楽しんで頂ければ幸いです。
「どうしたんですか、スザクさん?」
「え?」
トウキョウ租界の政庁の総督室でナナリーがふとスザクに声をかける。
「あまり元気が無いようですけれど……」
何時も薄笑いを浮かべているスザクは確かに感情のこもっていない表情をしていたが、目が不自由なナナリーはスザクから感じてくる違和感に関して問うことにした。
上記だけが、ナナリーの動機ではないが。
「あ、ああ。 オオクボステーションモールのテロ現場の近くにシャーリーが居てね。 彼女、無事だったけれどちょっとショックを受けていたのが気に……なって……」
「まぁ! あそこにシャーリーさんが?!」
「うん。 でもケガも何も無かったから大丈夫だと思う。 (あの口ぶりだと、多分……ルルーシュにギアスをかけられた。 あれだけ彼の力になると決めておきながら、僕は……)」
「それにしても、急でしたねスザクさん。」
「え? 何が?」
「合衆国中華の事もあって、ライラちゃんが本国に帰国されたことですよ。 元気にしているかしら?」
「ッ。 何も連絡は来ていないみたいだから、どうかな?」
「急なことで、きっと彼女もクロヴィスお兄様も大変ですよね……」
「ああ……だから今はエリア11に専念できるように、皇帝陛下も彼女の話を禁じているんじゃないかな?
「……そうですよね。」
「(僕の……不甲斐ない俺の所為だ……だけどせめて、ナナリーだけはルルーシュの代わりに守ろう。)」
政庁からライラが居なくなったことで明らかに気落ちしているナナリーにスザクの胸の痛みは増し、彼はそれに蓋をしようとする。
「(ユフィには悪いけれど、もしナナリーやシャーリー……ルルーシュと親しい人たちに危機が迫って自分と彼女たちを天秤にかけるような事態に陥れば……その時、俺は迷わず────)」
…………
………
……
…
パシャ、パシャ。
とっくに夜が訪れた蓬莱島の務室内と繋がっている休憩室の中でルルーシュは顔を洗っていた。
「……フ、酷い顔だな。」
水と共に化粧が流れ落ちた後に、自分の顔を見た彼は思わずボソリとつぶやきながら疲れを示すクマなどをメイクで覆っていく。
「そうだな。 初めてじゃないか? お前が私の化粧品をこうやって使うのは? ああ、女装した時があったなそういえば。」
そんなルルーシュを後ろから何時ものクスクスとした笑いを浮かべず見ていたC.C.が声をかける。
「うるさい、ピザ女。 あの時は不可抗力だ。 そもそも女装はスヴェンだけの筈がいつの間にか会長……先生の悪ふざけと流れの所為だ。 それよりもお前に確認したいことがある。」
「なんだ?」
「お前は、俺に協力してくれるのだな?」
「そういう契約だからな。」
「相手がギアス嚮団でもか? 一応、あそこの嚮主だったのだろう? 思い入れとかは無いだろうな。」
「私は良くて『
「そのV.V.はお前と同じで不死身なのか?」
「まぁ、そうだな……なんだお前、奴を殺すつもりか?」
「正直に言うと、奴が不老不死だということを逆手に取って何度でも八つ裂きにしてやりたい!」
「帰って来るなり、開口一番が“シャーリーにギアスを使った”と言っていたな……かけたギアスの内容は何だ?」
「好意を……俺と初めて出会った時に戻し、あの男のギアス内容を────って、お前には関係ないだろう! それよりもお前との契約、もう一度聞かせてくれ。 お前は俺にギアスを与えた、その代わりにお前の願いを叶える。 お前の願いとやらを聞かせろ────」
「────それこそお前には関係ない────」
「────この期に及んでまたそれか! 相変わらず我儘で、卑怯だな!」
「……お前
珍しく荒ぶる感情のまま言を並べるルルーシュを前に、C.C.は観念するかのように上記の言葉を返した。
「ふん、やってみなければわからんだろう? それにクロヴィスがお前にやったように奴を封印をして、『苦痛』という名の試行錯誤を繰り返すだけだ────」
────ピリリ、ピリリ。
部屋の中で呼び鈴の様な音が鳴り響くとC.C.は近くの端末を操作する。
「ルルーシュ、お前に客だ。」
「誰だ。」
「あのスバルとかシュバールとかスヴェンとか名前をコロコロ変えている若造だ。」
「目が覚めたのか?」
「ああ、今朝な。」
「何故俺に言わなかった。」
「……聞かれていなかったからな。 で、どうする?」
「入れろ。 この時間、ここに来たという事は恐らくライラの事を知ったのだろう。」
「ああ、お前の異母妹の。」
C.C.は記憶を呼び起こすと頭上にほわほわとした少女漫画風の想像が浮かび、自分を見たライラの感想である『滅茶苦茶綺麗な人、出現です!』を思い出す。
「可愛かったな♪」
「(こいつは本当に何を考えているのか分からん。)」
ルルーシュは化粧をし直してゼロとしての身だしなみを軽く整えてからドアのロックを解除すると、包帯を取っていくスヴェンが部屋に入ってくる。
「ゼロ、今いいか?」
「ああ。」
「ギアス嚮団の場所は特定できているか?」
「(いつになく直球だな。) だとしたら?」
「知っているのか、知らないのか?」
「お前はそれを知ってどうするのだ?」
「
「……“同じこと”、か。 果たして────」
「────違うのか? だとしても、俺は一人で出る。」
スヴェンの答えにゼロは腕組をして、まるで考えているかのように間を置くが切り返すようなスヴェンの確認にルルーシュは仮面の下で思わず悪い笑顔を浮かびそうになってしまう。
「……いいや、違わないだろうな。」
「だろうな。 ではいくか────」
「────ああ────」
「「────ギアス嚮団へ(V.V.を追い詰めに/
肩を並べながら歩くゼロとスヴェンは同じようでありながら微妙にずれている思いをしながら部屋から出ていく。
「(つくづくアイツの周りにも皇族が居るようになるな~。)」
一人残されたC.C.はのほほんとゼロたち(死角にはスヴェン)の背中姿を目で追った。
「(二人の『理不尽な暴力の抑止力』となる動機が、まさか『
C.C.はぼんやりと、ぬいぐるみの輪っかを抱きしめて天井を見上げながら靄のかかった記憶を久しぶりに呼び起こした。
「(まるで、あの二人を思い出させる。 蓮夜とクレアを……あいつらの誘いを受けてブリタニアに居座っていれば、私も今頃は……いや、そんなことを考えても意味は無いな。 それにV.V.を
C.C.は右手をぬいぐるみから離しては眼前にかざしては天井からの照明を遮りながら、かつて自分で試したことを思い浮かべた。
「もし、本当にV.V.を殺すことが出来るのなら……私もこの夢に、ようやく終わりを告げられるのだろうか?」
……
…
「他国からくる流民は来たグループをまとめて蓬莱島と合衆国中華の土地に振り分けるのか?」
アマルガム用に置いてある蓬莱島の事務室で資料を振り分けながら手伝いをしていた毒島がレイラに事情を問いかける。
「ええ。 流民と言ってもグループ化出来ているという事から少なからずの身内意識が出来ていると思われますので、無理に開拓村などに新参者を送り込んでもいい結果は生みにくいかと。」
「それは君がEUに居た経験ゆえか。」
「元々シュバールさんがやってくるまでwZERO部隊が活動を行えたのは、ワイバーン隊の日系人たちが既に仲間意識を持っていたことが大きかったからですので。」
「しかし、“収穫や生活が安定するまでは税を免除する”と言っても……ああ、だから労役に対しての給金か。 鞭と飴の使い分けかたが
「う。」
レイラが思い出すのは初めて黒の騎士団の幹部たちに会ったときの印象から、杉山が思わず口にしたあだ名だった。
ちなみにその時のセリフは────
『へぇ~。 “責任感が強くて真面目な性格な上にルール破りが嫌いだ”なんて、まるで委員長だな!』
────である。
なおこの時に彼が口にした『委員長』という役割を、(かなりの偏見を持った)卜部たちから聞いた後に地味メガネの着用やら三つ編みおさげなどを身内(主に日本人組)から勧められてその都度にレイラは断固拒否したりしていた。
ちなみにスヴェンはこの時『双貌のオズ』への介入中だったので、これは彼が知らないエピソードである。
「そ、その呼び名はやめて頂けると助かりますサエコ────」
コン、コン。
『────私だ。 スヴェンもここにいる、良いか?』
部屋のドアにノックとゼロの声が聞こえたことにレイラはササッと書類を片付け、毒島がドアを開ける。
「ようやくか、待っていたぞ二人とも。」
「ギアス嚮団の事ですよね? 既に大まかな作戦を練ったので、他の皆さんにも連絡を付けます。」
「流石だな、レイラ・マルカル。」
…………
………
……
…
「今まで得た情報からの憶測を纏めますと東ユーラシアの所持している巨大兵器の『スルト』は恐らく早期警戒管制機の役割を持った高々度観測気球、あるいはそれに準じた物を国境沿いに配置しているかと思われます。 これがあれば国境に近づいてくる敵の方位、距離、速度等を事前に察知しデータを利用すれば今までの迎撃態勢の対応速度に説明が付きます。」
「それはそこにいる、シャイング卿も同意見か?」
「ええ。 そもそもこの様な警戒網と超長距離砲と部隊の展開方法は、私がまだユーロ・ブリタニアに身を置いていた頃に発案した理論と酷似している。」
「なるほど。 ではEUと中華連邦だけでなく、ユーロ・ブリタニアからの離反者もいると考えた方が良いか────」
「────それだけではないな。 付け足すのならフロートシステム……あるいは電力駆動プラズマ推力モーター付きの航空部隊も視野に入れるべきだろう────」
まるでスヴェンとゼロが来ると予想していたかのように、レイラと毒島に呼ばれたシン、ジャン、ウィルバーなどが集まり淡々と東ユーラシア攻略の話を進めた。
「(……そう言えば……)」
ここでスヴェンはようやくアマルガム側が全員、似たデザインの軍服を着用して統一性が増していたことに気が付く。
彼だけがゼロのように違う服装で『アウェイ感アリ』で少々気まずくなったのは(あまり)関係ないだろう。
例え男女が強化スーツのインナーとロングコートまでは共通していて男性は長袖長ズボンスーツに女性が長袖スーツにプリーツタイトスカートで某ラヴ世界の国連士官用軍装に似ているのも、きっと彼の気のせいだろう。
そしてよく見ると軍服のいたるところにカモフラージュされたドットボタンや、タイトスカートにもかなりきわどいスリットが巧妙にあるのも彼の気の所為だろう。
多分、早急にインナー姿になって強化スーツの外骨格を付けられるようにした工夫も気の所為だろう。
「(うん、きっとそうに違いない。 皆、少しだけ独自の工夫をしているがなんだかSMの『アッチ系の趣味』を持った人の服装みたいで女性陣がエロ────いや。 今はそんなことを考えているときじゃない。)」
スヴェンは自分にそう言い聞かせながらいまだに続く会話に注意を戻す。
「だとすると、こちらも航空部隊を導入すれば速やかに片付けられるのではないのか?」
「私もそう思っていましたジャンさん。 ですが先ほどミルビルさんが言ったように、敵は電力駆動プラズマ推力モーターのみを使用しているところから新たな可能性が出ました。」
「どういうことだ?」
「つまり東ユーラシアの『スルト』に付いている早期警戒管制機はフロートユニットやシステムの使用時に生じる現象をフィルタリングし、より大きな反応に『スルト』を向けて発射している可能性です。」
「それは……」
「『フロートを使えば標的にされる』という事だ。 ……ならばギアス嚮団への進行は自ずと一つになる────」
「「「「────鉄床戦術か/ね/だな。」」」」
その場にいた全員がゼロの言葉の続きを口にした。
ウィルバーとシンにジャンはアマルガムの戦力と編成を整えるために立ち上がり退室し、苦労しながら立ち上がるスヴェンにレイラと毒島が肩を貸すとゼロによって呼び止められる。
「待て。 お前たち三人に……いや、スバルに話がある。」
「「「???」」」
「この作戦が終わった後に、時間を割いてくれ────」
「────いいだろう。」
「そうか。」
スヴェンの即答にゼロは端末機器を操作し、零番隊とラクシャ-タを含む技術部に通信を送る。
そして彼が見た端末にはピースマークのミス・エックスから
「(もしやオズたちがやられた? コーネリアたちが付いていながら? 余程のイレギュラーが起きたのか、あるいはそれほどの戦力をギアス嚮団……いや、V.V.が手元に置いているか。 どちらにせよ、少数精鋭による決定的な打撃が必要となるな。 シャイング卿は義眼に慣れる必要があると
ゼロの頭上にどういうワケか犬の耳を付けたアシュレイやリョウ達が浮かぶ。
「……戦力にはなるだろうが、アクがつよ────おおざっぱすぎるからな。 うん、やはり先の5人が良いな。」
なお彼はアマルガム側で高機動戦力の上位を飾るアンジュとマーヤにウィルバーのことを少しあとに知ることとなるとここで追記する。
…………
………
……
…
「────夜分遅くに諸君を起こしてすまない。 そして急な招集に応じてくれて、感謝する。 」
ゼロがブリーフィングルームの中で眠たそうな顔をしている零番隊に向けてスピーチを始める。
「だが先ほど、ピースマークから早急に手を打たねばならなくなったとある情報が入ってきたことにより零番隊、そしてアマルガムとの合同作戦をこれから行う。」
「……んが?! “ごーどーさくせん”?」
殆ど舟を漕いでいたベニオが少女にあるまじき音を出しては寝ぼけたままゼロの言葉を疑問形で復唱する。
「そうだ。 ブリタニアは、中華連邦の内通者と結託してとある人体実験を行っている。 『死なない兵士』の研究だ。」
ゼロの真剣な口調と言葉に、部屋の中にいた者たちの目が一気に覚め始めていく。
「死なない兵士って────?」
「────本気か────?」
「────皆の疑心は尤もだろう、私もそうだった。 この映像を見るまではな。」
ゼロの合図にブリーフィングルーム内の照明が消えて巨大スクリーンにブラックリベリオン時にアマルガムが対峙したサザーランドやGX01が大破する攻撃を受けながら徐々に負傷部分が再生されていく記録映像が流れる。*1
「うっわ。」
「何だ、あれ?」
「ホラー映画?」
「ゾンビより質が悪いな……」
「気持ち悪いな……」
「見ての通り、ブリタニアは『死なない兵士』の研究成果で得たデータを元に不死に近い性質を持ったナイトメアの製造に辿りつけている。 幸い、数も少なく対処も可能だと判明している。 しかし諸君、考えてみてほしい。 この研究を完成させたブリタニアを。」
その場に居た全員は、映画などで出てくる世紀末的な妄想を思い浮かべて背筋がゾクリとする。
「(ほぇー、大変だぁー。)」
ベニオだけはインパクトが薄かったのか、気の抜けた感想を内心で漏らした。
「『死なない兵士』に『大破から再生するナイトメア』。 この二つの量産が可能となった暁には、武力によるブリタニア世界政府が出来上がってしまう可能性が出る。 しかし! この様な研究の犠牲となっていく者たちを我々黒の騎士団は見過ごせるだろうか?! 私は出来ない! 幸い、この研究がおこなわれている機関の場所はジェレミア卿がもたらしてくれた情報によって判明した。 よって研究員は全員保護し、人体実験に巻き込まれた者たちには人道的な処置をし、出来るならば得たデータを全人類の為に有効活用したい。 問題は、ブリタニアの研究機関が東ユーラシア内にあることだ。」
「東ユーラシアって……」
「ブリタニアとユーロ・ブリタニアを撃退してるって噂の?」
「同じブリタニアなのに?」
「もしかして、派閥争い?」
目標が東ユーラシア内にあると聞き、零番隊がざわめく。
「(『死なない兵士』ねぇ~。 多分、ブリタニアのギアス関連の人体実験機関の事だよね。)」
なおカレンは寝癖によっていつもとは違う方向にツンツンしていた髪の毛を手で治しながら、アリスたちを思い浮かべていた。
「諸君が思っているように、同じブリタニアでも一枚岩ではないということだ。 そしてジェレミア卿によると研究機関は
「あ、あのぉ……」
「ん? なんだねベニオ?」
「えっと……ジェレミア卿って、エリア11での純血派の人の事ですよね? 何で私たちと協力しているんですか?」
ベニオはかつてのサヴィトリを見習ってか、おずおずとしながらも黒の騎士団の誰もが胸に秘めていた疑問を口にした。
「彼は『オレンジ』以外にも複雑な事情が絡んでいるのでな、多くは口に出来ない。 だが一言ですませば、彼も『死なない兵士』の犠牲になったからだ。」
「ああ、なるほど~?」
ゼロのそれらしい物言いに引っ掛かりを感じながらもベニオは納得した。
「ではこれよりイカルガに移り、作戦の委細はそこで話す。」
「あ、ゼロ! 一つ良いですか?」
「うん? なんだね? (ベニオにしては質問が多いな?)」
「作戦名は何ですか?」
「・ ・ ・『ムスペルヘイム攻略作戦』だ。」
「おおお、なんだかカッコいい!」
余談だが、ルルーシュにとって今度の作戦に名前を付けることは考えていなかったので『スルト』から連想できた北欧神話を無理やりこじ付けたそうな。
サラッとアマルガムの軍服兼制服デザインが出せました。
次話からカオスの予定です。 (今更