小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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カオスの次話、投稿です。


第240話 少々違う、『過去からの刺客(死角)』4

 パァンパァンパァン!

 

「何────?!」

「防弾対策を────」

 

 モクモクと煙が立ちこみ始めるモール内の警備員が問答無用で拳銃を使ってジェレミアを攻撃するも、サイボーグ部分によって弾丸が弾かれたことに驚愕する。

 

「────あれ?」

「────おれたちは、何を?」

 

 だがそれも一瞬だけで警備員たちは夢から覚めた様な、呆けた顔になっては周りを見ているとジェレミアによって昏倒される。

 

「(なるほど、『ギアスを解除するギアス』か。 一応可能性の一つとして入れていたが寄りにもよってオレンジとは……少々厄介だが、対策はここにある設備で事足りる。)」

 

 この様子を地上から数フロア離れた上の階からルルーシュは解析を兼ねたジェレミアへの攻撃をギアスにかかった者たちで繰り返していた。

 

「(問題は、マーヤたちの方だな。)」

 

 彼は地上から、橋の向こう側にあるモール部分に視線を移す。

 

「(オレンジの注意を俺に引きつつ、あちら側にギアスをかけた手下たちを送っているが音沙汰が返ってこない。)」

 

 事の発端は気転を利かせたスザクとシャーリーから分かれて数分後、突然マーヤが足を止めたところから始まった。

 

「(普段、表情を変えない彼女が明らかに驚愕を現すなど余程の事としか思えん……マーヤとあの男には浅からぬ因縁があると見える。 現に、こうも白昼堂々と襲っている。)」

 

 ルルーシュが視線を感じて下を見ると、ジェレミアと目が合い二人は似た様な笑みを浮かべる。

 

「(しかしまずは貴様だ、オレンジ。 いや、G列車の実験体第一号君。)」

 

 ……

 …

 

 ルルーシュがいたモールの反対側にある、清掃員用の着替え室の一つにマーヤとライラは居た。

 

「マーヤ先輩、血が────!」

「────大丈夫よライブラ、額の出血は大げさなの。 (まさかブリタニアのクズが生きていたとは!)」

 

 そう口で言いながらもマーヤは内心の焦りを隠し、清掃エプロンの一つを破いてはそれを包帯代わりに傷の止血を試みて状況を急変化させたクズ────キューエルらしき人物を思い出す。

 

「(隣には皇女殿下とルルーシュがいるというのに私を見ただけで、まさか問答無用に銃を撃つなんて……本当にクズ中の犬畜生になり下がったわね。)」

 

「マーヤ先輩、さっきの人は誰です?」

 

「少し前に、ちょっとした()()()()をね────」

 

 ────バババ!

 

「ひゃ?!」

 

 マーヤはニッコリとした表情を不安がるライラに向けているとドアの向こうの通路内に響き渡る銃声にライラが体を強張らせる。

 

「(今の銃声……あのクズとこの子の護衛にいた人たちかしら? それにしては銃声の種類が護身用より重い。)」

 

 ダァン!

 

 外から何かしら重い音がするとマーヤは今いる部屋をもう一度見渡してはウェストポーチから拳銃────グロック19とナイフを取り出して、部屋のドア近くにある水道パイプの上に壁を蹴ってはその勢いでパイプ上によじ登る。

 

「はぇ────」

「────()()()、この部屋に誰かが来る────」

「────え────?」

 

 ────ダァン!

 

 ライラの視線はパイプの上によじ登った勢いでもろパン出しでも平然とするマーヤから蹴破られるドアへと移った。

 

 そこにはブリタニア軍警察が着用するような装備一式で身を包んだ者たち数人が部屋に雪崩れ込む景色があった。

 

 普段、この場でこの様な事が起きれば普通の市民やそこらのブリタニア貴族は『助けが来た』と思うだろう。

 

 実際バベルタワーでも、(租界の指揮下ではなく機密情報局の者たちとは言え)ブリタニアのサザーランドが現れて民衆の安全確保より黒の騎士団の制圧を優先して周りが巻き込まれるまで市民たちはそう信じていた。

 

 しかし部屋に入ってきた者たちは皇女殿下であるライラが居ると確認してからも並々ならぬ『殺気』をそのままに、銃口を再度上げる。

 

 ザシュ、ドン!

 

 この動作を確認したマーヤは器用に足をパイプに絡めたまま最初に入ってきた者の後頭骨と背骨が合う中間に体重をかけた勢いで右手のナイフを差し込むと同時に二人目の左目に左手の拳銃を撃ち込む。

 

 ドンドン、ドス!

 

 そのままマーヤは絡めていた足を解き、地面に降り立ったと思うと拳銃をドア付近にいた三人目の心臓と頭を撃ち抜いてはドアの向こう側に身を隠した4人目の喉にナイフを刺す。

 

 ドアが蹴破られてからここまで約3,4秒の出来事である。

 

 マーヤは顔に付いた返り血をふき取りながらライラの方へと振り向く。

 

「驚かせてごめんね? でも相手が正規のブリタニアだったら貴方をそのまま保護してもらおうと思っていたのだけれど、そう上手く行かなかった……ケガはない?」

 

「……ない、です。」

 

「そう、歩ける? このまま貴方を先に脱出させるわ。」

 

「……はい。」

 

 ライラは夢を見ているような、唖然としたまま周りを警戒しながら歩きだすマーヤの後を追う。

 

「(と言っても今の持ち合わせはこの拳銃とナイフに、()()()()妨害のペンライトと防弾着を兼ねたレオタード式試作型強化スーツ。 こいつらとさっきのクズを相手にライラを守りながらだと心許無さすぎる……でも、ルルーシュなら────ゼロなら私たちの事を入れた作戦を練れる筈。 まずはヴィレッタにメッセージを────)」

 

 ────ガチッ。

 

 歩いていると微かな金属音が廊下を伝わり、マーヤの耳に届くと彼女は反射的にライラの肩を強引に押さえては自分もしゃがむ。

 

 ダダダダダダダダダダ! バスバスバスバスッ!

 

「カヒュ?!」

 

 ライラを押さえるために自身のアクションがワンテンポ遅れたマーヤの脇に弾丸が数発ほど当たる。

 幸運にも弾丸は防弾着のおかげで貫通しなかったものの全て衝撃へと変わり、その上当たった場所が人体でも鍛えにくい脇だったことからマーヤはよろけてしまい、無言でライラを引き連れながらその場から離れようとするが思っていた以上の痛みに膝を着く。

 

「(マズい、このままだと撃ってきたやつが!)」

 

「先輩?!」

 

「おや、これはライラ皇女殿下でしたか。 何故、この様な物騒な場所などに?」

 

 マーヤたちを襲った弾丸が出て来た部屋の中から妙な半仮面をしたキューエルがニタニタした笑みと共に出てくる。

 

「……カハッ!」

 

「誰、です?」

 

 答えようとしたのか声を出そうとして咳込むマーヤの代わりにライラが初対面であるキューエルに問いを投げかけながら、マーヤにハンカチを渡そうと思いポケットの中に入れていた手で携帯を弄る。

 

「これは失礼。 私は……そうですね、ただのキューエルと覚えてください。」

 

「タダノ・キュウエル? 日本人の方────?」

────誰が! イレヴンなどですかぁぁぁぁぁ?! ああいや失敬。 私、イレヴンの事となると少々気勢が荒くなってしまう質ですので控えてくださると大変助かります────」

「(────あ。 ()()()()()()()()はよく送信先が間違っていると確か先輩が……あと何着かメッセージを着信して────)」

「────それで私個人、貴方様の後ろにいるそこのイレヴンに殺されかけた恩がございますので退いてくれたまえ────」

 「────ヤです────!」

 「────ならば君ごとさらば!」

 

 キューエルはストックを切り取って紐を使ってコートの下に肩からぶら下げていたアサルトライフルを手に取って構えるが、彼が引き金を引く前にマーヤはペン型のセンサー妨害装置を取り出してはキューエルの顔面にそれを向けて作動する。

 

「グッ?!」

 

 半仮面の向こう側にあるキューエルの義眼が夜空を激しく駆ける流星群の様なノイズと不確定な色で埋め尽くされ、彼がライフルの引き金を引いたときにはマーヤはライラの手を取って既にその場から離れていた。

 

「ゲホッ?! 守る、今度こそ!

 

「せ、先輩?」

 

 

 

 

「チッ!」

 

『どうしたソレイシィ卿? と聞いてもその舌打ちを聞くに取り逃がしたな?』

 

 目の不具合が収まり始めたキューエルはイラつきを隠さずに通信相手を無視しようと通路を歩く。

 

『だから言っただろう? 人間狩りは徐々に追い込むスリルを味わいながら行うモノだと。』

 

「そう言うお前の手勢が四機すぐに減ったぞ?」

 

『替えの効く駒を“手勢”にカウントしていないからな。 次は躊躇せずに、ギアスや不意打ちでも使って()()()()()()仕留めるのだなソレイシィ卿。 私は私で勝手にハンティングを続行する。 死にたくなければ邪魔はするな。』

 

 

 ……

 …

 

 

「ねぇ聞いた聞いた────?!」

「────オオクボステーションでテロだって────!」

「────じゃああの煙ってもしかして────?」

「────マジか! 見えるじゃんか!」

 

「(ふ~ん。)」

 

 アンジュは患者やナースたちは外が見える窓に群がっては静かに空へと上がっていく煙の方向に携帯電話のカメラを向けては噂話をして騒がしくなった病院内を涼しい顔のまま歩き、スヴェンの居る病室のドアを開ける。

 

「(呑気なモノね。 バッカじゃないの、ブラックリベリオンとかまだそんな前の事件じゃないのに距離があるからってテロの方を見ようとするなんて……本当に物珍しいものに飛びつく家畜共ね。) スヴェン、起き上がれる? 貴方が頼んだハンバーガーセットって思っていたより面倒────んが?!

 

 アンジュは空っぽになっていたベッドを見ては女性にあるまじき奇声を上げる。

 

 ピーピーピリピッピッピー♪ ピーピーピリピッピッピー♪

 

 アンジュは聞こえてきた通知音に携帯を取り出してはギョッとし、すぐにその場から走り去る。

 

 ……

 …

 

「お嬢さん、車の用意が出来ましたよ。」

 

「え?」

 

「ナイトオブセブン様から貴方をここから離れさせるようにとのご命令を承っています。」

 

 未だ煙が上がるモールを外から様子を見ながら何度もルルーシュに電話をかけていたシャーリーに、スザクが指示を出した保安部の一人が声をかける。

 

 ピリリ♪

 

 シャーリーが自分の携帯電話にメッセージが届き、彼女がそれを見る。

 

「お、おい君?!」

 

 するとシャーリーは迷いもなく保安部の横を走ってモールの中へと走っていく。

 

 送ってきた相手のIDは『Libra(ライブラ)』。

 

 電話に届いたメッセージはたった4文字の短い内容。

 

 

 ただ『Help(タスケテ)』、と言ったモノだった。

 

 

 少し前のシャーリーならば、一度スザクに連絡を取っていたかもしれない。

 

 だが自分がライラを巻き込んだ負い目か、現状が明らかにおかしいことを打ち明けられる他人(ライラ)をやっと見つけた仲間意識からか、そのどれもを口実にした『全てを自分一人で解決しようとするルルーシュの助けになりたい』という純粋な思いからか、あるいは()()()()()()()()()()()()()()という衝動からかは、本人も知らない。

 

「ッ?!」

 

 保安部や警察のサイレンが遠ざかり、人気が無くなったモール中に走ったシャーリーは血だまりの中で動くことのない遺体と変わったブリタニアの警備員たちの亡骸を見ては戸惑いを感じる。

 

 だが遠くからくる銃声と今の状況をかつてのアッシュフォード学園が紛争地域のごとくブラックリベリオンに巻き込まれた時を連想させたところで『あの時よりは』と思い、シャーリーは『自衛のために』と拳銃を拾い上げる。

 

「ッ。 (重い……)」

 

 予想していたよりずっしりと来る重みにシャーリーは戸惑いを感じながらも拳銃を手にモール内を最後にルルーシュが向かったと思われる方向へと走る。

 

 ……

 …

 

「ここまでしつこく付きまとうとは大した執念だよ、オレンジ。 (思わぬところで日々の筋トレが役立った。)」

 

 ステーションホームの最上階まで走ったルルーシュは自分が嫌う汗を掻きながらも、思い通りに動かせる体に感謝を内心でしながら自分を余裕で追ってきたジェレミアと相対していた。

 

「『執念』? 違うな、これは『忠義』である。 と言っても、テロリスト(ゼロ)である貴様とは無縁な思想だろうがな。」

 

「忠義か……あの男(皇帝)やV.V.のどこが忠義を捧げるに値する価値があるのか見当もつかんな。」

 

 カチッ。 ヴゥゥン。

 

 ルルーシュはポケットから取り出したスイッチのボタンを押すとお腹に来る、低い地鳴りのような音と共にさっきまで元気だったジェレミアの様子が一転して彼は石化していくかのように動きが止まっていく。

 

「鋼鉄の体に、ギアスを無効化するギアス。 確かに脅威だがサクラダイトに依存していれば対策は容易い。」

 

「ゲフィオン、ディスターバ────?!」

「────のスペシャル型だ。 何度も使った所為でブリタニアはサクラダイトへの干渉対策をしたからな。 技術部曰く、こいつは電子部品を破壊する電磁パルスも含まれていると聞く。 よって、君のようなサイバネティックス化などが進んだ者に対しては絶大な効果があるとされたが……これで確信に変わったよ。 ありがとうオレンジ……いや、G列車の実験体第一号君?」

 

 元々G列車はゲフィオンディスターバの巨大ジェネレータを搭載する予定だったが、ヴァイスボルフ城の防衛時に電磁パルスが大いに役立った為*1、その技術をラクシャータは(渋々)取り入れてゲフィオンディスターバを改良した。

 

 これにより第6世代以下だけでなくそれ以降の機体やサイバネティックスで強化された人体の機械化歩兵部隊などで対策が施されていない相手にも多少の効果が期待できるようになった。

 

「さて、答えてもらおうか? ギアス嚮団……いや、V.V.の居場所を?」

 

「答え、るのは……貴様、だッ!」

 

 ギギギギギギギギ。

 

「何?!」

 

 錆び付いた鉄が無理やり動かされる音とぎこちない動きでジェレミアが再び歩き出したことにルルーシュは驚愕する。

 

「(バカな! こいつの体は今や骨格までほとんどサイバネティックス化している筈! ゲフィオンディスターバと電磁パルスによって動けるはずが無い! いや……まさか残っている生体部分で無理やり動かしているのか?!)」

 

「私は……私はこれ以上! 皇族の期待を、裏切る訳には! いかぬのだ! 忠義を……義務を果た、す! マリ、アンヌ様の死の、真相を! 暴くまではぁぁぁぁぁ!」

 

「(か、母さんの死の真相だと?!) 何が貴様をそこまで動かす?!」

 

「9年前、アリエスの離宮での事件……たとえ当時の警備隊長、であったコーネリア、皇女殿下の命で、警備の数が減らされていたとしても、賊の侵入に! まともな調査もない結末! 亡きマリアンヌ様の忘れ形見である、ご子息たちがエリア11へ送られ! あまりにも不自然! あまりにも! あまりにも無念! ゼロよ……貴様はなぜ、実の父親を?! 祖国を敵にし────グッ……」

 

 無理をしたジェレミアの体中が内部出血を起こし、筋肉が動かない体の抵抗にようやく勝てなくなったところで彼は膝と手を地面に着いてしまう。

 

「マリアンヌ様……忠義を果たせぬ私を、お笑いに、なって……む、無念────」

「────ま、待てジェレミア!」

 

 ルルーシュは慌てながら倒れたジェレミアの傍へと駆け寄りそうになる衝動を理性で抑え込み、()()()()()を取る。

 

「オレンジ────いや、ジェレミア卿。 お前のした先の質問に答えよう。 俺が何故あの男、皇帝シャルルや帝国の敵になった理由を! それは俺が、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだからだ!」

 

「ッ……同性同名で、ナナリー様が生きておられると知りもしやと思い……無理を言ってまでこの任務に出たのは……私の間違い、では……」

 

 ルルーシュはゲフィオンディスターバのスイッチを切り、今度こそジェレミアの傍に歩く。

 

「ジェレミア卿……もしや、貴公は俺を殺しに来たのではなく────?」

「────私の、忠義はV.V.ではなく……未だマリアンヌ様だけにです!」

 

「ならば貴公のその忠義、亡き母上の代わりに俺の為に使え! 貴公がそこまで敬愛しているマリアンヌ……母さんの死に、V.V.が関与している! 真相を暴くために俺はギアス嚮団────いや、V.V.の居場所を欲していたのだ!」

 

「ッ?!」

 

「忠義を果たしたいと言うのなら共にV.V.を問いただせるように俺と協力しろ、ジェレミア・ゴッドバルト卿!」

 

「……イエス、ユアマジェスティ。」

 

 この時、改造時にジェレミアの脳に課せられた呪縛が『皇族への絶対的忠義』から『マリアンヌ様の忘れ形見への忠義』に圧倒的精神力(忠義心)で無理やり塗り変えられた。

 

 これは元々ジェレミアに対する認識を、V.V.含めて周りの誰もが誤解していたから可能であった。

 

 ジェレミア・ゴッドバルトは幼少の頃から名門貴族の出である事を鼻にかけず、自らの努力と実力で一度の挫折もなく周りを認めさせた文字通りの『エリート』。

 

 そんな彼にも子供の頃から憧れた人物がいて、その人の為になろうという小さな願望もあった。

 

『憧れた人物』とはもちろん、ルルーシュの母マリアンヌである。

 庶民の出とはいえ実力のみでナイトオブラウンズに着任し、シャルルが帝位につくことを良しとせぬ貴族派によって先導された大規模な反乱────世間で『血の紋章事件』と呼ばれている騒動でラウンズを含めた大勢の貴族たちによって窮地に陥ったシャルルの身をほぼ一人でマリアンヌは守りきり、シャルルの妻となった。

 

 そんな英雄のような人物が現実に居たことだけで、ジェレミアは皇后になったマリアンヌの居るアリエス宮の警備兵と若くして成った。

 

 そこで彼にとって、初めての挫折(屈辱)である『マリアンヌの暗殺事件』が起きた。

 そのあと、彼女の息子と娘であるルルーシュとナナリーはまるで島流しのように日本へ送られ、どれだけジェレミアがそこに行きたくとも許可は出ず結局彼がその大地に到着したのは第二次太平洋戦争後でルルーシュとナナリーが生死不明となってから。

 

 彼が純血派という派閥を作ったのも『皇族の為』と口では言っていたが、本来はマリアンヌやルルーシュたちを守り切れなかった雪辱の為。

 

 ルルーシュは知る由もないのだが、ジェレミアという男はこの様な経歴を持ちながら『憧れた人のように』と一途な思いで行動してきた騎士だった。

 

「早速だがジェレミア、貴公と共に来た他の者たちについて話してくれ────」

 

 ……

 …

 

 ダァン、ダァン、ダァン!

 バババババババババ!

 

 ルルーシュやジェレミアとは反対側のモールではライラを見て躊躇しなかったブリタニア軍警察の装備をした者たちとスーツ姿や私服姿の機密情報局がそこかしこで撃ち合う音が響く。

 

「ハァ! ハァ! ハァ!」

 

 そんなオオクボステーションのモール内を、ライラとマーヤは走っていた。

 

 先ほどまでマーヤと一緒にいたのだが急に敵────少なくともマーヤだけでなくライラやブリタニアの機密情報局も狙ってくる相手────の動きがおかしくなった隙に、マーヤが機密情報局の大まかな位置を予測して、ライラと共にオオクボステーションからの脱出を試みていた。

 

 ガシャガシャガシャガシャガシャガシャ!

 

「ッ。」

 

 背後から近づいてくる、何かの機械音にマーヤは走る速度を緩める。

 

「ライラはこのまま先に行って────」

「────マーヤ先輩はどうするです?!」

 

「ちょっと追手が来ているみたいだから、撒いてから勝手にここから出るわ。」

 

「で、でも携帯────」

「────ハァ……貴方がいると身動き取れないの。 だから先に行って。」

 

「……じゃ、じゃあまた外で会うですよ?!」

 

「ええ。」

 

 マーヤはライラを見送ってから、壁際に沿って拳銃を構える。

 

「(さっきから電気製品の調子がおかしいのは多分、ルルーシュの仕業ね。 だけどこの機械音────)────な?!」

 

 マーヤが考えていると、曲がり角から半人半馬のケンタウロスのような男性が曲がってきたことにびっくりする。

 

 下半身は明らかに機械であり、片手にはレバーアクションのライフルを持っている姿はヴェルキンゲトリクスに酷似していた。

 

「人間、発見!」

 

「貴方は、カラレス?!」

 

パァン!

 

 

 ………

 ……

 …

 

 

 

 マーヤの突き放すような口調を気にすることもなくライラはそのまま走り、普段から他の皇族や貴族令嬢と違って活発(物理)だったことに感謝をしながらモールの地上へと降りるエスカレーターを飛び降りていくと正面に人影があることに気付いて物陰に身を潜めながら息を整えようとする。

 

「(誰です? 敵? それとも────)」

「────ロロは────好き?」

「決まって────兄さんだもの────」

「(────シャーリー先輩に、ロロ────?!)」

 

 距離と外部からのサイレン音もあり、会話がところどころ途切れるが聞こえてくる声に聞き覚えがあったことでライラは人影が誰なのかわかり、そっと物陰から顔を出して更に聞き耳を立てる。

 

「────ロロはルルの味方? 本当に?」

 

「シャーリーさん、兄弟に『味方』も何も────」

「────ううん、私が聞きたいのはそれじゃない……貴方があの夜、()()()()()をクララと一緒に連れ去った理由も聞かない。」

 

「ッ。 シャーリーさん、貴方はもしかして────」

「────今のロロあの時と違って冷たい感じがしない。 変わったような気がするから……だから、代わりに答えて。 ロロは、ルルの味方? ルルを一番に考えている?」

 

「……当たり前じゃないですか。 何そんな分かりきったことを────」

「────だったら一緒にルルを助けよう! 私たちが一緒にルルを支えればきっと助けにもなるし、()()()()()────!」

 

 そこでシャーリーはぴたりと、まるで信号ゲーム(だるまさんが転んだ)の参加者のように動きを止めた。

 

「……」

 

 無言で動かなくなったシャーリーへと近づくロロの表情は固く、どこか無慈悲なモノだった。

 

 ロロはそのままシャーリーが手に持っていた拳銃に手を伸ばす。

 

 タッタッタッタッタ────!

 

「────え────?」

「────アリスちゃん直伝キィィィィィック────!」

 「────ガッ?!」

 

 ロロが振り返るとほぼ同時のタイミングで彼の胸に飛び蹴りをライラが食らわせ、これを予想だにしていない様子のロロは肺から息を吐きだしながら目を白黒させて動かなくなったシャーリーにぶつかっては胸を苦しそうに抑えた。

 

「(バカな?! ボクと同じ世界に?! ダメだ、維持が────!)」

「────る筈! って、ライブラちゃん?!」

 

「シャーリー先輩、逃げ~る~で~す~!」

 

 

 


 

 

 プアァァァァァ!

 

 おっと、またも眠りそうだった。

 

 簡単にそう思いながら、(スヴェン)は感覚が鈍感になった体の姿勢をそのまま正しては無断拝借した車を走らせる。

 

『盗難車』? 『無免許運転』?

 

 その通りだが元々ロックもかけていない上にスマートキーに頼っている持ち主が悪い。

 電波なんて(ユキヤ特性の)ソフトウェアでちょちょいのチョイで偽造完了だ。

 

 これだからボンボンどもは────ッと脱線しかけた。

 

 今は道に集中集中。

 

 ……何か忘れている気がするが鈍感になっているのは意図的だが体が熱いし頭もズキズキと痛むし脂汗でびっしょりだった病衣から着替えた後でも強化スーツのインナー越しに私服がべったりと肌に張り付いている。

 

 正直に言って鈍感になっているおかげで体を動かせている感じだ。

 が、気持ち悪いのは止められない。

 それのおかげで体のだるさを紛らせられる。

 

 俺は移動を止めずにただ煙の上がっている方向へと向かう。

 ニュースでは何も報道されてはいないが、方向的にはトウキョウ租界の環状線の駅があった辺り。

 という事はもしかするとジェレミアの襲撃……もしくはそれに類する何か。

 何せライラから『タスケテ』なんてメッセージなんて普通は来ないだろう。

 

 キキィィィィィ!!!

 

 車のタイヤが急ブレーキによってアスファルトの上を滑り、俺はそのまま大久保駅────ああ今はオオクボステーションだったか────へと続くレールの上を走る。

 

 無謀と思うかもしれないが、今起きていることが『ジェレミア襲撃』だと仮定すれば『テロ活動』と見られてこの辺りのリニアカーは全てストップがかけられている筈。

 

 今の装備品は強化スーツのインナーと病院からセルフ退院した時にちょろまかしたものが少々。

 

 スヴェン・ハンセン、いいかげん飛んで火に入る夏の虫のごときシチュエーションにはもうコリゴリな肉体的に18歳。

 

 中身の歳は正直知らないが体に鞭を打って助けを呼ぶメッセージ()に呼ばれるまま出勤である。

*1
125話より




色々な暴走によりカオス度が急上昇中…… _:(´ཀ`;」 ∠):_

余談でギアスも関係しています。 ( ・д-☆
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