え、『いつも通り』?
……ソウデスネ。 (=ω=;)
「…………………………は?! こ、ここは?」
白昼夢から目覚めるかのようにハッとして
周りは雲ばかりで先の神殿も宙に浮いているような、物理的に不可能な構造を────いや違う。
「俺は、
大事なのは『自分が蜃気楼の隣に立っていること』と、『服装がゼロのからアッシュフォードの学生服に変わっていること』……
今に至るまでの記憶を辿れば、何か思い当たるのかもしれない。
確か罠に嵌めたジークフリートから飛び降りたV.V.を蜃気楼で追って、ギアス嚮団の最下層の更に最奥にナイトメアを飛ばした。
ここまではすぐに思い出せるし、違和感もなく辻褄が合う。
それから────
「────久しいな、ルルーシュよ────」
「────ッ!」
特徴的な威厳あふれる
ギアス嚮団の最奥に、神根島と酷似した遺跡を。
そしてその門らしきモノが開いていて、中に
「何故貴様がここにいる?! 皇帝シャルル!」
「愚問だな、ルルーシュ。 お前も行動を起こしたからこそ、ここに辿り着いたのではないか?」
俺の叫びに
ギアスを使って、ここにいる真意を────いや違う。
俺はそんなことが聞きたいわけじゃなかった筈だ!
「皇帝シャルル! 若き頃の質問をもう一度問う! 何故マリアンヌを、母さんを守らなかった?! 何故俺だけでなく、ナナリーまで日本に追放した?! 何故────?!」
「────どうしたルルーシュ? いつもの貴様らしくないな? ギアスを使い、質問をすれば済む事ではないか?」
やはり
『ギアスの発動条件が同じ』、『お互いの能力の射程距離が同じ』、『敵が見晴らしの良い場所にある』、『蜃気楼が傍にある』。
一応、この様な事案を想定した対策はあるが……下手をすれば俺自身に危険が及ぶ。 何か、俺にとってリスクが少ない方法を考えて────!
『────お前は、
────思考を走らせていると子供の頃、まだブリタニアの第十七皇位継承者だった頃に感情任せで緊急謁見を申し込んで質問を皇帝にしたときの答えが脳を遮る。
そうだ、燻って怖気づいたままでは死んでいるのも同じ。
自分から行動を起こさなければ『いつか』は永遠に来ないと、あの時に痛感した筈だ!
躊躇している場合ではない!
先手必勝!
カチッ。
バシュ!
学生服の上着から蜃気楼の仕掛けと繋がっているリモコンのボタンを押すと、蜃気楼の胸部から数々の鏡がチャフスモークのように飛び出てくる。
それ等の鏡を血眼になって、俺は必死に探す。
皇帝の姿が映された鏡を。
……見えた!
流石の奴もこんな仕掛けを予想していまい!
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる! 『自害しろ!』」
「……よかろう。」
は?
俺の命令に、あの男が……皇帝が承諾した?
数々の鏡に俺のギアスが反射し、命令が皇帝に効いた?
パァン!
今のは銃声か?
ドサッ。
何とも言えない心境のまま近くに落ちた鏡で蜃気楼の向こう側の様子を見ると、神殿の前で流血しながら倒れる皇帝の姿が窺えた。
「……」
数秒間ほど様子を見ても、皇帝が起き上がる気配はない。
カッ、コッ、カッ、コッ。
緊張しながらフラフラな足取りで歩く俺の足音がこの奇妙な空間内に響いて祭壇らしき場所に着くと、血溜まりの中で身じろぎせぬ皇帝が横たわっていた。
まさか────「────本当にこうも、簡単に?」
思わず思っていたことが口から出てしまったことにより目の前の場が現実味を帯びて、俺の中で良く分からないモヤモヤとした感情が蠢く。
「ク……ククク。」
内心で蠢く感情がドンドンと大きくなっていくと、俺はいつの間にか笑い出していた。
「フハハハハハ!!!」
いや。 どこからどう考えてもこれは笑うしかないだろう?
長年、復讐をどう行おうかあれこれ考えていた男が、疑問に答えてほしい男が、まさかのまさかでこうもあっさりと目の前に姿を現しては簡単にも死んだのだから。
「ハハハハハ!」
『優越感』、『嬉しさ』、『悲しさ』、『虚しさ』、『悔しさ』。
様々な思いが混ざってコールタールのように俺の胸に留まって────
「────どうした。 それで終わりか、ルルーシュ────?」
「────ッあ?!」
死んだはずの男がムックリと起き上がりながら声をかけたことで、俺は思わず悲鳴にならない気勢をあげてしまう。
「い、生きている?! 馬鹿な、俺のギアスは────!」
「────少し前ならば、確かに死んだままでおったが……
そう言いながら皇帝が右手の手袋を外すと、時々C.C.の前髪の下からからチラッと見え隠れする入れ墨(模様?)が掌にあることが見えた。
その意味は良く分からないが、この男が再び立ち上がったということから一つの、
「まさか貴様も、C.C.のように────?!」
「────如何にも。 今のワシには剣も、銃も、ありとあらゆる手段でも命を散らせることは出来ない────」
────パパパパパパパパパパパパパパパパーン! カチ、カチ、カチ、カチ。
俺は近くに皇帝が自分を撃った拳銃を拾い上げて、弾倉が空になるまで元の持ち主を撃ち続ける。
「ッ。」
皇帝の体に全ての弾丸が着弾した。
血も出ているが、一向に奴が倒れる様子はない。
ドシャ。
気が付くと脱力感に身を任せて、仰向けに俺は倒れていた。
奴は確かにこう言った。
“少し前ならば確かに
つまり、この男が……皇帝は死んでも蘇るということを示している。
それ故に
皇帝を殺すことも。
問いただすことも。
詫びさせることも、もう────
「────なんと不甲斐ない。 貴様の覚悟とやらはそれほど薄っぺらい物であったか。」
は?
「そんな腑抜けた貴様に、この世界の在り方を教えるわけにはいかぬなぁ。」
こいつは……この男は────「────何を、言っている?」
「ほぉ? その目。 若き頃のワシを思い出す……よかろう、ではあの時と同じようにしようではないか────」
「────な、何を────?」
「────何、余と勝負しようではないか。 お前の得意なチェスとやらでな。」
「は?」
「貴様が勝てば……そうだな、質問に答えよう。 何、
俺が呆けているといつの間にか現れた椅子にドカッと皇帝は腰かけ、テーブルの上に置いてあったチェス盤に皇帝は白い駒を置いていく。
「なんだ? 勝負しないのか?」
皇帝は……いや、この男は何を考えている?
この期に及んで『チェス勝負』だと?
意味が……意図が分からない。
だが……
「良いだろう。 貴様とのチェス勝負など、受けてやる。」
この男が何を企んでいるのかは知らないが、自ら俺の土俵に上がると言うのなら受けない理由は俺に無い。
むしろ好都合だ。
「なら、貴様が勝ったときはどうする?」
「言った筈だぞ。 “勝てば質問に答える”と。」
そう思いながら、俺は黒い駒を並べていきながら向かい側に居る皇帝に質問を投げるがサラリと受け流される。
良いだろう。
相手がシュナイゼルならばいざ知らず、長年政や表舞台から隠居していた皇帝ならばたかが知れている。
速攻でカタを付けて、吠え顔をかかしてやる!
カッ!
無言で俺と皇帝がコツコツと駒を動かす音が辺りに響き、俺が
「……ほぉ、王を動かすとは。」
「自らが動かなければ、配下は付いてこない────」
「────なるほど、道理ではある。」
カッ!
「んな?!」
「なんだ? “王が動かなければ”と言ったのはお前だ、何をそんなに驚く?」
怯えるな、俺!
狼狽えている時間があれば、目の前の男の解析と打破を考えるんだ!
「新たな敵影をキャッチ! 方位098からです!」
「(この方角は……) 敵の識別を急いでください!」
『スルト』の注意が国境から外れたことでギアス嚮団に近づいていた後方部隊のリア・ファル内部でオペレーターのサラが声を上げるとレイラの額から冷や汗が流れる。
「少し待ってください、ウィルバー博士からの通信が……ブ、ブリタニアとユーロ・ブリタニアの混成部隊らしいです!」
「早?!」
サラの言葉にオリビアが思わず口を開けてしまい、CIC内の緊張感が更に高まっていく。
「サラ、『アマルガム部隊は先行した輸送機と合流する』とゼロに進言してください。 撤退です。」
「て、撤退?」
「事前のブリーフィングとは違う行動をとった
「……わかりました。」
「ユーフェミアは整備班に輸送機と部隊のナイトメアが戻って来ることを伝えてください。」
「優先順位は『機体の整備』、でいいですか?」
「それで構いません。」
「捕虜などは?」
「……黒の騎士団の艦に向かわせてください、ゼロの事ですから人員が待機している筈です。 逆に機器やデータの入ったサーバーなどはこちらで預かります。 ピースマークの機体等は……そうですね、黒の騎士団に送るわけにもいかないので本人たちが希望するのならリア・ファルへの着艦も可能なことを伝えてください。」
「テヤンデイ!」
「シ! ピンクちゃん、今はダメですよ?」
「レイラ艦長、零番隊から返信! 『ゼロが消えた』と────!」
「────へ────?」
「────それと紅蓮からも来ています!
「へ。」
「オーマイガッ! オーマイガッ!」
その時、耳(?)部分をパタパタさせるピンクちゃんの言葉がCICにいた者たちの内心を代弁したそうな。
慣れつつあるレイラがハッとしながら考えを進ませながら通信を開く。
「……ら、ラクシャータさん! リア・ファルの主砲は撃てますか?」
『ん~? いつでも撃てるわよ?』
「例の準慣性制御装置はどこまでの効果が見込めますか?」
『………………………………』
「ラクシャータさん?」
『いやぁ~、アンタ達ってどうも試作品をぶっつけ本番ばかりの状況に陥って使うから退屈しないで面白いわねぇ~♪』
「「「(ラクシャータさんがはぐらかした?!)」」」
「サラ、地上部隊に追伸を。 『こちらからの合図で可能な限り爆薬でスルトの破壊』! 総員、室内を対G及びショック体勢に入らせてから安全帯を近くの手すりに連結! 前線部隊とギアス嚮団の捕虜が射線上から退避した後にスルトに似せた砲撃で敵部隊を威嚇します。 リア・ファルの主砲を撃つ用意を。」
『思いきりも良いわねぇ~♪』
『ラクシャータ君が“可能かどうか”だけで後先を考えないから────』
『────なんだいこの中途半端ロマン野郎!』
「……オリビア、切ってくれるかしら?」
「了解です。」
ブツン。
「それと高度を地面スレスレに落とし、アンカーボルトで船体の固定を図ります。」
レイラが上記を口にするとCICにいたサラたちがギョッと目を見開いて、思わず彼女を見る。
「……レ、レイラさん? アンカーボルトでの固定って、もしかして
ユーフェミアが思い浮かべたのはかつて、行政特区から逃げた時スヴェンの特典反動からの虹色オロローン無茶な機動戦に付き合って気分をフジサワで悪くしていたところ、段層構造内にあったアマルガムの隠れ家で純血派カラーリングをされた巨大なサザーランドだった。*1
「ええ。 私も資料を読んだだけですがあの機体にも巨大な砲台が搭載される予定で、
「ああ、だからヒッグスコントロールシステムを……でも試運転はまだでしたよね?」
「そのためのアンカーボルトなのですユーフェミアさん。」
「ああ、なるほど!」
「ナルホドナー。」
最後にユーフェミアの真似をしたピンクちゃんの言葉にCIC内の緊張感は少しだけ薄れたそうな。
………
……
…
「……」
「どうした、ルルーシュ?」
一方、宙に浮く神殿では固まりながらチェス盤を見ていたルルーシュにシャルルが声をかけていた。
「(バカな。 “政や世界から隠居していた”と思い、攻め手を強めにしただけだ。 決して慢心したわけでもないのに、この手応え……
「────なぜ駒を動かさぬ、ルルーシュ────?」
「(────勝ちは出来ないが、負けもしないこの展開は……もしや中華連邦での再現を? 分からんが、もしそうだとしたら────)」
「────時間切れだ。」
「は?」
シャルルは椅子から立ち上がりながらテーブルを掴んではチェス盤ごと神殿からそれ等を神殿の上から宙へと投げ捨てる。
「今のは何だ、シャルル?」
「なに、“余興”という他愛ない遊びよ。」
「ッ。 な、なぜお前がここに?」
投げ捨てられたチェス盤などの方向とは反対側から来た少女の声にルルーシュは喉を詰まらせて、椅子から立ち上がる。
「C.C.がここにいることがそんなに驚くことか、ルルーシュ────?」
「────シャルル、
「確かに。」
「何を……お前たちは……」
『敵対関係』ではなく、あたかも『昔からの知り合い同士』と言いたげなシャルルとC.C.との会話にルルーシュが口を開ける。
「ここにお前が居たことは意外だが……まぁお前と私の仲だ。 よしみで教えてやるよ、契約した時に話した私の願いを。 私の願いは『終わり』を見つけることだ。」
「『終わり』? ……だがC.C.、お前は確か────」
「────ああ、不老不死だよ。 そしてギアス能力者はギアスを使えば使うほどに、能力のオンオフが出来なくなることは知っているな? 実はそれだけじゃない、そこまで達成したギアス能力者はいずれ力を授ける者の地位を継ぐことが出来る『器』となる。 つまり、私のこの呪いを……『コード』を移すことが出来る。」
「呪い……そうだな、兄さんを見ていれば確かに呪いではあったな。」
「“兄さん” ────?」
「────知らなかったかルルーシュ? V.V.は、シャルルの兄だ────」
「────は? (V.V.が、俺の伯父だと────?)」
「────シャルル、なぜ今になってV.V.からコードを?」
『V.V.がシャルルの兄』ということにびっくりするルルーシュをC.C.は無視し、自分の問いをシャルルに投げつける。
「その質問の答えを、お前は本当に欲しているのか?」
「ああ、すまない。 いつもの癖で聞いてしまったよシャルル────」
「────待てC.C.! ではお前は……終わりを……死ぬ方法の為に契約を結んできたと言うのか?!」
「そうだ。」
「死ぬためだけに、生きてきたと────?!」
「────遅いか早いかだけの違いで、すべての人には『終わり』がある。 『限りがあるから命』と太古から呼ばれている。」
「違う! 『生きているからこその命』の筈だ! それに太古からというのならば、人々にはこの世に生まれた理由が……
「────ルルーシュ。 お前のそれがただの幻想……気休めだとお前ほどの聡い坊やが分からない筈がない。 死なない積み重ねをすることは『人生』ではなく、『経験』と呼ぶんだよ。」
「それは……そんなのは────」
「────もういい。 ルルーシュ、お前と言葉遊びをしにここに来たわけじゃないんだ。 さようなら。」
「ま────!」
慌てだすルルーシュの足元に穴の様な物が開き、彼は一瞬にして落ちては消える。
…………
………
……
…
場所はどこかの開けた浴場へと変わり、湯気越しでも数々の護衛官らしき女性たちが薙刀状の武器を持っていた。
「……?」
「姉さん?」
それ等の中心には二十代の女性が15、6歳ほどの少年────会話からして女性の弟────に髪を洗われていた。
「どうかしたの? もしかして、預言?」
「いえ……何か胸騒ぎが……シャリオは、何か感じない?」
「お湯の温度?」
「そう、それは良かった……体の調子は?」
「大丈夫、目は見えているままだよ。」
「あの人の言葉は守って、
「僕はアイツの事は嫌いだ────」
「────シャリオ────」
「────でも姉さんが言うのなら、僕は従うよ。」
「いい? “王は民の為に、民は王の為に”……貴方が自由に動き回れるのなら、それだけで我が国の戦士たちの士気は上がり、経済も────」
「────姉さんも喜ぶしね。」
「もう!」
このやりとりだけを見ると、仲のいい兄弟である。
少々過剰な数の護衛が付いている上に、風呂場なだけに二十台と15,6歳の少年が裸だということを置いて誰も想像できないだろう。
まさかこの二人が、軍事力
「それよりも聞いた? 例の幽鬼、ブリタニアの宰相に一泡吹かせたって噂?」
「ええ。 実はこの間、あの人から聞いて実際に見たわ。」
「へぇ……僕、その幽鬼と
そして後にこの二人が、世界を揺るがす事変の中心となることを誰が想像できるだろうか?
しかしそれは来るであろう時期に委細を記入しようと思う。