(ブリタニア)の部隊と相対すれば必要以上の犠牲が出てしまうのは明白。 それを防ぐための配置だ……やはり私は甘いと、思うかね?」

 

「いいえ! そのような閣下だからこそ、我々やマンフレディ卿は閣下の呼び掛けに応じたのです!」

 

ヴィヨン卿(ゴドフロア)……気遣いは無用だ。」

 

「いえ! 私は元気と素直さが取り柄らしいのでお構いなく! ……だろ、ファルネーゼ卿。」

 

「う……知っていたのか?」

 

「サン・ジル卿が以前に酒の席で、少々。」

 

「亡くなってもあの爺さんは私をからかうのか?!」

 

「はっはっは! なんだかんだで面倒見がよくて、面白い御仁だったよ。」

 

「ああ……だがレーモンド(サン・ジル卿)のおかげで我々ユーロ・ブリタニアはまだ自治権を失ってはいない、まだ希望はある。 アンドレア(ファルネーゼ)、ゴドフロア……二人には感謝している。」

 

 久しぶりにヴェランス大公は『大公』ではなく、『オーガスタ・ヘンリ・ハイランド』としてブリタニア軍に居た頃の男として元同僚たちに感謝の言葉を送った。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 太陽が高く昇り、その光はアッシュフォード学園を照らしていた。

 

 カリカリカリカリカリカリ。

 

 一つの教室内でペンを紙に走らせる音がそこかしこから聞こえ、ピリピリとした緊張感が更に定期試験を受けている学生たちにプレッシャーを与える。

 

 その中にルルーシュ、シャーリー、担任のヴィレッタに助教のミレイは勿論の事、スヴェンもいた。

 

「……………………」

 

 ただ彼は時々何かの考え事に没頭するかのように、『ペンを握っている手を止めてはテストを再開する』を何度も繰り返していた。

 

 明らかにテストに身が入っていない様子だった。

 

 「(全然問題が頭に入らねぇ。)」

 

 それもその筈であり、彼の頭は未だに先日アーニャに見せられた写真が脳内に浮上しては無理やりそれを気力で頭の奥底に押し込んでいた。

 

「(あの写真には思わずかなり動揺したが、身に覚えがないからそのまま『身に覚えがありませんし自分は下級貴族の出ですので~』と正直に答えて濁せた……アーニャはどこか納得していなかった様子だが……)」

 

 スヴェンはため息交じりに目頭を指で押さえ、再度テスト用紙と向き合う。

 

「(しかしチラッと一瞬だけアニメで見た幼女アーニャんは年相応に笑えていたんだなぁ~……)」

 

 スヴェンが再び思い起こすのは、写真の中で無表情な少年とは対照的に無邪気な笑いをしながら自撮りのツーショットを取るアーニャだった。

 

「(『アールストレイムは名門家で確か行儀見習いでルルーシュたちの離宮であるアリエス宮に居た』……だっけ? その時のよりもう少し幼い彼女が写真の中に居たことから、今から10年以上前の写真か? だとすれば俺はハンセン家でほぼ軟禁状態の生活中に、俺はアーニャと会っている? いや、それはどうだろうか? 俺が覚えている限り、彼女と初めて出会ったのはアッシュフォード学園に転入生としてライラにクラブハウスへドナドナさ(引きずら)れてきた時……の筈。 もしや俺の記憶が改竄されているとでもいうのか? だが俺にギアスの類は()()()()。 それはルルーシュの『絶対遵守』、マ()の『心魂読解』、ロロの『絶対停止』、オルフェウスの『完全変化』、マオ(女)の『ザ・リフレイン』、それに話によるとサンチアの『ジ・オド』にルクレティアの『ザ・ランド』でも検証出来ている。)」

 

 ここでふと、スヴェンは何かに思い当たってペンを再び止めてはボーっとする。

 

「(まてよ……そう言えばエルの『ジ・アイス』は干渉できていたな? 『事象の世界線を微分させて全ての運動を凍らせる』からか? それとも分子の熱運動を停止させた物理現象だからか? それに今思い起こせば、ライ(仮)の『吹聴』が効いていたような気が────)」

 

 ────ベシ────!

 

「────い゛?!」

 

 いつの間にか視線を机から上げていたスヴェンの額に、飛んできた消しゴムが音を立てながら見事に命中する。

 

「こぉら、スヴェン! よそ見しない!」

 

「(っとと、今はテスト中だった。 アーニャの謎写真の件は後回し。 それに今思えば写真の中がライ(仮)だったことも………………………………ないか? 写真の中の少年は俺と同じ銀髪赤目で、それって『なんでもござれ』なコードギアスの世界でも割とマイナーな色合わせだった────)」

 

 ────ベシ────!

 

「────イタ?!」

 

「……ち、ちなみにあと15分だぞ。」

 

 本日二度目の消しゴムが命中し、ヴィレッタの忠告にクラスの半数ほどが冷や汗を掻き始めたそうな。

 

 ……

 …

 

「(ぐああああああああ! 今回は駄目なような気がする~!)」

 

 テスト用紙をミレイに渡したスヴェンは頭を抱え、冷や汗を掻き続けていた。

 

「ルル~、今日はどうする?」

 

「ん? ああ、実は()()して来たんだ。」

 

「え。」

 

「な、中庭で()()()食べようか?」

 

「ぁ……うん!」

 

「(よし、やはりこれが正解か。)」

 

 自分の言葉に曇るシャーリーに、胸がちくりと痛んだルルーシュの苦し紛れな誘いにシャーリーが元気を出すと内心でルルーシュはガッツポーズをする。

 

「……スヴェン、大丈夫?」

 

「んぁ?」

 

 どれほどスヴェンが焦っていたかと言うと、マーヤに直接声をかけられてすぐに対応できずに気の抜けた声を出してしまうほどだった。

 

 「目のクマ、化粧で全部隠せていないですよ?」

 

「(マジか。) 忠告ありがとう、マーヤ。」

 

「いえいえ。 これぐらい安いわ。」

 

 「なぁあの二人、やっぱ怪しくね?」

 「特にガーフィールドさんの噂、聞いたか?」

 「ああ、確か少し前までは不登校気味だったが解消したきっかけがスヴェンだったってやつ?」

 「ああ。」

 「けどこないだのキューピッドの日、どうやらアンジュも怪しかったってもっぱらの噂だぜ?」

 「マジか。 あれ? でも確かアイツの帽子って……」

 「ああ。 中等部の子に取られていた。」

 「どれだけだよ?!」

 

 緊張感から解放されたクラスの中でヒソヒソとした話声(主に男子)がスヴェンの耳に届く。

 

「ルルーシュ、お前たちも今日は弁当か。 ちょっと一緒に良いか?」

 

 何気に教室に居続けることが気まずくなったスヴェンは逃走経路を確保し、そのままマーヤやルルーシュたちと共に中庭を目指す。

 

「どうした、ミレイ?」

 

「あ、ヴィレッタ先生。」

 

 テスト用紙を集めていたミレイは窓の外を見ていると、ヴィレッタに声をかけられる。

 

「……一応同僚になるのだから呼び捨てで良いぞ? 余計に歳を意識してしまうではないか。

 

「へ────?」

「────な、何でもない。 それよりも、ミレイがビグロブの報道部からの雇用を断ってまで教師になるとは予想外だったぞ。」

 

「あははは……やっぱりヴィレッタさんでもそう思っちゃうかな?」

 

「(さん付け?!) ……家の事で、何かあったのか? 男爵だが、私も一応貴族だ。 力になれるのなら声をかけてくれ。」

 

「は~い☆」

 

 「……私もそう振る舞えれば『ぎゃっぷかん』とやらで気を引けるだろうか?」

 

「へ?」

 

「な、何でもない! ただの独り言だ。」

 

「そ、そう。」

 

 ミレイは窓から中庭を見ると通りかかるスヴェンたちを茂みの中から飛び出てビックリさせるライラ、それによって思わずルルーシュの腕を掴むシャーリーと戸惑うルルーシュを見てほっこりする。

 

「(最初はカレンの影響で面倒見がいいと思っていたけれど、根もそうみたいなのよねぇ……)」

 

 最初、ミレイにとって『スヴェン・ハンセン』という者はただ噂だけをよく聞く男性だったが、遠目から見ていたミレイからすればスヴェンはどこか表面上だけ『良い人』を演じているとしか感じられなかった。

 

 彼と知り合いである、あの『毒島冴子』のように。

 

 ある日、ミレイはロロ(ナナリー)が同級生からの虐めに会う場面に出くわして迷った。

 何故ならば『ロロ(ナナリー)の事をアッシュフォード家が贔屓している』という噂があることを知っているだけに、下手にロロ(ナナリー)を助けるとさらに事態が悪化しかねない。

 そうミレイが迷っていると、どこからともなくスヴェンが現れては間に割って入って、穏便に事を済ませたことで初めて彼の事を近くで目につき、直感で感じた『上辺だけの善意』が間違っていたかどうかを見極める為にその日から準生徒会員としてクラブハウスに引きずり込んだ。

 

 結果、予想以上に早く生徒会に馴染んでは溶け込んだ。

 人の良い部分しか見ないリヴァルやシャーリーは別として出自から他人を警戒するルルーシュやロロ(ナナリー)、それにあまつさえニーナまで。

 

 そこからミレイは時間をかけてカレンの過去を口実に、スヴェンの事も調べた。

 

『人間、誰もが調査をし続ければいずれ不審な情報が出てくる。』

 どんな聖人君子染みた者でも『人間』である限り、誰もが『(世間にとって)後ろめたいこと』や『(世間から)隠したい秘密』など一つや二つでも存在するのが世の道理。

 

 だというのにスヴェンは綺麗すぎるほどに()()()()()()()

 

 調べた限り、彼は幼少の頃にフラッと日本の紅月家に現れては第二太平洋戦争が起きた直後の情報は手に入らなかったが、紅月ナオトとカレンが跡取りの居ないシュタットフェルト家に引き取られる際にスヴェンは苛めに合って病弱となったカレンの世話係兼従者見習いとなり、彼女の代わりに学校に通っていた。

 

 どれだけ調べても、彼が日本に来る前の経歴は一切不明だった。

 

 そこでミレイの祖父であるルーベンを頼って『アンジュリーゼ』が入学してきたことは最初『手に余る災難』と思ったが、どうやら勘違いをさせてしまったスヴェンがアンジュリーゼの抱えていた色々な問題を解消した。

 

 しかもその時だけでなく、スヴェンはどこか怖いほどまでに的確に問題を解消していった。

 ルルーシュのように。

 

 先のアンジュの事はもちろん、根は引っ込み思案なライラに家事の基本を教えたり、スザクが転入した時のニーナを制したり、ニーナの男性恐怖症と河口湖でのホテルジャック事件、不登校気味だったマーヤ・ガーフィールド。

 

 例をあげればキリがないが、その中でスヴェンが馬術など普通は貴族が嗜む技術等を持っていることに違和感を持ったミレイは祖父のルーベンに彼の家、『ハンセン家』のことを知っているか聞いた。

 

 そこでカレンの事がハーフだったことも知り、スヴェンが男爵家の出と知り更に幼少の頃は軟禁に等しい人生を送っていたことを知り、それでもなおスヴェンは『他人が笑顔でいられるために』とタイムカプセルを埋めるときに口にしていた。

 

 これだけでも『面白い』のだがここでまた一つ、ミレイは卒業直前に更なる違和感を持った。

 

 それは祖父のルーベンでは無く、アンジュに『ハンセン家という貴族家を知っている?』と聞いた際に来た答えが、『自分(アンジュ)の覚えている限り()()()()()()()()()』だった。

 

 果たして普通の男爵家が、『スヴェン』がいたとしてもこれだけの大掛かりな隠蔽工作が行えるのだろうか?

 

 やろうと思えばやれるだろうが、そこまでの財力やコネを使うのならば別の事に使う方が有意義な筈。

 

 例外は余程の『身分』、あるいは『財力』、あるいは『()()を持った者たち』であり、その場合でも巧妙な隠蔽の履歴や違和感が残る。

 

 だがそれすらもない事は異様であり、興味を引くことには十分過ぎた。

 

「(『それをアッシュフォード家の再建に使えるかな~?』という、ちょっとした下心もあるけれどね────)」

「────ところでミレイは聞いたか?」

 

「へ?! な、何を?」

 

「旧中華連邦と、東ユーロ・ブリタニアの事だ。」

 

「???」

 

 この後に、いまだブリタニアとも合衆国中華とも歩もうとしなかった旧中華連邦の領土と東ユーロ・ブリタニアの一部が独立とともに『東ユーラシア人民共和国』を宣言し、ニュースで報道されることとなる。




(;´∀`)ゞ
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