小心者、コードギアスの世界を生き残る。   作:haru970

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1/22/2024 08:58 追記:
後半のルルーシュ&ロロシーン直後辺りに上手く投降しきれていない部分を、スバル視点の後半に移動して文章を追加しました。

ご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。 m(_ _)m


第248話 集結するカオス

 キュィィィィィィ、ガァン! バララララララララララララ! ヒュオン、ガァン

 

 サンドボードを使ったKMFが砂の上を走る時に聞こえる独自のランドスピナー音とラクシャータ製とブリタニア製のフロートユニット(飛翔滑走翼)の起動音が重なっていき、体の芯にまで響く鉄と鉄がぶつかる鈍い音が衝撃、地鳴り、様々な口径の発砲音を背景音として響き合う。

 

 その様はまるで金属や爆発物のみでコンサートを開かれているようだった。

 

 それ等の情報は精密な情報処理が施されて、(スバル)にとっては『レーダー上に浮かぶ音源位置データ』として入ってくる。

 早い話が、FPS等でよく見る『ミニマップ』というヤツだな。

 

「『………………』」

 

 で、なんで俺がこんなに悠長な内心での説明が出来るかというと最初は細々とした『俺』や『俺』とカレンのやり取りが無くなったからだ。

 

 エナジーフィラーを一つ抜いても尚、ほぼ互角の機動戦を挑んでくる黒いランスロットの対応に紅蓮・強襲型と蒼天・ムラクモ式は全集中力を注いでいた。

 

 一言で済ますのならば黒いランスロットは単純に『強い』。

 

 黒いランスロットは『二対一』の状況を巧みに利用し、エナジー消費を最小限に抑える立回りで()()()()を狙っていた。

 

 まさかカレンや『俺』の狙いを察知して、それを逆に仕掛けてくるとはな。

 

 忘れがちだが、元々KMFはその高い機動能力を活用した電撃作戦などの戦闘教義(きょうぎ)での使用を前提で長らく開発されてきた。

 今ではアーニャのモルドレッドやティンクのゼットランド、ユーロ・ブリタニアが独自に開発したアフラマズダにゼロに強奪されたガウェイン、オイアグロのアグラヴェインなどの重量級大型KMFが少数ながらも制作されて来ているが、それでも基本部位や基幹パーツはメンテナンスの効率化の為にユニバーサルデザインで共有している。

 

 エナジーフィラーももちろんこれに含まれているワケで、エナジーの使用量が激しい装備や機体であればあるほどに、何らかの消費削減対策が施されるのが常識だ。

 

 従来のKMFを基準として、モルドレッドは空中戦を主体にしている所為で陸上の機動力なんてモノは無いに等しいし『宙を飛ぶ』よりは『浮遊する』と言った微妙な速度しか出せない。

 試作型に当たるゼットランドやゼットランドの元となったアフラマズダも『拠点防衛』の一点から開発されたものだから機動性はさらに落ちるばかりか、武装も実弾を使ったモノなどを使用している。

 

 MVSは内蔵バッテリー仕様に出来るから除外するとして、ブラッドフォードやトリスタンなんてメギドハーケン、ハドロンスピアーにフロートシステムだけの軽装備な上にギリギリにまで落とした装甲と軍用強化プラスチックで軽量化されている。

 

 ミルビル博士夫婦たちの話によると、エナジー消費が一番高いハドロンスピアーやハドロン砲も使用時には銃口への負担なども配慮して出力制限を機体の操作入力がOSに入る段階でかけているらしい。

 

 ラウンズ機は一般用と違って、騎乗者が任意でこのリミッターを解除(オフ)に出来る仕様を採用した方策だったとか。

 

 長々と並べて結局何が言いたいかというと、現在の紅蓮・強襲型や蒼天・ムラクモ式にアンジュのビルキースなどは『新技術の実証試験に使用されるプラットフォーム機』という範疇を超えているどころか、『エナジー容量をほぼ配慮していない最先端技術を積み込んだ機体』であるという事。

 

 その点では()()()のランスロットや、サザーランド本体に予備パーツを付けたランスロット・クラブと似通っている。

 

 というわけで黒いランスロットのエナジーフィラーを抜いたのは相手のパワーダウンを狙っていた行動からではなく、逆に俺たち側のエナジー切れを相手が狙いにくくする為だ。

 

 通信が開いているのに無言という事は多分、カレンも『俺』と同じで緊張と焦りから大粒の汗を額と首回りに浮かばせながらどうにか現状の打破が出来る一手、あるいは隙を探しているだろうな。

 

『二対一』だというのに黒ランの動きと間合いの取り方。

『エナジーフィラーを抜かれる』といった予想外の攻撃に対する対応力。

 それに紅蓮や蒼天の動きに慣れてきているような微妙な距離の取り方。

 

 少なからず動揺を見せてもおかしくはない状況下で確実に、周りの戦況を組み込んだ対処と動きが、時間が経てば経つほどにどんどんと洗練されていく様は気の所為ではないな。

 

 ルルーシュ並みの観察眼とスザクの様な応用力を見ると、やはり黒いランスロットの中にいるのがライ(仮)で間違いないな。

 

 というかライ(仮)であって欲しい。

 この時を想定してラクシャータたちにも黙って独断で入れた()()()()()があるからな。

 

『フードはどうした』って?

 身軽になる為もう既にパージ&特攻をかけましたが何か?

 

 そこ、『脳筋ムーブw』なんて言わない。

 

 あとは()()()()()と────

 

 ボォンボォンボォンボォンボォン!

 

 ────そう俺が思っていると紅蓮がパイルバンカーの杭を数本撃ち出し、黒いランスロットがMVSでそれ等を弾いた瞬間に『俺』が蒼天で仕掛ける。

 

 過激な加速に生身の体が反射的に瞼を閉じそうになるがギリギリのところで踏ん張るとすぐに涙目になる。

 それでもフットペダルと操縦桿を操作し、円を描くような軌道で蒼天を黒いランスロットの死角に入りこんで右手の輻射波動機を向ける。

 

 カチ。

 

 杭を撃ち出しながらも動きを止めなかった紅蓮が輻射波動の効果範囲外に出たことを確認すると俺はスイッチを入れる。

 

 以前に話した、『脳から信号が送られて筋肉が反応して動作を始める物理的な壁』を覚えているだろうか?*1

 

 時間にすると脳が神経に命令を出して筋肉が反応するまで約『0.2秒』。

 人間という生物であるのなら、この壁を超えるのは()()不可能である。

 例外があるとすればルルーシュのように『先を読む』、ジェレミアの様な『神経電位接続』で脳の信号をダイレクトに機体へ送る、あるいは────

 

 カァン

 

 ────ライ(仮)のように『ロスカラ』でとあるルートで判明したように身体を改造されるか。

 

 まるで頭部の後ろにメインカメラ()があるかのような反応速度で黒いランスロットはハーケンブースターを使って腰のスラッシュハーケンで蒼天の右手を弾き、まるでスラッシュハーケンの後を追うかの様なMVSが蒼天に飛来してくる。

 

 だが『俺』は怯むことなく蒼天を更に前進させて黒いランスロットに接近して懐に入らせると、強い衝撃と血が体の後方に充満するような感覚が俺を襲う。

 

 意識が飛びそうになったからか星が散る視界の中で俺は黒いランスロットがさっきの俺のような機動で背後に回って、体当たりをしてきたことに理解が追いつくと、『俺』はブースターに出力を入れて背後からの体当たりの勢いを利用しながらくるりと180度反転して黒いランスロットと対峙する。

 

 後を追おうとした黒いランスロットを上から紅蓮の輻射波動が襲い、その間に蒼天はサブアームに渡された長刀を手に取る。

 

 黒いランスロットが蒼天をより近い脅威と感じてか、先ほど以上の速度で接近してくる。

 

 ガキィン!

 

 MVSと長刀が衝突し、フロートユニットの勢いを付けた黒いランスロットに蒼天が力負けをして押される。

『俺』は敢えてそれを受け流すことなく、そのまま正面から受けては衝撃緩和の為か噴射機でより後方へと逃げる。

 

 ピィィィ!

 

 長刀を持っていた左手の異常と同時に後方に『物体急接近』を示すアラームに蒼天が近付いていた地上にランドスピナーを展開させると、非常着陸時の飛行機のようにコックピットが再び揺れる。

 

 ピィィィ────ガイィィン

 

 それでもアラーム音はなり続き、ほどなくして蒼天が何か────『スルト』にぶつかって無理やり動きが止まってしまう。

 

 黒いランスロットがこれを好機と見てか、紅蓮ではなく蒼天に迫る。

 

『俺』は左手のマニュピレータで持っていた長刀を投げると黒いランスロットがそれを容易く弾いては全速力で近づいてくる。

 

 え? 『何で奇声を上げていないんだ』って?

 

 そりゃ勿論、ここまでが()()()()だからさ。

 

 というわけで罠カード発動!

 

 ガシャ!

 

 長刀を投げた左の前腕カバーが展開すると収納されていた補助火器が姿を現す。

 

 ここまで長かった。

 

 ブラックリベリオンのサザビー(サザーランド・ザ・ビッグ)、そしてバベルタワーの村正一式・伊織タイプ……お前たちから得たライ(仮)に関する戦闘データを使った『対ライ(仮)の戦術パターン』。

 通常のKMFより一回りゴツイおかげで隠すことが出来た暗器。

 そして十分に注意を引かせるだけでなく激戦を強いることのできるカレンとの共闘。

 

 本当に……本当に長かった!

 

 サプライズを食らいやがれ、ライ(仮)!

 

 ダダダダダダダダダダダダ!

 

 火薬式の銃火器独自の力強い発砲音と共に網膜投影システムに残弾数が凄い勢いで減っていき、突進してくる黒いランスロットの軽金装甲が徐々に剥がれていく。

 

 ダダダダダダダダダダダダ!

 

 それでも猪のように敵は暗器サイズに収める為に反動が大きく、銃身が短くなった所為か着弾が一点に集中していないことに気付いたのか、黒ランは機体をそらしてなるべく被弾を押さえていた。

 

 ダダダダダダダダダダダダ!

 

 冷却問題から単身ではなくマルチバレルの機関銃によって発砲速度が上がっているおかげで数百弾と言えども、撃ち続けた今では弾倉には半分しか残っていない。

 

 ザクッ! バリィン!

 

「ぐ?!」

 

 穴だらけになった黒ランのMVSが左前腕の機関銃を切断する流れで蒼天の胸部装甲も抉られ、コックピット内のモニターにノイズが走ってガラスが飛び散る。

 

 バキッ!

 

 負けじと蒼天の右腕がサブアームで展開した予備の長刀を無理やり押して黒ランのコックピットブロックに斬りつける。

 

「まだだ! まだ終わらせない!」

 

 ボォォォォォ!

 

『俺』は叫びながら操縦桿でエナジーフィラーとは違う電力に機体のブースター出力を底上げさせてフットペダルを踏むと、噴射機が『スルト』に当たり黒ランに突き立てていた長刀を更にめり込ませようとする。

 

 バキッ!

 

 だが元々この様な使用を想定していないサブアーム等はぽっきりと折れてしまい、最後にはスルトをロープ代わりに機体をリバウンドした蒼天がラリアットを黒ランに食らわせるような絵図になる。

 

 ガァンガァンガァンガァン!!!

 

「落ちろ落ちろ落ちろ落ちろぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 ガリガリと地面で削るかのように押し倒した黒ランを、『俺』は蒼天の右腕で何度も黒ランを物理的に殴る。

 

 ボゴォォォォン!

 

 蒼天が黒ランを殴っていくとミニマップに大きな反応があり、反射的に感覚をKMFのカメラに戻すと地中からオレンジ色の球体────ジークフリートの巨大スラッシュハーケンを絶対守護領域で受け止めていた蜃気楼の二機が姿を現す。

 

 


 

『指揮官機でそこまで戦えるなんて、君はまごうことなきマリアンヌの子だよ────!』

『────V.V.よ、良い事を教えてやる! 観察者が当事者に役割を変えるという事は、責任を取る覚悟があるという事だ────!』

『────何を────』

『────俺は言ったはずだぞV.V.、“大人しく天誅を受けいれれば痛くないようにしてやるぞ”と────』

『────だから何を!』

 『────ハイヤァァァァァァァ!!!』

 

 ガキィン

 

 ルルーシュとV.V.の通信を遮る少女の掛け声に、攻撃用アーム────『Wolve’s Tooth(ウルブストゥース)』を展開したヴィンセント・()()()が真上からジークフリートに攻撃を当てる。

 

『何?! この声は双子の────?!』

『────V.V.! 』

 

 バキィン!!

 

 硝子が壊れるような音にウルブストゥースが砕かれると同時にジークフリートの装甲にヒビが入ると、ヴィンセント・グラムの中にいたオルドリンはすぐにウルブストゥースを機体からパージし、ヒビの裂け目にルミナス・コーンを展開する。

 

 型式番号RZX-7Z-01C、『ヴィンセント・グラム』。

『双貌のオズO2』に登場する第七世代相当のKMFにして初期量産試作型ヴィンセントを大グリンダ騎士団が限界までカスタム化した機体であり、『オズ』の最後に記憶喪失となってからはマリーベルの筆頭騎士『ライアー』と名乗ったオルフェウスの専用機。

 

 今作ではスバルが様々な不運が起きる前に『オズ』の初期に介入した所為で流れが変わり、今作ではオルフェウスではなくオルドリンの裏の顔────ピースマークの『ドロシー』として行動する際の機体に役割が変わり、本人の()()()()で『単機行動特化』の思想の元にデザインされた。

 

『娯楽として多くの無垢な民の運命を捻じ曲げた悪の根源、天裁(てんさい)の激突を知るがいい!』

 

 バキバキバキバキバキバキ!!

 

『呪われた皇子に双子ごときに!』

 

 ジークフリートの装甲に入ったヒビが大きくなっていき、V.V.は無理やりヴィンセント・グラムを振り払う。

 

『装甲の強度が────!』

『────V.V.! ギアスの根源、ここで断ち切る!』

 

 V.V.の通信がまたも遮られ、今度はヴィンセント・グラムが落ちてきた方向から数多のミサイルにハドロン砲独自の赤いビームが直撃していく。

 

『オイアグロ、君までここに?!』

 

 上空から攻撃していたKMF────アグラヴェインを見たV.V.は先ほどまで平然だった声を驚きに変えた。

 

 さて、ここでどうやってヴィンセント・グラムやアグラヴェインが来たかをすると、アグラヴェインは元々プルートーン団長のオイアグロ・ジヴォンが『ピースマークのウィザード』として活動する為に造られた特注の機体であり、大型KMFでありながら隠密行動に長けている。

 

 大型機であるためエナジー消費を気にしないほどの強力な電波妨害装置を搭載し、さらには通常のレーダーやファクトスフィアの電磁波を吸収する特殊塗料が施された装甲によりフロートユニットの作動時でも、戦闘行動を起こすまでは肉眼でしか姿が見えなくなる。

 

 これが『オズ』や『オズO2』で突然、オイアグロが『ウィザード』として姿を現すことを可能にしたネタバレである。

 

 そして今回はオズからの定期報告が無くなったことで心配から独断でギアス嚮団にオルドリンが単機で向かう前にオイアグロがアグラヴェインのステルスと連結機能を使い、二人でギアス嚮団に向かった。

 

 “介入によって変わった流れがここに来て一気に返ってきた”とも。

 

『まだだ! まだボクは────!』

 

 ────ドォォォォン

 

 ジークフリートがヴィンセント・グラムとアグラヴェインの攻撃によって飛ぶ軌道が変わると、開戦からずっと見境なしに撃っていた『スルト』の主砲の余波が当たる。

 

『ルルーシュ、まさかここまで────?!』

『────迂闊だったな、V.V.! 自らの部下と人生を狂わせた人形に守護者などに撃たれる様子は哀れに思えるよ! フハハハハハハハハハハハ!!!』

 

 ゼロの通信が発信された蜃気楼は皮肉にも射出された大型スラッシュハーケンによってより大きな難を逃れ、ジークフリートは煙と火花を飛ばしながら落ちていく。

 

「よし、あとは────」

 

 


 

 

 ────バカァン!

 

 前方間近から来た音に、スバルが注意をKMFのセンサーから生身の自分に戻すと何時ぞやのブラックリベリオン時に見たライ(仮)が機体の搭乗ハッチを開けて乗り込んでいた。

 

 体中から流血し、ボロボロな状態ながらもナイフを手にしていたライ(仮)を。

 

「生身で?!」

 

 スバルは驚きながらもすぐに体をコックピット内の席の固定具を緊急リリースさせながらも、直感と共に脳内で察した。

 

『間に合わない』、と。

 

「どぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 横からオッサン臭い荒々しい掛け声と共に赤い何かがライ(仮)の注意を引き、ナイフを振りかざした腕を押して僅かに軌道をそらして脇の下に拳銃の銃口先を当てる。

 

「隙あり!」

 

 バァン!

 

 肩を無事に撃ち抜いた証のように、火薬の乾いた音と硝煙が充満する中でカレンがライ(仮)に一本背負いの応用で蒼天のコックピットから飛んで地面に叩きつける。

 

 焦りながらスバルはコックピットから出て下を見るとニカッとした笑顔とサムズアップを返すカレンと、地面にうつ伏せで微動だに動かないライ(仮)を目撃する。

 

「(カレンよ。 収まりつつはあるが、お前はここがまだKMFの戦場だという事を忘れてはいないか? ……いや、今更だしここは素直に手を振るか────イタ?!)」

 

 スバルが手を上げようとすると激痛が走り、彼はポーカーフェイスを維持しながら途中まで上げた手でサムズアップを返すと酷い脱力感によってスバルはコックピットの中へと倒れる。

 

「(眠い……眠たい。 もう寝よう……)」

 

 この時ラクシャータの『誘爆したら貴重な資源や敵味方関係なく半径何百メートルが消し飛ぶからぁ』が頭を過ぎったので追記しよう。

 

 蒼天のメインとは別の原動力となったのは文字通り、『()()()』だ。

 つまり俺の機体のお腹には皮肉にも俺自身が危惧していたフレイヤ(ミニサイズ)を搭載しており、半永久的なエナジー源にしている。

 

 もうここまでくると『流石はマッドサイエンティストや同レベルでネジがぶっ飛んでいるとしか思えない技術部だな』としか思えない……

 

 そしてその技術部が今の対ライ(仮)戦で無茶をさせた蒼天を見たらと思うと憂鬱になる。

 

 

 ……うん、やっぱもう寝よう。

 

 


 

 

 ライ(仮)との対峙にスバルとカレンが勝利し、ジークフリートを撃った直後に乱戦で満身創痍だった『スルト』はリョウやアシュレイたちアマルガム陣営によって沈黙しつつあった。

 

 突然の乱戦状態に臆したのか、東ユーラシア軍は蜘蛛の子を散らしたかのように逃げようとしては結局良い様にアマルガムとギアス嚮団の両陣営から利用されて『スルト』が静かになる前からほとんどが大破していた。

 

 ジェレミアがルルーシュの指示通りにギアスキャンセラーを乱発しながら動き回り、動きが鈍ったところをアマルガムに付け込まれた敵のガニメデも殆どが鎮圧されていた。

 

 最初はギアス能力者による混乱に乗じたプルートーンらしきサザーランドの奇襲に零番隊は苦戦を強いられていたが、ジェレミアによって様々なギアスが解かれていく中でベニオを先頭にした反撃にOSと機体の改造でも既に資金不足などで限界が来ていたサザーランドは撃破されつつあった。

 

 あとは────

 

「(────落ちていったジークフリートからV.V.を引きずり出す。) ターゲットは施設内に逃げ込んだ! 零番隊で手の空いている班は上層から調べろ!」

 

『『『了解!』』』

 

『ゼロ、指示通りにロロをこちらで捕獲いたしました。』

 

「(そう言えば、もう一つの案件の()()も必要だったな。) そうか。 そちらに今行く。 妙な動きを見せれば首を切れ。」

 

 蜃気楼のカメラで空っぽになっていたジークフリートのコックピットに新たな指示を出し、複雑な内心のままルルーシュは蜃気楼を操ってジェレミア機のいる場所へと飛ぶ。

 

 するとヴィンセントから自ら出た所為か、両手を上げたまま地面に俯くロロを見張るジェレミアの場が見えてきた。

 

「(さて。 ナナリーの居場所に平然と居座る、あの男(皇帝)とV.V.の手先。 例えそのように育成されていたとしても慣れない環境や行動のストレス、感情などに身を任せて暴走する道具など何時爆発するか分からない時限爆弾でしかない。 ここで反逆者の烙印を押して処刑するか……それが最も確実で、合理的でもある。)」

 

『どうしますか、ゼロ?』

 

 どうすべきかをジェレミアに問われたルルーシュは記憶の中で覚えている時より顔色の悪いロロを見下ろしながらゼロとしての簡易衣装を身に纏い、仮面をつけてから蜃気楼を着陸させてジェレミアのいる場所へと歩き出す。

 

「さて、申し開きは無いか?」

 

「ッ……僕の所為じゃない。」

 

「(こいつは何を今更……) 君がエリア11で何をしたのか私が分からないとでも?」

 

「ゼロ。」

 

 ゼロの問いにロロは更に気まずくなるとジェレミアが口を開ける。

 

「何かね?」

 

「私のギアスキャンセラーを受けたロロはすぐに戦闘を止めて投降したと付け足します。」

 

「お前にロロを庇う理由があるのか?」

 

「いいえ。 私はただ、ロロ自身に我々と敵対する意思は無かった可能性を並べただけです。」

 

「……本当かね、ロロ?」

 

「ギアス嚮団には、にい────ゼロと似た性質のギアス能力者がいるんだ。 それが分かったのは、ギアス嚮団に着いてから。」

 

「(俺と似たギアス? 嘘か? いや……こいつが嘘を言ってもメリットが無い。 それにこいつは素直すぎるからな、そこまで器用ではなかった筈。 言っていることが本当だと仮定すれば、もしや遅効性のある命令を受けていた?) そのギアス能力者は今どこに居る?」

 

「……黒いランスロットで出ていた。」

 

「(カレン達が対峙していたアレか。 ならば────)────ジェレミアはロロを連れて例のギアス能力者を連れて後方部隊と合流しろ。」

 

「「は?/え?」」

 

 ゼロの淡々とした言葉にジェレミアとロロの唖然とした声が同時に出る。

 

「なんだ?」

 

「その……ゼロは良いの? ボクは────」

「────なんだ、そんなことか。 私はお前をこういった状況に巻き込みたくないからワザと黒の騎士団とは別の行動をさせていた。 その事でフラストレーションが高まったのは言葉足らずだった私の誤算だ。 そう、目くじらを立たせることでもないだろう?」

 

「に────ゼロ……」

 

「覚えておけ、ロロ。 お前の身に何かが起きれば、悲しむ者が居ると。」

 

「……………………」

 

「(ひとまず、これでロロは大人しく従うだろう。 今すぐ処理しなければいけないV.V.が先だしな。)」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ガフッ!」

 

 不老不死の体を持ったV.V.は墜落していくジークフリートから自ら飛び降りていた。

 

「(痛みだけは……慣れないな……)」

 

 V.V.は喉に詰まった血を吐き出し、呼吸をしながら自分を襲う痛みに顔を歪ませた。

 

 打撲に打ち身、骨折などを体中のいたるところでの満身創痍の状態でV.V.は上半身で地面を這いずり、地下都市の最下層にある遺跡────『黄昏の門』へと移動していた。

 

 次第に体が自己修復していき、ようやく立てるようになったV.V.はフラフラと歩いて『黄昏の門』の前まで来てはピタリと歩みを止めた。

 

「……」

 

 今までずっと閉まっていた『黄昏の門』が僅かに開かれ、その前に巨漢────神聖ブリタニア帝国の第98代皇帝であるシャルルが立っていた。

 

「ゴホ! ……そんな顔、しないでよ、シャルル────」

「────兄上、やはり今からでも────」

「────シャルル。 君のそう言うところは、美点でもあるけれど、時には非情になるべき場面では、弱点だよ? さぁ、コードを。」

 

「……兄さん、例の物は間に合いましたか?」

 

「マッドの、おかげで、なんとか……」

 

「そうですか……」

 

「だから、後は任せたよ……シャルル。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「(これで、ようやく────)────うっ!」

 

『黄昏の門』へと続く階段にV.V.は先ほど自分を追ってきたルルーシュが蜃気楼ごと消えたことで腰かけると体の芯から走る激痛に痛々しい声を出してボンヤリと天井を見上げる。

 

「こうやって直接会うのは何年ぶりだったかな、V.V.。」

 

「そう、だね。 マリアンヌの暗殺以来、かな。」

 

 前方から声をかけられ、重い瞼をV.V.は開けるといつの間にかピンク色のKMFを着陸させて機体の中から出てきたC.C.が居たことに達成感を感じながら彼女の雑談に付き合った。

 

「喜べ、V.V.。 ようやく私たちの定めから逃げる方法を見つけたよ。」

 

「そう、か……遅、かったね……」

 

「……V.V.、お前まさか────」

「────う、ん。 ルルーシュたちは、門の中だよ。」

 

「……死ぬ前に一つ聞かせてくれ。 本当にマリアンヌを殺したのはお前か?」

 

「早く行かないと、門が閉まる、よ。」

 

 C.C.の問いにV.V.はただ何も答えず、ただいつもの薄笑いを浮かべた。

 

「そうか……じゃあな、()()()()()。」

 

 ズズゥン……

 

 C.C.はそれを最後に、V.V.を後にして歩くと重い音と共に門が閉まる。

 

「君の最期が、満身創痍のズタボロ状態とはね……これを『因果応報』と呼ぶのだろうか。」

 

 C.C.が居なくなったことでV.V.一人になったところで、若い青年の声にV.V.は驚くことなく瞼を再び開けて声をかけてきた金髪の青年を見る。

 

「最期を、見届けるのが、君か。」

 

「不服かい?」

 

「いや……君は、そういう人と、知っている。」

 

「そうか。」

 

「ボクには、『この先』が無いのだろう?」

 

「そうだね、君には『この先』が無い────」

「────それを聞いて、()()()()()。」

 

 カチッ。

 

 V.V.がコートポケットに入れていたスイッチを押すと、『黄昏の門』の前にある広場に柱の様な物が彼と青年の周りを囲うかのように地中から展開する。

 

「な、何を────?!」

「────さぁ、ボクと一緒に退場しな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クソッタレな()よ!

*1
44話より




アグラヴェインの強力なECM&ステルス装備に関しては『ガウェインのドルイドシステムを載せる代わりなら在ってもおかしくはない~』の独自解釈&設定です。
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