中華連邦の『国』としての瓦解は長年中華連邦から『独立』を目論んでいた属国や種族自治区にとって夢の様なきっかけで、その
西からはブリタニアやユーロ・ブリタニア、そして東からは合衆国中華と同盟国の合衆国日本の圧力に対して武力でもインフラでも劣ることからブリタニア、あるいは『合衆国連合』の陣営に下っていった。
東ユーロ・ブリタニアと旧中華連邦が手を組んで創立された『東ユーラシア人民共和国』だけは例外的にブリタニアからの
それは巨大兵器『スルト』のおかげでもあるが地形的にも恵まれていたことが大きく、見晴らしのいい野原に陸での進軍を困難にさせる山脈に暴風、日が出ていれば熱いが夜になれば一気に氷点下となる厳しい気候。
通常の進軍ルートは限られる上に『スルト』の遠距離かつ広範囲な攻撃が加われば『自然の要塞に砲台』である。
フロートシステムであればある程度の妨害を無視が出来るとの見込みで近くに居たブリタニアの駐屯軍が
「(“それでも付け入る隙はある”、か。)」
スバルはそう思いながら一面真っ暗な地形をセンサー頼りに低空飛行を行いながら強化スーツと新たな機体の連携チェックをしていた。
『♪~』
『カレンさん、凄くご機嫌ですね!』
『へぁ?! そ、そ、ソウカナ~?』
「声が動揺しているぞカレン。」
スバルの戦闘機のような機体の上には以前からの問題点の修復と改善されたカレンの紅蓮・強襲型と、その後ろに乗る紅鬼灯・弐式のベニオ機の直通通信にスバルがツッコミを入れる。
『……ソンナコトナイヨー。』
「(いま間があったな……それにしても、まさか本当に
今にも目をそらすカレンの仕草にスバルは安心を感じながら、今自分が乗っている新しい機体────蒼天・ムラクモ式に対して若干引いていた。
長らく放置されていた試作型蒼天は順にラクシャータ、ミルビル夫婦、アンナ、そしてネーハが手を加えたこととスバルに関するデータを元に変貌していた。
以前の兵装に加えてスバルが開発した撃震の装備換装システムやサブアームに『アポロンの馬車』を機体の推進力にする為のミニチュア化、ウィルバーによってフロートシステムと電力駆動プラズマ推力モーターのハイブリッド式ブースターを搭載した可変機能、毒島で検証出来たBRSとその応用で各センサーの情報をダイレクトに騎乗者に伝えるインターフェイス等々。
その所為か紅蓮・強襲型のようにより人型になりつつ一回りサイズが大きくなったことで他のナイトメアの運搬にも活用できるようになった。 余談でこの機能のインスピレーションは以前、グリンダ騎士団を相手にしたウィルバーによるものである。
『完全に爆撃機の
これらだけでも量産化を全く視野に入れていない技術なのは明らかであるが、スバルが感心しつつ恐怖を感じていたのは彼がダメ元で依頼していた追加装備が出来ていたことだった。
一つ目はリアクティブアーマーの上位互換である
身も蓋もない呼び方をすれば既に開発したリアクティブ装甲を応用した某メカアニメの『T〇装甲』であるのだが、筆頭開発者であるアンナからすればリアクティブアーマーを昆虫の脱皮に例えただけである。
ちなみにどういうワケかこの新た装甲名は電力を流した状態の色から『ミスリル』と名付けられている。
『アマルガム』の機体に『ミスリル』とはスバルにとって中々に皮肉で、彼は思わず『なんでじゃい』を口にしそうだったとか。
二つ目は彼の機体の動力がエナジーフィラーのみではないこと。
これにはアンナだけでなく、筆頭で開発を進めていたラクシャータにまで『機体の大破は厳禁』といつもの緩~い口調なまま念押しされながら如何に『蒼天・ムラクモ式一機だけで数十体ほどの予算や資源を消費している~』等も含まれた説教染みた説明にスバルの胃が痛みだす。
キリキリキリキリキリ。
「(ラクシャータ特製の胃薬
スバルは緩~い飛行速度のままゼロの作戦に従い、横を飛ぶ他の機体たちを見る。
ガニメデも『コンセプト』から『コンプリート』に変わっており、スバルの機体に使われている
「(『プチエ〇ァ』と言っても、翼の形とマイクロ波誘導加熱ハイブリッドシステム搭載の兵装だと『プチエ〇ァ量産機』寄りだが……というかやっぱりサクラダイト繊維ってスゲェ。)」
スバルが次に視線を移すのはベニオの紅鬼灯・弐式。
一からデザインの見直しがされ、紅鬼灯の難点だった『紅蓮のスペアパーツの盛り合わせ』感がより洗練された見た目と『人型兵器』特有の柔軟性が高まった。
輻射波動は後付けの物ではなく腕に組み込まれ、エナジー補給も機体からではなくカートリッジ式に変えられ、戦闘やパイルバンカーなどの兵装に必要な弾倉交換を補助するサブアーム。
余談で近接戦闘に特化されたのはデータから得たベニオ本人の戦い方であり、村正・武蔵タイプを蒼天・ムラクモ式と似た追加を頼み込んでいた毒島に『見どころがある』と言わせたそうな。
メインカラーを青にした蒼天・ムラクモ式、赤の紅蓮・強襲型、オレンジの紅鬼灯・弐式、灰色のガニメデ・コンプリートに紫の村正・武蔵タイプたち。
より完成された兵器たちは今宵、天誅を下す合図を待っていた。
…………
………
……
…
「ふぁぁぁぁ……」
とある山脈の近くにある小屋の中で元EUの兵士があくびを出して星の出ている夜空を見上げていた。
彼の近くにある小屋の中では暇を持て余し、通信兵もカードゲームでの賭け事に混じっていた。
『う~、中にいても寒い!』
『暖炉にもっと薪をくべるか?』
『だったらお前がもっと取りに出るってことだよな?』
『暖炉も電力式だったらいいのにな~。』
『暖炉があるだけマシだろ? 気を紛らわしたいのなら、携帯でテレビなんてのはどうだ?』
『アホか。 こんな時間帯はゴミしか映っていない。 それならば雪の音を聞いていた方がマシだ。』
『それよりも噂の幽鬼の事を聞いたか?』
『ああ、あのユーロ・ブリタニアが噂している?』
『どうも少し前、ブリタニア本国のセントラルハレースタジアムのテロ占拠事件にも関わっていたらしいぜ? なんでもマリーベル皇女殿下の味方をしていたとか。』
『は? ユーロ・ブリタニアに対抗していた奴がか? なんでだ?』
『さぁ……けど俺はあのブリタニア宰相が贔屓にしているアヴァロンを落とす寸前まで追いつめたって聞いた。』
『“森の魔女”並みに怖い話だな。』
『“森の魔女”? なんだそりゃ?』
『幽鬼の召喚者らしくて、毒ガス並みにエグイ殺し方をするって噂さ。 EUだと結構有名な話で、魔女がいる森に入ると生きて出てこれないって。』
『童話かよ。』
『いやいやいや、マジな話だって!』
東ユーラシア人民共和国の複雑な地形は何も敵だけでなく東ユーラシア軍にも影響を与える為、国境沿いにEUの高々度観測気球を設置していてもデータの受信に難アリや受信に生じるタイムラグがあれば最大の抑止力である『スルト』の運用に響いてしまう。
その『穴』を埋める為に東ユーラシアは索敵と受信能力の高い小型レーダー数十基をトラックやナイトメアに搭載してはアダプティブアレイ式に一つの拠点施設に繋げ、その施設からデータが更に周りの拠点等に情報が共有できるようにしていた。
原始的だがその分、確実だった。
一つ問題点があるとすれば、この様なレーダー網兼コミュニケーションネットワークに必要な人員が通常の倍────否、24時間働けない人間だと更に必要な人数は跳ねあがる。
だがブリタニアの前に大敗し続けて落ち目となりつつあるEUからの
そして先ほどあくびを出したのもその一人で、同僚との賭けに惨敗した不運で『見張り役』をしていた。
「……ん────?」
ドォン!
「────ごわぁ?!」
彼は冷えこむ夜に身震いをしては星の光を遮る、鳥の様な影に目を凝らしていると背後に何か落ちてきては砂や積もっていた雪だけでなく見張りの兵士も巻き起こる爆風に飛ばされる。
「ブハ?!」
雪と泥に埋もれていた兵士は起き上がりながら、鐘が鳴り続いているような感覚の中でじゃりじゃりとする口内から砂などを吐き出して後ろを見ると先ほどまであった筈の小屋とその周辺がクレーターになっており、中心にはKMFより大きな鉄の柱の様な物が立っていた。
「……は?」
兵士は足をすくませながらも、自分が賭け事に弱いことに初めて感謝したそうな。
その所為か、さっき見た鳥の影の様な物がグルグルとグライダーのようにその周辺を回っていたことに気づいていなかった。
……
…
『当たったよーおじさん。』
『そうか。』
フロートシステムを使った艦やこの世界の飛行機より高度の高い上空にいたのはサザーランド・イカロスではなく、アレクサンダを火器管制・機体制御を担うコアとして大型オプションに組み込まれた新たなKGFモドキだった。
『(まさかアレクサンダ・ヘリオスの初出撃が運び屋になるとはな……)』
尚最後の最後までウィルバーとラクシャータによる『ナイトギガフォートレスかナイトメアか』の口論は続き、最後にはウィルバーの横暴な屁理屈
原作でもウィルバーが開発し、騎乗していたサザーランド・イカロスは優れた空中機動力と爆撃能力などを引き継ぎ、電磁装甲等も組み込まれてスバルの蒼天・ムラクモ式の延長線な役割を持つ機体となり、現在ではダルクと彼女の機体が投げる
『まだ30代だ!』
『えー、十分おじさんじゃん!』
『……それ、クラウス君にも言うなよ? 彼、ああ見えて傷付きやすいタイプだからな。』
『ん~……無理! ノエルちゃんが言っていたもん! “パパはおじさんだ~”って!』
『……彼、泣いていなかったかい?』
『泣いていたよ~。』
『……………………………………ほかに、敵の熱源反応情報は来ていないかね?』
『きてな~い!』
『そうか。』
ウィルバーは思わず『辛辣なことを悪意なしで言える無邪気な子ほど怖いものは無い』と思い、
……
…
ウィルバーたちが空から『スルト』の
『調子どうだ、アキト?』
『いいよ。 兄さんこそ、義眼はどんな感じ?』
『…悪くない、馴染んだともいえる。』
『今の、嘘だよね?』
『…違うぞ。』
『やっぱり痛い?』
『痛くないぞ。』
『これ以上は無理そうだね。』
『無理ではないぞ。』
『な~んか釈然としない……』
『(同意見だ。)』
アキトとシン、そして二人の通信を近距離で聞いていたアヤノとジャンは『アポロンの馬車』に乗せる必要が無くなったことで更に物々しくなりヴェルキンゲトリクスの技術を取り入れたアレクサンダ────『アレクサンダ・アラクネ』を使ってウィルバーたちの攻撃の撃ち漏らしなどで東ユーラシアの中枢に連絡が行かないように襲撃を繰り返していた。
ギリシャ神話で出てくる怪物の名が付けられている時点で想像できるように、従来のナイトメアのように二足歩行やランドスピナーを使える上に武装の追加などで増した機体の全重量を支えながら通常の移動方法が困難な地形などにも対応できる六つの脚が内部から展開し、長時間は展開できないものの背部のブースターを使えばヴェルキンゲトリクス以上の速度も見込めた。
余談だがこのアレクサンダの形状がアキトやシンにとってカマキリに見えていた所為か寒い日向兄弟式ダジャレがさく裂し、キリキリと頭を痛めていたアヤノのハリセンがさく裂した。
尚ジャンもその日から『洋扇』よりは『ハリセン』に近い物を持ち始めたとかなんとかは、きっと気のせいだろう。
……
…
「全熱源反応への投擲着弾、ドローンにより確認できました。」
東ユーラシアの『スルト』の予測された防衛網より外で着陸したリア・ファルの薄暗い
「(今はまだ、作戦通りの様ですね。)」
レイラは内心ホッとしながらも近くのスクリーンに映し出される時間を見てはドキドキと力強く脈を打つ心臓によって体が震えるのを気力で抑え込みながら、自分の考えなどを取り込んだゼロの作戦を思い浮かべる。
「(まずは現在の強みであるフロートシステムを使えなくなっている元凶、『スルト』の攻略。 フロートシステムに反応しつつ優先的に狙うのならば『目』や『耳』を潰すのが先決。 まずは短期間で敵の通信施設の破壊が本作戦の第一段階。 上空からはミルビル博士たち、地上はアキトさんたちがシュバールさんたちと零番隊の為に突破口を開く。
そのままシュバールさんたちは軌道の予測が困難な少数の高機動部隊を用いて『スルト』を攻略が第二。
第三段階に潜入部隊はそのままシュバールさんと合流しつつギアス嚮団の防衛施設の弱体化を行っている間に我々が輸送機等を護衛し、必要な人員とデータの回収をしてそのまま撤退。
言葉にすれば簡単だけれど、通信施設からの定期的な報告や何らかの手段で異変に気が付かれれば攻略の難易度が上がり、潜入部隊は激戦を強いられて、今回の作戦の目標であるギアス嚮団が逃げてしまう可能性が出てしまう。)」
そこまで考えると、ふと『最悪のケース』が彼女の脳内に浮かび上がる。
それは『スルト』によりアマルガムのリア・ファルあるいは黒の騎士団のイカルガが大破し、潜入部隊が孤立した状態。
「(いえ、それならばまだ良いのですがもし潜入部隊から『生死不明者』が出てくれば……)」
レイラはwZERO部隊のワイバーン隊がまだ多くの日系人たちで結成されていた時期を思い出し、自爆や彼らの生還に全く配慮していない作戦の都度に彼らの家族に送る報告にせめてもの慈悲として『立派に活躍し、殿を務めて
ポーン♪
何時間にも体感的に感じる数分後、リア・ファルの戦闘指揮所内に場違いな通知音が鳴って緊張感が高まる中でレイラは逆にホッとした。
「(合図!) 取り舵、方位175! 総員に通達、これより潜入部隊が『スルト』を攻略する前提で『ムスペルヘイム攻略作戦』を次の段階に移行します!」
リア・ファルとイカルガのエンジン機関にエナジーが補給され、同時に浮上すると一気に周りの輸送艦も後を追うかのように動き出す。
……
…
「ん?」
「どうした?」
「いや、今長距離レーダーに艦影が映ったような気が……」
通信施設やレーダー網が無くとも『スルト』にはある程度自機のみでの運用能力も揃えている。
『揃えている』と言っても、あくまで予備機能であり外との連携を前提にしたモノである。
「どうせ故障か何かだろ? 警戒システムや付随のレーダー網から何もないだろ?」
「いや待て……連絡が取れない。」
「“連絡が取れない”? どうせサボっているか何かだろ────」
「────フロートシステムの反応を多数キャッチ!」
「何?!」
「国境を超えつつ近づいてきます────!」
「────何故本機に搭載されたセンサーに引っ掛かるまで何もなかった?! 外の連中は何をやっていた────?!」
『スルト』内部は突かれた巣のように一気に騒がしくなり、彼らはすぐに東ユーラシア防衛司令部に連絡を送った。
『状況は分かった、敵は何機だ?』
「速度から浮遊航空艦を含めて一個小隊以上は居る!」
『落ち着け、こちらも周辺で待機している機体や航空部隊たちに連絡を送りすぐにそちらへ回す。 その戦域から一般人の退去はもう済んでいるから長距離砲の使用も独自判断で行って構わない。 時間を稼げ。』
「ああ、そうかい! 総員第一戦闘配備! これより侵入者の撃退を試みる! 砲身の方位を330に向けろ!」
東ユーラシアの司令部から返ってきた、ゆったりとした口調にイラつきながらも『スルト』を中心にした祖国防衛隊隊長はイラつきを隠そうともせず命令を出す。
「ナイトメア部隊を半円陣に展開! 航空部隊もスクランブルだ!」
ブオォォォォ!
方向転換の為に『スルト』の足代わりとなっている陸上戦艦のホバー機能が砂塵を起こし、まるで巨大な怪物の咆哮を思わせるその音が東ユーラシア側の開戦合図となった。
表舞台に『幽鬼』が出現したことを『世界』はすぐ知ることになる。
レールから外れた『物語』の先は、何処へ?
余談:
『年末の休暇もぎ取り』に成功しました♪ (´∀`)ワクワク