ピィー!
『合図が来たよスバル!』
蒼天のコックピット内部に外部からの電子対抗手段が表示と共に警告音が出てくると、カレンの声が通信機器越しに来る。
「ああ。 毒島、頼めるか?」
『本当に私が指揮を執って良いのか?』
近くを飛んでいた村正一式・武蔵タイプの物々しい容姿から想像しにくい、少々自信に欠けた毒島の声が返ってくる。
「急に俺が仕切っても、零番隊から不信がられかねない。」
本当は仕切っても、上手く部隊を運用できる指揮能力が無いからだが。
『なるほど。 確かに“桐原の孫”である私ならば威厳が保てるか。』
「……そうだ。」
『よし……総員、こちら毒島だ。 飛翔滑走翼の使用許可! 各グループは散開し、障害物に対応する者たちは気にせず敵を駆逐してから後続! 迷いそうならば通信線やソーラーパネルに沿って飛べ! 敵巨大兵器のスルトまでおよそ65㎞を駆け抜けて攻撃を脚部分に集中しろ!』
『『『了解!』』』
『そういう事にしておこう』、と内心でホッとするのも束の間だけで毒島の号令に耳鳴りのような音高がコックピット越しにも伝わり、俺の機体も機関にエナジー補給が開始されると同じ音が耳に圧迫感を与えるがヘッドセットについている自動調整機能によって消えていく。
「スー……ハー……」
ゆっくりと深呼吸をしながら、ずっと操縦桿を握っていた所為で感覚がマヒしていた手の指等を開き、血脈が行き渡っていくとオオクボステーションモールで無理やりカラレスの攻撃を受けた掌からジクジクとした鈍痛が伝わり、痛み出す感覚の中で操縦桿を再び握る。
「カレン、それと
『────ッ。 分かった────!』
『────え? それってど────?』
「────こちらレヴナント01、交戦────」
────ドゥ────!
『────いぅわあああああああああ?!』
ベニオの何かを聞きたそうな声を半ば無視し、俺は噴射機の出力を上げると彼女が閉まらない口のまま叫ぶイメージがくっきりと分かる様な叫びが聞こえてくる。
だから言ったのに、『口を開けるな』って。
先ほどまでゆったりと動いていた地上もすぐに景色が混ざっていき、速度計測や出力機器は一気にレッドゾーンへと突入する。
普通ならここで機体のOSが
『ッ! ッッッ!』
『ああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』
通信からくる声は無視。
何せ注意はしたからな、自業自得だ。
それにカレンとプチカレンっぽいベニオならこれぐらいは余裕の筈。
そう思う俺の体は座席に固定されてなお急な加速でシートクッションにめり込んでいき、技術部たちに内心で感謝をできる前に敵の対空機銃によって発射された曳光弾がまるで地上から宇宙へ帰りたがる流星群のように光り、さっきまで真っ暗だった夜の景色を人工的な光でライトアップしていく。
『物騒な花火』そのものである。
だから『きたねえ花火だ』にならないように注意を……いや、意識を集中させる。
研ぎ澄まされていく意識に周りのノイズが消えていき、曳光弾や対空ミサイルの信号の表示等がまるでスローモーションで動いているかのような中を俺は減速せずフルスロットルで突き進みながらなるべく背中に乗っているカレンとベニオの機体が振り落とされない軌道を取るとBRSによって機体のコントロールに調整が加えられて対空砲火を余裕のある距離で避けていく。
何故『余裕のある距離を?』だって?
曳光弾は基本的に『数発に一発程度』で、それだけ当てにしていると曳光弾のない対空機銃に足をすくわれる可能性があるからな。
操縦桿とBRSでヘッドアップディスプレイを操作し、とある兵装の予測効果範囲が表示され最大の効果が見込めるタイミングで発射ボタンを押す。
「レヴナント01、投下。」
気の毒だが、後続部隊の為に速攻で戦意を
ウ~、ウ~!
東ユーラシアの『スルト』周辺に配置された飛行場は空襲警報が鳴り続け、強力なスポットライトが夜空を突き刺すように出来るだけ侵入してきた者たちの妨害を図る。
スポットライト自体はナイトメアにダメージは与えられないものの、直接光を浴びさせることができれば画面焼けを起こして撃墜のハードルが下がる。
少なくとも、牽制になる見込みがある。
『敵機が接近中、全パイロットはスクランブル! これは演習ではない! 繰り返す、演習ではない! 直ちに迎撃せよ────!』
『────爆撃機は退け、邪魔だ! 戦闘機R5から10は滑走路2から7の使用を許可する! 滑走路に入り次第、即離陸────!』
『────こちら東トーチカ03! 敵のナイトメアだ! ナイトメアが降下して────』
『────本部、応答を願います! こちら東05飛行場、敵の攻撃を受け交戦中────!』
『────被害尊大────!』
『────うわぁ?! が、骸骨────?!』
『────骸骨?! なに寝ぼけたことを────!』
『────待て! 何かキラキラとしたものを落として────?』
ボボボボボボボボボ!
連続で大地を震わせる轟音により、東05飛行場の航空部隊を収納しているハンガーを中心に2割が更地と化した。
『ぐわぁぁぁぁぁぁ?!』
『え、衛生兵! 衛生兵ー!』
『腕、腕ぇぇぇぇあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』
『本部、こちら東05飛行場! 被害尊大────!』
多くの生き残った兵士たちは奇妙な手足の生えた戦闘機の様な物が上空を過ぎっては手足等が折りたたんでいき『ソレ』が戦闘機に戻るところで内部骨格剥きだしの頭部を目に焼き付かせた。
俺は減速と兵装展開を兼ねた無理なガ〇ォーク形態へ機体を移行させた所為で影響が出ていないかを簡易チェックで確認してから残りのロケット弾数を見る。
ちなみに先ほど使ったロケット弾一つに数百個の子弾が内蔵されていて、展開されるとそれ等が全て後半にばらまかれる仕組み────いわゆる『クラスター爆弾』だ。
無論、前世ならば『クラスター爆弾禁止条約』とかに引っ掛かるがコードギアスの世界にはそのようなモノは無い。
というかクラスター爆弾の使用がどれだけ危険かまだ理解していない。
今だからこそいうが、これの開発に俺は携わっていない。
ネタバレをすると『オズ』でブリタニアに失望したウィルバーが『タレイランの翼』を率いてペンドラゴンに『戦争の恐怖』を痛感させるため、サザーランド・イカロスに爆撃用装備としてクラスター爆弾を使う予定だった物のサイズダウンと小分けさせて蒼天に付けている。
テストと実用性を兼ねていると口では言ったが、無差別爆撃による負傷や『恐怖』がメインだ。
戦場では、『死』より厄介なのが『重傷』。
これはヴァイスボルフ城の防衛でも大いに役に立った戦法。
……そう考えている。
俺は空になったコンテナを
『────こちら
来たな。
俺の機体のようにBRSの応用が効いている機体のヘッドアップディスプレイに
『でか?!』
『この赤いエリア全部が危険地帯なのか?!』
思っていたより効果範囲が広いな。 飛来中はまるで文字通りに『宙を殴る』かのようで、弾頭の効果がさく裂するときは前世の第二次世界大戦で有名な『アハト・アハト』だ。*1
『弾数2、初弾着まで20秒。』
『うおおおおおおおおおおお! 横に飛べェェェェ!』
『落ち着け、落ち着け、落ち着け!』
『最悪の場合出来るだけ地面に寝そべるようにべったりとしていれば致命傷にならない……筈。』
まぁ、手榴弾と同じで攻撃に当たる『表面』を小さくすれば被害は小さくなるかもしれない。
そう思いながら、俺は蒼天をガウォー〇から戦闘機形態に戻しながら再び加速をし始める。
『カレンさん、あの人突っ込む気ですよ?!』
『いつもの事だよ! ほら、ベニオもボケっとしていないでさっさと散開!』
『5,4,3,2,1! 初弾、今です!』
ゴォォォォ!!!
巨大兵器スルトの初弾による衝撃波で轟音と共に大気の震えが機体の装甲を展開させ、警報が鳴る。
『まるで台風だ!』
『機体のアラーム表示がバグっている!』
『画面にひびが入った!』
『次弾着まで5────』
『────もう────?!』
『────早すぎる────!』
『────動け動け動け動け動けぇぇぇぇ────!』
『────飛翔滑走翼の反応が遅い────!』
『────2、1! 来ます!』
キィィィン。
周りから『スルト』の怖さを甘く見積もっていた者たちの通信を斑鳩のオペレーターが遮るとヘッドセット越しでも聞こえてくる、耳をつんざくような耳鳴りに似た音がまさに『宙を切る』という表現をリアルで実感させる。
『敵機が上がってくる!』
『すぐに体勢を整えて滑走路の上で破壊しろ!』
『対空砲火が濃すぎる!』
『ベニオ、行くよ! 背中は任せる!』
「レヴナント01、第二弾を投下。」
ハンガーから出てくる航空部隊や対空砲火機銃ではなく滑走路を狙ったクラスター爆弾がさく裂すると、瞬く間に平らだった滑走路が……いや、予想以下の凸凹具合となった。
ミニチュア化した所為で破壊力は『対人』により特化された様で、敵の航空部隊が次々と離陸すると空が機銃やミサイルに爆発などで更に窮屈な印象を与えてくる。
ガァン! ゴォン!
機体が外からの衝撃で何度か震え、網膜投影システム表示に『被弾:損傷軽微』が出てくる。
“新装甲さまさまだな”と思いながらも、他の連中に集中を割いている場合ではないと自分に言い聞かせながら蒼天を動かす。
交戦開始から数分後となった今、レーダー表示を見ると黒の騎士団の精鋭である零番隊とアマルガムでも戦力上位者たちの働きで既に敵影は当初の3割を切っていたことから、既に部隊等は『スルト』の方角へと転進しつつ前方に立ちはだかる敵のみに攻撃を集中していた。
『敵の巨大兵器による砲撃、再度確認!』
『早いな……』
『もう?! 味方が残っているのに?!』
『見境なしかよ!』
ま、次はそう来るだろうな。
東ユーラシアが持つ最大の戦力は『スルト』だ。 こんな拠点の一つより、『スルト』を優先するのが合理的で、戦術としては何も間違ってはいない。
“大を生かすために小を捨てる”というヤツだな。
イライライライライライライライラ。
どこぞのクルクルロン毛風に言うと気ぃにぃ入らぁぬぅんンンンンンンン!!!
考えただけでムカムカし始める。
よし、速攻でスルトを攻略してみようじゃないか。
どうせギアス嚮団の戦力はプルートーンとカラレスやロロにベ〇ブレードオレンジに乗ったクソショタジジイたちぐらいだろうから、アマルガムと零番隊で潰せる筈だ。
……何か忘れているような気がするが、今は『スルト』だ。
『弾着10秒前。 7、6、5────』
『────赤い表示内から逃げられないヤツは衝撃に備えろ!』
『本番はまだまだこれからなんだ、損傷や消耗の少ない機体は出来るだけ温存しろ!』
『────2、1、弾着!』
ゴォォォォ!!!
先ほどより近い距離を通過する『スルト』の砲撃によって今度は大気だけでなく、コックピット内に居る俺の体までもが触れて視界がブレる。
敵と味方機の信号がいくつか『
幸い、俺の知人たちの信号は誰一人として消失していない。
『────1、弾着!』
キィィィン!
『スルト』の次弾が宙をまたも切り裂け、乱気流が発生して空中に飛んでいる敵味方関係なく影響を与えていく。
だが俺は減速せずにただただ空中を駆け抜けると次第に、レーダー上に『スルト』らしき反応が出てきてカメラの拡大と暗視機能を点ける。
「でっか。」
そう思わず声を出させてしまうほどの光景が俺を待ち受けていた。
以前、日本解放戦線がホテルジャック事件で使用した雷光のベースとなったユーロ・ブリタニアのカンタベリーを覚えているだろうか?
一行で済ませるのなら『カンタベリーを何倍にもスケールアップし、足代わりにEUの地上戦艦を四つ付けた巨大砲』だ。
弾幕が厚くなりすぎる前に挨拶代わりの先手必勝クラスター爆弾を食らいやがれ。
それと某ウェスト風に“ミサイルのシャワーなのである”も追加。
あと
何時の時代の敵対巨大ロマン兵器のように。
時間を『ムスペルハイム攻略作戦』が本格的に決行されて攻撃が本体にされる少し前まで遡る。
場所はギアス嚮団の地下都市内。
「意外と早かったね、シャルル。」
その中でエリア11にてライラやオオクボステーションに関しての根回しや手配にV.V.は感心するような言葉を通信越しのシャルルに送っていた。
『兄上がそのような言葉を並べられるとは珍しいですな。』
「珍しいのは君の方だよ、シャルル。 今までずっとボクや周りの者たちに任せていたのに、どういう風の吹き回しだい?」
『任せっきりだったからこそですよ。 それに計画はC.C.さえ加われば実行可能な段階ですが、自然ながらも“ギアスの無効化らしき現象”に興味が出るのは必然かと思いますが?』
「それもそうか。 それで、彼女を運んでいる輸送機はいつこっちに到着する予定?」
『予定通りならば
「そうだね。 ここに長居しすぎた所為かたどり着いた人たちが出たからね。 新しい拠点先は追って伝えるよ。 それと以前依頼していた物は届いたかいシャルル?」
『ええ。先日、無事に届きました。 礼を言います────』
「────でも驚いたよシャルル。 まさか君にそんな趣味があったなんて知らなかったよ。」
『意外ですかな?』
「まぁね。 じゃあライラが来たら連絡するよ。」
『ええ、待っています。』
端末からシャルルの顔が消えるとV.V.が通信を再びギアス嚮団関係者らしき者へ繋げる。
『嚮主様、如何なされましたか────?』
「────データをイジェクトダートに乗せて。 それとカラレスたちに……そうだね、コーネリアと例の子たちもいつでも出撃できるように。」
『例の者が到着次第、ここを出払うのですか?』
「出る用意はしておいて損はない。」
『承知いたしました。』
「それと例の装置は?」
『設置し終えました。 使用対象が無いのでやはり効果は検証データ頼みですが……』
「いや、それだけでも十分さ。 ああ、それとジークフリートも。」
『ですが、ジェレミア卿は────』
「────ボクがジークフリートに乗る。」
『嚮主様自らが御出になられるのですか?!』
「ジェレミアとカラレス、それにキューエルの他でジークフリートの神経電位接続に対応しているのはボクとアレだけだからね。 いざという時の為だよ。」
『畏まりました。』
「……ふー。」
V.V.は端末を切っては天井を見上げながらため息を出す。
「(そろそろの筈だけれど────)」
────ズズゥン……
V.V.が見上げている天井────外部から見た『地上』────から地鳴りのような低い音が響くと地下都市が揺れ、土埃がパラパラと落ちてくる。
「こういう時は“時間通り”、っていうんだっけ?」
V.V.は薄い笑みを浮かべながら平然と立ち上がっては中枢にある研究施設へと足を運ばせると、戸惑うローブや白衣を着たギアス嚮団の者たちを見ては表情をスンとさせる。
「嚮主様、これは一体────?」
「────慌てるな。 多分誰かが東ユーラシアを攻撃している────」
────ピッピッピ♪ ピッピッピ♪
「この音は、定期連絡────?」
「────それにこの着信IDは、ジェレミア卿────?!」
「────繋いで。」
「「「え?」」」
「聞こえなかった? “繋いで”と言ったのだけれど?」
周りの者たちは平常運転の言動を続けるV.V.を見ては唖然としたり、感心したりしていたが彼の念押しに通信を受けると表情のないルルーシュが出てくる。
「これは────?!」
「────確か、『ルルーシュ』とやらの少年────?」
「────ではやはり……」
「発信元は?」
「エリア11と表示されています。」
『初めまして、貴様がV.V.か?』
V.V.の問いに、近くのローブ姿の者が答えるとルルーシュが上記を問いかける。
「君はルルーシュだね────」
『────自己紹介は必要ないだろうから、単刀直入に聞くぞ。 観察者を気取りながら神根島に俺やスザクたちを飛ばしたり、トウキョウ決戦の時にナナリーを学園から攫ったのはお前か?』
「……うん、そうだよ。 それを聞くという事は、ゼロとしての記憶が戻っているんだよね。」
『ああ、
「ふーん……C.C.も一緒にいるの?」
『もう一つ、俺から聞きたいことがある。』
「なんだい?」
『マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアが……
「……まぁ、
『そうか────』
────ドゴォン────!
「────嚮主様! ナイトメアが天井から────!」
『────覚悟しろV.V.、貴様の命運はここで尽きる。』
ここでルルーシュの表情はかつてないほど、悪党がするような悪い笑みを浮かべた。
『大人しく天誅を受けいれれば痛くないようにしてやるぞ?』
皮肉にもルルーシュがここで口にしたのは以前、スヴェンが夢の中で見たC.C.が発した言葉に似ていた。*2
『年末の休暇もぎ取り』とは別に今週からリアルで急な予定が立て続けに重なってしまい、次話投稿が遅れると思います。
ご了承下さいますよう、お願い申し上げます。 m(_ _)m